日本代表の次戦は、単なる第二戦ではなくなった。相手のチュニジアは、初戦でスウェーデンに一対五で敗れた直後、監督を交代した。日本はオランダと二対二で引き分け、勝点一点を手にしたが、主将だった遠藤航を負傷で失い、チームの重心を作り直しながら大会を戦っている。六月二十一日、メキシコ北部モンテレイで行われる一戦は、グループ内の順位だけでなく、二つのチームが混乱をどう処理するかを問う試合になった。

日本にとって、チュニジア戦は「勝てる相手」と見なしてよい試合ではない。むしろ危険なのは、相手が大敗し、監督を替え、失うものが少なくなった直後に当たることである。新監督エルヴェ・ルナールは、アフリカの舞台で勝ち方を知り、二〇二二年大会ではサウジアラビアを率いてアルゼンチンを破った人物として知られる。彼の到着は、チュニジアに秩序を戻すかもしれないし、短期間の劇薬に終わるかもしれない。

二対二日本は初戦でオランダに追いつき、勝点一点を得た。
一対五チュニジアは初戦でスウェーデンに大敗した。
六月二十一日日本時間午後一時、モンテレイでキックオフ。
三十二強今大会は各組上位二か国に加え、三位の一部も決勝トーナメントへ進む。

オランダ戦が残した希望と宿題

日本の初戦は、敗北から立ち上がる物語だった。前半は慎重な展開になったが、後半に試合が開き、オランダと日本が二点ずつを奪い合った。大きな相手に押し込まれながらも、日本は崩れ切らず、反撃の形を作った。勝点一点は、決して悪くない出発である。

しかし、引き分けは安心材料だけではない。二失点したこと、主将経験者の不在をチーム全体で埋めなければならないこと、そして第三戦にスウェーデンを残していることを考えれば、チュニジア戦で勝点三を取りに行く重みは大きい。オランダ戦の粘りは、次の試合で結果に変えなければ、単なる「よい内容」にとどまる。

チュニジア戦は、日本が強豪相手に善戦するチームから、勝つべき試合を勝ち切るチームへ進めるかを測る試金石である。

チュニジアの崩壊は本物か

チュニジアは、アフリカ予選で堅守を武器にしてきたチームだった。ところが本大会初戦では、スウェーデンの前線に守備構造を壊され、一対五で敗れた。大会直前から不安はあった。サブリ・ラモウシ監督は一月に就任したばかりで、準備期間は短く、親善試合でも安定した結果を残せていなかった。

大敗の直後、チュニジア連盟は監督交代に踏み切った。ワールドカップ中の監督解任は珍しいが、前例がないわけではない。チュニジア自身も過去に大会中の混乱を経験している。今回の交代は、敗戦の責任追及であると同時に、残り二試合を捨てないという意思表示でもある。

ルナールという短期処方

エルヴェ・ルナールは、白いシャツ姿で知られるだけの監督ではない。ザンビアとコートジボワールをアフリカ王者に導き、モロッコやサウジアラビアでも代表チームを率いた。二〇二二年大会では、サウジアラビアがアルゼンチンを破る大番狂わせを起こした。その経験は、短期決戦で選手の意識を変える力として評価されている。

ただし、時間はほとんどない。新監督ができることは限られる。複雑な戦術を植え付けるより、守備の約束事を単純化し、前線の役割を明確にし、失点後に崩れない心理を作ることが優先になる。日本にとっては、チュニジアが別のチームとして現れる可能性を想定しなければならない。

日本が警戒すべきもの

一つ目は、相手の初動である。大敗したチームは、次戦の入りで激しく来ることが多い。日本が最初の十五分で不用意に受け身になると、会場の空気を相手に渡してしまう。二つ目は、セットプレーである。短期で立て直すチームほど、流れの中よりもセットプレーに活路を求める。三つ目は、日本側の焦りである。勝てそうだという空気が強くなるほど、攻め急ぎ、カウンターを受ける危険が増える。

日本が優位に立つなら、ボールを動かす速度だけでなく、試合の温度を管理する必要がある。チュニジアが感情的に前へ出るなら、背後を取る。チュニジアが引いて守るなら、幅を使って揺さぶる。どちらの場合も、先制点を取ることより、失点しない時間を長くすることが重要になる。

日本語学習広告日本語学習広告

遠藤不在が意味すること

大会前、日本は遠藤航を失った。負傷により代表から外れ、国際舞台から退く決断をしたと報じられた。遠藤の不在は、単に一人の中盤選手を欠くという以上の意味を持つ。彼はボールを奪う選手であり、危険を読む選手であり、チームの集中を保つ選手だった。

だからこそ、チュニジア戦では「誰が遠藤の代わりをするか」ではなく、「チーム全体で遠藤が担っていた機能をどう分けるか」が問われる。奪い所、守備への切り替え、二次攻撃への対応、終盤の時間の使い方。相手の混乱を突くには、日本自身の中盤が混乱していてはならない。

グループの計算

グループはすでに読みにくくなっている。スウェーデンは得失点差で大きく前へ出た。オランダと日本は勝点一点から始まり、チュニジアは大きな負債を抱えた。だが、今大会は参加国が四十八に拡大され、三位の一部も三十二強へ進む。つまり、チュニジアにもまだ道は残っている。だからこそ、チュニジアは日本戦で引き分け狙いだけには来ない可能性がある。

日本の理想は明確だ。ここで勝てば、第三戦のスウェーデン戦に大きな余裕を持ち込める。引き分けなら、最後まで苦しい計算が続く。敗れれば、オランダ戦の価値は一気に薄れる。日本にとってチュニジア戦は、決勝トーナメントへの扉を開く試合であり、同時に自分たちで大会を難しくしないための試合でもある。

試合の注目点
  • 日本が序盤の圧力を受け流せるか。
  • チュニジアが新監督のもとで守備を再構築できるか。
  • 日本の中盤が遠藤不在の機能を分担できるか。
  • セットプレーで試合が傾くか。
  • 三位通過の可能性が、両チームのリスク判断をどう変えるか。

モンテレイの夜、日本の昼

試合はモンテレイの夜に行われ、日本では昼の時間に届く。時差は、ワールドカップを遠くする一方で、物語を濃くする。日本のファンは、朝や深夜ではなく、昼のニュースとしてこの試合を見ることになる。勝てば、グループ突破に向けた現実的な期待が広がる。つまずけば、次の数日間は不安で満ちる。

日本代表が世界大会で問われてきたのは、いつも同じ課題だった。強い相手には食らいつける。しかし、自分たちが主導権を握れるはずの試合で、どれだけ冷静に勝ち切れるか。チュニジア戦は、その答えを求める試合である。

相手は傷ついている。だが、傷ついた相手ほど危険なことがある。日本は勢いではなく、設計された強さで勝たなければならない。モンテレイの一戦は、派手な物語ではなく、成熟の試験になる。

出典・参考資料

本稿は、国際サッカー連盟、ロイター、時事通信系報道、主要海外紙の公開情報をもとに構成した。