答えを出すことはできる。しかし、なぜその答えになるのかを、相手が追える順序で書くと止まる。文章の意味はつかめても、二つの表現を比べ、語の効果を本文の根拠と結び付けて説明すると空欄が増える。2026年度の全国学力・学習状況調査が示したのは、日本の児童生徒が何も知らないという話ではない。知っていることを、未知の場面で選び、つなぎ、根拠として表す段階に、長く続く壁があるという診断だ。
国立教育政策研究所が7月16日に公表したのは、三段階のうち第1回の結果である。4月20日から5月29日にかけ、小学6年は国語・算数、中学3年は国語・数学・英語を受けた。国語と算数・数学の全国平均、英語のIRTスコアとバンド分布、質問調査の速報が示されたが、設問ごとの本格分析は8月3日、都道府県・指定都市別分析は秋に予定されている。
したがって7月18日時点で言えることには限界がある。家庭背景、授業方法、地域差、男女差などの原因を断定する段階ではない。一方、問題、正答例、観点別・形式別の集計は公開されている。そこからは、計算手順や選択よりも、比較、証明、データ解釈、文章化を要求する場面で正答率が落ちる構造が見える。
全国平均は「合格点」ではない
平均7.9問/13問
平均9.1問/16問
平均9.6問/15問
平均9.2問/16問
この50~60%台を、通常の定期試験の「合格・不合格」に置き換えるのは誤りだ。全国調査は教科書の全範囲を均等に確認する試験ではなく、学習指導要領が重視する知識の活用、資料の読み取り、説明、判断を、少数の設問で意図的に探る。難しい設問が含まれるため、平均正答率の目標値や合格線は設定されていない。
前年との単純比較にも注意がいる。2025年度から2026年度へ、小6国語は67.0%から61.1%へ下がり、中3数学は48.8%から57.4%へ上がったように見える。しかし毎年、文章、条件、設問数、難易度が変わる。共通尺度で校正していない紙の正答率だけで「学力が低下した」「回復した」と結論づけることはできない。全員調査で人数が多くても、別問題を受けた別学年集団を同じ物差しにはできない。
2026年の核心は「平均が50%台だった」ことではない。既知の手続きを実行する力と、根拠を選び、自分の言葉で説明する力の差である。
「書くこと」と「記述式」を混同しない
国語の結果を読むとき、二つの分類を分ける必要がある。第一は学習指導要領上の領域である「書くこと」。第二は、答え方による「記述式」だ。読解問題でも、本文を根拠に文章で答えれば記述式になる。反対に、「書くこと」の能力を選択肢で確かめる設問もあり得る。両者は重なるが、同じ数字ではない。
| 国語 | 全体 | 「書くこと」領域 | 記述式 |
|---|---|---|---|
| 小学6年 | 61.1% | 45.8% | 55.1% |
| 中学3年 | 64.2% | 67.7% | 45.9% |
中3で「書くこと」67.7%と記述式45.9%が大きく違うのは矛盾ではない。記述式には「読むこと」や「話すこと・聞くこと」の内容を、条件に沿って説明する設問も含まれるからだ。見出しでいう「文章表現の課題」は、長い作文が書けないという一言では足りない。資料を選び、本文の語句に戻り、指定された観点と字数で答えを構成する複合的な仕事である。
象徴的だったのは、中3国語で二つの文章例を比べ、擬態語「きっぱり」が示す具体的な様子と、その表現効果を説明する設問だ。正答率は35.5%、無解答率は19.5%だった。語の辞書的意味だけでなく、人物の態度を本文から読み、比較し、効果まで書く必要がある。読解、語彙、根拠選択、文章構成のどこか一つが欠けても正答になりにくい。
小6算数――割合を式・図・言葉の間で動かす
小6算数の全体正答率56.6%を領域別に見ると、「数と計算」61.3%、「図形」55.5%、「測定」78.2%に対し、「変化と関係」41.4%、「データの活用」48.8%だった。評価観点では「知識・技能」60.3%に対し、「思考・判断・表現」45.6%。答え方別でも選択式56.2%、短答式59.9%に対し、記述式48.7%だった。
割合の問題は、計算公式を再生するだけでは解けない。例えば「14匹が全体の20%」という関係から式を立てて総数を求める、白いテープの1.5倍の長さを示す二つの図を選ぶといった設問では、基準量、比較量、割合の関係を図・数・式の間で移し替える必要がある。子どもが「何を1と見ているか」を言葉にできなければ、掛け算と割り算を取り違えやすい。
混雑度や宅配便の条件を扱う設問も同じだ。日常場面が付いているから易しいとは限らない。余分な情報から必要な量を選び、単位をそろえ、比較方法を決め、答えが状況に合うか確かめる。公式を知ることは出発点だが、式の意味を説明できなければ別の文脈に移せない。
中3数学――63.3%と39.6%の裂け目
最も鮮明な差は中3数学に出た。全体57.4%に対し、「知識・技能」は63.3%、「思考・判断・表現」は39.6%。形式別でも選択式59.6%、短答式64.6%、記述式39.6%だった。知っている定理や計算を使うことと、その方法が妥当だと説明することの間に、約24ポイントの開きがある。
| 求められた仕事 | 難しさの中心 |
|---|---|
| グラフから1000MBの動画時間を見積もる方法を説明 | 比例的な関係を読み、どの値をどう使ったかを再現可能な順序で書く。 |
| 三角形の合同を根拠に角が等しいことを証明 | 図から条件を取り出し、根拠と結論を論理の鎖でつなぐ。 |
| 睡眠時間などの度数分布多角形から傾向を説明 | グラフの一部だけでなく分布を比較し、データが支える範囲で主張する。 |
記述式の低さを、単に「文章力不足」とみなすのも危険だ。数学の説明には、概念理解、図表の読み方、論理、用語、記号、相手への伝達が一体となっている。計算ミスがなくても、必要な条件を書かない、結論だけを書く、グラフにない因果関係まで主張する、証明の根拠を飛ばすと正答にはならない。
一方で、説明を重視するから計算練習を減らせばよいわけでもない。手続きが自動化されていなければ、限られた作業記憶を説明に回せない。必要なのは「計算か思考か」という二者択一ではなく、正確な手続きを土台に、なぜ、いつ、別の方法でも成り立つかまで扱う授業である。
中学英語は4技能すべてを画面で測った
2026年度は中学英語でも大きな転換があった。「聞く・読む・書く・話す」の4技能を、初めてすべてコンピューター使用型調査(CBT)で実施した。4技能の全国平均IRTスコアは499。分布はバンド1が6.4%、2が27.1%、3が36.2%、4が24.7%、5が5.7%だった。
499を「正答率49.9%」や合格点と読んではならない。IRTは、設問の難易度などを統計モデルで扱い、異なる問題冊子や年度を共通尺度に近づける方法だ。学校へは主に聞く・読む・書くの3技能スコアが返され、全国の4技能値は、同日に話す調査を受けた標本を用いて推定された。方式の違いを理解しなければ、紙の国語・数学の正答率と横並びにはできない。
CBTは音声、動画、ドラッグ操作、複数問題冊子、早い返却を可能にする。半面、端末や回線、キーボード入力への慣れ、音声環境、障害への配慮、紙と画面の読み方の差が得点に混ざる。書く・話すを大規模に採点するなら、採点基準、機械支援の透明性、異議申立て、個人データ保護も重要になる。
1956年――戦後の全国調査は標本から始まった
全国規模で学力を測る歴史は、現行制度より半世紀古い。国立教育政策研究所の保存資料によれば、1956年度の全国学力調査は、小6と中3の国語・算数/数学について約4.2%を抽出し、学力の実態を把握して、学習指導、教育課程、教育条件の改善に使うことを目的とした。小中高を含め、年度ごとに社会、理科、英語、音楽なども調べた。
転機は1961年だった。中学2・3年の国語、社会、数学、理科、英語を全員に近い規模で実施し、1964年まで続いた。学校や地域を比較できる全員調査は、教育条件の格差を見つける道具である一方、序列化、国による教育統制、教員評価、試験対策への偏りをめぐる強い反対運動を招いた。実施をめぐる衝突と裁判は、1976年の最高裁大法廷判決にまで至る戦後教育史の争点となった。
1965、66年度は再び約20%の抽出へ戻り、この全国調査シリーズは1966年で終わる。ここに現在まで続く二つの問いがすでにあった。国は義務教育の水準と地域差をどう確かめるべきか。そして、診断のための数字が学校の順位表へ変わるのをどう防ぐか、である。
PISAショックと「ゆとり」をめぐる短絡
1998年告示、2002年度から全面実施された学習指導要領は、学校週5日制の下で内容を精選し、総合的な学習の時間を設け、知識を詰め込むだけでなく自ら学ぶ「生きる力」を掲げた。後に「ゆとり教育」と呼ばれたが、目的は思考を捨てることではなく、時間の余裕の中で課題解決や体験を充実させることだった。
ところが2004年末に公表されたPISA2003で、日本は数学的リテラシーが2000年の1位から6位、読解力が8位から14位となった。科学的リテラシーは2位で、全体として国際上位だったにもかかわらず、「PISAショック」は学力低下とゆとり批判を加速させた。順位変化を一つのカリキュラムだけの因果とするのは乱暴だ。PISAは15歳の標本を対象に、実生活で知識を活用する力を測る。制度、出題、参加国、社会背景も動く。
それでも政策転換の材料にはなった。文部科学省は、PISA・TIMSS2003の読解、数学、理科の傾向に加え、2004年の教育課程実施状況調査で国語の記述式と中学校数学に課題があったことを、全国調査を始める経緯として明記した。2026年に再び注目される弱点は、2007年制度の出発理由にすでに書かれていたのである。
2007年に戻った全員調査
| 年 | 全国学力・学習状況調査の転機 |
|---|---|
| 2007 | 小6・中3の国語、算数・数学で現行調査を開始。2009年度まで悉皆。 |
| 2010・2012 | 約30%の抽出調査と、希望する設置者の利用方式へ。2011年は東日本大震災を受け、調査としての実施を見送り。 |
| 2013 | 全員対象の「きめ細かい調査」。経年変化、家庭状況、少人数学級などの追加調査も実施。 |
| 2014~ | 再び悉皆方式。学校・教育委員会に結果、児童生徒に個人票を返す。 |
| 2019 | 英語を追加。「知識A」「活用B」の別冊をやめ、知識と活用を一体的に問う形式へ。 |
| 2020 | 新型コロナによる休校と学校負担を考慮し中止。 |
| 2025~26 | 中学理科に続き、中学英語4技能をCBT・IRTで実施。 |
制度の目的は、義務教育の機会均等と水準の維持向上、政策の検証、学校の授業改善、継続的な改善サイクルである。全国平均だけでなく、各教育委員会と学校へ結果を返し、児童生徒本人へ個人票を渡す。その意味では入試ではなく、国・自治体・学校・個人の四層に向けた診断装置だ。
しかし悉皆方式には緊張が付きまとう。すべての学校を測れば、地域や学校の小さな差まで見える。説明責任には役立つが、平均点の競争、過度な対策、成績の低い子を排除する誘因、個人情報の集中、教員の準備負担も生む。診断を順位表に変えない運用が、測定技術と同じくらい重要である。
学習指導要領が求める三つの柱
2017~19年改訂の現行学習指導要領は、育てる資質・能力を「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の三つに整理した。小学校は2020年度、中学校は2021年度、高校は2022年度から順次実施。国語を要として全教科で言語能力を育て、数学ではデータ分析と問題解決を重視し、「主体的・対話的で深い学び」を掲げる。
全国調査の観点別集計は、この設計図が教室でどこまで実現したかを見る。2026年速報では、課題解決へ自分から取り組んだ、挑戦や好奇心を持ったと肯定的に答えた児童生徒ほど、正答率やスコアが高い傾向があった。だがこれは相関である。成績が良いから自信を持つのか、授業が両方を育てたのか、家庭環境など第三の要因があるのかは、速報だけでは分からない。
GIGAスクール構想とコロナ禍で1人1台端末は急速に普及した。端末は考えを共有し、複数表現を比べ、文章を推敲し、データを動かす道具になり得る。一方、答えを検索し、短い反応を提出するだけなら、説明の質は上がらない。デジタル化は学力改善そのものではなく、授業設計を増幅する。
PISA2022世界上位と、国内の弱点は両立する
「日本の数学は危機なのか」という問いには、二つの物差しを置く必要がある。PISA2022で日本は数学的リテラシー536点、読解力516点、科学的リテラシー547点。OECD加盟国中それぞれ1位、2位、1位、全参加国・地域でも5位、3位、2位だった。国際的には世界上位であり、全国テストの一部設問が低かったことを「教育崩壊」と呼ぶ根拠はない。
同時に、PISAの上位国でも難しい推論問題に正答できない生徒は多い。PISAは15歳の標本、全国調査は小6・中3の悉皆で、目的、範囲、尺度、問題が異なる。高い平均と、特定の説明課題は両立する。むしろ上位の制度だからこそ、正しい答えの先にある「証拠に基づく説明」を次の改善点として見つけられる。
PISA2022自身も、日本の生徒はOECD平均より、実生活の課題を数学で解く自信が低く、数学を日常事象と結び付けて学んだ経験が少ないと報告した。国際順位で安心することも、国内の低正答率で悲観することも、どちらも半分の物語しか見ていない。
授業をどう変えるか――「もっと作文」だけでは足りない
| 改善の方向 | 教室での具体例 |
|---|---|
| 短い根拠文を毎日書く | 国語だけでなく理科、社会、数学でも「主張―証拠―理由」を2~4文で書く。 |
| 口頭から文章へ橋を架ける | ペアで説明し、図に注釈し、最後に一人で文章化。話せるが書けない地点を見つける。 |
| 複数の表現を往復する | 割合を図・表・式・言葉で表し、どれが同じ関係を示すか比較する。 |
| 誤答を教材にする | 「どこまでは正しいか」「何の根拠が抜けたか」を匿名の解答例で討論する。 |
| 採点基準を先に共有する | 条件、根拠、用語、結論のルーブリックで自己評価し、書き直す。 |
| 語彙を文脈で教える | 「きっぱり」などの語を類義語と置き換え、人物像や読者への効果がどう変わるか比べる。 |
| 計算の流暢さを守る | 基礎練習を残しつつ、「なぜその式か」「別の方法は」「答えは妥当か」を続けて問う。 |
記述問題を増やすだけでは、書ける子と書けない子の差を測り直すだけになり得る。教師が途中の思考を見せ、良い答えの構造を分解し、児童生徒がフィードバックを受けて書き直す時間が必要だ。一度提出して点数を付ける「結果の作文」から、対話、下書き、修正を含む「過程の表現」へ移る必要がある。
教員負担も無視できない。記述を丁寧に読むには時間と共通基準がいる。学校は共同採点、短い共通ルーブリック、授業中の相互評価、良質な解答例を使い、採点だけでなく次の指導へつながる仕組みを作るべきだ。AIによる下書き支援や採点補助を使う場合も、最終判断、偏りの監査、児童生徒の個人情報、どの部分を機械が評価したかの説明を人間が担う。
公平性――空欄は能力だけを表さない
記述式は、選択式より豊かな思考を見せる一方、学習機会の差も映しやすい。家庭で使う語彙、読書経験、日本語を学び始めた時期、障害、書字や入力の困難、処理速度、テスト不安が答案に表れる。数学概念を理解していても、日本語で長く説明する負荷が高い子もいる。
だから支援は、正答を教えることではなく、測りたい能力以外の障壁を下げることである。読み上げ、拡大、入力方法、時間、静かな環境などの合理的配慮、外国につながる児童生徒への教科学習言語の指導、図や口頭説明を含む複数の評価が必要になる。紙からCBTへ変わると、誰に有利・不利かも再検証しなければならない。
全国平均は約180万人を一つの数字にする。だが改善は、平均の内側にいる無解答の子、途中まで正しい子、特定形式でだけ困る子を見つけるところから始まる。8月以降の詳細分析では、分布と誤答類型を平均以上に見る必要がある。
2027年、全教科CBTへ――比較可能性と新しいリスク
文部科学省は2026年6月に今後のCBT実施方針を改定した。2027年度以降、全国調査の各教科を段階的にコンピューターへ移し、IRTを用いた経年比較を整える方向だ。共通問題の一部を尺度の「錨」にすれば、毎年違う問題でも難易度を調整し、単純な正答率より妥当な変化を追える可能性がある。
これは長年の弱点を改善する。現在の紙テストでは、前年より5ポイント動いても、子どもが変わったのか問題が変わったのか分けにくい。複数の問題セットを配れば、限られた試験時間でより広い内容を測れ、問題漏えいのリスクも分散できる。学校への返却を早め、個々の得意・不得意を詳しく示すことも可能になる。
ただし、IRTは魔法ではない。紙と画面のモード差、端末操作、回線事故、設問の非公開化、アルゴリズム採点、尺度の設定を市民に説明しなければ、精密さが不透明さに変わる。全国調査は教育政策へ影響する公共インフラである。技術仕様、妥当性、誤差、アクセシビリティ、データ保存を、専門家だけでなく保護者と学校が検証できる形にする必要がある。
8月3日と秋に見るべきこと
| 確認点 | なぜ重要か |
|---|---|
| 設問別の誤答類型 | 知識不足、条件の見落とし、根拠不足、表現の不完全さを分ける。 |
| 無解答の分布 | 「分からない」と、時間不足・入力困難・あきらめを区別する手掛かり。 |
| 質問調査との関係 | 相関を因果と誤認せず、授業、家庭、端末利用など複数要因を調べる。 |
| 都道府県・指定都市の幅 | 平均順位より、共通する課題と地域固有の誤答パターンを見る。 |
| 英語CBTの実施影響 | 音声、入力、回線、受検日、話す調査の標本設計が結果へ与えた影響。 |
| 合理的配慮と欠測 | 誰が受けられなかったか、どの支援を使ったかを把握する。 |
| 2027年CBT設計 | 経年尺度、問題公開、採点、個人情報、障害対応の具体策を確認する。 |
学校にとって最も役立つ数字は、全国順位ではなく、どの問題で、どの種類の途中答案が多かったかである。教育委員会も、平均点を上げた学校を表彰するより、児童生徒の解答を共同で読み、翌学期の単元と授業へつなぐ時間を保障した方がよい。
結論――正答の次にある学力
日本の全国学力調査は、1956年の標本調査、1960年代の全員調査と激しい対立、国際調査をめぐる危機感、2007年の再開を経てきた。目的は一貫して、全国の水準を把握し、教育条件と指導を改善することだった。一方、数字が序列と統制へ変わる危険も、一貫して消えていない。
2026年の結果は教育崩壊の証明ではない。PISAで世界上位を維持し、基礎的な知識・技能を相当程度身につけた制度が、次の課題を可視化した。算数・数学では式や定理を使うところから、その選択を説明し、データに沿って主張するところへ。国語では読み取るところから、語句と資料を根拠に、条件に合う文章を作るところへ。その短い距離が、実は最も教えるのが難しい。
答えだけを急ぐ教室では、説明は最後の付け足しになる。説明を学びの中心に置く教室では、子どもは他者の根拠を聞き、自分の誤りを見つけ、書き直し、理解を作り替える。全国テストが価値を持つのは平均点がニュースになる日ではなく、その答案が翌日の授業を変えるときである。
出典・参考資料
- 国立教育政策研究所:令和8年度 全国学力・学習状況調査 結果公表 — 7月16日の第1回公表、実施概要、全国平均、観点別・形式別集計、今後の日程。
- 国立教育政策研究所:令和8年度調査結果のポイント — 国語・算数・数学の全国値、英語IRTバンド、質問調査速報。
- 国立教育政策研究所:令和8年度 調査問題・正答例・解説資料 — 割合、擬態語、証明、グラフ、データ分析などの実際の出題。
- 文部科学省:令和8年度調査の報告書・集計結果 — 約180万人を対象とする悉皆調査、3段階の公表日程。
- リセマム:2026年度全国学力テスト速報 — 教科平均、英語4技能CBT、IRTバンド分布、質問調査速報。
- 時事通信/nippon.com:割合問題や読み取りに課題 — 「きっぱり」とテープの割合問題、年度間の単純比較への注意。
- 文部科学省:全国学力・学習状況調査の概要 — 目的、対象、教科、悉皆・抽出方式の変遷、個人票。
- 国立教育政策研究所:1956~1966年度 全国学力調査資料 — 戦後調査の目的、教科、抽出率、1961~64年中学校悉皆調査。
- 国立国会図書館:全国一斉学力調査と最高裁判決 — 1960年代の調査をめぐる旭川学力テスト事件と1976年判決の文献情報。
- 文部科学省:全国学力調査の実施に至る経緯 — PISA・TIMSS2003、国語記述式と中学校数学の課題、2007年開始。
- 文部科学省:PISA2003結果概要 — 数学6位、読解14位、科学2位と、学習意欲・習慣の課題。
- 文部科学省・国立教育政策研究所:PISA2022のポイント — 日本の3分野の得点と順位、CBT、経年比較、数学と実生活の関連。
- 文部科学省:平成29・30・31年改訂学習指導要領 — 資質・能力の三つの柱、言語能力、理数教育、主体的・対話的で深い学び。
- 文部科学省:現行学習指導要領とICT — 小中高の全面実施時期、GIGAスクール、個別最適・協働的な学び。
- 文部科学省:今後の全国学力調査のCBT実施方針(2026年6月改定) — 2027年度以降の実施方法と経年変化分析の方向性。
- 文部科学省:2020年度調査の中止 — 新型コロナ感染拡大を受けた実施見送り。
編集注:本稿は2026年7月17日午前10時37分(日本時間)までに確認できた公表資料と報道に基づく。7月16日公表は全国平均などの第1段階で、全国データの詳細分析は8月3日、都道府県・指定都市別分析は秋の予定である。正答率は年度ごとに問題と難易度が異なるため、前年との差をそのまま学力の上昇・低下とはみなせない。「書くこと」は国語の内容領域、「記述式」は回答形式であり、同一ではない。英語499はIRT尺度上の平均で、49.9%や合格点を意味しない。
