31対31。25点を先に取れば終わるはずだったセットは、まだ終わらなかった。国際バレーボール連盟(FIVB)の競技規則では、第1~第4セットは25点先取であっても2点差が必要だ。24対24になれば上限はなく、差が二つ開くまで続く。中国・天津で8月23日に行われた女子アジア選手権の日本対韓国は、その規則が試合の重さをむき出しにするところまで進んだ。

最後に左から打ち切ったのは鴫原ひなた(しぎはら・ひなた)だった。日本は第1セットを33-31で取り、第2セット25-19、第3セット25-20。セットカウント3-0で韓国を退け、予選ラウンド2連勝で準々決勝進出を決めた。

「ストレート勝ち」は結果として正しい。ただし、試合の手触りを十分には伝えない。日本バレーボール協会(JVA)の公式戦評は、韓国のサーブで日本のサーブレシーブが崩れたことを第1、第2セットで繰り返し記す。33-31は勝ち切る力の証明であると同時に、優勝とロサンゼルス2028オリンピック出場権を狙うチームが持ち越した警報でもあった。

3-0日本の勝利。セットは33-31、25-19、25-20。
16ラリー24-24から33-31までに行われた得点ラリー数。
2勝0敗韓国戦終了時の日本。6セットを取り、失セットは0。
8月25日 19:30次戦・ベトナム戦の日本時間。記事公開時点では未実施。

25対26、韓国が先に出口へ触れた

試合は8月23日午後6時30分(中国時間、同7時30分日本時間)、天津の予選C組第9試合として始まった。JVAが試合開始前の値として示したFIVB世界ランキングは日本6位、韓国26位。順位差はあっても、最初の数分は日本に余裕を与えなかった。

韓国の強いサーブを受け、日本は3-5。粘り強い守備から10-9へ返し、和田由紀子(わだ・ゆきこ)のバックアタックで14-12とした。それでも韓国はクイック、ブロック、フェイントを使い分け、16-17。石川真佑(いしかわ・まゆ)がラリーを仕留めて20-20、佐藤淑乃(さとう・よしの)のアタックで23-22となった。

次に出口へ触れたのは韓国だった。日本は韓国の守備からの攻撃を許し、25-26でセットポイントを握られた。JVAの戦評では、韓国のフェイントミスにより日本が30-29でセットポイントを握り返す。その後もサイドアウトが続き、鴫原のレフト攻撃でようやく2点差が生まれた。

33-31に得点上限はない。 FIVB規則6.2は、24-24以降、どちらかが2点リードするまで続けると定める。33-31は特別ルールではなく、通常ルールの下で24-24から16ラリー続いて決着したスコアである。

この区間を「気持ち」で説明するだけでは足りない。1本のサーブが相手の攻撃選択を狭め、乱れた返球がブロックの配置を遅らせ、次のサイドアウトへ影響する。1点ごとにサーブ権が動くラリーポイント制では、接戦は心理だけでなく、第一接触から攻撃までの再現性を連続して試す。

3-0の内側にあった修正

第2セットでも日本は韓国のサーブに崩され、2-5から追う形になった。和田のサービスエース、石川のダイレクトで5-5。13-13から北窓絢音(きたまど・あやね)のサーブが韓国の攻撃準備を崩し、佐藤が決めて16-14。宮部藍梨(みやべ・あいり)の速攻と佐藤のフェイントで19-14まで広げ、最後はセッターの関がブロックして25-19とした。

第3セットは佐藤の連続得点で始まり、和田のサービスエースで7-4。日本の守備が機能して17-11まで離した。それでも韓国は22-20まで戻す。和田がブロックで24-20とし、次のスパイクで試合を閉じた。

二つの修正が見える。第一は、自分たちのサーブで相手の第一接触を乱し、整ったクイックやサイド攻撃を減らしたこと。第二は、先発だけで問題を解こうとしなかったことだ。北窓はJVAへの試合後コメントで、第1セットは日本のサーブが韓国を十分に崩せていないと見ていたと説明した。途中出場で「自分が流れを変える」という意識を持って入った、と振り返った。

公式登録上、和田、石川、佐藤、鴫原、北窓はいずれもアウトサイドヒッターである。それでも韓国戦の和田は、バックアタック、サーブ、終盤のブロックまで異なる局面で得点に関わった。アクバシュ監督の日本が示した厚みは、同じ肩書の選手を並べることではなく、局面ごとに異なる機能を出せることだった。

勝利を祝う選手が、修正不足を語った

最も厳しい採点をしたのは、コート上の島村春世(しまむら・はるよ)だった。島村は3-0を肯定しながら、サーブレシーブ、サーブ、ブロックとディフェンスの関係を修正し切れなかったと説明し、この一戦を「自分たちに足りないことを教えてくれた試合」と表現した。

この言葉は、33-31の意味を勝負強さだけに閉じない。韓国の強いサーブを受けて攻撃が単調になれば、相手ブロックは待ちやすくなる。日本のサーブが弱ければ、韓国はセッターへ正確に返し、クイックと両サイドの選択を残せる。ブロックと後衛守備は別々の技術ではなく、サーブで限定した攻撃を前衛が誘導し、後衛が拾う連鎖である。

島村はミドルブロッカーの攻撃回数についても、使える場面だけでなく、おとりとして相手ブロックを引きつける動きが重要だと述べた。数字の多さだけではなく、中央を意識させることでサイドの一枚ブロックを作れるかが問われる。公式戦評に全選手の攻撃決定率を含む完全なスタッツは掲載されていないため、本稿は成功率を推測しない。

33-31は「苦しいのに勝てた」という美談だけではない。苦しくした原因を、勝った夜に消さず残せるかというテストだった。

「あのセットを落としていたら」は事実ではない

見出しにある「流れを変え得たセット」は、確認済みの試合結果ではなく、Japan.co.jpの反実仮想による分析である。日本が第1セットを落としても、その後に逆転した可能性はある。韓国が試合を取ったと断定できる証拠もない。スポーツの分岐は再現できない。

それでも、第1セットに重みがあったと言える理由はある。韓国は日本の受けを崩し、セットポイントまで到達した。そこでセットを取れば、韓国は自らのサーブ戦術が通じた状態で1-0となり、日本は同じ問題を抱えたまま追う。実際には日本が先行し、第2セット13-13以降は北窓のサーブを起点に主導権を作った。得点板が戦術を決めるわけではないが、リスクの取り方、交代の時期、選手が確信を持てる選択には影響する。

したがって、33-31が試合を「決めた」とは言えない。しかし、韓国が試合の形を変え得る最も近い入口だったことは、公式の得点経過から読み取れる。第2、第3セットの差だけを見て、第1セットの危うさを消すのも正確ではない。

東京の14対12と、天津の33対31

日韓戦で終盤の2点差が持つ記憶は新しい。東京2020オリンピックで両国が対戦したのは2021年7月31日、有明アリーナだった。日本はフルセットの第5セットで14-12とマッチポイントを握ったが、韓国が4点を連取して16-14。韓国が3-2で勝ち、準々決勝進出を決めた。

現在の主将・石川は、その東京大会の韓国戦にも出場していた。ただし、5年前の敗戦が天津での勝利を心理的に生んだとする本人やチームの発言は確認できない。二つの試合を結ぶのは因果ではなく構図だ。東京では日本が2点先まで進みながら閉じられず、天津では韓国が先にセットポイントを握りながら日本が閉じた。

さらに2019年の女子アジア選手権準決勝は、ソウルで日本が韓国に3-1。日本は第1セットを22-25で落とした後、25-23、26-24、28-26と三つ続けて接戦を取った。若手主体の日本は決勝でタイを破り、2大会連続5度目のアジア王者となった。石川は大会MVPに選ばれた。2026年のチームが狙うのは、それ以来のアジア制覇である。

大会結果今回につながる点
1964年東京五輪日本3-0韓国。日本は同大会で金メダル。JVAの五輪記録に残る、女子代表日韓戦の長い歴史の初期。
1972年ミュンヘン五輪準決勝で日本3-0韓国。両国がアジアを代表して五輪上位を争った時代。
1976年モントリオール五輪準決勝で日本3-0韓国。日本は金メダル。五輪のメダル局面で再び対戦。
2019年アジア選手権準決勝で日本3-1韓国。日本は5度目の優勝。石川が大会MVP。日本の直近のアジア制覇。
東京2020五輪
(2021年実施)
韓国3-2日本。第5セット16-14。日本は14-12から逆転を許した。
2026年アジア選手権日本3-0韓国。第1セット33-31。韓国のセットポイントをしのぎ、準々決勝進出。

日韓戦を越える、天津大会の重み

大会は8月21~30日、天津オリンピックセンター体育館で12チームが争う。日本、韓国、ベトナム、ホンコンチャイナが予選C組に入り、日本は初戦でホンコンチャイナに3-0、続く韓国戦にも3-0で勝った。韓国戦終了時点で2勝、6セットを取り、失セットはなかった。

2026年大会はアジア王者を決めるだけではない。優勝チームにはロサンゼルス2028オリンピックの出場枠が与えられる。上位3チームは2027年FIVB女子ワールドカップへの出場権を得る。FIVBは今大会を、ロサンゼルスへの最初の直接ルートと位置づけている。

ここにも重要な限定がある。天津で優勝できなければ、五輪への道が直ちに閉じるわけではない。FIVBの正式な予選制度では、開催国米国に加え、五大陸選手権の各1枠、2027年世界大会の未出場国上位3枠、2028年VNL予選終了時の世界ランキングによる未出場国上位3枠で、男女各12チームを構成する。天津の優勝は最も早い切符であり、唯一の将来経路ではない。

韓国戦後の日本
  • 確定:韓国に3-0で勝利し、準々決勝進出。
  • 継続中:大会優勝によるロサンゼルス2028の直接出場枠獲得。
  • 次戦:8月25日午後7時30分(日本時間)のベトナム戦。この記事の公開時点では結果は出ていない。
  • 次の評価点:サーブレシーブ、サーブ、ブロックと守備の連動を、接戦になる前に修正できるか。

ベンチの一打を、仕組みにできるか

北窓のサーブは第2セットの均衡を動かした。しかし、毎試合一人の途中出場に転機を求めるだけでは、再現性のある強さにはならない。誰が入っても、どのローテーションで相手の受けを狙い、どの攻撃コースをブロックと後衛で消すかを共有できる必要がある。

日本の長所は、ボールが崩れても次の一本をつなぎ、速い攻撃へ戻すことにある。韓国戦ではその粘りが33-31を生き延びさせた。一方、島村の発言が示す通り、第一接触の乱れを「拾えたからよい」で終えれば、優勝候補との試合では攻撃の選択肢を失う。守備力は、劣勢を長引かせる能力ではなく、劣勢から自分たちの攻撃を作り直す能力として測るべきだ。

JVAの公式戦評は、ベトナムを試合前世界ランキング35位と記す。ランキングは時点で動き、試合を保証しない。FIVBの大会展望は、ベトナムが2023年アジア選手権4位、2026年AVC女子カップ3位で天津に入ったと紹介する。準々決勝進出が決まった後も、次戦を調整試合と扱える相手ではない。

得点板が消さなかったもの

33-31の価値は、韓国戦を一つ取ったことだけではない。相手が最初に示した勝ち筋――強いサーブで日本の受けを崩し、中央とブロックで主導権を奪う形――を、セットの途中で完全には消せなくても、失点の連鎖にしなかったことにある。

同時に、3-0という表記には消えてしまうものがある。第1セットで韓国が先にセットポイントへ到達したこと。第2セットも日本が2-5から追ったこと。第3セットで17-11から22-20まで迫られたこと。そして、勝った選手自身がサーブレシーブ、サーブ、ブロックとディフェンスの修正不足を語ったことだ。

アジア王者と五輪の直接出場枠を狙う大会では、33-31を劇的な一夜で終わらせてはいけない。セットを落とさなかった事実は貯金になる。なぜ落としかけたかを忘れないことは、次の勝利の設計図になる。

日本が耐えたのは「流れ」という曖昧な言葉だけではない。16ラリー分のサーブ、第一接触、トス、攻撃、ブロック、カバーだった。得点板は33-31で止まった。チームの修正は、そこで止められない。

主な一次資料・参考資料

帰属に関する注記: 2026年韓国戦の得点経過、選手コメント、試合開始前の世界ランキング、次戦時刻はJVA発表に基づく。試合結果と競技規則はVolleyball WorldおよびFIVBで照合した。2019年、2021年以前の日韓戦は各大会記録による。本稿の「第1セットが試合を変え得た」という評価、戦術上の意味、次戦への論点は、確認済み資料を基にしたJapan.co.jpの分析であり、選手・監督の発言ではない。