28日午後6時、博多港に近いマリンメッセ福岡A館の照明が落ちる。翌29日も同じ時刻に二度目の公演が始まる。開場はいずれも午後5時。韓国・ソウルで6月26日から28日まで3公演を行い、神戸で日本公演を始めたBABYMONSTERの世界ツアー「춤(CHOOM)」は、ここで九州へ届く。

これは終演後のレビューではない。本稿の基準時刻は7月28日午前10時29分(日本時間)で、最初の福岡公演はまだ始まっていない。したがって、日時、会場、料金、ツアー日程は公式発表に基づき、演目や舞台構成は6月のソウル公演で確認された内容を「予想される骨格」として扱う。福岡だけの変更やサプライズを、起きる前から断定はしない。

それでも、この二夜が重要である理由はすでに見えている。BABYMONSTERは2025年4月19、20日、福岡国際センターで初の日本ツアーを締めた。YG Entertainmentによると、その日本ツアーは10公演で延べ15万人を集めた。わずか15か月後、グループは最大1万5000人規模のマリンメッセへ戻り、9月には京セラドーム大阪2公演を控える。福岡は「地方公演」ではなく、ファンミーティングからアリーナ、ドームへ進む成長曲線の測定点になった。

7月28・29日マリンメッセ福岡A館。両日とも午後5時開場、6時開演
最大15,000人会場のシアター形式最大収容規模。実際の座席数は舞台構成で変わる
11公演・6都市神戸、福岡、横浜、千葉、名古屋、大阪を巡る2026年日本日程
150,000人YG発表による2025年初日本ツアー10公演の延べ動員
約750,000枚YGの自社集計による「CHOOM」発売約8日間の販売数
6人で活動Ramiは健康上の理由で休養中。復帰時期を本稿では推測しない

なぜ福岡なのか

福岡は東京と大阪に次ぐ「次の都市」ではない。古代から大陸と列島の人、物、言葉が出入りしてきた、アジアに開く港である。福岡市が設けた福岡アジア文化賞も、この街を古くからアジア交流の玄関口と位置づける。韓国の釜山は地理的にも近く、現代の航空、船、観光、食文化の往来は、国境を抽象的な線ではなく日常の移動にする。

マリンメッセ福岡は1995年、福岡ユニバーシアードのために開業した。現在のA館は、展示会、スポーツ、コンサートに対応する多目的空間で、公式コンベンション情報ではシアター形式の最大収容人数は1万5000人。実際のコンサートでは舞台、花道、機材、見切れの設定で販売席数が変わるため、二公演を単純に3万人動員とみなすことはできない。

それでも、2025年の福岡国際センターからマリンメッセへの移動は明確な拡大だ。前年のツアー終着地へ、次のツアーの中核公演として戻る。ファンにとっては再会であり、主催者にとっては九州と西日本にどれほど継続的な需要があるかを測る試験である。

福岡公演は東京の縮小版ではない。韓国に最も近い日本の大都市で、K-POPが「輸入文化」から日常のアジア文化へ変わったことを確かめる二夜である。

「춤」は、音楽より先に身体を置く

ツアータイトルの「춤(チュム/CHOOM)」は韓国語で「踊り」を意味する。YGは同名の第3ミニアルバムを5月4日に発売し、音楽とダンスが一つになる瞬間を主題として説明した。タイトル曲は跳ねるシンセと重い打楽器を軸にしたヒップホップ。冒頭の「MOON」は暗い音響設計を持ち、「I LIKE IT」はカントリー風ギターを使った明るいダンス曲、「LOCKED IN」は歌声を前へ出すR&Bへ向かう。

「CHOOM」が発売約8日で約75万枚を売ったという数字はYGの自社集計であり、第三者監査済みの市場全体データと同一ではない。ただし、前作「WE GO UP」の初週55万2837枚を短期間で上回ったという会社発表は、ツアー規模の拡大とアルバム購買が同じ速度で進んでいることを示す。

6月には「SUGAR HONEY ICE TEA」、7月には「I LIKE IT」の映像が公開され、ツアーは過去曲の回顧ではなく、新曲が次々と追加される進行形の作品になった。ソウル公演では「WE GO UP」から「CHOOM」「BATTER UP」「DRIP」へ走り、「MOON」「CLIK CLAK」「SHEESH」「PSYCHO」へ続いた。中盤には各メンバーのソロ、バラードのメドレー、終盤には夏の新曲とリミックスが置かれた。

福岡公演を見る前に――ソウル初演が示した構造
  • 最初の圧力:「WE GO UP」「CHOOM」「BATTER UP」「DRIP」で、グループの宣言と代表曲を連続させる。
  • 暗い中核:「MOON」「CLIK CLAK」「SHEESH」「PSYCHO」が、YGらしい低音、ラップ、劇的な転調を集中させる。
  • 個人の輪郭:メンバーが選曲、編曲、演出に関わったソロカバーで、集団の中の違いを見せる。
  • 声の休息:「Stuck in the Middle」「Love, Maybe」「DREAM」などのメドレーが、激しい振付の外に歌を置く。
  • 2026年の現在:「SUGAR HONEY ICE TEA」「I LIKE IT」など、新曲がツアーを固定された再生リストにしない。

注意:これはソウル初演の構成に基づく案内で、福岡の曲順や演出を保証するものではありません。

完成された六人、空いている一人分

BABYMONSTERは公式には七人組である。韓国出身のAhyeon、Rami、Rora、日本出身のRukaとAsa、タイ出身のPharitaとChiquita。しかし現在の活動は、Ruka、Pharita、Asa、Ahyeon、Rora、Chiquitaの六人で進む。Ramiは2025年5月、健康上の理由で活動を休止した。YGは同年6月にも「回復に十分な時間が必要」とし、健康を優先して支援すると説明した。

それ以後、六人は「HOT SAUCE」「WE GO UP」「CHOOM」を制作し、今回のツアーへ入った。ここには、プロの公演が突きつける難しい二重性がある。目の前の舞台は六人で完全な形をつくらなければならない。同時に、七人組の歴史からRamiの存在を消してもならない。

本稿は医療状況や復帰時期を推測しない。ファンの希望と本人の健康は、同じ速度で進むとは限らないからだ。重要なのは、休養を物語上の仕掛けや販売促進に変えず、六人の現在の仕事を正面から評価することだろう。

「生で歌える」を商品にする

BABYMONSTERのライブ評価は、ハンドマイクと生バンドの強調に支えられてきた。2024年、米Teen Vogueは「SHEESH」の音楽番組ステージで、通常のヘッドセットではなく手持ちマイクを使い、バンドを伴ったことに注目した。2025年の日本ツアーでもYGは、全曲をハンドマイクで披露する力量への口コミが集客を押し上げたと説明した。

K-POPの公演は、振付、映像、照明、クリック、補助音源、生演奏、観客の声が組み合わさる複合制作である。「完全な生」か「完全な口パク」かという二択では捉えられない。重要なのは、激しい動きの中でどこまで呼吸、音色、即興のアドリブ、観客との応答を残せるかだ。

ソウル初演についてYGは、巨大な質感を持つ舞台装置、多層的な空間、映像、ライブバンド、ダンサーを組み合わせたと報告した。こうした精密な機械の中で、六人の声が予定調和を破る瞬間こそ、観客が映像ではなく会場へ来る理由になる。

「BLACKPINKの次」では説明できない

YGがBLACKPINKの後に送り出すガールズグループである以上、比較は避けられない。重いヒップホップ、ラップと強い高音の対比、終盤の集団的な掛け声、ファッションと映像を統合した世界観には、2NE1からBLACKPINKへ続くYGの文法がある。

しかし、BABYMONSTERを「後継」とだけ呼ぶと、最も面白い部分を見落とす。七人は2023年の選抜番組「Last Evaluation」を通じて公開され、長いメンバーでは約6年の練習生期間を送った。固定リーダーを置かず、韓国、日本、タイの出身者が言語の違いを越えて役割を分ける。日本人のRukaとAsaは、YG初の日本人女性デビューメンバーとなった。

2023年11月の「BATTER UP」はAhyeon不在の六人で発表され、2024年4月1日の「BABYMONS7ER」で七人がそろった。「SHEESH」、初フルアルバム「DRIP」、世界ツアーへ進み、その後はRamiの休養で再び六人になった。グループの短い歴史は、完成されたブランドの直線的な上昇ではない。欠員を抱えながら形を変え、そのたびに舞台で説得力をつくる歴史でもある。

日本は「海外市場」ではなく、成長の現場

BABYMONSTERの日本での速度は異例だった。2024年5月、正式な七人体制のデビューから約6週間で東京・有明アリーナのファンミーティングを開催し、同年のSummer Sonicにも出演した。11月には「DRIP」を携えてテレビ朝日「ミュージックステーション」、NHK「Venue101」などへ進んだ。2025年の初日本ツアーは、当初の10万枚が完売し、見切れ席と追加公演を開放。最終的に10公演で15万人を動員したとYGは発表した。

この成長は、日本語版を作ってから日本へ持ち込む旧来の順序とは少し違う。RukaとAsaは日本語で観客と直接つながり、ほかのメンバーは韓国語、英語、タイ語を含む多言語環境で育つ。楽曲自体も、世界向けの動画とストリーミングを通じて日本に届き、その後テレビ、ファンミーティング、アリーナが関係を深める。

つまり日本は、完成した海外製品を販売する終点ではない。作品、パフォーマンス、ファンダムの形が変わる現場である。福岡公演も、日本向けの販促日程ではなく、五大陸へ広がる世界ツアーをつくる途中の実演になる。

BoAから始まった「日本化」の先へ

日本で韓国音楽が広がる道は、最初から「K-POP」と呼ばれていたわけではない。1970〜80年代には、韓国人歌手が演歌やトロットを通じて知られた。1990年代には韓国のロックやダンス音楽が徐々に紹介され、2001年のBoA、2005年の東方神起が転換点になった。両者は日本語を学び、日本の制作・流通・テレビの仕組みに深く入り、J-POPの一員として受け入れられるほど徹底した現地化を行った。

2010年前後にはKARA、少女時代などの女性グループが「韓国発」であることを消さずに大衆化した。YouTubeとSNSは、現地デビューの前にファンをつくれるようにした。そして2020年代、K-POPは日本の国際公演の一部ではなく、中心へ移る。Nippon.comがACPCのデータをもとにまとめたところでは、2024年に韓国勢の公演数が北米勢を上回り、2025年のK-POPライブ市場は約883億円、全体の13.7%に達した。

BABYMONSTERは、この三つの時代を重ねる。日本人メンバーと日本のファンクラブ、抽選販売、テレビ出演という現地化の仕組みを使う。同時に、曲を日本語へ置き換えなくても動画で先に世界へ届ける。そして「韓国のグループに日本人が加わる」のではなく、日本人とタイ人を含む構成そのものをK-POPの標準的な国際性として提示する。

時期日本とK-POPの関係BABYMONSTERへ続くもの
1970〜80年代韓国人歌手は主に演歌・トロットの文脈で知られた日本の既存ジャンルへ入ることが市場参入の条件
2001〜05年BoA、東方神起が日本語と日本制作による徹底した現地化長期的な日本活動、ファンクラブ、ツアーの基盤
2010年代KARA、少女時代などがK-POPという出自を前面に大衆化振付、映像、メンバー性を含むパッケージ
2020年代動画とSNSで日本デビュー前にファン形成。アリーナ公演が急拡大多国籍メンバー、同時世界配信、短い助走で大規模ツアー
2026年韓国勢が日本の国際ライブ市場の中心へ福岡二夜から京セラドームへ進む「CHOOM」日本公演

9,400円から28,000円――ファンダムの階段

福岡公演の料金は一つではない。公式ページでは、後方の立見が9400円、数量限定のWELCOME SEATが9900円、一般指定S席が1万3000円、SS席が1万5000円、着席指定席が1万7000円。さらにファンクラブ条件を満たすアップグレードとして、YG FAMILY SEATが2万3000円、前方保証などを付けるBABYMON SEATが2万8000円に設定された。

席種税込価格163.74円/ドルでの目安
立見・福岡9,400円約57.41ドル
WELCOME SEAT9,900円約60.46ドル
一般指定S席13,000円約79.39ドル
一般指定SS席15,000円約91.61ドル
着席指定席17,000円約103.82ドル
YG FAMILY SEAT23,000円約140.47ドル
BABYMON SEAT28,000円約171.00ドル

WELCOME SEATは初めてライブを体験したい人に向けた後方席で、BABYMON SEATは前方エリア、トレーディングカード、オリジナルグッズを束ねる。価格差は視界だけでなく、所属感と限定物を販売している。入口を約1万円に残しながら、強いファンには三倍近い単価を提示する設計だ。

1米ドル=163.74円の円安では、最上位席でも単純換算約171ドルとなり、海外客には相対的に魅力がある。一方、円で収入を得る若い国内ファンにとって、交通、宿泊、グッズを加えた負担は大きい。K-POPの成長が持続可能かどうかは、熱心なファンからいくら得られるかだけでなく、新しいファンが最初の一歩を踏み出せるかで決まる。

九州の二夜から、初の日本ドームへ

日本公演は福岡の後、8月1、2日のぴあアリーナMM、11、12日のLaLa arena TOKYO-BAY、16日のIGアリーナへ進む。そして9月22、23日、京セラドーム大阪でBABYMONSTER初の日本単独ドーム公演を迎える。神戸から始まる11公演・6都市の流れは、首都圏だけで需要を回収せず、西日本、中部、湾岸都市を順に結ぶ。

世界ツアーはその先も、マニラ、マカオ、ジャカルタ、バンコク、クアラルンプール、台北、シンガポール、オークランド、メルボルン、シドニー、香港へ続き、欧州、北米、南米の追加都市が予告されている。福岡は五大陸計画の小さな点ではない。日本という巨大市場で、次の規模へ進めるかを判断する実務的な中心である。

公演が本当に試すもの

福岡で注目したい五つの点
  • 六人の声:精密な舞台の中で、ハンドマイクの呼吸、アドリブ、観客との応答がどこまで残るか。
  • 新旧曲の接続:「BATTER UP」「SHEESH」「DRIP」と「CHOOM」「I LIKE IT」を、一つの成長物語として見せられるか。
  • アリーナの使い方:マリンメッセの奥行きと高さを、映像の大きさだけでなく、六人の距離感へ変換できるか。
  • 九州のファン基盤:2025年のツアー最終地で生まれた熱を、より大きな二公演へ持続できるか。
  • ドームへの予告:9月の京セラドームで必要になるスケールと集中力を、福岡でどこまで見せるか。

成功の基準は、声援の大きさや映像の再生数だけではない。若いグループが大きな会場へ進むと、個人の表情はスクリーンへ移り、観客との会話は台本化され、空間は効率よく埋められる。そのとき、練習室で六年かけて育てた一人ひとりの癖が失われないか。巨大化しても「この六人でなければならない」と感じさせられるか。それがアリーナからドームへ進む本当の試験である。

海辺の会場で、国境が薄くなる

2001年、BoAが日本語を学び、日本の歌手としてチャートへ入ったとき、韓国と日本の音楽産業を結ぶには、境界を一つずつ越える必要があった。2026年、BABYMONSTERは韓国語の「춤」をツアー名に掲げ、日本人とタイ人を含む六人で福岡のアリーナに立つ。観客は意味を完全に翻訳してから踊るのではない。音、振付、メンバーの物語を同時に受け取り、自分の言語で応える。

だから、28、29日の二夜は単なる人気確認ではない。K-POPが日本で成功したという古いニュースの、次の章である。日本市場はもはや外から見られる巨大な財布ではなく、アーティストの構成、ツアーの地理、ファンダムの言葉、舞台の技術そのものを変える共同制作の場所になった。

BABYMONSTERが福岡へ持ち込む最大の舞台装置は、巨大なスクリーンではない。韓国、日本、タイから集まった若者が、同じ踊りを通じて一つの観客をつくれるという事実である。

午後6時、照明が消えれば分析は音へ戻る。「WE GO UP」の宣言が鳴るのか、福岡だけの曲が置かれるのか、六人の声が会場のどこまで届くのかは、その瞬間から観客が判断する。昨年の終着地だった福岡は、今年、通過点ではなく出発点になる。京セラドームと五大陸の先へ向かうBABYMONSTERが、規模を物語へ変えられるか。その答えは、海辺の二夜から始まる。

情報源・参考文献

公演日時、会場、座席価格、日本ツアー日程は公式日本ツアーページを主要資料とした。福岡公演は本稿の基準時刻後に始まるため、未実施の演出や結果を断定していない。販売数と過去動員はYG Entertainmentの発表値として明示し、会場規模、市場史、K-POP日本史は各資料を照合した。