開催案内:9月12日(土)、13日(日)の午前10時〜午後4時30分、東京国際フォーラムのホールEとロビーギャラリーで開催。入場と相談は無料だが、当日または事前の来場登録が必要。富山県内の自治体は出展日が分かれるため、希望地域の日程確認が必要となる。

一枚の地図では小さな富山県が、東京の会場では12通りの入口を開く。富山市、高岡市、氷見市、滑川市、黒部市、砺波市、小矢部市、南砺市、射水市、上市町、入善町、朝日町。県の総合ブースを加えた相談体制で、移住希望者の問いを「富山県への関心」から具体的な市町の暮らしへつなぐ。

12日は富山市、高岡市、氷見市、滑川市、黒部市、砺波市、射水市が出展。13日は富山市、黒部市、小矢部市、南砺市、上市町、入善町、朝日町が相談に応じる。県ブースは両日開く。高岡、氷見、砺波、小矢部、南砺、射水の県西部6市は「とやまWEST」の共同名義を添え、自治体の境界を越えた生活圏としても売り込む。

出展日市町相談の組み立て
両日富山県、富山市、黒部市県全体の入口と、都市・東部地域の個別相談
12日のみ高岡市、氷見市、滑川市、砺波市、射水市県西部の共同発信と各市の暮らし
13日のみ小矢部市、南砺市、上市町、入善町、朝日町平野部、山間地、県東部の地域別相談

富山県には15市町村がある。今回の県発表に魚津市、立山町、舟橋村の名はなく、出展は12市町である。ただし、不出展の理由は公表されておらず、移住施策への消極姿勢を意味すると解釈する根拠はない。6月の「富山くらし・しごとフェア2026」には14市町が参加しており、イベントごとに編成は変わる。

700超の選択肢の中で何を伝えるか

主催は公益社団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構。「全国移住相談ブース」には北海道から沖縄まで2日間で700を超える自治体・団体が集まり、仕事や暮らしの相談コーナー、ふるさとマルシェ、ワークショップも設けられる。出展者にとっては集客の場であると同時に、全国の地域が同じ相談者をめぐって比較される場でもある。

富山の強みは、県都から県内各地へおおむね1時間圏というコンパクトさ、海と立山連峰の近さ、ものづくり産業、持ち家を含む住環境、北陸新幹線による首都圏との接続にある。一方、移住の判断には宣伝写真に写りにくい条件もある。就職先と賃金、冬の雪と光熱費、車の必要性、空き家の改修費、医療や学校への距離、地域活動との関わりを、候補地ごとに確認しなければならない。

同じ県内でも答えは違う。富山市の公共交通を軸にした都市生活、高岡・射水の産業と文化、氷見・朝日の海、黒部・入善の水と製造業、砺波平野の散居村、南砺や上市の山に近い暮らしは交換可能な商品ではない。県が入口を広く取り、市町が生活単位まで掘り下げる連携には、その違いを隠さず比較できる利点がある。

700超全国から集まる自治体・団体
12市町今回出展する富山県内自治体
927人2025年度の相談窓口等経由の移住者
977,238人2026年8月1日の県推計人口

「927人」の成果と限界

富山県が把握した2025年度の県外からの移住者は927人、537世帯だった。2024年度の902人から25人増えたが、2023年度の966人には届かない。世帯主の20〜40代は378世帯で全体の70.4%。移住前の居住地は首都圏が43.5%と最も多く、大阪圏10.1%、名古屋圏9.0%が続く。

市町別では富山市200人、高岡市137人、南砺市123人、射水市110人が100人を超えた。一方、人口規模が小さい自治体では十数人、数十人でも学校、商店、地域活動や事業承継に与える意味が大きい。人数の多寡だけでは政策効果を測れない。

さらに、この927人は住民基本台帳上の全転入者ではない。県・市町村の移住相談窓口などを通じて確実に把握できた人の合計で、窓口を使わない転入者は十分に捉えられない。逆に、フェアで名刺を交換した人数が移住者数になるわけでもない。相談、現地訪問、就職・住宅の決定、転居、そして定着という段階を追う必要がある。

移住フェアの成功は、その日の来場者数だけでは測れない。半年後に候補地を訪れたか、仕事と住まいが結び付いたか、数年後も地域に暮らしているかまで追って初めて、相談が政策になる。

人口減少を一つのフェアでは止められない

富山県の2026年8月1日現在の推計人口は97万7,238人で、前月より502人減った。2025年10月1日までの1年間では人口が9,731人減少した。内訳は出生数と死亡数の差である自然減が9,615人、転入と転出の差である社会減が116人だった。

この数字は移住政策の役割を小さく見せる一方、焦点を明確にする。年間900人余りの相談経由移住だけで、約1万人の自然減を埋めることはできない。しかし社会減が116人まで縮まった状況では、数百人規模の移動や若い世帯の定着が、地域の労働力と年齢構成に無視できない差をつくる。

県人口の33.6%は2025年10月時点で65歳以上だった。進学・就職期の若者の県外流出も地域政策上の課題である。したがって「新住民を呼ぶ」政策と、「いったん県外へ出た人が戻れる仕事をつくる」Uターン政策、出生・子育て支援、外国人住民との共生、人口が減っても維持できる交通・医療の設計は、別々ではなく一体で考える必要がある。

2007年から続く「くらしたい国」づくり

富山県が知事を本部長とする「くらしたい国、富山」推進本部を設け、本格的な定住・半定住政策に乗り出したのは2007年。団塊世代の大量退職やスローライフ志向が背景にあり、仕事、住居、福祉、教育、観光、地域活動を横断して支える考え方を掲げた。

2015年度には「富山くらし・しごと支援センター」を富山と東京に設置し、暮らしと就職を一つの窓口で扱う体制を整えた。同じ2015年3月、北陸新幹線が金沢まで開業し、東京―富山間は最短2時間余りとなった。県の集計では、相談窓口の設置後10年間で把握された移住者数は2.7倍に増えた。

政策の対象も、完全移住だけから広がっている。二地域居住、テレワーク、地域おこし協力隊、短期の暮らし体験、関係人口といった段階を通じ、まず地域との接点を持ってもらう。2026年6月の県独自フェアでは、自治体や企業の相談に加え、錫のアクセサリー制作や「寿司といえば、富山」の発信まで組み込み、移住をまだ決めていない層にも入口を開いた。

2007年 — 「くらしたい国、富山」推進本部を設置。

2015年 — 富山くらし・しごと支援センターを設置。北陸新幹線が金沢まで開業。

2023年度 — 相談窓口等経由の移住者が過去最多の966人。

2025年度 — 移住者927人。20〜40代の世帯主が70.4%。

2026年6月 — 県独自の「富山くらし・しごとフェア」を東京で開催。

9月12〜13日 — 県と12市町が「ふるさと回帰フェア2026」に出展。

相談者が持ち帰るべきもの

移住相談で最初に聞くべきは補助金の額だけではない。希望する仕事の求人は通年か、通勤手段は何か、冬の除雪は誰が担うか、候補住宅の断熱と耐震、洪水・土砂災害リスク、子どもの転校や医療、自治会費と共同作業、インターネット環境まで、日常の費用と時間を具体化する必要がある。

自治体側にも、良い面だけを競うのではなく、合わない条件を早く伝える責任がある。移住後のミスマッチは本人だけでなく、受け入れ地域にも負担となる。可能なら冬を含む複数回の現地訪問、賃貸による試住、就業先との面談、先輩移住者だけでなく長く暮らす住民との対話を重ねるべきだ。

富山県と12市町が一緒に東京へ出る意味は、県内の自治体を同じ色に塗ることではない。相談者が12の違いを一度に比べ、自分の生活設計に合う場所を絞れることにある。人口減少という大きな数字に対し、フェアができる仕事は小さい。しかし、一人の関心を一つの具体的な地域関係へ変える入口としては、対面相談にしかできない役割が残っている。

取材・主要資料

編集注:フェア名、組織名、市町名と読み、統計用語、移住者数の定義は富山県・各市の日本語一次資料で照合した。出展、相談、移住、定着を別の段階として記述し、未公表の参加理由や将来効果は推測していない。