三隻が示す、三つの「公共」

一方の岸壁では、双胴船が回収コンテナを水面に下ろし、潮目に集まるペットボトルや流木、水草を船内へ取り込む。別の岸壁には、瀬戸内海の警備、救難、航行安全を担う白い巡視艇。そして近くの浮桟橋では、書棚と絵本を載せた19総トンの元旅客船が、こどもたちを乗せて約20分の港内航海へ出る。

7月20日月曜日、海の日の高松港で見られるのは、そんな一つの風景である。国土交通省四国地方整備局の関係事務所が「高松港みなとフェスタ2026」を午前10時から午後2時30分まで開催する。香川県は「せとうち島フェスタ2026」を午前10時から午後3時まで同時開催する。さらに、こども図書館船実行委員会は高松港旅客船ターミナル第2浮桟橋から「ほんのもり号」を10便運航する。

三つの企画は隣り合っているが、同じ受付で動く一つのイベントではない。「美讃」と「くりなみ」の一般公開は無料で、事前申込不要。「ほんのもり号」のクルーズも無料だが、7月6日までの申込と抽選が必要で、結果通知日は7月13日だった。本紙の情報確認日である7月18日時点で募集は終了している。抽選に外れた、または申し込んでいない家族も、みなとフェスタと島フェスタには参加でき、島フェスタのアンケート回答者には数量限定で「ほんのもり号」のノベルティーが用意される。

10:00〜14:30高松港みなとフェスタ
10:00〜15:00せとうち島フェスタ
全10便ほんのもり号、各便の航海は約20分
14ブース島の文化、ものづくり、読書体験

まず、「図書館船を進水」の意味を正す

英語版の見出しにある “launches” は、10回の港内クルーズを「走らせる」という意味であり、新造船の進水や就航を意味しない。「ほんのもり号」は、瀬戸内海で約20年間働いた旅客船をこども図書館へ改装し、2025年4月に運航を始めた船である。2025年7月の第1回せとうち島フェスタにも来航し、事業報告によると船内見学者は160人を超え、フェスタ全体には約3,000人が訪れた。

ここを取り違えないことは大切だ。この事業は、船の形を模した水上建築を新造したのではない。島々の間で日々人を運んだ元旅客船に、新しい公共的役割を与えた。2026年の特徴は、停泊中の見学だけでなく、10回のショートクルーズによって港そのものを読書空間の一部にする点にある。

プログラム会場・時間参加方法
高松港みなとフェスタ
「美讃」「くりなみ」一般公開、液状化模型・水槽実験
サンポート高松の港湾部
10:00〜14:30
無料。2隻の一般公開は事前申込不要。天候等で内容変更の可能性あり。
せとうち島フェスタ
自治体・ワークショップなど14ブース
サンポート高松展示場・デックスガレリア(高松市サンポート2-1)
10:00〜15:00
無料。会場内の多くは当日参加型。実際に島へ渡るツアーではない。
「ほんのもり号」クルーズ高松港旅客船ターミナル第2浮桟橋
10便、10:00〜15:00
無料だが事前抽選制。7月6日に受付終了。指定時刻の10分前集合。

「美讃」――海の「道路」を清掃する船

「美讃」の仕事を理解する鍵は、環境保全と航行安全が別々ではないことだ。海を漂う冷蔵庫や大きな流木、豪雨後の植物ごみは汚染物であると同時に、船が衝突する危険物でもある。事故で流出した油は、生態系、漁場、港湾、航路を同時に脅かす。「美讃」の担務海域は備讃瀬戸全域に加え、備後灘、燧灘、播磨灘の一部まで、約2,500平方キロメートルに及ぶ。

「美讃」は196総トン、全長33.5メートル、幅11.6メートル、最大速力約14ノットの双胴船である。浮遊ごみに向かって進むと、左右の船体の間に水面のごみを導き、中央部のコンテナ式回収装置へ取り込む。大きな流木は船体左右の多関節クレーンで持ち上げる。船尾の油回収装置は油水を分離し、軽油のような低粘度油から重油のような高粘度油まで対応する設計だ。水質調査設備も備え、目に見えるごみだけでなく海域環境を継続して確認する。

船は2011年12月22日に完成し、2012年1月から坂出港を母港に就航した。1982年建造で約30年間働いた清掃船「わしゅう」の後継である。船名は一般公募407件から選ばれた。海面ごみ・油の回収による「美」と、備「讃」瀬戸の環境を守る期待を組み合わせた「美讃」。地名であると同時に、任務を示す名前になった。

平常業務は、一夜で災害対応へ変わる。2018年7月豪雨の後、瀬戸内海には大量の流木やごみが流出した。高松港湾・空港整備事務所の資料によると、「美讃」は豪雨後1か月間で880立方メートルを回収した。同資料の換算では10トンダンプ約147台分に相当する。四国地方整備局の環境整備船3隻全体では3,197立方メートルに達した。7月20日に公開されるのは、展示専用船ではなく、すでに大規模な地域災害で実働した船である。

内海にとって水面清掃は「道路維持」だ。ただし、その道路は風と潮で動き、作業船は危険物がほかの船に出会う前に見つけなければならない。

「くりなみ」――高松で31年を越える巡視艇

海上保安庁は「くりなみ」を35メートル型巡視艇、船番号PC15としている。第六管区海上保安本部の船艇資料では、全長35.0メートル、110総トン。高松海上保安部の沿革には、1995年1月23日に同保安部で就役したと記録される。2026年の海の日は、同じ船名の巡視艇が高松配属32年目を迎えた時期に当たる。

巡視艇の任務は「海の警察」という一語では収まらない。海上法令の執行、船舶交通の安全、海難救助、行方不明者の捜索、航行不能船への対応、海洋汚染の監視・防除、災害対応を担う。狭い航路と島が連続する瀬戸内海では、これらが重なりやすい。座礁事故は救助であり、航路障害であり、油流出のおそれがある環境案件であり、事故原因を調べる法執行案件にもなる。

公式の一般公開案内は大枠を示しているが、すべての区画や装備を必ず見学できるとは書いていない。現役の実働艇である以上、当日の任務、気象、保安上の判断が優先される。見学者が乗るのは舞台セットではない。35メートルの船体に、どれだけ多くの機能と判断の場が収められているかを見る機会である。

船種・規模主な公共的役割7月20日の参加方法
美讃海面清掃兼油回収船・双胴船
196総トン、33.5 m × 11.6 m
浮遊ごみ回収、油防除、水質調査、航行安全無料一般公開、事前申込不要
くりなみ35メートル型巡視艇PC15
110総トン、全長35.0 m、1995年に高松で就役
法執行、捜索救難、交通安全、海洋汚染・災害対応無料一般公開、事前申込不要
ほんのもり号元旅客船を改装
19総トン、約20 m × 約4 m、船室定員12人
本と読書、海・島との出会いを香川のこどもへ届ける事前抽選制、約20分の無料クルーズを10便

「ほんのもり号」――対話から設計された図書館

出発点は、建築家・安藤忠雄氏が2023年5月に示した構想だった。同年11月に島しょ部の住民へヒアリングを行い、2024年1月ごろには一般アンケートで約100件の回答を得た。安藤氏から香川県への寄付の申し出を経て、2024年4月に実行委員会が発足。島の住民を含むワーキンググループは同年12月までに5回協議した。11月に船を取得して改修を始め、2025年3月に完成、県へ寄贈され、4月に運航を開始した。

改修には安藤忠雄建築研究所が関わった。しかし、これは著名建築家の意匠を港に置くだけの事業ではない。ヒアリング、アンケート、島民参加の会議、寄付、寄贈本が、船の使い方を形づくった。ロゴも3案から一般投票で選ばれ、本、穏やかな瀬戸内の風景、物語が広げる波紋を重ねたデザインになっている。

船は19総トン、全長約20メートル、幅約4メートル、船室定員12人。約2,000冊の本を載せ、船尾デッキと2階の展望デッキを備える。通常の寄港時はこども優先、利用無料で、乗船者はライフジャケットを着用し、デッキでは大人やスタッフの見守りが必要となる。1人5冊まで船外へ持ち出せ、返却ボックスへ返す仕組みもある。船が港を離れた後も、本は島やまちに残り続ける。

蔵書は五つのテーマで選ばれている。「瀬戸内と暮らす」「瀬戸内から世界へ」「瀬戸内の過去と未来」「勇気」「遊び」。蔵書数の小ささを、視野の小ささにしない分類だ。船の本を読みながら窓の外にフェリーを見る。島の暮らしの物語を、こどもがバッグに入れて桟橋を降りる。移動図書館でありながら、目の前の海に深く根を張った選書である。

一般公開ではなく、10回の小さな航海

7月20日の運航は、30分刻みの10枠に分かれる。午前10時、10時30分、11時、11時30分、正午、午後0時30分、1時、1時30分、2時、2時30分。枠は30分だが、実際のクルーズは約20分。参加者は割り当てられた出航時刻の10分前に、高松港旅客船ターミナル第2浮桟橋へ集合する。桟橋の利用状況などにより時間が前後する可能性がある。

対象は高校生以下のこどもと保護者で、1申込につき保護者は1人。各便の定員はおおむね12人と案内された。公式ページには、12歳未満を定員計算上0.5人として数えるとの注記がある。これは旅客定員を扱う技術的な計算規則であり、プログラムにおけるこどもの価値を示す表現ではない。

「ほんのもり号」の集合場所は、島フェスタのメイン会場と別である。14ブースはサンポート高松展示場とデックスガレリア、クルーズ当選者は第2浮桟橋。広報を急いで読むと見落としやすい。移動時間を取り、島フェスタの受付をクルーズの当日券売り場と誤解しないことが必要だ。

便指定枠集合時刻
1便 / 2便10:00〜10:30 / 10:30〜11:009:50 / 10:20
3便 / 4便11:00〜11:30 / 11:30〜12:0010:50 / 11:20
5便 / 6便12:00〜12:30 / 12:30〜13:0011:50 / 12:20
7便 / 8便13:00〜13:30 / 13:30〜14:0012:50 / 13:20
9便 / 10便14:00〜14:30 / 14:30〜15:0013:50 / 14:20

島が、まちへやって来る

せとうち島フェスタは、「何ではないか」を明確にしている。実際に島へ渡る企画ではなく、島の自治体、文化、ものづくり、物語を高松の陸上会場へ運ぶ催しだ。香川県の公式資料には、高松市、丸亀市、坂出市、観音寺市、三豊市、土庄町、小豆島町、直島町、多度津町の9市町、計14ブースが記載される。

内容は島ごとに具体的だ。直島はイラストを使った缶バッジ。丸亀市の広島は、島の石を題材にした宝探しや庵治石のコーヒーミル。伊吹島は、いりこの島らしいキーホルダー。小豆島は竹細工。大島は地図づくり。ほかにも島の砂を使うアート、藍染めのブックカバー、帯を使ったコラージュ、図書館バッグなどが並ぶ。

こうした企画があるから、「ほんのもり号」は単独の珍しい船で終わらない。船は島へ本を運び、フェスタは島の知識を都市へ運ぶ。動きは双方向である。参加市町は装飾的な「テーマ」ではなく、港と船がいまも日常のインフラである地域社会だ。

城下の港からサンポートへ

高松と海の関係は近代港以前にさかのぼる。香川県の港湾資料は、1588年、生駒親正が日本三大水城の一つとされる高松城を築き、同時に内町港を築造したことを港の始まりとしている。近代的な整備は1897年から本格化。第1期・第2期の築港事業で内港・外港を整え、1922年から1928年までの国直轄の大改修で港域を拡張し、岸壁を増設、現在の高松港の基礎ができた。

1910年に宇野―高松間の国鉄宇高航路が開かれ、高松港は本州と四国を結ぶ蝶番になった。列車の乗客と貨物が水際へ集まり、連絡船へ移る。1988年、瀬戸大橋の開通とともに鉄道連絡船が終航し、乗り換えの地理は大きく変わった。その後の答えがサンポート高松である。旧JR高松駅貨物ヤードの跡地と一部埋立地を活用し、港湾整備と都市再開発を組み合わせた。旅客港地区は2001年に開港し、その周囲に都市機能が整えられた。

橋によって連絡船への依存が減ったことを背景に生まれたサンポートで、いまも船によって高松が自らを説明する。この一見した逆説が面白い。女木島、男木島、小豆島などへの航路は現在も港から延びる。海の日の清掃船、巡視艇、図書館船は、港が昔の風景だけでなく、現在の公共空間であることを可視化する。

みなとフェスタが続ける公開授業

登場する船は変わっても、学びの方法には連続性がある。2024年の高松港みなとフェスタは「美讃」と「くりなみ」を公開し、液状化実験と赤灯台「せとしるべ」の見学を組み合わせた。2025年は「美讃」と、より大きな巡視船「いぶき」が並び、港内見学会や技術関係の催しも行われた。2026年は「くりなみ」が戻り、液状化模型・水槽実験も継続する。

土の実験は船と無関係に見えるかもしれない。しかし、港は地震に耐える地盤があって初めて機能する。現代の水際には埋立地や人工的に造成した地盤が多く、液状化は岸壁、道路、電気・水道、救援船と市街地を結ぶ動線を損なう。実験は、海の防災が足元の地盤から始まることを教える。

7月20日の実用ガイド

  1. 三つの終了時刻を分けて考える。 みなとフェスタは午後2時30分まで。島フェスタと最後の図書館船運航枠は午後3時まで。
  2. 当選通知なしで図書館船の列に並ばない。 申込は7月6日に終了した。「美讃」「くりなみ」の一般公開は、予約なしで参加できる選択肢となる。
  3. 会場を確認する。 島のブースは展示場・デックスガレリア。図書館船クルーズ当選者は第2浮桟橋に集合する。
  4. 現役船として見学する。 任務や安全のため公開範囲が変わる可能性がある。係員の指示に従い、岸壁ではこどもから目を離さない。移動上の配慮が必要な場合は事前に主催者へ相談する。
  5. 真夏の水際に備える。 飲料、帽子、日よけ、休憩時間を確保する。屋内会場があっても、桟橋は日差しを遮る場所が少ない。
  6. 気象情報を再確認する。 みなとフェスタの中止は、前日7月19日午後1時までに高松港湾・空港整備事務所のXで発表予定。「ほんのもり号」の公式サイトも同じ時刻を天候判断の告知期限としている。

みなとフェスタの代表的な問い合わせ先として、公式案内には高松港湾・空港整備事務所の電話087-851-5524が記載されている。当日の運航・公開に関する確認は、一般観光窓口ではなく各公式主催者へ行うのが確実だ。

三つの甲板から、こどもが学べること

「美讃」から「くりなみ」、そして図書館船へ進む順番には、一つの物語がある。最初の船は、働く海が受け止めなければならないごみと油を見せる。次の船は、交通、気象、人間の判断に問題が起きたとき、対応する人と装備を見せる。最後の船は、海と島の社会が、次の世代へどんな知識を渡すかを問いかける。

外洋船と比べれば、三隻はいずれも大きくない。しかし、並べて見ると一つの都市像ができる。きれいな水は公共インフラ。安全も公共インフラ。読書も公共インフラ。高松の海の日は、その三つを同じ水平線に置き、誰が動かしているのかをこどもが舷門を渡って確かめられる日にする。

主要資料・公式イベントリンク

編集部注:イベント情報は2026年7月18日(日本時間)に確認しました。本稿は開催前ガイドであり、予定された一般公開、運航、体験がすでに実施されたと報じるものではありません。「ほんのもり号」の抽選受付は終了しています。天候、海況、船の任務により、内容変更または中止の可能性があります。出発前にリンク先の公式情報を確認してください。ヒーロー画像は編集イラストで、写真ではありません。