1兆5829億円――三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が2026年3月期に計上した親会社株主帰属利益である。前年の1兆1780億円から34.4%増え、3年連続で過去最高を更新した。日本の銀行が不良債権とゼロ金利の象徴だった時代から見ると、これは単なる好決算ではなく、金融制度の反転を示す数字だ。

しかし、東京の金利だけで世界銀行にはなれない。SMFGが次に求めるのは、融資先を紹介する銀行から、企業買収、株式発行、債券、取引、助言を一体で提供する金融機関への転換である。その不足を埋める中心が米投資銀行Jefferiesとの提携だ。

1兆5829億円2026年3月期の親会社株主帰属利益
34.4%増前年の1兆1780億円からの伸び
2兆3034億円同年度の経常利益
1兆7000億円2027年3月期の利益予想
最大20%Jefferiesへの経済持分の目標
25億ドルJefferiesへ提供する新規信用枠

金利が戻ると、預金が再び稼ぎ始める

銀行は預金を集め、融資や債券へ振り向け、その利回り差を収益にする。日本では1999年のゼロ金利、2016年のマイナス金利によって、その基本価格が長く押しつぶされた。普通預金金利を大幅なマイナスにできない一方、貸出金利は下がり続けた。

日本銀行は2024年3月にマイナス金利を終了し、その後段階的に利上げした。企業向け融資は比較的早く金利が改定され、預金コストは遅れて上がる。その時間差が利ざやを広げる。SMFGの国内法人融資、住宅、決済、預金という巨大な基盤に、小さな金利差が掛け算された。

銀行にとって金利は空気ではない。長く無料に近かった商品へ、再び価格が付いたのである。

ただし最高益は金利だけではない。企業の設備投資、海外進出、M&A、資本調達が活発化し、手数料収益も伸びた。政策保有株の売却、海外事業、カードや資産運用も寄与する。経常収益は10兆7908億円、経常利益は2兆3034億円へ増えた。

400年の商人金融と、2001年の危機合併

SMBC Groupは「400年の歴史」を掲げる。Mitsuiは江戸時代の商業・為替業務、Sumitomoは銅を中心とする事業へ起源を持つ。近代銀行としてMitsui Bankは1876年、Sumitomo Bankは1895年に設立された。

現在の銀行は2001年、Sumitomo BankとSakura Bankの合併で生まれた。Sakuraは1990年にMitsui BankとTaiyo Kobe Bankが統合した銀行である。バブル崩壊後、不良債権処理と資本不足に直面した日本の銀行は、規模と効率を求めて再編された。2002年には持株会社SMFGが設立された。

危機が作った銀行は、長く防御を優先した。貸倒れを処理し、株式リスクを減らし、国内支店を統合する。だが守りだけでは人口減少国で成長できない。Jefferiesとの提携は、再編後のSMFGが「何を足りないと認めたか」を示している。

Jefferiesという選択

JefferiesはWall Streetの最大手ではない。JPMorgan、Goldman Sachs、Morgan Stanleyの下で、mid-market、sector expertise、leveraged finance、equity capital marketsに強みを持つ。巨大銀行の一部ではないため、SMBCの融資力と補完関係を作りやすい。

提携は2021年7月に始まった。重点は米国healthcareとleveraged financeで、SMBCは市場でJefferies株約4.5%を取得した。SMBCが長い融資関係と貸借対照表を提供し、JefferiesがM&A助言、株式、債券、市場アクセスを加える構想だった。

2023年にはM&A、equity and debt capital marketsへ範囲を広げ、米国investment-grade企業を共同で担当。2024年までに経済持分は14.5%へ増えた。共同案件数は2024年3月期95件から2025年3月期159件へ拡大し、共同一次案件の利益は49億円から96億円へ増えた。

14.5%から20%へ――提携は資本になる

2025年9月、SMBCは追加1350億円を投じ、Jefferiesへの経済持分を最大20%へ引き上げる方針を発表した。これは完全買収ではないが、単なる営業提携より深い。SMBC Group幹部がJefferiesの取締役候補となり、両社の戦略調整が進む。

SMFGは投資の利益貢献を3年目約400億円、ROE約13%、5年目約500億円、ROE約17%と想定する。株式の値上がり期待だけでなく、共同案件、信用枠、取引、持分法利益を組み合わせた事業投資である。

同時にSMBCはJefferiesへ25億ドルの新規信用枠を提供する。Europe・Middle East・Africaのleveraged lendingと米国pre-IPO lendingが対象だ。Jefferiesの顧客獲得力に、SMBCの資金調達力を接続する。

日本株を「共同事業」にする

提携の最も象徴的な部分は、日本株事業のjoint ventureである。SMBC Nikko Securitiesは国内企業との関係、引受、researchに強いが、世界の投資家への販売や大型cross-border ECMでは課題があった。Jefferiesはglobal equity sales、sector research、trading platformを持つ。

新会社は議決権ベースでSMBC Group 60%、Jefferies 40%、経済持分は70%対30%を想定し、2027年1月の始動を目指す。国内外のresearch、sales and trading、equity capital marketsを結び、日本企業の大型増資やIPOを世界の資金へ届ける。

これはSMBC Nikkoの一部機能を外部へ渡すだけではない。日本の顧客基盤と外国人投資家への配管を一つにする試みだ。成功すれば、日本企業はTokyoの銀行から融資を受け、New YorkやLondonの投資家へ株式を売り、同じ連合からM&A助言を受けられる。

MUFG–Morgan Stanleyとの違い

日本のメガバンクが米投資銀行と組む前例として、MUFGのMorgan Stanley投資がある。2008年の金融危機時に約90億ドルを投じ、現在は約24%を保有する。安定した持分法利益がMUFGの強みになった。

SMBC–Jefferiesは規模が小さい代わりに、業務を細かく組み立てる。共同coverage、融資とunderwriting、Japan equities JV、leveraged financeという接合面が多い。Jefferiesにとっても、SMBCの2兆ドル超の資産と貸出能力は、balance sheetを必要とする案件への入場券になる。

一方、文化と利益相反は難しい。銀行は信用リスクと規制を重視し、投資銀行は速度、人材報酬、案件獲得を重視する。SMBCが支配を強めすぎればJefferiesのentrepreneurial cultureと人材を損なう。弱すぎれば相乗効果が出ない。

融資から「originate-to-distribute」へ

従来の銀行は融資を実行し、満期まで保有した。global CIBでは、融資を組成して投資家へ分配し、資本を再利用するoriginate-to-distributeが重要になる。収益は利ざやだけでなく、arrangement、underwriting、trading、advisory feeへ広がる。

SMFGがsales and trading収益を6年ほどで8000億円、約50億ドルへ倍増させる目標を掲げるのも同じ方向だ。金利、為替、credit、equityの取引は、市場変動を顧客サービスと収益へ変える。外国顧客はすでに円金利swap flowの約70%を占めるという。

Jefferies提携の四つの層
  • Capital:経済持分を最大20%へ引き上げる。
  • Clients:日本・米国・EMEA・APACで共同coverage。
  • Products:M&A、ECM、DCM、leveraged finance、trading。
  • Infrastructure:Japan equities JVと25億ドルの信用枠。

海外成長はJefferiesだけではない

SMFGはAsiaでもmulti-franchise strategyを進める。IndonesiaのSMBC Indonesia、VietnamのFE Credit、PhilippinesのRCBC、IndiaのSMFG India CreditとYES BANK持分など、成長市場に現地基盤を持つ。2025年にはYES BANKの24.9%取得を完了した。

ただし海外投資には失敗もある。Vietnamなどで収益性やgoodwillの課題が出て、経営陣は新しい国への大型進出より既存投資のreturns向上を優先するとした。Jefferiesも「買えば成長する」物語ではなく、案件利益と資本効率で厳しく測られる。

最高益の後に来るリスク

第一はcredit costである。金利上昇は利ざやを改善するが、借り手の返済負担も増やす。景気後退、関税、商業不動産、private creditで損失が増えれば、利益を相殺する。第二はbond valuation。高金利は再投資に有利でも、既存債券価格を下げる。

第三はJefferies固有の市場・案件リスクだ。leveraged lendingやpre-IPO融資は高収益だが、案件が止まると在庫を抱える。顧客問題、引受損失、規制、reputationはSMBCへ波及する。20%の持分は利益を取り込むと同時に、問題も近づける。

第四は金利正常化の成功そのもの。預金者が高金利商品へ資金を移せば調達費が上がり、利ざや拡大は鈍る。日銀の利上げが景気を冷やせば融資需要も落ちる。現在の最高益を永久的な新水準と見るのは早い。

1.58兆円は通過点か、循環の頂点か

SMFGは2027年3月期利益を1兆7000億円と予想し、4年連続最高益を目指す。国内金利、法人活動、海外growth、Jefferies synergiesがそろえば達成可能だ。ROE改善と株主還元も投資家の評価を支える。

だが本当の試験は、金利上昇が止まった後である。日本の預金基盤から得た利益を、global advisory、equities、markets、Asia franchisesという反復可能なfee businessへ変えられるか。Jefferiesはその橋だ。

SMFGの世界戦略は、日本の資金と米国の案件力を足し算することではない。両社だけでは取れなかった仕事を掛け算で作れるかにある。

MitsuiとSumitomoの商人金融は、400年かけて信用を蓄えた。2001年の合併は危機を生き延びるためだった。2026年の最高益とJefferies提携は、守る銀行から取りに行く銀行への転換を示す。1兆5829億円が循環の追い風で終わるか、世界的な収益基盤の出発点になるか。その答えは、Tokyoの金利ではなく、New York、London、Mumbai、Jakartaで獲得する顧客と手数料に現れる。

情報源・参考文献