12得点、失点ゼロ。U-19日本代表がAFC U20アジアカップ中国2027予選G組で残した数字は鮮烈だ。だが、9月6日のイエメン戦は得失点差をさらに広げるための余興ではない。勝つか引き分ければ本大会出場が決まり、敗れれば他会場を含む順位計算へ委ねる。山口智監督のチームに必要なのは、派手さより完遂である。
試合はカンボジア・プノンペンのナショナル・スポーツ・コンプレックスで、現地時間午後4時、日本時間午後6時に始まる。日本サッカー協会(JFA)は2026年のチームを「U-19日本代表」と呼ぶ。一方、大会の正式名称は翌年の本大会を基準にした「AFC U20アジアカップ中国2027予選」だ。年齢表記の違いは別大会を意味しない。
日本は8月31日にクウェートを4-0で下し、9月3日に開催国カンボジアへ8-0で勝った。イエメンは初戦でカンボジアに1-2と敗れたものの、クウェート戦を3-1で取り返した。日本が勝ち点6、イエメンとカンボジアが3。アジアサッカー連盟(AFC)は、日本がイエメン戦で敗れなければ本大会出場を決めると明記している。
4点は前半、8点は後半に動いた
クウェート戦は前半だけで決まった。15分にDF藤井翔大(ふじい・しょうた)が先制。35分にMF濱﨑健斗(はまさき・けんと)、40分と42分にFW徳田誉(とくだ・ほまれ)が続いた。後半は得点がなく、4-0のまま終了した。90分を通じて同じ勢いだったのではなく、一気に差をつけた時間帯と、追加点を奪えなかった時間帯が分かれる。
カンボジア戦は逆だった。26分にシュミット・ニック、44分に徳田が決め、前半は2-0。後半に木寺優直(きでら・すなお)、徳村楓大(とくむら・ふうた)、藤田明日翔(ふじた・あすと)、長璃喜(おさ・りゅうき)が得点し、相手のオウンゴール二つも加わった。8点のうち6点が後半である。
徳田は2試合3得点。だが、得点者が8人に広がったことも重要だ。DF、MF、FWの各列からゴールが生まれ、オウンゴールを誘う圧力もあった。GK村松秀司(むらまつ・しゅうじ)は2試合とも先発し、無失点を続ける。特定の一人だけに得点を依存した12点ではない。
| 順位 | チーム | 試合 | 勝-分-敗 | 得失点 | 差 | 勝ち点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 日本 | 2 | 2-0-0 | 12-0 | +12 | 6 |
| 2 | イエメン | 2 | 1-0-1 | 4-3 | +1 | 3 |
| 3 | カンボジア | 2 | 1-0-1 | 2-9 | -7 | 3 |
| 4 | クウェート | 2 | 0-0-2 | 1-7 | -6 | 0 |
順位表はAFCとJFAが公表した4試合の結果から本紙が算出した。イエメンとカンボジアは勝ち点で並び、得失点差でイエメンが上に立つ。日本―イエメン戦の後にはカンボジア―クウェート戦がある。日本が敗れた場合の順位と2位比較は、最終得点と大会規定を適用するまで確定しない。
選手層を示した入れ替え、減った中盤の一枚
山口監督は初戦から2戦目へ先発6人を替えた。村松、藤井、濱﨑、瀬口大翔(せぐち・たいが)、徳田の5人は続けて先発し、残りを入れ替えた。短期集中日程で幅広く実戦時間を与えながら、中央の骨格はある程度残した形だ。
一方で、JFAは9月4日、MF木實快斗(このみ・かいと)がけがで離脱し、追加招集はしないと発表した。木實はクウェート戦に先発していた。当初23人だった登録は22人となり、ローテーションの余地が一つ減った。けがの詳細は公表資料にないため、本稿では原因や復帰時期を推測しない。
イエメンをカンボジア戦の延長とみなすことはできない。初戦敗退の危機からクウェートに3-1で勝ち、最終戦へ可能性を残した。さらに、過去の年代別対戦を振り返れば、日本は勝っていても、簡単には崩せない時間を経験している。
「引き分け狙い」にしない
順位表では引き分けで足りる。しかし「0-0を守ろう」という指示は、若いチームの長所を消しかねない。ボールを動かす速度が落ち、前進をためらい、相手の一度のカウンターに過剰反応する。必要なのは引き分け狙いではなく、主導権を持った試合管理だ。
攻撃時に後方の人数と距離を整え、失った瞬間の中央を閉じる。幅を使っても両側を同時に空けない。セットプレー周辺で不用意な反則を与えず、こぼれ球の回収位置を決める。得点が遅れても、速くプレーすることと急ぐことを混同しない。大勝の後ほど、こうした地味な原則が効く。
先制すればイエメンは前へ出ざるを得ず、空間が広がる。逆に先に失点すれば、この世代が予選で初めて追う展開になる。同点のまま終盤に入れば、日本は突破できる結果を持ちながら、相手の狙いと後続試合の影響も読む必要がある。どの局面も、単なる得点力とは別の能力を測る。
日本に求められる管理
- ボールを失った直後の中央封鎖
- ペナルティーエリア周辺の不用意な反則を避ける
- 幅を取りながら、反対側まで同時に無防備にしない
- 得点が遅れてもパスの質と立ち位置を崩さない
- 交代を攻撃強化だけでなく、試合の安定にも使う
初の2層制、8組中7組の2位も通過
今大会の予選は、AFCが初めて導入した2層構造で行われる。上位のQualification Phaseには31チームが参加し、8組に分かれる。各組1位の8チームと、2位のうち成績上位7チームが、中国で行われる16チームの本大会へ進む。開催国中国を加えて16枠となる。
別にDevelopment Phaseがあり、11チームを3組に分け、次回大会へ向けた昇格制度を持つ。競争力の近い相手との試合を増やす狙いがあるが、今回の日本が戦うのはQualification Phaseである。
2位8チーム中7チームが進めるなら、敗戦にも余裕があるように見える。しかし、1位なら他組の得点経過に左右されない。2位なら比較条件を満たすまで待つ。AFCが「敗れなければ出場決定」と表現する理由はそこにある。日本はまだ出場を決めておらず、負ければ敗退とも決まっていない。どちらも先走ってはいけない。
イエメン戦は過去も点差ほど容易ではなかった
2016年のAFC U-19選手権初戦で、日本はイエメンに3-0で勝った。だがJFAの大会回顧は、日本が硬さから苦しみ、後半の修正で流れを変えたと記す。そのチームは決勝でサウジアラビアと0-0の後、PK戦を5-3で制し、この年代で日本初のアジア王者となった。大会を通じて無失点だった。
2022年、翌年の本大会を懸けた予選最終戦はさらに接戦だった。イエメンは日本が想定していなかった守り方を採り、日本は78分まで得点できない。2トップへ変え、CKから相手のオウンゴールを誘って1-0で勝った。当時の冨樫剛一監督は「そのときまでに、もっともっと力をつけないといけません」と本大会を見据え、DF田中隼人は「絶対に失点ゼロで終わるつもりだった」と振り返った。
過去の選手や監督が今回の結果を決めるわけではない。ただ、年代別代表では、技術的に優位な日本でもイエメン戦がロースコアになることがある。集合期間が短く、セットプレー一つが重く、10代の選手には修正の経験がまだ少ない。日曜の一戦を12得点の続きを見るだけの試合にはできない。
2016年 — 日本がイエメンに3-0。その後、この年代で初のアジア制覇を無失点で達成。
2022年 — 予選最終戦でイエメンに1-0。4試合すべて無失点で突破。
2025年 — 前世代がAFC U20アジアカップ4強に入り、U-20ワールドカップ出場権を獲得。
2026年 — 新世代のU-19日本代表が2試合12得点無失点で最終戦へ。
山口智監督が担う「結果」と「育成」
山口智(やまぐち・さとし)監督は2025年12月、2027年のFIFA U-20ワールドカップを目指す世代の指揮官に就いた。1978年4月17日、高知県生まれ。ジェフユナイテッド市原、ガンバ大阪、ジェフユナイテッド千葉、京都サンガF.C.でDFとして長くプレーし、日本代表2試合に出場した。
指導者としてはガンバ大阪U-23のヘッドコーチやトップチーム監督、湘南ベルマーレ監督などを務め、2019年にJFA Proライセンスを取得した。同姓同名の人物と取り違えないため、氏名の読みと経歴はJFAの日本語公式資料で確認した。
年代別代表の仕事は、3試合の首位通過だけではない。異なるクラブで異なる原則を学ぶ選手を短期間でまとめ、国際試合の判断を経験させ、結果を求めながら10代の将来を固定的に評価しないことが必要になる。2試合の先発変更は、その難しい両立を映す。
無失点という共同作業
2試合の無失点はGKだけの記録ではない。最終ラインと中盤の距離、失った直後の守備、サイドバックが出る判断、セカンドボールへの反応が重なった結果だ。攻撃に人数をかけられたのも、後方の構造が崩れなかったからである。
ただし12-0は、分析を粗くする危険もある。大量得点は、相手にプレスを外された場面や、より強い相手なら失点につながったパスを見えにくくする。JFAの公式試合ページで確認できるのは先発、交代、得点、警告などで、ボール保持率、シュート、期待得点などの完全な公開データは確認できなかった。数字のない優勢まで断定することは避ける。
だからこそイエメン戦には価値がある。攻め続ける力と、攻めるために守備の形を残す力。選手を入れ替える余裕と、最終戦で組み合わせを固める判断。楽な展開で得た自信を、難しい時間に使えるかが見える。
勝ち点1の先にある長い競争
前世代の日本は2025年AFC U20アジアカップ準々決勝でイランをPK戦の末に破り、U-20ワールドカップ出場権を獲得した。準決勝ではオーストラリアに0-2で敗れた。その実績は現在の選手たちへ自動的に引き継がれない。年代別代表は名称が続いても、選手と監督、成長課題が入れ替わる。
今回の世代がまず果たすべき仕事は明快だ。勝ち点を一つ以上取る。できれば無失点を続ける。引き分けでよいからと受け身にならず、中国での本大会へ進む。そして、大差の試合では分からなかった自分たちの強さと弱さを持ち帰る。
12得点無失点は、日本に余裕と自信を与えた。しかし13点目も、次の無失点も約束しない。鮮烈な出発を「予選突破」という完了形に変えられるか。イエメン戦の90分は、そのためにある。
一次資料・参考資料
- 日本サッカー協会「U-19日本代表 メンバー・スケジュール」 — 選手・スタッフの正式表記と読み、日程、会場、日本時間の開始時刻。
- 日本サッカー協会「AFC U20アジアカップ中国2027予選」 — 大会名とG組日程。
- JFA公式記録「日本 4-0 クウェート」 — 先発、得点、交代、警告。
- JFA公式記録「カンボジア 0-8 日本」 — 先発、得点、交代、警告。
- JFA「U-19日本代表 選手・スタッフ」 — 現行の登録情報。
- JFA「U-19日本代表 選手離脱のお知らせ」 — 木實快斗の9月4日付離脱と追加招集なしの確認。
- AFC「Qualifiers - Group G: Kuwait 1-3 Yemen; Cambodia 0-8 Japan」 — 第2節結果と、日本が敗れなければ突破するとの公式説明。
- AFC「Qualifiers - Group G: Japan 4-0 Kuwait; Yemen 1-2 Cambodia」 — 第1節2試合の結果。
- AFC「China 2027 Qualifiers - MD2」 — 2層制、組分け、予選通過15枠。
- JFA「U-20日本代表 山口智監督 就任会見」 — 氏名の読み、経歴、資格、就任目的。
- JFA「U-19日本代表、イエメンに勝利し4連勝で予選突破」 — 2022年の試合経過と監督・選手の発言。
- JFA「U-19日本代表 AFC U-19選手権初戦でイエメンに勝利」 — 2016年対戦の公式記録。
- JFA「年代別日本代表 2016年大会回顧」 — 日本初優勝と大会無失点の確認。
- AFC「Japan edge IR Iran on penalties」 — 2025年の準々決勝とU-20ワールドカップ出場権。
取材・検証メモ: 本稿は2026年9月5日午前9時(日本時間)までに公開された公式資料を基にした。12得点無失点と順位表は、AFC・JFAの公表結果から算出した。「敗れなければ本大会出場」という条件はAFCの公式説明による。イエメン戦の先発、布陣、交代、結果、得点、警告、観客数と、締め切り後の選手変更は未確認である。ボール保持率、シュート数、期待得点などの完全な公開イベントデータを一次資料で確認できなかったため、推計していない。日本が敗れた場合の最終順位と2位比較は、全試合終了後に規定を適用するまで確定しない。選手・監督の正式名、読み、肩書、引用はJFAの日本語資料で照合した。日本語版は英語版の翻訳ではなく、別に構成・執筆した。
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