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なでしこジャパン、PK戦を制してアジア大会3連覇 国内組が示した日本女子サッカーの層の厚さ

無失点で決勝へ進んだ日本は、初めてリードを許した。それでも86分に追いつき、延長を耐え、PK戦で勝った。3連覇は、国内組中心の選手層の厚さを映した。

By Bradley L. Bartz · 2026年10月5日 · Japan.co.jp
なでしこジャパンの選手たちがアジア大会女子サッカー決勝のPK戦勝利を喜ぶ様子を描いたイメージ
なでしこジャパンのアジア大会3連覇を題材にしたJapan.co.jpのイメージ。Image: Japan.co.jp

静岡。86分、1-2。日本は今大会で初めて追う側に立たされていた。

右サイドから水野蕗奈が差し込んだボールを、西尾葉音がペナルティーエリア右で受ける。前方の塩越柚歩に「スルー」と声をかけ、体を反転。右足を振り抜いたボールはゴール左下へ吸い込まれた。2-2。小笠山総合運動公園エコパスタジアムの観客6,243人が一斉に沸いた。

延長でも決着はつかなかった。PK戦ではGK大場朱羽が朝鮮民主主義人民共和国の3人目を止め、日本は5人全員が成功。最後は塩越が決め、なでしこジャパンが3大会連続のアジア競技大会金メダルを手にした。JFA公式記録は2-2、PK5-3。試合は10月2日、静岡県袋井市のエコパスタジアムで行われた。

決勝結果朝鮮民主主義人民共和国 2-2 日本(PK 3-5)。日本は32分に上野真実が先制。後半47分、69分に逆転を許したが、86分に途中出場の西尾葉音が同点。延長を経てPK戦へ進み、GK大場朱羽が相手3人目をセーブ。5人目の塩越柚歩が成功して優勝を決めた。

先に崩したのは日本だった

狩野倫久監督は準決勝の韓国戦から先発を2人変更し、4-3-3で入った。GKは大場朱羽。最終ラインは浜田芽来、伊東珠梨、大箸桜子、桑原藍。中盤の底に上野真実、その前に柳瀬楓菜と塩越柚歩。前線は成宮唯、神谷千菜、中嶋淑乃という構成だった。

序盤は朝鮮民主主義人民共和国のフィジカル強度に押され、日本は前進の糸口をつかみにくかった。だが、柳瀬が中盤の球際で主導権を取り戻す。32分、左で桑原、中嶋とつなぎ、柳瀬がマイナス方向へクロス。塩越のシュートはブロックされたが、こぼれ球を上野が左下へ流し込み、日本が先制した。

狩野監督は試合後、この一戦を「90分+延長とPK戦も想定」していたとJFAを通じて説明した。相手の強度を受けながらも、チームが最後まで粘り強く戦った点を評価している。citeturn135090view0

今大会初失点から、初めての逆境へ

日本は決勝まで失点ゼロだった。グループステージではタイに8-0、ベトナムに8-0、チャイニーズ・タイペイに4-0。準々決勝でフィリピンに4-0、準決勝で韓国に2-0。5試合で26得点、無失点という内容で決勝へ進んだ。JFAの大会記録は、日本が大会を通じて複数の攻撃陣を使いながら勝ち上がったことを示している。citeturn415320search0turn415320search6turn676339search0

その流れを決勝で初めて崩したのが朝鮮民主主義人民共和国だった。後半47分と69分、流れの中から連続得点。日本は今大会初失点だけでなく、初めてリードを奪われた。

ここで狩野監督は前線を変えた。西尾葉音、宝田沙織らを投入し、浜田をより前方へ出す。守備の安定を優先して追いつくのを待つのではなく、前線の人数と個の突破力を増やして同点を狙った。

その交代策が86分に結実した。西尾は試合後、途中出場時には「自分がここで試合を決めよう」と考えていたとJFAに語っている。大一番に強いという自信を持って入り、狙い通りにフィニッシュした。citeturn135090view0

延長で求められたのは、攻撃より耐える力

延長戦では朝鮮民主主義人民共和国が走力を前面に出した。日本は伊東珠梨がカバーリングを重ね、塩越も最終ライン付近まで戻る。90分までとは違う種類の試合になった。

アジア大会のような短期大会では、最終的な勝敗は戦術だけでなく、連戦の疲労、選手層、交代カード、PKまで含めた準備で決まる。狩野監督が延長とPK戦を想定していたことは、その現実に対応したものだった。

PK戦で日本は先攻。宝田から始まり、各選手が成功。大場が相手3人目をセーブし、5人目の塩越が決めた。失敗しない日本と、1本を止めたGK。その差が金メダルになった。

2018、杭州、そして2026――3連覇の中身は同じではない

日本女子のアジア大会3連覇は、2018年ジャカルタ・パレンバン大会から始まった。高倉麻子監督のチームは準々決勝で朝鮮民主主義人民共和国を2-1、準決勝で韓国を2-1、決勝で中国を1-0で破り、史上2度目の優勝を果たした。citeturn676339search1turn676339search6

続く第19回杭州大会は、新型コロナウイルス禍の影響で2022年大会が2023年に開催された。日本は全6試合に勝利し、決勝で朝鮮民主主義人民共和国を4-1で下した。中嶋淑乃、谷川萌々子、千葉玲海菜らが得点し、37,166人の観衆の前で連覇を達成した。citeturn131054search0turn131054search1

2026年は再び朝鮮民主主義人民共和国との決勝。今回は圧勝ではなく、逆転を許し、86分に追いつき、延長を耐え、PKで勝った。同じ「金メダル」でも、勝ち方は大きく違う。

大会決勝結果特徴
2018 ジャカルタ・パレンバン日本 vs 中国1-0接戦を勝ち切り史上2度目の優勝
2022 杭州(2023開催)日本 vs 朝鮮民主主義人民共和国4-16戦全勝で連覇
2026 愛知・名古屋日本 vs 朝鮮民主主義人民共和国2-2、PK5-3逆転を許してから追いつき、PK戦で3連覇

国内組中心のチームが持つ意味

2026年の優勝を語る上で重要なのは、これは「海外組を総動員したA代表のベストメンバーによるタイトル」ではないという点だ。

世界の主要リーグでプレーする日本人選手が増える中、アジア大会チームはWEリーグを中心とする国内所属選手の比重が高かった。キャプテン成宮唯は試合後、海外でプレーする選手が増える中で、WEリーグの価値を示せる場所だという意識が自分にはあったとJFAに語っている。citeturn135090view0

これはリーグにとって重要だ。代表で活躍する選手を国内のスタジアムで継続的に見ることができるからである。今大会で得点した中嶋、神谷、塩越、西尾、上野らの多くは、日常的には日本のクラブでプレーする。

国際大会が国内リーグの価値を証明する場になる。この構造は、男子サッカーで欧州組が代表の中心となる状況とは少し異なる。

なでしこの歴史は「層」を厚くする歴史でもあった

日本女子代表の国際舞台での歩みは1981年のアジア女子選手権から始まったとJFAは整理している。1989年には日本女子サッカーリーグが創設され、1991年の第1回FIFA女子世界選手権へ出場した。当時はブラジル、スウェーデン、アメリカに3連敗し、世界との差は大きかった。citeturn909563search0

20年後、なでしこジャパンは2011年FIFA女子ワールドカップで世界一になった。決勝ではアメリカに2度リードされながら追いつき、PK戦を3-1で制した。澤穂希は大会MVPと得点王を獲得。日本の男女を通じてFIFA主催世界大会で初の優勝だった。citeturn909563search4turn909563search2

その後、2012年ロンドン五輪銀メダル、2015年女子ワールドカップ準優勝。U-17、U-20でも世界タイトルを獲得し、育成年代からトップまで選手を供給する構造が整っていった。

2026年のアジア大会タイトルは、この流れの延長にある。世界大会の主力と完全に同じメンバーでなくても、アジアのトップレベルで勝てるチームを組める。それ自体が、日本女子サッカーの選手層が厚くなった証拠の一つだ。

3連覇の価値は「また勝った」ことだけではない。世界のトップで戦うA代表とは別の編成でも、アジアの決勝を耐え、ひっくり返し、勝ち切れる層が日本にあることを示した点にある。

朝鮮民主主義人民共和国との決勝が映すアジアの力関係

日本と朝鮮民主主義人民共和国は女子年代別代表を含め、アジア女子サッカーの強豪として長く競ってきた。今回の決勝は、杭州大会に続き2大会連続で同じ組み合わせになった。

2023年の杭州では日本が4-1で勝った。2026年は相手が日本を上回る時間帯を長く作り、逆転まで持ち込んだ。結果だけを見れば日本の連勝だが、試合内容は一方的な優位を意味しない。

日本がアジアで勝ち続けるには、技術と組織だけでなく、強度の高い相手に押し込まれた時間をどうしのぐかが重要になる。決勝の延長戦とPK戦は、その課題と対応力を同時に見せた。

次は世界基準へ戻る

アジア大会は終点ではない。JFAの2026年日程では、なでしこジャパンは10月に欧州へ移り、ハイチ、ドイツとの国際親善試合を予定している。11月末から12月にはブラジルとの国内試合も組まれている。citeturn808165search4

アジア大会で優勝したメンバーすべてがそのままフル代表の中心になるわけではない。それでも、狩野監督のチームで結果を出した選手は、国内リーグへ戻り、次の代表選考へつながる材料を残した。

優勝は、トロフィーで完結するものではない。上野の先制、西尾の同点、大場のセーブ、塩越の最後のPK。その経験がWEリーグへ戻り、クラブの競争を強くし、次の代表を押し上げるかどうか。

なでしこジャパンの3連覇は、過去を守ったタイトルであると同時に、次の競争を始めるタイトルでもある。

主な資料

  1. 日本サッカー協会「なでしこジャパンが大会3連覇で金メダル獲得」(2026年10月3日)
  2. JFA 第20回アジア競技大会 女子決勝 日程・結果
  3. JFA 第20回アジア競技大会 なでしこジャパン大会ページ
  4. JFA 第18回アジア競技大会(2018)
  5. JFA 第19回アジア競技大会(杭州)決勝レポート(2023年10月7日)
  6. JFA「日本女子代表 ワールドカップ/オリンピックヒストリー」
  7. JFA「女子ワールドカップの歴史」