旅先で見た風景を、木と紙と色でどう表すか。松本市の日本浮世絵博物館で開催中の「旅をして、絵を描く ― 川瀬巴水・吉田博の風景版画」は、伝統的な木版技法から新しい風景表現を生み出した二人を取り上げる。会期は9月16日から12月20日まで。[1]
9月24日(木)は休館
同館は9月21~23日の祝日に開館し、24日を振替休館日としている。本紙の発行日は観覧できないため、来館日を確認したい。[2]
写生から版画へ、風景をつくり直す
同館は、大正から昭和にかけて隆盛した新版画の中で、川瀬巴水と吉田博が旅と写生を基に風景画を制作したことに着目する。[1] ここで考えたいのは、旅先を記録することと、版画として見せることの違いだ。どこを画面に収め、どの線や色を残すか。風景は制作の過程で、一枚の絵として組み立て直される。
前期の掲載作品には、巴水の「上高地 大正池」と、吉田の「瀬戸内海集 光る海」がある。[1] 身近な地名から入ってもよいし、山や水を画面の中でどう扱うかに注目してもよい。名所を知っているかどうかにかかわらず、形や色の関係から作品に近づける。
画家の名前の先にある職人の仕事
伝統木版画を理解するには、絵を描く人だけでなく、それを版にし、紙へ移す仕事にも目を向けたい。アダチ伝統木版画技術保存財団は、浮世絵の制作を絵師・彫師・摺師と、それらをまとめる版元の協業として説明する。版木、手漉き和紙、水性絵具という素材も、その表現を支える。[3]
これは伝統木版画の一般的な制作背景であり、本展の全作品が同じ分業体制で作られたという意味ではない。それでも、完成した図柄を眺めるだけでなく、輪郭の細さや色面の境目、紙に載った色を見ようとすると、画面を支える技術が鑑賞の手がかりになる。
新版画の「新しさ」は、古い技法を捨てることだけでは生まれない。今回の展覧会を通じて考えられるのは、受け継いだ制作手段を使いながら、画家が見た風景を新しい作品として示す方法である。
継承は、今の作り手と見る人につなぐこと
この問いは現在にも続く。アダチ版画研究所は、伝統木版技術を使って現代のアーティストと作品を制作し、国内外へ発信している。[4] 本展とは別の活動だが、技術を保存することと、新たな作品をつくることが両立し得る具体例となる。
画面で画像を見る機会が多い今、原作品に向き合う展示は、線や色だけでなく紙という物質にも注意を向ける場になる。作品名や作者名を確かめた後に、少し時間をかけて細部を見る。その順序が、風景の美しさと制作の仕事を結びつけてくれる。
前後期で全点を入れ替え
前期は11月1日まで、後期は11月3日から12月20日までで、全作品を入れ替える。[1] 一度の訪問で両期の展示を見られるわけではないため、目当ての作品がある場合は展示時期を確かめたい。
開館時間は午前10時~午後5時、最終入館は午後4時30分。通常の入館料は一般1,000円、中学・高校・大学生500円、小学生以下は無料。原則月曜休館で、祝日などには振替がある。[5] 連休時は個別の開館案内を優先して確認する必要がある。

