街の弁当店の経営が厳しさを増している。東京商工リサーチが9月19日に公表した集計では、2026年1~8月の倒産は83件。過去最多だった2025年の年間89件に迫った。同社は食材や包装資材、光熱費などの負担と、スーパーやコンビニなどとの競争を指摘している。[1]
昼食を手頃な価格で買いたい客と、値上げしなければ採算が合わない店。その間で、どの価格なら買ってもらえ、どれだけ売れば営業を続けられるのかが問われている。以下では、公表された件数の読み方を整理したうえで、弁当店の収益を考える。
83件は8カ月分、89件は前年の年間値
二つの数字は対象期間が異なる。83件を前年同時期との増減率に置き換えたり、すでに年間最多を更新したと表現したりすることはできない。また、今回の件数だけでは、営業する弁当店全体に対する倒産の割合や、休廃業を含む店舗の減少数は分からない。
地域の昼食事情を考える際にも、倒産件数と利用できる店の数は分けて捉える必要がある。法人単位の経営問題と、一つの売り場がなくなることは同じではない。個々の店舗の営業状況を、この集計から推定すべきではない。
一食売れた後に、いくら残るか
中小企業庁の「2024年版小規模企業白書」は、損益分岐点比率を、売上高が現在の何%未満になると赤字になるかを示す指標として説明している。これは今回の弁当店調査とは別の資料だが、売上の大きさだけで経営の余裕を判断できないことを理解する手掛かりになる。[2]
弁当店に当てはめれば、一食の売価から、販売量に応じて増える食材費や容器代などを差し引いた額で、家賃などの固定費をどこまで賄えるかが基本になる。完売しても、一食ごとに残る額が小さければ十分な利益にはつながらない。逆に、品数を増やして売上を伸ばそうとしても、仕込みの負担や売れ残りが増えれば効果は薄れる。
ここからは編集部の分析であり、集計対象の各社で同じ事情があったと確認したものではない。販売数、廃棄、調理に必要な時間を合わせて見ると、人気商品と利益を支える商品が一致するとは限らない。価格改定の判断には、原価だけでなく、客が何を理由に選んでいるかという視点も欠かせない。
予約や配達も、条件次第で採算が変わる
予約販売なら、必要な数量を事前に見通しやすい。企業や地域団体からのまとまった注文も、需要を把握する方法になり得る。ただし、配達距離、納品時刻、追加の人員、容器の仕様によって負担は変わる。大口注文だから必ず有利とは言えない。
例えば、店頭と同じ販売価格で配達を引き受ければ、配送にかかる費用をどこかで吸収しなければならない。受注の増加を評価するには、売上の伸びと、それに伴う支出を一緒に確かめる必要がある。これは取引を発注する企業側にも関係する。数量や納品条件の急な変更が、取引先の作業や費用をどう変えるかを考えたい。
利益と手元資金は、別々に確かめる
中小企業基盤整備機構の情報サイト「J-Net21」は、資金繰り表を、一定期間の現金収入と支出を整理し、現金の過不足を把握する表と説明する。損益の確認に加えて、いつ入金され、いつ支払いが必要かを見るためのものだ。[3]
弁当の販売でも、店頭で代金を受け取る取引と、納品後にまとめて入金される取引とでは、資金の動きが異なる。食材の仕入れや給与の支払いが先に来るなら、受注が増えても手元資金に余裕が生まれるとは限らない。採算の確認と支払日程の把握は、どちらか一方で済む作業ではない。
今回の数字は、安くて便利な昼食を支える事業の継続性を考えるきっかけになる。今後は年間件数の推移に加え、地域ごとの出店・閉店や、個店の価格と商品構成も確認したい。店のにぎわいだけでは見えない経営の余裕を、どう確保するかが焦点だ。

