9月13日・初日終了時点 大相撲秋場所は両国国技館で幕を開け、出場した横綱・大の里と3大関、両関脇がそろって白星を挙げた。豊昇龍が初日から休場するなか、上位陣はまず星を落とさずに滑り出した。ただ、同じ1勝にも意味の違いがある。立て直しを図る横綱、優勝して大関に戻った安青錦、初めて関脇に座った藤ノ川。それぞれの現在地は、初日の勝敗だけでは読み切れない。[1][2][3]

初日・9月13日の主な結果
勝者敗者決まり手
大の里大栄翔はたき込み
霧島琴勝峰上手投げ
琴櫻高安寄り切り
安青錦琴栄峰寄り切り
熱海富士豪ノ山寄り切り
藤ノ川義ノ富士寄り切り
美ノ海伯乃富士寄り切り

出典:スポーツナビ。掲載した勝者は1勝0敗、敗者は0勝1敗。[1]

大の里、白星から始まる立て直し

大の里(おおのさと)は小結・大栄翔をはたき込んだ。初日の白星を、ただの順当勝ちと片付けることはできない。協会の星取表をたどると、今年3月は0勝4敗11休、5月は全休。7月は9勝6敗で終えた。秋の土俵で求められるのは、一番の勝ちを積み重ね、横綱として場所を通じて存在感を示すことだ。[4]

記録から確かめられるのは、休場を挟んで7月に十五日間を取り切り、今回は初日に勝ったという歩みである。そこから直ちに「完全復活」と判断するのは早い。出場できたこと、勝ったこと、思い通りの相撲を続けられることは、分けて見たい。立ち合いで後手に回らないか、相手に先に攻めさせる場面が続かないか。序盤は、その点が横綱を見る手掛かりになる。

豊昇龍(ほうしょうりゅう)について、協会の告知は初日からの休場を示している。若隆景と若ノ勝も同じく初日から休場した。出場者の顔触れは優勝争いにも影響するが、この告知だけで途中出場の可能性や全休を断定することはできない。横綱が一人しか出場しない初日は、大の里への視線がいっそう集まる出発点となった。[2]

安青錦は「再大関」であり、先場所の優勝者でもある

今場所の安青錦(あおにしき)を語るうえで欠かせないのは、昇進の種類だ。協会は番付トピックスで「再大関」と位置付ける。初めて大関になる新大関ではない。関脇から再び大関の地位へ戻り、秋場所を迎えている。[3]

今年1月に12勝3敗で優勝した後、3月は7勝8敗、5月は全休。そして7月には関脇で12勝3敗の優勝を遂げた。好調、不振、休場、再浮上という大きな振幅が、短い期間に凝縮されている。琴栄峰を退けた初日の1勝には、先場所につくった流れを次の場所へ持ち込む意味がある。[5]

安青錦を新鋭の勢いだけで説明すると、すでに経験した落差が見えなくなる。一方、優勝実績があるからといって今場所の安定が約束されるわけでもない。序盤の数番で注目したいのは、勝ち星の数とともに、自分の形をつくるまでに費やす力だ。相手の攻めを受ける時間が長いのか、先に有利な位置を得られるのか。白星の中身を追って初めて、7月からの継続性が見えてくる。

霧島の継続力、琴櫻の出直し

霧島(きりしま)の背景には、別の種類の強さがある。公式戦歴では3月、5月、7月と3場所続けて12勝3敗。3月は関脇で優勝し、5月から大関に復帰した。大きな数字を一度出すだけでなく、場所をまたいで繰り返している点が、今場所の有力者として見る根拠になる。初日は琴勝峰に勝って、その先へ踏み出した。[6]

もっとも、過去の12勝が今場所の取りこぼしを帳消しにするわけではない。上位同士の対戦を待つ間にも、一日一番ずつ星を積む必要がある。昇進の話題が大きくなっても、特定の勝ち数をあらかじめ到達条件として固定してしまえば、実際の成績や取組内容を見失う。まず優勝争いに残り続けられるかが焦点だ。

琴櫻(ことざくら)は高安を下して白星発進した。こちらは5月の3勝9敗3休から、7月に8勝7敗と勝ち越した経過がある。同じ大関の1勝でも、安青錦の優勝後、霧島の連続12勝後とは立ち位置が違う。勝ち越しを確保する段階から、終盤まで優勝争いに加わる段階へ進めるか。秋場所は、その距離を測る機会になる。[7]

熱海富士と藤ノ川、関脇の二つの課題

熱海富士(あたみふじ)は3場所連続の関脇。5月の9勝6敗に続き、7月は12勝3敗を挙げた。初日に豪ノ山を破り、さらに上をうかがう場所を白星で始めた。直前の2場所だけで21勝という実績は、期待を支える具体的な材料である。ただし、足し算そのものが昇進を決めるわけではない。今場所にどんな星を重ねるかが問われる。[3][8]

新関脇の藤ノ川(ふじのかわ)は、義ノ富士に勝った。7月は東前頭筆頭で8勝7敗、殊勲賞を受賞している。協会によれば、伊勢ノ海部屋からの新関脇は2016年5月の勢以来だ。部屋の歴史に節目を刻んだ力士が、その地位に定着できるか。優勝候補としての評価を急ぐより、上位の相手が続くなかで勝負を組み立てられるかを見たい。[3][9]

一方、新小結・伯乃富士(はくのふじ)は美ノ海(ちゅらのうみ)に敗れた。公式プロフィールに記された四股名の歩みは、落合、伯桜鵬、伯乃富士。今場所が初めての三役となる。黒星は新しい地位での厳しい出発だが、一敗をもって昇進が早過ぎたと結論付けることはできない。相手が変わる次の一番で、何を立て直すかが重要になる。[10]

決まり手から分かること、分からないこと

初日の主要取組には寄り切りが並んだ。協会の説明では、相手に体を寄せ、前方や横方向へ進んで土俵外へ出す技である。上手投げは、相手の差し手の外側からまわしを取って投げる。相手が倒れず、投げによって土俵外へ出た場合にも、この決まり手になる。[11][12]

ただ、決まり手は勝負が決まった局面の分類だ。同じ寄り切りでも、立ち合いから一気に出た相撲なのか、組み合って攻防を重ねた末なのかまでは示さない。はたき込みも、表記だけで一番全体の良しあしを採点できるものではない。協会は82の決まり手と、それ以外の5つの勝負結果を区別している。豊かな技の体系を、単純な強弱の順位に置き換えないことが、序盤を読む際の基本になる。[16]

秋の国技館に積み重なった近代の歴史

秋場所を包む風景も、長い歴史のなかで形を変えてきた。協会の年表には、1927年の東京・大阪両相撲協会の合併、1931年の土俵の直径拡大が記されている。現在の4.55メートルの土俵も、近代の制度変更を経たものだ。1952年9月には四本柱がなくなり、吊り屋根と四色の房へ。1954年9月に蔵前国技館が開館し、1985年1月には新しい両国国技館が開いた。[13]

土俵際のわずかな余地を争う技術、客席から土俵へ向かう視線、東京で相撲を見る場所。そのいずれにも変遷がある。毎年繰り返される秋の興行は、昔の風景をそのまま保存しているのではなく、受け継いだ型のなかで新しい力士を迎えてきた。今場所の再大関、新関脇、新小結も、その連続のなかにいる。

序盤の焦点は、次の相手にどう勝つか

9月14日の2日目に向けて公表された取組には、大の里―琴勝峰、安青錦―高安、霧島―伯乃富士が並ぶ。熱海富士は初日に新小結を破った美ノ海と対戦する予定だ。いずれも、この記事の集計時点では取組前である。初日の勝者が新しい相手にも自分の相撲を通せるか、敗者が連敗を防げるか。そこで初めて、白星発進の重みが増していく。[15]

今場所の千秋楽は9月27日。初日を終えてなお、道のりは長い。優勝争いの見取り図を描くなら、直近の優勝実績、数場所にわたる安定、今場所の取組内容を重ねる必要がある。初日の結果は、実績のある上位陣がそろってその作業を白星から始めたことを示す。秋の主役を決めるのは、ここからの積み重ねだ。[14]

出典・参考資料

  1. スポーツナビ:2026年9月場所・初日の取組結果
  2. 日本相撲協会:休場力士情報(9月11日更新の幕内欄)
  3. 日本相撲協会:令和八年九月場所・番付トピックス
  4. 日本相撲協会:大の里 泰輝・公式戦歴
  5. 日本相撲協会:安青錦 新大・公式戦歴
  6. 日本相撲協会:霧島 鐵力・公式戦歴
  7. 日本相撲協会:琴櫻 将傑・公式戦歴
  8. 日本相撲協会:熱海富士 朔太郎・公式戦歴
  9. 日本相撲協会:藤ノ川 成剛・公式戦歴
  10. 日本相撲協会:伯乃富士 哲也・公式戦歴
  11. 日本相撲協会:決まり手「寄り切り」
  12. 日本相撲協会:決まり手「上手投げ」
  13. 日本相撲協会:協会のあゆみ
  14. 日本相撲協会:令和8年本場所日程
  15. スポーツナビ:2日目の取組表(9月13日18時17分更新)
  16. 日本相撲協会:決まり手八十二手

資料確認:2026年9月14日(日本時間)。結果は9月13日の初日終了時点。番付・戦歴・休場は日本相撲協会、決まり手を含む初日結果はスポーツナビを参照。解釈は特記のない限りJapan.co.jpによる。