澄んで見える川にも、目には映らない負荷があり得る。大雨の後に茶色く濁った川が、生態的には健全なこともある。だから、国土交通省が毎夏発表する「水質が最も良好な河川」は、魅力的な「日本一きれいな川」という見出しより慎重に読まなければならない。7月24日、同省は2025年(令和7年)の調査結果から、全国13河川を最上位の水質グループとして公表した。北海道の雪国から九州の山地まで広がる13河川に、1位から13位までの順位はない。すべてが分析上の同じ下限値に到達した、並列の首位である。

選ばれたのは、北海道の後志利別川、渚滑川、沙流川、札内川、福島県の荒川、三重県の宮川、福井県の北川、鳥取県の小鴨川と天神川、島根県の高津川、高知県の仁淀川、熊本県の川辺川、宮崎県の五ヶ瀬川。共通する条件は明確だ。対象となる各調査地点のBOD(生物化学的酸素要求量)の年間平均値を河川ごとに平均した値が0.5mg/L、さらに各地点のBOD75%値を平均した値も0.5mg/Lであること。0.5mg/Lは環境省が定める報告下限値であり、その下でどの川がより低いかを全国表は区別しない。

もう一つの見出し「全国一級河川の94%で環境基準を満足」も、分母を確かめる必要がある。94%とは、対象となった887調査地点のうち837地点が、それぞれに指定された環境基準を満たしたという意味だ。「日本の川の94%が清流」でも、最上位候補160河川の94%が選出されたという意味でもない。数えているのは調査地点であり、基準値は水域の利用目的によって異なり、河川の代表指標はBODである。

13河川・同率首位すべてが0.5mg/Lの報告下限値。1位から13位の順位はない
対象160河川「水質が最も良好な河川」を選ぶ全国の比較母集団
837 / 887地点一級河川で、それぞれの環境基準を満足した対象調査地点
94%川の本数ではなく、地点ごとの基準満足率
1958年国が主要河川の水質調査を始めた年
20年連続川辺川が2006年の結果から続ける最上位グループ入り

「13の日本一」ではなく、下限値に並んだ13河川

国交省の正式な表現は「水質が最も良好な河川」だ。これは閾値を満たしたグループであり、景観や人気を競うランキングではない。国管理区間の対象地点を河川ごとに平均するため、結果が説明するのは、定められた方法で監視された区間である。全国のすべての湧水、支流、水路、都道府県管理区間を比べたものではない。

地方河川・都道府県流域の特徴と継続
北海道後志利別川
渚滑川
沙流川
札内川
雪解け水、森林源流、季節流量に育まれる北の4河川。後志利別川は7年連続、札内川は3年連続、渚滑川は2年連続。沙流川は3年ぶりに復帰した。
東北荒川・福島県東京の同名河川ではなく、吾妻連峰から福島市へ下る阿武隈川水系の支流。2010年から16年連続。
中部宮川・三重県紀伊山地から伊勢へ流れる。清澄な本流上部と、かつて負荷が大きかった支川・勢田川が、同じ流域に異なる水質史を刻む。
近畿北川・福井県若狭を流れ、全国最上位は5年連続。
中国小鴨川・鳥取県
高津川・島根県
天神川・鳥取県
小鴨川は天神川水系の支流。高津川は中国山地から日本海へ注ぐ。
四国仁淀川・高知県「仁淀ブルー」で知られ、2年連続。選出根拠は色や観光評価ではなく試料のBODである。
九州川辺川・熊本県
五ヶ瀬川・宮崎県
現役最長の川辺川20年連続、五ヶ瀬川13年連続。いずれも山地を源とする。
13河川は検査室の報告下限値で並んだ。正確な見出しは「日本一が決まった」ではなく、「この方法で識別できる最も低い帯に、13の監視河川が到達した」である。

BODは何を測っているのか

BODは、川の水を入れた瓶に対して投げかける、古くて有用な問いだ。水中の微生物が、分解可能な有機物を処理するために、どれだけの溶存酸素を消費するか。日本の標準的な測定では、試料を20度で5日間保つ。下水、食品残さ、家畜排せつ物など、微生物が分解しやすい有機物が多いほど活動が活発になり、酸素消費量とBODは大きくなる。BODが低いことは、有機汚濁負荷が小さく、酸素を必要とする水生生物に有利な条件を示す。

年間平均値は平常的な水準を示す。一方、75%値は基準判定に使う、より厳しい統計だ。毎月の測定値を小さい順に並べ、12回なら9番目を採る。数回の非常に良い試料だけで平均を押し下げても最上位にはなれない。各地点の年間平均値の河川平均と、75%値の河川平均の両方が0.5mg/Lでなければならない。

ただし、0.5は無限に細かい物差しではない。定められた報告下限値である。「0.5」と記録された真の濃度は、その値以下かもしれず、13河川の有機物量が物理的に完全一致したことを意味しない。1秒より細かく表示しない時計で走者を測れば、実際には小さな差があっても同タイムになる。それと同じだ。

最上位グループから分かること、分からないこと
  • 分かる:対象地点で、分解可能な有機物による汚濁負荷が極めて小さかった。
  • 分からない:全区間が測定されたか、未処理のまま飲めるか、水浴時の微生物リスクがないか。
  • BODが直接測らないもの:PFAS、農薬、重金属、医薬品、マイクロプラスチック、窒素・リン、ごみ、土砂、生態系の連続性。
  • 景観順位ではない:色、透明度、森林率、魚の多さ、人々の愛着は別の観察である。

「一級」は水質のA評価ではない

河川法上の「一級河川」は管理上の区分で、水質等級ではない。国土保全上または国民経済上、とくに重要な一級水系に属する河川を指す。小さな支流でも一級水系に入れば一級河川になり得る。「一級」は誰が、なぜ管理するかを示すが、「一級品の水」を保証する言葉ではない。

環境基準も全国一律の一本の数値ではない。河川の各水域は、水道、水産、水浴、農業、工業、日常的な環境保全といった利用目的に応じてAAからEまでの類型を指定される。BOD基準はAAの1mg/L以下からEの10mg/L以下まで段階があり、pH、浮遊物質、溶存酸素、大腸菌数などの基準も組み合わされる。ある地点が「環境基準を満足」したとは、その水域に指定された目標を満たしたということだ。

したがって94%は、力強い数字だが範囲がある。河川はBOD、湖沼的な水域やダム貯水池は該当するCOD基準で、対象887地点中837地点が各地点の基準を満たした。837地点が同じ水質だったわけではない。厳しいAA基準を満たした地点もあれば、異なる利用目的に対応する別の基準を満たした地点もある。

前年の2024年調査は889地点中863地点の97%、2023年は96%だった。今回の94%は注視すべきだが、1年の動きだけで30年以上の改善が逆回転したとは言えない。河川水質は降雨、気温、流量、工事、事故、採水時刻、対象地点の構成で動く。重要なのは、満たさなかった50地点がどこか、同じ区間が繰り返しているか、どの物質と流況が原因かである。

酸素の数字に記された、国の回復史

長期で見ると変化は大きい。国による主要河川の水質調査は1958年に始まった。高度経済成長、都市への人口移動、脆弱な排水規制によって、川が廃棄物の便利な通路へ変わりつつあった時代だ。全国集計は1971年に始まり、その初期には、一級河川調査地点の27%でBOD年間平均値が5mg/Lを超えていた。いまなら厳しい水域類型の目標ではなく、より緩い側に近い値が全国の相当部分を占めていたことになる。

転機の一つは1958年の江戸川だった。製紙工場排水による漁業被害をめぐり、漁民と工場側が衝突した「江戸川漁業被害事件」は、旧水質二法の制定を促した。しかし旧制度は、汚濁が起きた水域を後から指定して規制するため「後追い行政」と批判された。1970年の公害国会で成立した水質汚濁防止法は、公共用水域全体へ規制を広げ、予防と排水基準を強化した。水質の環境基準は1971年に設定された。

法律が骨格を作り、下水管と処理場が日々の仕事を担った。下水道が普及し、工場排水基準が厳しくなり、自治体は国より厳しい上乗せ基準を設け、生活排水も政策の対象になった。国は1969年に河川浄化事業、1975年にダム周辺環境事業を始め、1993年に「清流ルネッサンス21」を開始。1997年の河川法改正では、治水、利水に加えて「河川環境の整備と保全」が法目的に明記された。

多摩川は回復を目に見える形で示した。1960~70年代、首都圏の成長を受け止めた流域では、堰の周辺に合成洗剤の泡が積み上がった。下水道接続と排水規制が進むと、1980年代後半にはアユが大量に戻り始めた。綾瀬川と大和川は、かつてBOD75%値が30mg/Lを超えた。2025年、大和川の代表地点は1.5mg/Lだった。原始の川へ戻ったのではない。規制、インフラ、地域の働きによって、新しい都市河川が作られたのである。

最新報告にも、小さな回復史がある。淀川水系猪名川の利倉地点では、BOD年間平均値が2016年の6.0mg/Lから2025年の2.5mg/Lへ低下した。国管理地点で過去10年最大、3.5mg/Lの改善である。報告下限値には遠くても、負荷の大きい都市河川が実質的に健康を取り戻すことの方が、13河川の表彰に劣らず重要かもしれない。

「清流地図」の中にある複数の物語

13河川のうち4河川は北海道にある。人口密度の低さと広い源流域は、生活排水の直接圧力を小さくし得る。しかし地理は免罪符ではない。酪農、観光、ダム、侵食、道路流出水、排水処理が、何を川へ運ぶかを決める。北海道独自の2025年集計では、環境基準対象93地点のうち85地点、91%が満足。評価20河川中17河川で、河川平均BODが1.0mg/L未満だった。強い結果だが、完全無欠ではない。

福島の荒川は別の物語を持つ。吾妻の火山地形から急流となって福島市へ下り、阿武隈川に合流する。16年連続は山の水だけで達成されるものではない。山地と都市の接点を守る人の行動がいる。球磨川支流の川辺川は、洪水、ダム論争、川が社会へ何を提供すべきかという長い議論をくぐり抜けながら、20年連続で最も低い帯にある。川が実験室の配管ではないからこそ、この継続に意味がある。

宮川水系は、一つの見出しで地理を平らにしてはいけないことを教える。上流・本流の水は全国屈指とされる一方、伊勢市街を流れる勢田川は、歴史的により重い有機汚濁負荷を抱えた。前年の全国報告では、勢田大橋が10年間で国内最大のBOD改善地点だった。同じ流域に、最上位の本流と再生の途上を記憶する支流が共存する。「きれいな川」は全支流に永久に貼れる形容詞ではない。

仁淀川にも別の区別がある。青緑の透明感は「仁淀ブルー」として地域の象徴、観光資源になった。しかし見た目とBODは別の問いに答える。氷河由来の微細土砂で、汚染の少ない水が白く濁ることがある。逆に溶けた汚染物質は透明な水を通過する。優れた流域管理は、美しいイメージを証拠の代わりにせず、もっと調べる入口にする。

なぜ20河川から13河川へ減ったのか

最上位グループは2024年調査の20河川から、2025年は13河川へ減った。「7河川減」は強い傾向に見えるが、このカテゴリーには報告下限値という鋭い境界がある。二つの平均のどちらかが0.5から0.6mg/Lへわずかに動けば、極めて低い有機汚濁のままでも一覧から外れる。0.5へ戻れば、再び選出される。

天候も影響する。大雨は土壌、有機物、道路や市街地の残さを川へ洗い流す。渇水は希釈を弱める。水温上昇は生物反応を速め、水が保持できる酸素を減らす。採水日や地点構成も動く。国交省が長期連続を強調するのは、一度だけの選出より10年、20年の回復力の方が多くを語るからだ。一方、今回外れた各河川について個別の原因診断は示していない。「13へ減ったことが全国的悪化の証明だ」とするのは、データを越えた断定になる。

化学を越えて――虫、五感、市民

健全な川は低BODだけでは完成しない。国交省と環境省は1984年度から、児童・生徒や住民とともに、水生昆虫を指標にした調査を続けてきた。汚濁への耐性が異なる生物は、瞬間の採水ではなく、時間を通じた複合的な状態を映す。2025年、国交省の住民参加型調査は84水系268地点で行われた。カワゲラ、トビケラ、カゲロウなどの指標生物は、技術的な基準を「ここで何が生きられるか」という問いへ変える。

ごみ、におい、透明度、川底の感触も記録する。これらは検査室の代用品ではない。BOD瓶が捉えない次元を補い、魚の大量死、油膜、不法投棄、新しい濁りを早く発見できる人を水辺に増やす。中国地方だけでも50団体、1767人が49地点を調べ、96%の地点が生物判定で「きれいな水」または「ややきれいな水」の二つの区分に入った。

指標同士が一致しないこともある。有機汚濁は少なくても、コンクリート護岸、横断構造物、砂礫の減少によって生息空間が乏しい区間がある。豊かな生物相が見えても、健康リスク物質には狙いを定めた化学分析が必要だ。良い行政は、異なる信号を無理に一つへ潰さず、意味を理解した後で流域の判断に統合する。

次世代の河川リスク

戦後の水質制度は、目に見える工場排水と酸素を奪う有機汚濁へ対抗するために作られた。都市支川、畜産地域、閉鎖性湖沼では今も課題だが、リスクの種類は増えている。日本では2026年4月1日、PFOS・PFOAが水道水の法的な水質基準項目になった。残留性化学物質、医薬品、微細なプラスチックを追うには、BODとは異なる装置、時間軸、規制が必要である。

気候の振れ幅も問題を複雑にする。豪雨は下水道の能力を超え、土砂と汚染物質を一気に下流へ運ぶ。渇水は汚染物質を濃縮し、浅い水を温める。森林管理、農業、地下水、ダム、流量そのものが、一本の瓶で測る濃度と同じくらい重要になる。国が「流域総合水管理」を進める背景には、水質を水量、土地利用、治水、生息環境から切り離せないという基本認識がある。

成功の中には財政課題も隠れる。成熟した下水管と処理場は更新期を迎える。人口が減る農村では、老朽施設を支える使用者も減る。人気の清流観光地は、来訪者、トイレ、ごみ、河川へのアクセスを管理しなければならない。清流は人のいない景観から無料で届く贈り物ではない。維持費を伴う資産であり、下流の利用者に見えにくい仕事を上流地域が担っている。

河川報告を誠実に読むために

第一に、13河川を祝ってよい。複数地点で季節変動を含めて報告下限値へ到達したことは、分解可能な有機汚濁が極めて少ない証拠だ。川辺川、荒川、五ヶ瀬川の長期連続は、その状態を一夏ではなく数十年守れることを示す。

第二に、一覧を免許証にしてはいけない。BODの称号だけで川の水を未処理で飲まない。美しい川に病原体や残留性化学物質がないと推測しない。選ばれなかった川を「汚い」と呼ばない。0.6mg/Lだったかもしれず、国の160河川に入っていないかもしれず、国ではなく都道府県が管理しているかもしれない。

第三に、基準を満たさなかった地点と、厳しい出発点から改善している川にも目を向ける。環境の前進は、有名な青い水を守ることだけではない。駅、倉庫、集合住宅の裏を流れる支川で、下水、油、有機物を地道に減らすことでもある。

日本の2025年結果は、重なった成果として読むのが最も正確だ。13河川が全国表で識別できる最も低いBOD帯に達した。多くの一級河川調査地点が、それぞれの環境基準を満たした。その背景には、漁業被害と衝突、公害法制、巨額の下水道投資、市民調査、半世紀を超える測定史がある。その先にある川は、完全無欠でも、完成済みでもない。見守られている。そして、見守られているからこそ、守り続けることができる。

主な資料と方法

全国結果は2025年1~12月を対象とし、2026年7月24日に公表された。「最も良好」は国交省のBOD基準による区分で、飲用安全性、景観、総合的な生態系の順位ではない。