白神山地の生き物の記録に、小さな哺乳類が加わった。弘前大学は9月2日、日本固有種のミズラモグラが白神山地で初めて確認されたと発表した。暗門の滝近くで得られた標本を調べた成果で、これまで知られていなかった分布を明らかにした。[1]

緩衝地域で見つかった一個体

学術誌「哺乳類科学」の論文によると、拾得されたのはミズラモグラの死体。発見地点は、世界自然遺産の緩衝地域にある標高約320メートルの林道だった。標本は弘前大学農学生命科学部附属白神自然環境研究センターに収蔵された。論文は7月30日に公開されている。[2]

今回の成果は、新種の発見ではない。学名をOreoscaptor mizuraという既知の種について、白神山地での生息を示す記録が初めて得られたということだ。

分布図の空白を埋める

ミズラモグラは、本州の森林にすむ小型のモグラ。県内の従来の記録は主に八甲田山系と岩木山の南側斜面にあり、今回の地点は既知の生息地の中で最も西に位置する。研究者は、白神山地とその周辺に広く分布する可能性を指摘した。[2]

ただし、一地点の記録から、山地全体にどの程度の個体数がいるかは分からない。これまで記録がなかったことも、最近になって移動してきたことを意味しない。新たな生息記録と、動物自身の分布拡大は分けて考える必要がある。

ブナ林の価値を、足元から見る

環境省によると、白神山地は青森県と秋田県にまたがり、その中心部の約1万7,000ヘクタールが世界自然遺産地域となっている。広い原生的なブナ林が残り、多様な動植物がつながる森林生態系を形づくる。[3][4]

森を見渡すと、まず木々の姿が目に入る。今回の記録は、その森を理解するには、目立たない動物の分布にも目を向ける必要があることを示している。既によく知られた地域であっても、生き物の記録が完成しているとは限らない。

次の問いは、どこでどう暮らすか

大学は、ミズラモグラが好む環境や、近縁のモグラ類とのすみ分けには不明点が多いと説明する。今回の発見が、そうした生態の解明につながることを期待している。[1]

一つの標本から始まるのは、森についての新たな問いだ。どこまで生息しているのか、どのような環境を使うのか。今回の記録は、それを確かめる次の調査の足場になる。

出典・参考資料

  1. 弘前大学:白神山地でのミズラモグラ確認(2026年9月2日)
  2. 原著論文:白神山地におけるミズラモグラ Oreoscaptor mizura の初記録(哺乳類科学66巻2号、271–274頁)
  3. 環境省:白神山地・世界遺産地域の紹介
  4. 環境省東北環境局:白神山地の森林生態系

DOI: 10.11238/mammalianscience.66.271