青森のりんごを、タイの売り場へどうつなぐか。青森県は9月16日、一般社団法人青森県りんご対策協議会が、輸出拡大に向けてタイの流通事業者を招いたと発表した。りんご関連施設の視察などを目的とする招請で、県庁への表敬訪問は9月18日の日程として案内された。産地を知ってもらう機会を、継続的な取引につなげる取り組みだ。[1]

秋の収穫期を迎える産地では、販路づくりとともに、海外の客にどのような品質の果実を届けるかが問われる。商談の入り口を広げる仕事と、食べたときの満足を支える仕事。その両方が、青森りんごの輸出を下支えする。

産地への招請で、取引の接点をつくる

県の発表によると、招請の狙いは青森りんごの輸出拡大。県庁での面会では、協議会側とタイの流通関係者が取り組みを報告する計画だった。この発表は訪問を事前に知らせるもので、成約額や輸出数量の増加を公表したものではない。[1]

流通事業者に産地を見てもらう意義は、商品を紹介するだけにとどまらない。編集部は、収穫や出荷の条件について双方が理解を深め、具体的な取引の相談に進むための接点と捉える。ただし、今回の視察でどの施設を訪れ、何を協議したかを、この案内だけから判断することはできない。

売り先を増やす前提は、味への信頼

同じ9月、県のりんご果樹課は別の角度から輸出品質に注意を促した。9月17日付の「りんご生産情報第11号」は、黄色いりんご「トキ」の早もぎを避けるよう呼び掛けている。前年に早く収穫した食味の劣るトキが輸出され、問題になったと説明した。[2]

同号は、黒石での収穫始めを9月29日頃と見込み、熟し方に差があるため、目安となる指標やカラーチャートを使って収穫を分けるよう助言している。これは黒石での見通しであり、全県一律の収穫開始日ではない。また、この注意喚起の輸出先をタイとする記載はない。[2]

海外に届く果実の印象は、産地名だけでは決まらない。適期に収穫し、傷みや病害虫の被害を見分ける地道な作業が、その一個の味と状態を左右する。販路拡大のニュースを読むときにも、園地で積み重ねられる仕事を切り離すことはできない。

園地と選果こん包施設を結ぶ仕組み

タイ向け輸出には、販売促進とは別に、産地側で整える手続きがある。県の2026年度の案内は、生産園地・生産施設と選果こん包施設の登録申請、標準作業手順書の提出などを示している。登録申請は毎年必要とされる。[3]

この仕組みから分かるのは、輸出が生産者一人で完結する仕事ではないということだ。栽培、選果、こん包、出荷をつなぐ体制があって初めて、海外の流通に参加できる。なお、ここでは制度の概要を紹介しており、個別の輸出可否や事業者の適合状況を判定するものではない。

海外販路を、産地の持続につなげる

県が2025年9月に策定した「青森りんご総合戦略」は、担い手と労働力の不足、国内消費の減退を産業の課題として挙げる。生産量40万トン以上、販売額1,800億円以上の確保を目標に掲げているが、これは戦略上の目標であり、今回のタイ向け事業の実績ではない。[4]

販路の先にあるのは、再び選んでもらえるかという問いだ。産地を訪ねる流通事業者との関係づくりと、収穫期の品質管理を重ねることが、継続的な販売を考える出発点になる。招請の成果は、今後の取引や販売の公表資料で確かめていく必要がある。

出典・参考資料

  1. 青森県:タイの流通事業者の招請・表敬訪問案内(2026年9月16日)
  2. 青森県:りんご生産情報第11号(2026年9月17日)
  3. 青森県:タイ向けりんご等の生果実生産園地等登録申請に係る手続き(2026年度案内)
  4. 青森県:青森りんご総合戦略(2025年9月13日)