使える椅子には、奇妙な経済的寿命がある。壊れていなくても、ほとんど値段がつかないことがある。
持ち主には不要になった。一般のリユース店では、再販売の利益が薄すぎて買い取れない。ネットに出すなら写真を撮り、説明を書き、問い合わせへ返事をし、受け渡し時間を調整する必要がある。椅子を配送すれば、送料が椅子の値段を上回ることさえある。
一方、自治体のごみ処理は、その逆を非常に上手に行う。扱いにくい一個の物を、標準化された「廃棄物」へ変える。
「まだ使える」と「売るほどの価値がない」の間。その狭い場所に、明石市の新しいリユース実験がある。
8月21日、明石市とジモティーは魚住地区に、市内初の「ジモティースポット明石魚住店」を開いた。明石市民は、対象となる家庭の不要品を予約なしで持ち込み、引き取り手数料なしで渡すことができる。品物が次の人にそのまま使える状態かを確認し、受け入れられた物は地域内の販売・譲渡へ回る。欲しい人はジモティーで入荷情報を見て、店で実物を確認し、安価で購入する。0円の品もある。
「0円ショップ」という見出しは強い。だが正確には、「0円から」だ。すべてが無料ではない。明石開店時のジモティーの例では、ベビーカー800円、電子レンジ500円、椅子0円。むしろ重要なゼロは反対側にある。受け入れ対象の品を持つ市民は、引き渡すための手数料が0円である。
最も価値のある資源循環は、「ごみ」にならないこと
日本の「リサイクルの国」というイメージは、日本自身が定めた優先順位をかえって見えにくくすることがある。
2000年制定の循環型社会形成推進基本法は、廃棄物・資源利用の優先順位を明確にした。最初に発生抑制。次に再使用。次に再生利用。その後に熱回収。最後に適正処分である。環境省も、リユースをリデュースに次いで優先度の高い取り組みと位置づける。製品を長く使えば、廃棄時だけでなく、代替品を製造するための資源・環境負荷の一部も避けられるからだ。
つまり、椅子を椅子のまま別の家庭へ渡すことと、椅子を解体し、破砕し、素材へ戻すことは同じ「循環」ではない。リサイクルが「この物を何の材料へ変えるか」と問うなら、リユースはその一つ前で「そもそも、まだ物であり続けられないか」と問う。
リサイクルにも選別、輸送、加工、エネルギーが要る。安全性や機能を失った製品には不可欠だが、元の用途はそこで終わる。リユースは、その終了時刻を遅らせる。
循環型経済は矢印の図で描かれる。しかし現実では、「使える椅子を捨てる方が、欲しい人へ渡すより簡単かどうか」で決まる。
なぜウェブサイトに「建物」が必要だったのか
ジモティーは地域のクラシファイドサービスとして成長した。「売ります・あげます」の仕組みは、価値の小さな物に全国配送を使わず、近くの人と人を結びつける。
ただしオンライン取引には摩擦が残る。写真を撮る。投稿する。メッセージへ返す。値段を相談する。知らない人と会う。引っ越し中に十数点を一つずつ出品する。スマートフォンの操作に慣れた人でも面倒で、デジタル取引に不慣れな人にはさらに高い壁になる。
そこでジモティーは、ネット企業なのに物理的な場所をつくった。
「ジモティースポット」の構想は2021年に始まった。同年10月、東京・世田谷区との官民実証が大きな転機になった。コロナ禍による生活様式の変化もあり、世田谷では粗大ごみの申し込みが増え、収集まで1か月を超えることもある状況になっていた。その中には、まだ使える物が多く含まれていた。
区とジモティーは、捨てる前に持ち込める場所をつくった。2021年10月から2022年3月までの約半年で12,854点が集まり、12,206点、約95%がリユースされた。ごみ減量効果は68.3トンと推計され、国の官民連携事例資料では継続時の年間財政効果を約1,705万円と試算した。
示されたのは、「どの自治体にも中古店を一軒増やせばよい」ということではない。ネット上の市場だけでは消せなかった手間を、持ち込み拠点が減らせるということだった。
2000年 — 循環型社会形成推進基本法が、再使用を再生利用より前の優先順位に置く。
2011年 — ジモティー設立。地域内の個人間取引を軸にサービスを拡大。
2021年6月 — 物理的なリユース拠点「ジモティースポット」の構想を発表。
2021年10月 — 世田谷区との不要品持ち込み拠点の実証開始。
2024年 — 店舗型ジモティースポットを新たな事業の柱として本格拡大へ。
2025年 — 全国拠点で約140万点、推計4,300トンのごみ減量を会社が発表。
2026年8月21日 — 明石市初の明石魚住店が開店。
明石は「ゼロ」から始めるわけではない
魚住の店舗は、すでにごみ量の曲線を下げようとしている都市へ入る。
「ゼロ・ウェイストあかし」によると、明石市のごみ処理量は2018年度の95,546トンから、2025年度には約84,000トンまで減った。2031年度目標は81,000トン。2018年度比でおよそ15%削減する計画である。
これは環境スローガンだけの数字ではない。市は新しいごみ処理施設を整備中で、焼却施設は1日276トン以下、資源リサイクル施設も併設する計画だ。明石市は、施設をコンパクトにし、市内で最後になる見込みの最終処分場を長く使うためにも、ごみ減量が必要だとしている。
ここでリユースは財政と設備計画の言葉になる。自治体の「ごみ」になる前に一個の物が別の家庭へ移れば、それは収集、運搬、破砕、焼却、選別、埋立ての対象にならない。
明石はすでに複数の手段を使っている。紙類を回収する「Taco箱」、廃食油から航空燃料へつなぐ取り組み、ハブラシやペットボトルのリサイクル、リサイクル家具の展示販売、不要品買い取り査定「おいくら」との連携。2026年9月には家庭の燃やせるごみで指定袋への移行期間が始まり、2027年3月に本格導入する予定だ。
ジモティースポットがこれらと違うのは、物がほぼそのままの形で出ていけることだ。電子レンジは電子レンジのまま。ベビーカーはベビーカーのまま。棚は棚のまま次の生活へ移る。
「ほとんど値段がつかない物」の経済学
従来の中古市場は、十分な利幅がある物には強い。人気カメラ、高級バッグ、新しいスマートフォン、希少なコレクション。検品、在庫、家賃、人件費、決済、売れ残りリスクを価格で吸収できる。
まだ使える500円の電子レンジは、はるかに難しい。
地域リユースの隠れた敵は、取引コストである。物を使い続ける環境価値があっても、誰かが受け取り、動くか確かめ、置き場所を確保し、見せ、次の家庭へ渡さなければならない。
ジモティースポットは、その費用を複数箇所で同時に下げる。持ち主が自分で運ぶため集荷費を減らせる。オンライン掲載で地域内の需要へ届く。受け取り側が原則店へ来るので配送負担も減る。自治体が「捨てようとしている人」へ制度を案内できる。明石では一般廃棄物収集運搬や清掃、遺品整理などを行う地元事業者オクトパスクリーンズが運営へ加わる。
持ち込み対象は家電、趣味・スポーツ用品、子ども用品、食器、生活雑貨、家具、衣類、本、CD・DVD、ペット用品など。ただし「まだ使える」は厳密な条件である。破損、目立つ汚れ、臭いのある物は不可。家電は通電・動作確認を求められる。家電リサイクル法対象の4品目、大型家具、一定の安全条件を満たさない乳幼児玩具など、受け入れない品もある。
この境界は重要だ。何でも受け入れれば、リユース拠点は無料のごみ捨て場になる。仕組みを続けるには、「まだ商品である物」と「処理すべきごみ」を入口で分けなければならない。
- 明石市民が営業時間内に対象品を持ち込む。予約は不要。
- 次の人がそのまま使える状態かを確認。一部家電は動作確認。
- 専用端末で受付し、受け入れ品は手数料なしで引き渡す。
- 品物はジモティー上に掲載され、実店舗にも並ぶ。
- 欲しい人は実物を見て、安価または0円で購入・引き取り。
- 基準を満たさない物は持ち帰り、通常のリサイクル・廃棄制度を使う。
「もったいない」は、インフラではない
日本のごみ議論には「もったいない」という言葉がよく出る。価値が残っている物を捨てることへの惜しさである。
その感情は大切だ。しかし感情だけでは物は循環しない。
子ども机や炊飯器、食器一箱を「誰かに使ってほしい」と本気で思っていても、譲るまでに一時間かかり、捨てるのに十分しかからなければ、多くの家庭は捨てる方を選ぶ。自治体がリサイクルを呼びかけても、寄付より廃棄の方が簡単な制度なら、行動はそちらへ流れる。ネット市場があっても、見知らぬ人とのやりとりが苦手な人は使わない。
インフラとは、価値観を「標準動作」へ変えるものだ。
その意味で、明石の実験は「ごみは悪い」と市民へ説得する話ではない。決断の順番を設計し直す話である。明石市には粗大ごみ制度があり、大型品は事前申し込みと処理費用が必要だ。市の粗大ごみ案内は今、その前で「リユースを検討してみませんか」と問い、「おいくら」とジモティースポットへの道を示す。
小さな順番の変更だが、これが街角の循環型経済である。捨てる仕組みは残る。ただし、先に「もう一度使えないか」を聞く。
重要なのは「0円」という数字ではない
ジモティーの全国数字は、自治体が関心を持つ理由を示す。会社は2025年、全国のスポットで約140万点のリユースが成立し、約4,300トンのごみ削減効果があったと推計する。明石店の発表時点では311自治体とリユース協定を結び、そのうち42自治体でジモティースポットを運営していた。
2030年の計画はさらに大きい。329店舗へ広げ、年間約8.4万トンのごみ削減を見込む。会社は、対象店舗の2025年平均実績をもとに1店舗年254トンを仮定し、日本の生活系粗大ごみと衣類ごみ計約134万トンの約6%に相当すると説明する。
これは目標であって実績ではない。店舗ごとの成果は、人口、立地、営業時間、住宅事情、持ち込み品、スタッフ、地域参加で変わる。再利用された一個が、そのまま新品一個の製造を減らすとも限らない。受け取った人は、新品を買う予定がなかったかもしれない。残り寿命が短い中古品もある。
それでも、ライフサイクル計算をしなくても理解できるリユースの利点が一つある。同じ機能を持つ物が次の家庭の必要を満たせば、その物にすでに投入された資源、労働、製造エネルギーから、もう一度「役務」を引き出せる。
| 主張 | 証拠が支えること | 証明しないこと |
|---|---|---|
| 「全部0円だ」 | 0円の商品があり、受け入れ対象品は持ち込み手数料なし。 | 店内の全商品が0円であること。 |
| 「店がごみをなくす」 | 使える品を自治体ごみになる前に迂回させられ、過去の自治体実証では高いリユース率が出た。 | 持ち込まれた全品が受理・再利用されること。 |
| 「4,300トン削減した」 | 2025年のリユース件数から、会社が約4,300トンのごみ減量効果を推計。 | 政府が独立測定した全国統計、または全量が焼却・埋立てを免れた実測値であること。 |
| 「リユースは必ずリサイクルより良い」 | 日本の基本原則は、技術的・環境的に適切なら再使用を再生利用より優先。 | 安全性、効率、輸送、残存寿命に関係なく常にリユースが最適であること。 |
店は、一種の「仕分けアルゴリズム」でもある
循環型経済を技術で語る時、デジタル製品パスポート、AI選別、自動価格付け、素材追跡などを思い浮かべやすい。どれも重要になり得る。
だが地域のリユース店は、もっと古い計算を毎日行う。
「この物は、まだ物なのか。それとも、もうごみなのか。」
答えは物理状態だけで決まらない。脚が4本とも丈夫な椅子でも、欲しい人を低コストで見つけられなければごみになる。次の家族が見つかればベビーカーは製品のままだ。まだ温められる電子レンジも、粗大ごみの山の横で誰にも見えなければ循環価値はほぼゼロだが、信頼できる地域の経路へ載れば再び価値を持つ。
明石が行っているのは、自治体ごみの漏斗へ入る前に市場を一つ差し込むことだ。
だからアプリの時代にも「店舗」が意味を持つ。元の持ち主と次の持ち主が同じ時間に出会わなくても、物が待てる。寄付者は価格交渉から離れられる。受け取り手は実物を触れる。自治体が関与することで、リユースは非公式な個人取引ではなく、ごみ減量政策の一部として見える。
残る3,000トンをどう減らすか
明石市の直近値は年間約84,000トン。2031年度目標は81,000トン。残る約3,000トンを魚住の一店舗だけで消すことはできない。
食品ロス、容器包装、紙、プラスチック、事業系ごみ、家庭行動、収集ルール。すべてが関係する。指定ごみ袋は分別をわかりやすくする狙いを持つ。素材別回収は資源を生産へ戻す。生ごみ・食品ロス対策は有機物を減らす。新しい処理施設は、最後まで残る物を安全に扱わなければならない。
リユースが担当するのは狭い。しかし思想的には重要な領域だ。「ごみ」になる直前の一瞬である。
明石魚住店の最初の数か月は、全国目標より実務的な問いへ答える。市民は何を持ってくるか。何割が断られるか。大型で安価な物はどれほど早く次の家へ行くか。長く残るカテゴリーは何か。これまでネット販売を使っていた人が店へ移るのか、それとも粗大ごみに出していた人の行動が変わるのか。便利さは、本当に処分行動を変えるのか。
地味な問いである。循環型経済は、こういう問いで現実になる。
都市が循環型になるのは、ごみを上手に処理できるようになった時ではない。まだ使える物が「ごみ」と呼ばれる前に、次の人へ届くようになった時だ。
だから明石店で最も面白い品は、最も安い一脚かもしれない。0円の椅子だ。
その価格は、木材、金属、工場の電力、輸送、働いた人の時間についてほとんど何も語らない。ただ「この場所、この瞬間に、次の家へ動かすために必要な市場価格が0円だった」と語るだけだ。
誰かが持ち帰れば、その椅子は小さな脱出に成功する。破砕されない。溶かされない。焼却炉にも入らない。別の材料へ生まれ変わる必要さえない。
ただ、椅子のままでいる。
- 明石市「不要品のリユース(ジモティースポット)」
- ジモティー「ジモティースポット明石魚住店のご案内」
- ジモティー、2026年8月7日「明石魚住店」開店発表
- 明石市「ゼロ・ウェイスト あかし」2026年7月号 — ごみ処理量と2031年度目標
- 明石市「指定ごみ袋の導入について」
- 明石市「新ごみ処理施設整備・運営事業」
- ジモティー「2025年のリユース成立数約140万点・ごみ削減量約4,300トン」
- ジモティー、2021年6月「ジモティースポット」構想発表
- 地方創生SDGs官民連携プラットフォーム — 世田谷区×ジモティー事例
- 環境省「循環型社会形成推進基本法の概要」
- 環境省「使用済製品等のリユースの促進について」
編集注:2025年の4,300トンおよび2030年目標は、品数と平均重量等を用いたジモティー側の推計値として記載した。「0円」は一部の商品および受け入れ対象品の無料持ち込みを指し、全商品が無料という意味ではない。所在地について、明石市の案内ページは現時点で「魚住町清水2372-4」と掲載する一方、ジモティーの専用店舗ページと8月7日の発表は「2373-4」とし、店舗ページの地図リンクも後者を示す。本稿は運営者の現行店舗ページに合わせ2373-4を採用した。
