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2026年7月15日 水曜日インフラ・都市・防災・技術
1 US Dollar = 162.30 Japanese Yen最終更新 · 2026年7月14日 9:52 JST
日本の昔ながらの住宅街に並ぶ多数の電柱と架空線
日本は公共的な効果が高い場所から電柱をなくしている。しかし住宅街の空を覆う電力・通信線の多くは、今後何十年も残る。Illustration: JAPAN.co.jp
日本の都市を学ぶ

なぜ日本の電柱はなくならないのか

新しい国の計画が始まり、災害の教訓は重く、自治体は空を取り戻そうとしている。それでも日本には約3600万本の電柱、地下埋設物が密集する狭い道、何百万もの引込線がある。1キロを掘る事業に何年もかかる国で、現実的な将来は「重要な場所の電柱が減る」ことであり、列島全体から電柱が消えることではない。

短い答え――全廃ではなく、優先順位を付けている

日本は無電柱化を加速している。しかし2026年6月2日に決定した第3次無電柱化推進計画は、すべての電柱を撤去する約束ではない。2030年度までに約1000キロの整備を実現し、新たに約4000キロで計画を策定する。重点は、電柱倒壊が緊急輸送を妨げる道路、歩行者に危険な道、世界遺産や重要な景観を損なう地区である。

救急病院への道、避難路、児童が歩く狭い通学路では、1本の電柱をなくす便益が大きい。一方、利用者の少ない農山村の末端線や、すでに信頼性が高い住宅線をすべて地中化すれば、1世帯当たりの費用は膨らみ、安全性の改善は小さい場合がある。政策は「空を全部きれいにする」という視覚的理想から、危険度に基づくインフラ投資へ移っている。

既存網の規模が慎重さの理由を示す。国の資料は、電力会社とNTTの電柱を合わせて約3600万本としてきた。2016年の無電柱化法成立後も総数は増加した。2023年度には電力柱・通信柱を約23万7000本新設し、約19万5000本撤去したため、差し引き約4万2000本増えた。

約3600万本国内の電力柱とNTT通信柱。
約1000km第3次計画で2030年度までに整備を実現。
約5億円/km従来型工事でよく示される道路1キロ当たりの規模。
平均約7年電線共同溝事業に要する期間。

第一の授業――電線を土に入れるだけではない

架空配電の道路は、機能が見える仕組みだ。電柱は6.6キロボルト配電線、低圧線、変圧器、開閉器、街灯、複数の通信ケーブルを支える。そこから各住宅、店舗、集合住宅、信号へ引込線が伸びる。

地中式は、その機能を地下で再現し、点検可能で、乾燥・冷却・電気的隔離を保たなければならない。管路や電線共同溝、接続桝、ケーブル接続部、各建物への引込管を造る。変圧器や開閉器は消えるのではなく、多くは地上の箱に移る。十分な場所があれば建物内に置く。空は広がるが、機器のない道になるわけではない。

方式強み制約
架空線安く速く建設でき、故障箇所が見え、修理や新規接続が比較的容易。風、倒木、飛来物、火災、柱の倒壊に弱い。歩道と緊急道路を塞ぎ、景観を乱す。
電線共同溝電力と通信を地下空間にまとめ、道路から電柱を撤去できる。土木費が高く、関係者が多い。地上機器と点検口の場所が必要。
単独地中化道路事業がなくても電力レジリエンスを狙える。地域に合う簡素な設計も可能。電線管理者の負担が増え、将来の点検と他者調整は必要。
裏配線・軒下配線全面掘削をせず歴史的な表通りから電柱を移せる。民有地の合意が必要で、すべての街区には使えず、見た目の負担を裏側へ移すだけの場合もある。

言葉を分ける

地中化は電線を地下へ入れること。無電柱化は道路から電柱をなくす結果であり、裏配線や軒下配線でも実現できる。政策用語は、すべての場所で同じ工法を採用することではなく、道路上の電柱をなくすことに焦点を当てている。

なぜ1キロに巨額の費用がかかるのか

費用の中心はケーブルそのものより道路である。図面にない埋設物を調べ、上水道、下水道、ガス、既存通信管を避け、支障物を移す。地上機器の場所を交渉し、住宅と店舗への出入りを保ち、交通を規制し、掘削する。管路と桝を造り、全需要家を切り替え、旧線と電柱を撤去し、舗装を戻す。

従来型工事は道路1キロ当たり約5億円と表現されることが多い。このページの為替なら約308万ドルである。ただし道路幅、電力需要、地質、交通規制、既存埋設物によって大きく変わる。全国一律の単価ではなく、規模を理解する目安だ。

電線共同溝方式では道路管理者が共用空間の多くを造り、電力・通信会社がケーブルと関連設備を施工する。国、自治体、電線管理者の費用は、予算、補助、規制料金を通じて最終的に納税者や利用者へ配分される。したがって経済問題は「日本に払えるか」だけではない。老朽化する橋、水道、学校などより前に、どの道へ投資する価値があるかである。

規模を計算する

1キロ5億円なら、1000キロで単純に約5000億円になる。仮に36万キロの網の10分の1を同じ単価で地中化すると18兆円だ。電柱本数を道路延長へ単純換算できないため、これは説明用の試算にすぎない。それでも5年計画の数字から全国全廃を想像できない理由は分かる。

狭い道路は「三次元のパズル」

日本の多くの住宅街は、徒歩と荷車の道から成長した。建物は道路に近く、歩道はないか狭い。浅い地下には水道、下水、ガス、通信がすでに詰まっている。共同溝には横方向と深さ方向の空間が必要で、地上変圧器は車いす、見通し、店舗入口、消防活動を邪魔しない場所に置かなければならない。

そのため静かな路地が広い幹線道路より難しいことがある。幹線は工費も交通調整も大きいが、歩道と反復できる断面を確保しやすい。狭い道に高さ約1.45メートル、奥行き約0.45メートルの機器を置けば、電柱撤去で取り戻すはずの歩行空間を箱が占める。民有地へ置くには所有者の同意がいる。

制度上の地下空間も混雑している。道路管理者、一般送配電事業者、NTTなどの通信会社、ガス、水道、下水、警察、地権者、施工会社が、異なる資産、工程、法的責任を持つ。1者の設計変更が全員を動かす。

全員が賛成しても平均7年かかる理由

国交省資料は電線共同溝事業の平均期間を約7年とする。事前協議、測量設計、支障物移設、本体工事、各事業者のケーブル敷設と試験、何千もの引込線の切り替え、最後の抜柱という順序がある。

共同溝が完成しても電柱はすぐ抜けない。電気、電話、光回線、ケーブルテレビ、街灯の使用中回線をすべて移さなければならない。不在所有者がいて、民有地工事が必要で、事業者は同日に一斉切り替えできない。「工事が終わった」ように見える道路に、最後の未切替線を支える電柱がしばらく残るのはこのためだ。

国と自治体は同時施工、包括発注、三次元デジタル調査、標準化された低コスト工法を進める。浅層埋設、小型ボックス、側溝空間、直接埋設は掘削を減らす。しかし何が地下にあるかを把握し、数十年間安全に維持する必要までは消せない。

防災――地中は「ある故障」に強く「別の故障」に弱い

無電柱化の最も強い根拠は道路啓開である。国の計画によると、2024年の能登半島地震では約3480本の電柱が倒壊・損壊し、電力・通信復旧だけでなく道路啓開の支障となった。台風、倒木、飛来物も架空網を倒し、狭い道を塞ぐ。

地中ケーブルは風と大半の飛来物から守られ、避難路に倒れ込まない。1995年の阪神・淡路大震災でも、強い揺れの地域における地中配電設備の被害率は架空設備より低かったとの比較がある。

ただし「地下なら災害に強い」は半分だけ正しい。地盤変位、液状化、浸水、塩水、接続部損傷はケーブルや管路を壊す。架空線の断線は見つけやすく、仮復旧もしやすい。地下故障は場所を特定し、掘削し、狭い空間で直す。資源エネルギー庁は、損傷した場合の地中設備の復旧に架空設備の約2倍の時間を要する場合があると説明している。

レジリエンスには二つの問いがある。壊れる確率はどれだけか。壊れた後に直すのはどれだけ難しいか。地中化は前者を下げても、後者を上げることがある。

合理的な戦略は選択と多重化である。電柱倒壊が連鎖的被害を生む緊急輸送道路、病院、避難拠点、孤立しやすい地域で地中化し、区分開閉器、別系統からの供給、移動電源、浸水対策、復旧計画を組み合わせる。ケーブルの場所だけでは強い電力網にならない。

日本はどのように「電柱の国」になったのか

明治期
電信、電話、電力網が急速に広がった。地中土木が高価だった時代、架空線は延長しやすい近代インフラだった。

1923年
関東大震災後の復興で道路と都市設備を近代化したが、全国の配電は経済的な架空方式が標準であり続けた。

1945年以後
都市を早く再電化・再接続する必要があった。道路を全面的に造り直さず電柱を立てられた。高度成長期には郊外化、家電、電話の普及で年間数十万本が増えた。

1966年
東京・銀座通りで、電線管理者による現代的な地中化の先駆的事例が完成した。

1986年
第1期電線類地中化計画が始まり、おおむね10年間で1000キロ程度を掲げた。当初は大規模商業地の「顔」となる道路が中心だった。

1995年
電線共同溝法が費用と法制度の枠組みを強化。同年の阪神・淡路大震災で防災性能が重要課題となった。

2001年前後
ブロードバンドと光ファイバー需要が急増し、既存・新設の架空ルートも使われた。デジタル化は電柱を減らすだけでなく、線を増やす力にもなった。

2013年
道路法改正により、防災上重要な道路で新設電柱の占用制限を強められるようになった。

2016年
無電柱化推進法が成立し、国と自治体の計画、新設抑制の原則を定めた。

2021年
第2次の法定計画は約4000キロへの着手を掲げ、防災、歩行安全、景観を重点化した。

2023年
電力のレベニューキャップ制度に、2023~27年度の共同溝・単独地中化1891キロ分の費用が組み込まれた。

2026年
第3次計画が2030年度の成果指標を定め、優先緊急道路を今後30年程度で概成する長期像を示した。

海外比較は正しい――しかし条件が抜けている

国の資料は東京23区約8%、大阪市約6%を、ロンドン、パリ、香港などの100%近い数字と比較してきた。遅れは現実だが、定義、対象区域、復興史、道路所有、密度、低圧線や通信線を含むかは異なる。

欧州の中心部には、道路再建時や地下需要が現在ほど詰まる前に地中網を整えた場所がある。新規開発なら住民が入る前にすべての事業者を調整できる。生活中の日本の路地を後から掘る方が、空き地に無電柱の住宅地を設計するより高い。だから既設電柱の撤去だけでなく、新設を防ぐ方が費用対効果は高い。

災害条件も違う。地中化は風雪に非常に強いが、浸水する地上機器、地震変位、津波には別の設計がいる。「海外都市にできた」は野心の根拠にはなるが、地域工学を不要にはしない。

芦屋が示す「可能性」と「時間」

神戸と大阪の間にある兵庫県芦屋市は、「電柱・電線のないまち」を多くの自治体より強く追求してきた。市の公式計画は2020年4月時点で、市道の無電柱化延長32.98キロ、無電柱化率14.9%とし、この指標で全国市町村の最上位だった。

芦屋は、政治的なリーダーシップ、景観政策、住民支持、継続予算が目に見える成果を生むことを示す。同時に、裕福で小さく、明確な都市像を持つ市でも全域完成には遠い。地区ごとの事業は続き、ふるさと納税も活用している。先進例は進歩が可能な証拠であって、全国問題が簡単な証拠ではない。

東京の新計画――故障の影響が大きい場所へ

東京都は2026年6月30日、「首都防衛」を軸に計画を改定した。5年間で新たに約320キロへ着手し、事業中の約400キロと合わせ約720キロを推進する。環状八号線内側や防災拠点アクセスを重点化し、区市町村支援、DX、同時施工、島しょ強靱化、宅地開発の新設禁止を強める。

これは一種のポートフォリオである。都心幹線、第一次緊急輸送道路、駅周辺、島の生命線は、失敗時の影響が違うため扱いも違う。最難関は数が多く、狭く、自治体予算に依存する区市町村道だが、まさにそこで電柱が歩行者を最も妨げている。

誰が払い、誰が決めるのか

電柱は公道にあっても、複数企業の設備を載せ、民間建物へ供給する。道路管理者は事業を指定し、一定の占用制限を課せるが、使われている回線を切ることはできない。電力・通信会社は安定供給を維持し、適正費用を回収する。住民は広い歩道を望んでも、自宅前の地上変圧器や長年の夜間工事には反対するかもしれない。

費用は税、地方債、開発価格、規制された電力・通信料金のどこかに現れる。全利用者が裕福な一地区の景観工事を負担するなら公平性が問われる。自治体が景観だけを負担すれば防災投資が不足し得る。防災、バリアフリー、景観、道路更新との同時施工という便益を明示すれば、費用分担を説明しやすい。

「最後の1本」ではなく「増え続ける入口」の問題

選定した公道で新設を禁じても、全国本数は増え得る。区域外の新築住宅、再生可能エネルギー設備、各種施設には接続が必要だ。2021年調査では純増要因の約4分の3が民地、約2割が再エネ接続だった。撤去政策と新規需要政策を同時に動かさなければならない。

どこで撤去の価値が最も高いか

優先場所便益が大きい理由地中化と併せて必要なこと
緊急輸送道路倒れた柱が救急車、消防車、がれき撤去を止める。別系統供給、耐震継手、点検可能な桝、道路計画との統合。
病院・避難拠点長期停電の人的損失が特に大きい。複数供給路、非常用発電、燃料、浸水対策。
通学路・バリアフリー経路1本の撤去が児童や車いすの歩行幅を回復する。地上機器で再び道を狭めない。
歴史・観光地区眺望が地域性と観光価値を高める。機器、照明、看板、将来接続の意匠ルール。
新規開発・道路改築舗装前の調整で再掘削と後付け費用を避けられる。将来の架空線追加を防ぐ規則。
遠隔地の単一供給路暴風・土砂災害で非常に長い停電になり得る。地中化と多重化、マイクログリッド、地域電源を比較。

速く、安くする五つの方法

一度だけ掘る

水道、下水、ガス、道路更新、再開発と管路を調整する。最も安い掘削は、別の必要工事ですでに開けた穴である。

標準化と現場判断を両立する

浅層管、小型ボックス、共用管は材料と掘削を減らす。反復条件は標準化しつつ、地質、浸水、需要に合わない工法を強制しない。

地下を地図化する

正確な三次元記録は、予想外の支障、設計変更、埋設物損傷を減らす。地味だが、不確実性こそ大きな費用である。

新設を防ぐ

適切な新規住宅地は最初から無電柱で設計し、再エネ接続も調整する。将来の後付け工事を一つ避ける方が、現在の工事を一つ急ぐより価値がある場合が多い。

発表でなく成果を測る

「協議着手」「管路完成」「ケーブル移設」「抜柱」は別の段階である。2021~25年度計画は約3700キロで協議を始めたが、管路完成はその一部だった。住民が実際に得た結果を示すべきだ。

結論――広い空は希少なインフラ成果である

電柱の多さは、日本の技術不足を意味しない。急速な電化、安価な拡張、密集市街地、戦後復興、通信需要の増加という、過去の条件下で合理的だった決定の蓄積である。今は条件が変わった。都市の高齢化、強い台風、バリアフリー、観光、地震後の道路啓開が撤去価値を上げる。一方、建設費、老朽水道・交通との予算競争、生きたネットワークの複雑さが速度を抑える。

正しい目標は劇的な全国本数ではない。致命的な道路閉塞を減らし、停電を短くし、歩道の有効幅を広げ、歴史的街並みを良くし、不要な新設を防ぎ、ライフサイクル費用を下げることだ。地下ケーブルが答えの場所もあれば、裏配線、系統多重化、強い電柱、地域電源の方が1円当たりの防災効果が高い場所もある。

日本の空は街区ごと、十年ごとに変わる。最も重要な線から消え、多くの日常的な線は見え続ける。それは政策失敗ではない。美しい都市という願いが、停電させずに再建しなければならない、生活中で地震の多い国の現実と出会った結果である。

主な資料・さらに学ぶために

  1. The Japan Times(2026年7月13日)— 日本の無電柱化課題の最新概観。
  2. 国土交通省「無電柱化の推進」 — 政策、目的、計画、技術資料の入口。
  3. 国交省「第3次無電柱化推進計画」(2026年6月)— 2030年度目標と重点対象。
  4. 国交省「第3次計画 その他参考資料」(2026年)— 最近の進捗と実施データ。
  5. 国交省「取組状況」(2025年)— 2023年度の新設・撤去本数。
  6. 国交省「無電柱化の推進」調査資料(2022年)— 電柱数、歴史、海外比較、工法。
  7. 国交省「コスト縮減の手引き」(2024年)— 浅層埋設、小型ボックス、低コスト化。
  8. e-Gov「無電柱化の推進に関する法律」(2016年)— 目的と責務。
  9. e-Gov「電線共同溝法」(1995年)— 共同溝の法的枠組み。
  10. 経産省「電力レジリエンス強化の観点からの無電柱化」(2021年)— 費用、地震被害、復旧時間。
  11. 資源エネルギー庁「対応方策」(2022年)— 高便益区間と利用者負担。
  12. 「電力における無電柱化の取組」(2022年)— 新設要因と事業者の取組。
  13. 東京電力パワーグリッド「配電線」 — 電線管理者の役割と多様な工法。
  14. 東京都「無電柱化計画の改定」(2026年6月30日)— 5年間約720キロの計画。
  15. 東京都建設局「東京の無電柱化」 — 計画、進捗、技術資料。
  16. 芦屋市都市計画マスタープラン — 市道32.98キロ、14.9%。
  17. 芦屋市「無電柱化推進事業」(2026年)— 現在の目標と寄付活用。
  18. 国交省「無電柱化の変遷」 — 1986年以降の国の計画。
  19. 国交省「基本的方向性」(2020年)— 平均7年の事業期間と改革。
  20. 国交省「市街地開発事業の無電柱化ガイドライン」(2026年6月)— 狭い道路と地上機器。