一つの岸壁、海が暮らしを支える二つの方法

一隻は海水を「知識」に変える。もう一隻は空の甲板を、車を満載した動く都市へ変える。東京は「海の日」、その二つの仕組みを同じ水辺に置く。

公式の「海の日記念行事2026」は、江東区青海の東京国際クルーズターミナルで午前10時から午後5時まで。メイン会場は入場無料で、総合海洋政策本部、国土交通省、日本財団が共催する。官庁、海運・造船団体、教育機関、海の仕事に関わる組織が、展示、演奏、体験プログラムを展開する。

主役の2隻は保存船ではない。「凌風丸」は2024年3月の引き渡しから、まだ本格運用の初期にある。「LAZULITE ACE」は2026年3月に竣工したばかりだ。一方は、宇宙からでは同じ精度で得られない北西太平洋の現場データを集める。もう一方は、一航海で小型車換算7000台を運ぶ。

10:00〜17:00ターミナルのメイン行事。入場無料。
10:00〜14:00「凌風丸」見学受付。当日参加。
全長199.93 m新造船「LAZULITE ACE」。
7000台小型車換算の最大積載規模。

今日、実際に入れるのはどこか

「公開」という言葉には条件がある。気象庁船は当日の機会だ。主催者は「凌風丸」について、午前10時から午後2時の受付終了まで、誰でも乗船見学できると案内する。ただし、混雑、天候、運航上の事情で入場が変わる可能性はある。締め切り間際ではなく、十分早く着く計画がよい。

「LAZULITE ACE」は別である。約90分の船内見学は600人を事前募集し、応募多数の場合は抽選。小学生、中学生、高校生のいずれかを含む6人までのグループだけが対象だった。応募期間は6月1日から28日まで、当選通知は7月6日から。当選者は受付メールと申込者全員の本人確認書類を持参する。

募集は終了した。だが、ターミナル全体が閉じるわけではない。商船三井によれば、館内の操船シミュレーター、船員の仕事紹介、MOLアンバサダーの研究発表、ワークショップや展示は船内見学の事前申込がなくても見られる。ステージと他団体のブースも開かれている。

体験時刻7月20日の参加方法
「凌風丸」船内見学10:00から、受付終了14:00当日受付。公式には時間内なら誰でも見学可。早めに到着し、当日の誘導に従う。
「LAZULITE ACE」船内見学10:00〜17:00の指定集合時刻、約90分事前抽選のみ。応募は6月28日に終了し、当日参加枠は案内されていない。
商船三井の館内企画10:00〜17:00の会場内館内ワークショップと展示は、船内見学の予約不要。
展示・ステージ10:00〜17:00メイン会場は入場無料。天候・運営事情で変更または中止の場合がある。
「入場無料」は、全ての船へ自由に入れるという意味ではない。今日の要点は明快だ。「凌風丸」は当日受付、「LAZULITE ACE」の抽選は終了している。

「凌風丸」――海に覆われた惑星を読む85メートルの研究室

4代目「凌風丸」は全長85.63メートル、幅14メートル、航海速力14ノット。気象庁の国内総トン数は1986トンで、建造したジャパン マリンユナイテッドは国際総トン数2373トンと記す。二つの船体があるのではなく、適用するトン数制度の違いによる。建造者資料での定員は48人。

目に見える機械は、長い時間をかける観測のためにある。CTD(電気伝導度水温水深計)は専用クレーンとウインチで水深6000メートルまで下ろされ、圧力、水温、塩分を測る。周囲の採水器は指定した深さの海水を採り、溶存酸素、栄養塩、海洋の炭酸系を分析する。航走中も、大気と表面海水中の二酸化炭素を観測する。

船内には三つの観測室がある。第1は主に温室効果ガス、第2は海洋生物を含む海水成分、第3は風向・風速、波高などの気象要素を扱う。三室を直線の通路で結び、試料と人が効率よく移動できる。船橋後方の遠隔操縦室からは、観測時に甲板の機器と作業を見ながら操船できる。

推進装置は港から港へ移動するだけのものではない。ディーゼル駆動の可変ピッチプロペラと、電動のアジマスポッドを前後に置く二重反転ハイブリッド方式。後方のポッドは360度に推力を向け、単独で短距離を低速移動できる。深海観測に必要な、安定した位置と速度を保つための設計だ。

項目凌風丸LAZULITE ACE
役割海洋・海上気象観測自動車・トラック専用輸送
引き渡し2024年3月1日2026年3月6日
全長 / 幅85.63 m / 14.00 m199.93 m / 38.00 m
総トン数国内1986トン、建造者資料の国際総トン数2373トン7万7695トン
航海速力14ノット約18ノット
特徴的な能力水深6000 mまでのCTD観測、定員48人小型車7000台、載貨重量1万8435トン

衛星時代にも、なぜ気象庁は船を必要とするのか

衛星は海面を繰り返し走査し、アルゴフロートは無人で浮沈する。それでも船は過去の道具にならない。気象庁が説明する通り、海面から海底近くまで高精度の値を測り、遠隔観測では代替しきれない化学・生物成分を採取できるのは、今なお船舶観測の強みである。

船は上空も見る。東シナ海などから流れ込む水蒸気は、日本に大雨をもたらす線状降水帯の材料になる。GNSS受信機は、大気中の水蒸気が測位衛星の電波をわずかに遅らせる性質から、船の上空にある水蒸気量を求める。「凌風丸」は水蒸気流入が予想される海域へ機動的に進み、高層・海上観測と合わせて、線状降水帯の予測精度向上を支える。

自然界で海と天気は別部署ではない。海中に蓄えられた熱、海水が吸収する炭素、大気へ入る水蒸気は一つの結合系にある。「凌風丸」の見学は、明日の防災情報と、数十年の気候記録を支える同じ基盤の内部を見ることになる。

1937年から、四つの船が継いだ一つの名

現在の船名は、昭和12(1937)年に竣工した中央気象台の初代に始まる。1180トンの「凌風丸」は、東北地方の冷害対策に役立つ海洋観測と、日本南方の気象観測のために建造された。戦時下では国家の軍事体制に組み込まれ、役割は変質した。戦後の観測は、その断絶から再建された。

昭和41(1966)年に1599トンの2代目が登場し、海洋観測機器を充実させ、気象庁観測船として初めて気象レーダーを備えた。平成7(1995)年には1380トンの3代目が就航し、約30年働く。2024年の4代目は、観測と操船能力、居住環境を改め、窒素酸化物規制対応装置とバラスト水処理装置も備えた。

四つの船体を通じ、「気象観測船」が問う対象は広がった。初期は海況と地域気候、予報のための観測。そこへ二酸化炭素、海洋酸性化、深層の昇温、生物地球化学、そして集中豪雨のための洋上水蒸気が加わった。名は残り、問いは増え続ける。

東経137度――一日の見学に隠れた半世紀の仕事

「凌風丸」の名に結び付く最大の成果は、劇的な一航海ではなく反復である。1967年冬、2代目は東経137度線に沿う観測を始めた。初期の測線は志摩半島沖からニューギニア沖まで約3900キロ。島や海山の局地的影響をできるだけ避けながら、黒潮、北赤道海流など北太平洋の大きな流れを横切る。

1972年に夏季観測が加わり、年2回の長期記録が軸になった。水温、塩分、溶存酸素、栄養塩、クロロフィルを継続し、科学の進展とともに二酸化炭素や炭酸系の項目を増やした。船と測器は変わっても、品質管理によって比較できる時間列を守った。

継続そのものが発見を生んだ。東経137度線のデータは100本を超える学術論文に使われ、そのうち7本がIPCC第5次評価報告書に引用された。水塊、熱、溶存酸素、海洋への二酸化炭素蓄積、酸性化の変化を捉え、2016年には北太平洋海洋科学機関の海洋監視功労賞を受けた。

公開日にCTDを見ると、センサーと採水器を環状に並べた機械に見える。歴史的には時間機械だ。同じ線、同じ深さ、比較できる精度で下ろし続けることで、ゆっくりした地球の変化が数字になる。

「LAZULITE ACE」――海に浮かぶ立体道路

自動車船が答えるのは別の問いである。完成した機械を、コンテナに詰めずに何千台も海の向こうへ送るにはどうするか。PCC・PCTCと呼ばれる自動車・トラック専用船は、立体駐車場を船体で包んだような構造だ。車は船尾や舷側ランプから自走して入り、船内坂路を上り、狭い間隔で並べられ、航海中に動かないよう固縛される。

今治造船グループの多度津造船が建造した「LAZULITE ACE」は、3月6日に引き渡された。全長199.93メートル、幅38メートル、型深さ38.76メートル。商船三井は船の高さを約50メートルと案内する。総トン数7万7695トン、航海速力約18ノット、小型車換算7000台。リベリア船籍の新造船にとって、今回の寄港は市民への「お披露目」にもなる。

船倉では隔壁を減らした構造と、従来より幅広く直線的なランプが車の経路を単純にし、安全性と荷役効率を高める。リフタブルデッキは甲板の高さを変え、乗用車だけでなくトラックやトレーラーも積める。当選した見学者が見るのは、外壁の巨大さだけではない。ブリッジ、船員の仕事、自動車積み付けの実演が船の中身を語る。

「追浜丸」から7000台積みへ

この船の後ろには61年の産業史がある。昭和40(1965)年、商船三井は専用の荷役装置を持つ日本初の自動車専用船「追浜丸」を就航させた。日本車輸出が急伸する時代だった。約1200台規模で始まった輸送は、いまや小型車7000台を運ぶ船へ成長し、同社グループは約100隻の自動車船を運航する。

ロールオン・ロールオフという基本発想が、貨物の扱いを変えた。従来型の雑貨船のように自動車を一台ずつ吊り上げず、自走して積む。一方で、多層甲板、長い車路、換気、防火、緻密な固縛という新しい建築が必要になった。高く平らな船側は風を強く受けるため、抵抗や斜航を抑える船型設計も欠かせない。

船名の「ACE」は、MOL Auto Carrier Expressという自動車輸送ブランドを示す。「LAZULITE ACE」は、その系譜と、青い船体のLNG燃料船世代を重ねる。見学対象を青少年を含むグループとしたのも意図的だ。遠くから箱に見える船を、航海士、機関士、荷役計画、船員生活からなる職場として見せるためである。

LNGは排出を減らすが、気候問題を終わらせない

建造者によれば、「LAZULITE ACE」は従来の重油燃料船に比べ、運航時の二酸化炭素を25〜30%、硫黄酸化物をほぼ100%、排ガス再循環装置の併用で窒素酸化物を80〜90%減らす。LNGタンクから自然に生じるボイルオフガスは、発電機とボイラーで利用できる。

重要な技術上の主張だが、ゼロ排出宣言ではない。造船所が示す数字は、本船と従来燃料船を比べたもの。国際海事機関(IMO)の燃料ライフサイクル評価は、原料の採取・燃料製造、輸送・供給、船上利用までを通して見る。対象は二酸化炭素だけでなく、メタンと一酸化二窒素も含む。燃えずに出る「メタンスリップ」も、メタン自体が強い温室効果ガスであるため重要だ。

したがって、青い船は移行技術として正確に読める。硫黄・窒素の大気汚染を大きく減らし、公表比較では直接の二酸化炭素も抑える。しかし海運は、燃料の全ライフサイクルで脱炭素を進めなければならない。炭素と海の変化を測る観測船の隣に並ぶことで、その未完の仕事まで見える。

レインボーブリッジの「外側」に造った玄関

東京港が国際貿易港として正式に開港したのは昭和16(1941)年5月20日。1960年代末からのコンテナ化が港を変え、青海と大井の水辺は、食料、エネルギー、工業製品を首都圏へ運ぶ基盤になった。海の日会場は、その新しい章に属する。

東京国際クルーズターミナルは2020年9月10日に開業した。青海の立地はレインボーブリッジより海側にある。近年の超大型クルーズ船が橋の下を通れず、従来の晴海施設へ入れないという物理的な問題を解いた。4階建て、延べ1万9000平方メートル。ボーディングブリッジ2基を備え、岸壁は430メートル、水深11.5メートル。

コロナ禍で開業時の賑わいは計画より静かになったが、国際クルーズは2023年に再開した。2025年の東京港へのクルーズ船入港は83回となり、ターミナル開業後で最多。2026年7月20日、旅行者のための建物は働く船の教室へ変わる。客船ターミナルもまた、産業の水辺だと分かる。

1876年の帰港から、第19回功労者表彰まで

「海の日」の歴史は、別の官船から始まる。明治9(1876)年7月20日、明治天皇は北海道・東北巡幸を終え、灯台巡視船「明治丸」で横浜へ帰着した。この日付を記念し、1941年に「海の記念日」が制定された。後の国民運動で祝日化され、1995年に法律が成立、1996年に初の「海の日」。2003年から7月20日の固定日ではなく、第3月曜日となった。2026年は、その月曜日が再び7月20日である。

祝日法上の趣旨は「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」こと。東京会場は抽象的な言葉へ部品を与える。観測、貿易、船員、造船、救難、政策、科学、教育だ。

午前10時30分からは開会式に続き、第19回海洋立国推進功労者表彰式が行われる。この内閣総理大臣表彰は、科学、水産、海事産業、普及啓発、自然環境などで功績を挙げた個人・団体を顕彰するため2008年に創設された。第1回も「海の日」記念行事の中で開かれた。祭典と奉仕をつなぐ仕組みであり、海洋国は船だけでなく、知識と制度を作る人々から成ることを示す。

節目今日への意味
1876年7月20日、「明治丸」が横浜着現代の祝日のもとになった航海。
1937年初代「凌風丸」竣工89年に及ぶ観測船の系譜が始まる。
1941年海の記念日制定、東京港開港国家的な記念日と開催港が同じ年に近代史へ入る。
1965年商船三井「追浜丸」就航日本初の専用荷役装置付き自動車専用船。
1967年東経137度線観測開始世界的にも貴重な長期反復観測の始まり。
1996年 / 2003年初の祝日 / 第3月曜日へ2026年に続く祝日暦が定まる。
2008年第1回海洋立国推進功労者表彰今日、開会行事で第19回を実施。
2020年東京国際クルーズターミナル開業橋をくぐれない超大型客船にも対応。
2024年 / 2026年4代目「凌風丸」 / 「LAZULITE ACE」竣工日本の新しい働く船2隻が市民と出会う。

二つのタラップの外にも続く一日

国土交通省の式次第は午前10時〜10時30分の開会式、10時30分〜11時の功労者表彰式で始まる。一般向けステージは11時40分の海上保安庁音楽隊コンサートへ続く。正午には在港船が汽笛を一斉に鳴らす。主催者は、小さな子どもや大きな音が苦手な来場者へ注意を呼びかけている。

午後1時は日本財団が、直木賞作家と海の過去・未来をたどるトークを行う。2時20分から日本船主協会のサイエンスライブ、3時40分から海上自衛隊東京音楽隊のディキシーバンド。4時30分ごろ、アンケート回答者向け抽選会を予定する。

ブースは海洋政策と安全保障研究、造船、水産物の持続可能性、海事都市・今治、船員、潜水、マリンスポーツ、海上保安庁、東京都港湾局、主要船社に及ぶ。海運・造船の100年を振り返る特別展示と、「我ら海の子展」受賞作品展は、大人の産業史と子どもが想像する海を同じ館内に置く。

時刻公式プログラム
10:00〜10:30開会式
10:30〜11:00第19回海洋立国推進功労者表彰式
11:40海上保安庁音楽隊「海の日」記念コンサート
12:00汽笛の一斉吹鳴。大音量に注意
13:00日本財団「海から読む、無限の可能性」
14:20日本船主協会・サイエンスライブ
15:40海上自衛隊東京音楽隊・ディキシーバンド
16:30ごろ来場者アンケート抽選会

締め切られたツアーを中心にしない訪問計画

主催者は来場者用駐車場がないとして、公共交通機関の利用を求める。ゆりかもめ「東京国際クルーズターミナル駅」から、運営者案内では徒歩約8分。駅名から建物に直結しているように感じるが、水辺のアプローチ、入場確認、行列の時間を見込む必要がある。

「凌風丸」を優先するなら、午後2時の受付締め切りではなく午前中に着きたい。タラップ、階段、金属甲板に適した、脱げにくい低い靴を履き、荷物を少なくし、乗組員の指示に従う。稼働船の中はターミナルと同じバリアフリー構造ではない。階段や狭い通路に不安があれば、列に並ぶ前にスタッフへ確認したい。

「LAZULITE ACE」の抽選に当たっていない場合、本人確認書類を持ってキャンセル交代を期待しても、当日受付の案内はない。「凌風丸」、館内展示、シミュレーター、トーク、音楽隊、正午の汽笛を軸にする。天候や運航上の理由で船内公開や行事全体が変わり得るため、出発前に公式特設ページを再確認する。

見えない基盤を見せる祝日

普段、2隻は恩恵を受ける人々からほとんど見えない。スマートフォンに届く気象警報は、太平洋へ6000メートル下ろした観測機器を映さない。販売店に並ぶ完成車は、海を越えた甲板、ランプ、固縛、当直を見せない。

東京の「海の日」は、数時間だけその不可視性を正す。「凌風丸」は、粘り強い観測が環境変化を読める形にすることを示す。「LAZULITE ACE」は、日常の貿易を支える規模と工学、そして化石炭素から離れる難しい移行を示す。ターミナルは、二つの仕組みを都市へつなぐ港を見せる。

今日、二つのタラップに同じ条件で入れるわけではない。そのように書いてもいけない。しかし岸壁からでも、共通の教訓は十分伝わる。日本と海の関係は景観だけではない。科学であり、産業であり、歴史であり、毎日誰かが働いて保つものだ。

取材資料・公式リンク

編集部注:行事情報は日本時間2026年7月18日までの主催者資料に基づく。船内公開は天候、安全、運航上の事情で変更される可能性がある。「LAZULITE ACE」の排出削減率は建造者による従来型重油燃料船との比較であり、燃料の製造・輸送を含む全ライフサイクル評価ではない。「凌風丸」の総トン数は、気象庁の国内トン数と建造者の国際トン数を区別した。ヒーロー画像は編集イラストで、記録写真ではない。