2勝0敗ソフトバンク・2戦終了時点
第1戦 3–1延長11回
第2戦 4–3延長10回
0本川村の2026年公式戦本塁打

「まさか」の一発。しかし、シリーズの勝者はまだ決まっていない。2024年には、同じ顔合わせで2連勝した側が4連敗している。

ホームランを期待されていなかった男が、試合を決めた

10月25日、横浜スタジアム。延長10回表1死、3対3。福岡ソフトバンクホークスの川村友斗が、横浜DeNAベイスターズの伊勢大夢が投じた変化球を捉えた。打球は中堅のバックスクリーンへ飛び込む勝ち越しソロ本塁打。レギュラーシーズンは103試合に出場しながら本塁打0本、打率.095だった27歳が、日本シリーズで初めて立った打席で最大の仕事をした。ソフトバンクは4対3で勝ち、敵地でのシリーズ2連勝を決めた。

二夜連続の延長戦、数字以上の攻防

第1戦は24日。上沢直之と石田裕太郎の投げ合いで6回まで両軍無得点。7回にソフトバンクが庄子雄大の内野ゴロで先制し、8回にはDeNAの牧秀悟が同点本塁打を放った。延長11回、庄子の勝ち越し適時二塁打と柳町達の犠飛で3対1。25日の第2戦も延長となり、初戦から2試合連続の延長戦は日本シリーズ史上2度目、2011年以来15年ぶりだった。両試合とも福岡から訪れたチームが横浜で競り勝った。

第2戦、先に進んだのはソフトバンク

25日の第2戦は正木智也が3回に先制ソロ。4回には庄子雄大が2試合連続の適時二塁打を放ち、2対0とした。先発のリバン・モイネロは7回を無失点、8奪三振。ゲームを支配しているように見えたソフトバンクだったが、野球の終盤は簡単には進まない。8回裏、DeNAの筒香嘉智が3点本塁打。2点リードは一振りで1点のビハインドに変わった。

山川穂高が9回に引き戻した

9回表1死、代打の山川穂高が左翼席へ同点ソロ本塁打。勝利まであと3アウトを迫っていたDeNAは、筒香の逆転打で得たリードを守り切れなかった。筒香と山川のホームランは、ともに打席に立った打者が積み重ねてきた長打力を思い起こさせる。だが、最後に注目を集めたのはスラッガーではない。8回に代走として試合に入っていた川村友斗だった。

チェンジアップを捉えた10回の一球

10回表、DeNAは伊勢大夢をマウンドへ。1死走者なし、川村に対して投じたチェンジアップを捉えられた。球団の公式試合経過ではカウント0ボール1ストライクからの打球と記録される。日本シリーズ初打席の一打が中越え本塁打になるという結末は、今季レギュラーシーズン45打席で本塁打0本だった成績からは予想しにくい。ソフトバンクの小久保裕紀監督も試合後の取材で、驚きを「まさか」と表現した。

川村友斗という選手の歩み

球団の選手名鑑によると、川村は1999年8月13日生まれ、北海道出身。北海高校から仙台大学に進み、2021年の育成ドラフト2巡目で指名され、2022年にプロ入りした。右投げ左打ちの外野手で背番号は61。俊足や守備で出場機会を得てきた。プロ野球で「育成選手」から一軍の舞台へ進む道は、華やかなドラフト上位指名とは異なる時間を必要とする。初の日本シリーズ打席に到達するまでに積み重ねた歳月が、この一打の重みを増す。

長打が少ないからこそ意味を持つ

川村の2026年公式戦の本塁打は0。プロ入り後、これまでの一軍公式戦で記録した本塁打も2024年9月22日の楽天戦での1本だけだった。日本シリーズでの一発はプロ通算の公式戦成績とは別に数える必要があり、「今季初本塁打」といった表現には大会の違いを添えたい。守備、走塁を買われる選手が大舞台で勝敗を決めたからといって、それまでの役割が小さくなるわけではない。むしろ、勝ち方の幅を示す。

1980年代でもなく、90年の記録に並ぶ

スポーツ報知の記録室によれば、日本シリーズ初打席の本塁打は川村で17人目だが、それを延長回に放ったのは初めて。初打席本塁打が決勝打になった例としては1990年の西武・オレステス・デストラーデ以来36年ぶり2人目という。記録は条件を一つ変えると意味が変わる。「日本シリーズ史上初の初打席本塁打」と言うのは誤りであり、史上初と評価できるのは延長回で放たれたという限定された条件である。

DeNAにも勝ち筋はあった

横浜DeNAは2試合とも敗れたが、敗戦だけではその攻防を説明できない。24日は牧秀悟の同点弾で延長へ、25日は筒香嘉智の逆転3ランで一時はリードした。第2戦の8回に筒香へつないだ打線の粘りは、ソフトバンクの救援陣から得点を奪う可能性を示した。一方で、第2戦の9回以降の継投は結果として山川と川村に打たれた。相手の好機と横浜の戦術を見ないまま「圧倒的な2連勝」と呼ぶのは実態に合わない。

2024年の記憶が、2連勝の意味を変える

両チームは2024年の日本シリーズでも対戦した。そのときもソフトバンクは横浜で最初の2試合を勝ったが、その後DeNAが4連勝して日本一になった。2026年の2勝0敗という現在地は、有利な位置ではあるが決着ではない。短期決戦では投手の疲労、先発投手の組み合わせ、代打と代走の起用が数試合で状況を変える。2024年を思い出すことは予言ではなく、2試合の結果だけで結論を急がないための歴史的な手掛かりとなる。

監督の選択、選手の役割

小久保裕紀監督は第1戦7回、追加点の機会に好投中の上沢へ代打を送らなかった理由を試合後に説明している。第2戦では代打・山川が同点弾を放ち、代走として投入された川村が勝ち越し弾を打った。好采配は結果によって語られがちだが、起用の判断が成功する保証はない。川村の打席は選手本人の技術と準備が作った結果であり、監督の判断だけで説明できるものでもない。

長い歴史を持つ日本シリーズ

日本シリーズはセントラル・リーグとパシフィック・リーグの代表が日本一を争う戦後日本野球の大きな舞台だ。2026年の大会は「SMBC日本シリーズ2026」の名称で開催され、4勝したチームが優勝する。第3戦は10月27日午後6時、みずほPayPayドーム福岡で開始予定。26日は移動日である。この記事が扱うのは10月25日までの結果であり、27日の試合が終わったという意味ではない。

主役は、打席に立つまで分からない

2試合で注目を集めるのは、序盤から安打や長打を重ねた選手だけではない。延長11回の庄子、9回の山川、そして延長10回の川村。野球は、誰がどの順番でどんな役割を果たすかで物語が変わる。1本の本塁打はシリーズの行方を決めてはいない。それでも今季0本塁打の控え外野手が、初めての日本シリーズ打席で最も重要な一打を放った事実は、10月の野球が持つ驚きをよく示している。

出典・確認資料

日本野球機構の開催要項、両球団の公式試合経過・選手名鑑、パ・リーグ公式メディア、国内競技報道を参照。2026年10月25日終了時点の対戦結果。10月27日の第3戦は未実施。選手や監督への独自取材は行っていない。

  1. 日本野球機構:SMBC日本シリーズ2026開催要項・日程
  2. パ・リーグ インサイト:第1戦試合戦評
  3. パ・リーグ インサイト:第2戦試合戦評
  4. 福岡ソフトバンクホークス:川村友斗公式選手名鑑
  5. 横浜DeNAベイスターズ:球団公式試合経過
  6. 福岡ソフトバンクホークス:球団公式試合戦評
  7. スポーツ報知:小久保裕紀監督の第2戦試合後発言
  8. スポーツ報知:延長回のシリーズ初打席本塁打の記録
  9. 日刊スポーツ:川村の初打席本塁打とシーズン成績
  10. TBS:横浜DeNA側から見た第2戦の経過