この野菜の上に、太陽は昇らない。


必要がないからだ。


福井県おおい町。完全閉鎖型植物工場の中では、ケール、クレソン、セロリ系の葉物、水菜を、人工光の下で育てることができる。温度、湿度、養分、照明を天候ではなく設備で管理する。土や害虫を生産工程から大きく遠ざけ、収穫時期も露地農業より計画しやすい。


8月22日、その工場で育った4品目—ケール、クレソン、ホワイトセロリ、水菜—が大阪市の相愛大学南港学舎へ届く予定だ。


第3回「スポーツ&栄養フェスタ」。主催は相愛大学人間発達学部管理栄養学科、レッドハリケーンズ大阪、大阪港振興株式会社。共催はロッテと住之江区社会福祉協議会。日本山村硝子の植物工場野菜ブランド「きらきらベジ」が、レッドハリケーンズ大阪の管理栄養士監修「スポーツ栄養ランチ」へ使われる。ランチは事前予約の50食限定だ。


小さな食育イベントに見える。


その皿には、日本の大きな物語が三つ載っている。


一つは、スポーツ栄養の専門化。「運動するからたくさん食べる」から、運動量、回復、身体づくり、微量栄養素、食べるタイミングまで含めて設計する時代への変化。


二つ目は、植物を「工業的に制御できる生産システム」に変えようとしてきた日本の長い植物工場史。「垂直農法」という言葉が流行する何十年も前から続く試みである。


三つ目は最も難しい。天候から切り離して「定時・定量・定価格・定品質」の野菜をつくれても、電気代まで含めて経済的・環境的に持続できるかという問題だ。


4品目ケール、クレソン、ホワイトセロリ、水菜を8月22日のランチへ提供予定。
50食管理栄養士監修のスポーツ栄養ランチは事前予約の限定提供。
年間260トンおおい町工場の建設発表時に示された計画生産量。
約22億円2022年に発表された福井工場の投資額。

このランチが証明しないこと:植物工場野菜だから露地野菜よりアスリートに優れている、あるいは4品目自体がパフォーマンス向上食品である、という証拠ではない。スポーツの身体は、食事全体のエネルギー、糖質、たんぱく質、水分、微量栄養素、トレーニング量、個人差の組み合わせで動く。

アスリートが「スーパーフード」より先に必要なもの


スポーツ栄養は、強そうな言葉を生みやすい。


プロテイン。電解質。抗酸化物質。BCAA。機能性食品。スーパーフード。


どれも中身のある言葉である。しかし一つの有用な要素が、食事全体の設計図のように扱われた時に問題が始まる。


日本スポーツ協会が示す「アスリートの食事の基本形」は、驚くほど普通だ。主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物。ご飯、パン、麺類などの主食は主に糖質を供給する。肉、魚、卵、大豆製品などの主菜はたんぱく質などを担う。野菜、きのこ、海藻などの副菜がビタミン、ミネラル、食物繊維を補う。乳製品と果物も加え、食事全体で必要量を満たす。


重要なのは「形」と「量」の両方である。


どれほど見た目のよい健康食でも、運動で使うエネルギーに足りなければアスリートの食事としては不十分になる。


ラグビーなら、この違いは分かりやすい。


プロ選手は、走る。ぶつかる。ウェイトトレーニングをする。ポジションによって求められる体格も違う。プロップとウイングで同じ量が最適とは限らない。強度の高い練習日と回復日は食事の条件も違う。


だから大学イベントへ来た子どもが、「ラグビー選手と同じ食事だから」とプロと同量を食べる必要はない。


2025年の第2回フェスタ資料も、この点を明確にしていた。レッドハリケーンズの選手が日頃食べる食事を体験する企画だが、一般参加者の提供量は選手と同じではなく、「ライフステージ栄養学」に基づいて調整するとしていた。


これがスポーツ栄養である。


模倣ではない。


翻訳だ。


アスリートの皿は、「強い食材」の一覧ではない。エネルギー予算であり、回復計画であり、同時に普通の食事でもある。


パフォーマンスの皿で、野菜は何をするのか


野菜は重要だ。


しかし「隠れた燃料タンク」だからではない。


葉物野菜は一般に、ビタミン、ミネラル、食物繊維、植物由来のさまざまな成分、食事の多様性へ貢献する。一方でエネルギー密度は低い。運動量の大きな選手が「健康的だから」と野菜中心にしすぎ、糖質と総エネルギーを押し出してしまえば、かえって不足につながる。


最近のスポーツ栄養で、「きれいな食事」と「十分な食事」が同じではないと繰り返される理由だ。


日本スポーツ協会も、食事内容が整っているだけでは足りず、自分に必要な量を満たすことが必要だとする。特に女性スポーツでは、慢性的なエネルギー不足が「スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)」へつながることを警告している。


だから福井の4品目は、「ランチのすべて」ではなく「ランチの一部」として読むべきだ。


ケール、クレソン、ホワイトセロリ、水菜は、色、食感、ビタミン、ミネラル、植物由来成分を食事へ足せる。しかしご飯の代わりにはならない。肉・魚・卵・大豆製品の主菜を置き換えない。水分補給そのものにもならない。一日のエネルギー収支を決めるものでもない。


レッドハリケーンズの管理栄養士の仕事は、まさにその「全体の中に置く」ことにある。


ガラスびん会社が、ケールを育て始めた


農業側の物語は、意外な企業から始まる。


日本山村硝子は1914年、兵庫県西宮市で創業した。100年以上、主力はガラスびんなどの容器。同社によれば、国内ガラスびん出荷量でトップシェアを持つ。


びんメーカーからサラダへ。


その間をつないだのは「製造業の考え方」だった。


同社は新事業を「安心・安全」「サステナブル・環境」という軸で探す中、植物工場へ関心を持った。2007年、小規模な野菜栽培の研究開発を始めた。


だからといって、農業が急に簡単な工業製品になったわけではない。


種苗会社、照明メーカー、大学、食品企業などと協力し、品種を試し、光、養分、温湿度を変え、自社で栄養成分を分析し、生産現場へ戻す。同社研究センターによると、葉菜・果菜を合わせ380品種以上の栽培実績を積み上げた。


商売上の問題もあった。


日本の人工光型植物工場の大半はレタス類を育てる。高い設備費・電気代を抱えたまま、露地や他工場と同じコモディティで競争すれば苦しい。


そこで同社は「レタス以外」を探した。


答えの一つがケールだった。


当時、日本のケールは「青汁の原料」のイメージが強く、生のサラダ野菜として一般的ではなかった。海外からも種子を集め、苦味や食べやすさを含めて試行錯誤。地元の惣菜メーカーへ持ち込み、厳しい評価を受けて栽培を直した。


2014年、惣菜やカットサラダの原料として本格販売を開始。2018年5月、大阪・阪神百貨店の食品売場への販売をきっかけの一つに、消費者向け「きらきらベジ」ブランドを立ち上げた。


その後はルテイン、GABA、ビタミンCなど、特定の栄養価を意識した商品開発も進めた。


これは「ガラス会社が農業へ転身した」という話ではない。


製造業が「工程管理、品質分析、差別化」という自分の文化を、生きた植物へ持ち込んだ話である。


1914年 — 日本山村硝子につながる事業が兵庫県で創業。

1970年代 — 日本で人工光型植物工場の研究開発が本格化。

1983年 — 研究史では三浦農園が日本初の商業的人工光型植物工場として挙げられる。

2005年 — LED光源を使う商業植物工場が日本で稼働。

2007年 — 日本山村硝子が小規模な野菜栽培研究を開始。

2014年 — 惣菜・カットサラダ等向けに野菜の商業販売を開始。

2018年 — 消費者向けブランド「きらきらベジ」開始。

2021年 — 日本山村硝子とJR貨物が山村JR貨物きらベジステーションを設立。

2023年3〜4月 — 福井県おおい町の新植物工場が竣工・操業開始。

2026年8月22日 — 4品目を相愛大学第3回スポーツ&栄養フェスタへ提供予定。


「垂直農法」という流行語より、日本の植物工場は古い


現代の植物工場は、シリコンバレー的に見える。


LED。センサー。水耕。何段にも積んだ棚。倉庫のような建物。データ。


しかし日本の歴史は長い。


人工環境で野菜を計画生産する研究は1970年代に拡大し、1980年代には商業化が始まった。植物工場研究のレビューでは、1983年の三浦農園が日本初の商業人工光型植物工場とされ、1985年にはショッピングセンターの青果売場にも植物工場が設置された。


技術は「光」と一緒に進化した。


初期は高圧ナトリウムランプ。その後、蛍光灯が多段式栽培をしやすくし、LEDがさらに設計を変えた。LEDは植物へ必要な波長を選びやすく、赤外放射が少ないため株に近づけやすい。冷却負荷も従来光源から改善できる。


日本では2005年にはLEDを使う商業人工光型植物工場が稼働していた。


完全閉鎖型工場の目的は、「畑を建物の中で再現する」ことではない。


別の生産式をつくることだ。


太陽光を変動要因として受け入れる代わりに、電気を買って光を指定する。雨を待つ代わりに水と養液を循環させる。季節に作物を合わせる代わりに、室内の季節を止める。


農林水産省がいう「定時・定量・定価格・定品質」の「4定」は、この思想をよく表している。


外食、中食、病院、学校、給食。大量の食材を予定通り必要とする買い手にとって、「予測可能であること」自体が商品価値になる。


福井工場は、22億円をかけた「予測可能性」への賭け


おおい町工場は、その思想を産業規模へ広げたものだ。


2021年、日本山村硝子と日本貨物鉄道(JR貨物)は、山村JR貨物きらベジステーションを設立した。出資比率は日本山村硝子51%、JR貨物49%。


2022年1月の建設発表では、投資額約22億円。敷地約7,500平方メートル、延床約3,400平方メートル。ケール、クレソン、セロリ等を年間260トン生産する計画だった。


工場は2023年3月に竣工し、4月から操業を始めた。


JR貨物が入っていることにも意味がある。


植物工場で出荷時の品質を揃えても、輸送中に鮮度が落ちれば「工程管理」はそこで切れる。きらきらベジは現在、コンテナ輸送による品質保持と長距離供給も売りの一つにする。


「育てる」だけでなく、「どう運ぶか」まで含めて標準化したい。


相愛大学の一皿では、その地理が見える。福井で育て、大阪へ運び、大阪のプロラグビーチームと大学が「食べ方」を教える。


完全閉鎖型は、何を買っているのか


完全閉鎖型植物工場は、一種類の不確実性を捨て、別の不確実性を引き受ける。


雨、台風、干ばつ、季節的な温度変動、多くの害虫を栽培空間から遠ざけられる。温湿度と光を反復しやすい。外で供給が不安定な時期にも葉物を生産できる。


日本山村硝子は、LED照明、温度、湿度などを管理し、太陽光を使わない閉鎖型環境で「春菊・水菜」などを安定栽培すると説明している。密閉によって害虫侵入を抑え、栽培期間中は農薬を使わない商品も展開する。


環境を制御できることは、栄養成分の研究にも向く。


光の波長、強さ、時間、養液、収穫時期を変えれば、植物の形や一部の機能性成分は変わり得る。だからといって「栄養」をボリュームつまみのように完全操作できるわけではない。植物の生理は複雑だ。


それでも、同じ条件を繰り返せる実験環境は強い。


きらきらベジが、栄養機能食品や機能性表示食品まで開発してきた背景には、この「再現可能な栽培条件」がある。


スポーツ栄養イベントと相性がよいのも理解できる。植物工場とアスリート科学は、測定、安定、最適化、機能という言葉を共有している。


同時に、その言葉は簡単に人を過信させる。


アスリートは植物工場ではない


現代の競技スポーツは、人間を驚くほど細かく測る。


GPSで走行を追う。フォースプレートで力を見る。睡眠を記録する。血液検査で鉄状態を確かめる。発汗量を調べる。練習量に合わせ、管理栄養士が糖質・エネルギー摂取を組む。


すると、アスリートも植物工場のように制御できると錯覚しやすい。


入力を最適化すれば、出力も安定する。


人間はその比喩を拒む。


体格、性別、年齢、ポジション、競技歴、ケガ、月経状態、暑熱環境、食欲、胃腸の耐性、文化、食の好み。選手ごとに違う。同じ選手でも、月曜日と土曜日では練習量が違う。


だからスポーツ栄養は「製造」ではなく「マネジメント」である。


正しい栄養素でも、タイミングが悪い、量が多すぎる、少なすぎる、本人が嫌いで食べないなら機能しない。


食事には社会的・感覚的な役割もある。チームメートと食べる。遠征先で食べる。毎日同じ献立なら飽きる。「完璧な献立」が皿に残れば、パフォーマンス価値はゼロだ。


このばらつきは、人間の欠陥ではない。


管理栄養士が必要な理由である。


植物工場の最大の価値は、「退屈な安定」かもしれない


フードテックは「新しさ」を売りやすい。


給食や外食の買い手が欲しいのは、むしろ逆のことがある。


火曜日に必要な食材が火曜日に届く。病院厨房が同じ規格で使える。惣菜メーカーが葉の大きさ、鮮度、量を予測できる。スポーツチームが、大人数の献立を予定通り組める。


露地農業は優れた食材をつくれる。しかし天候は収量、時期、外観、価格を動かす。


農林水産省の2026年植物工場戦略は、植物工場の経済的な強みとして「4定」—定時・定量・定価格・定品質—を明記する。気候変動、労働力、土地の制約が強まる中で、食料安定供給への貢献も期待する。


スポーツとの最も強い接点は、ここかもしれない。


「この葉を食べると速くなる」ではない。


「屋外供給が揺れる時でも、計画した食事を同じようにつくりやすい」。


そして電気代が来る


天候を外へ出す壁は、太陽も外へ出す。


ここが人工光型植物工場の最大の矛盾である。


畑は太陽光を無料で受け取る。完全閉鎖工場は電気を買って光をつくる。さらに照明や植物が発する熱を取り除くための空調、空気循環、ポンプ、環境制御にも電気を使う。


LEDは経済性を大きく改善した。


しかし問題を消してはいない。


農林水産省は2026年の成長戦略資料で、光熱費増大による収益悪化を主要課題に挙げ、日本の植物工場でも「6割が赤字」とするデータを示した。商業栽培品目は葉菜類へ偏り、果菜類はまだ研究開発段階が中心だ。


植物工場に「ブーム」が繰り返される理由でもある。


技術的に育てられることと、事業として儲かることは別だ。


それでも農水省は日本の強みを認めている。長年の商業運営実績、環境制御、特許、栽培データがあり、植物工場本体だけでなく、運営ノウハウ、資材、データ、農産物を一つのシステムとして国内外へ展開する構想を持つ。


ガラス会社と貨物鉄道にも、同じ現実がある。


植物を育てるだけでは半分。


設備費、電気、物流、販売価格まで含めて成立しなければならない。


完全閉鎖型植物工場が「できること」と「できないこと」
  • 強く制御できる:照明時間、温度、湿度、養分供給、生産時期、衛生条件の多く。
  • 影響を減らせる:台風、干ばつ、季節的な温度変動、多くの害虫。
  • 得意:品種、光、養液条件を繰り返し比較する研究。
  • 消せない:電気代、設備費、機械故障、労働、物流、市場リスク。
  • 自動的には保証しない:すべての露地野菜よりおいしい、栄養が高い、環境負荷が低いこと。
  • 何でも採算化できるわけではない:現状は生育が速く、コンパクトで高付加価値の葉菜類へ集中する。

ガラスびんとラグビーの食事に共通する「再現性」


びんメーカーは、規格で生きる。


口径が合わなければ蓋が閉まらない。ガラス厚が要求を外れれば製品にならない。「だいたい昨日と同じ」では困る。


プロスポーツも、対象はずっと不安定だが、「再現性」を求める。


練習は予定時刻に始まる。終われば回復を始める必要がある。選手が毎回意志の力で正しい食事を選ばなくても、良い選択肢が普通に並ぶ食環境をつくる。


植物工場野菜は、この二つの文化の中間にある。


育つ側は工業的に制御される。


食べる側は、柔軟に合わせなければならない。


だから8月22日のランチは、管理栄養士を目指す相愛大学の学生にとって良い教材になる。


「この野菜にビタミンが何mgあるか」だけではない。どこでつくられたか。供給は安定するか。いくらかかるか。どう運ぶか。生産方法を「サステナブル」と呼ぶなら、電気はどこから来るのか。アスリートの一日の中で、どの量をどこへ置くのか。


栄養士の現実の仕事は、成分表より大きい。


相愛大学は「食べて学ぶ」を地域へ出してきた


スポーツ&栄養フェスタは今回で3回目になる。


相愛大学、レッドハリケーンズ大阪、大阪港振興は、プロラグビー、管理栄養士教育、地域住民を同じ場所へ集めてきた。大阪市住之江区は、この取り組みを相愛大学、森ノ宮医療大学、レッドハリケーンズ大阪、区役所が連携する「咲洲あいのもり」プロジェクトの一つとして位置づける。


2025年の第2回では、ポートタウンショッピングセンターでラグビー・栄養クイズ、ラグビー体験を行い、相愛大学学生食堂Forestaで「スポーツ栄養ランチ」を試食した。レッドハリケーンズの選手が実際に食べている食事を一般向けに再構成し、選手と一緒に食べる機会もつくった。


2026年は植物工場野菜の物語が加わり、噛むことをテーマにした企画やフーセンガム大会も案内されている。


一見、遊びに見える。


それでよい。


栄養教育の難しさは、科学が細かいのに、人は「栄養素」を食べず「食事」を食べることだ。選手を見る。食べる。クイズをする。自分の量を考える。そうすると抽象的な栄養学が身体感覚になる。


学生にも意味がある。


将来の管理栄養士に必要なのは、正しい知識だけではない。実際の人が理解し、買え、楽しみ、最後まで食べる形へ翻訳する力である。


「機能性」は、後光ではなく制度上の言葉


きらきらベジには、栄養機能食品や機能性表示食品として展開される商品がある。


ここは慎重に言葉を分ける必要がある。


機能性表示は、届け出た特定商品、成分、摂取条件などに結びつく。あるケール商品でルテイン等に関する機能性表示があるからといって、同じ工場の水菜、クレソン、ホワイトセロリまで同じ機能を持つことにはならない。


「高栄養」というブランド説明も、「あらゆる露地野菜より栄養価が上」という意味ではない。栄養成分は作物、品種、栽培条件、収穫時期、保存、調理で変わる。優れた露地野菜も当然、高い栄養価を持ち得る。


植物工場について、より確実に言える強みは狭い。


天候要因を減らした環境で、栽培条件を繰り返しやすい。特定の栄養成分を狙う研究をするなら、強い実験プラットフォームになる。


その特性へ、追加の生産費用を払う価値があるか。


そこは市場とライフサイクル評価が答える問題である。


主張証拠が支えること証明していないこと
「植物工場野菜で競技力が上がる」4品目はバランスのよい食事の中で、ビタミン、ミネラル、食物繊維、多様性に寄与できる。これらの野菜自体が直接競技力を向上させること、同等の露地野菜よりアスリートに優れること。
「福井工場なら安定供給できる」天候影響を大きく減らした計画生産を目的とする設備・栽培方式である。停電、設備故障、人員、物流による供給停止が一切ないこと。
「植物工場は環境に良い」農薬や一部資源投入の削減、土地利用効率、計画生産に強みを持ち得る。すべての工場で総合環境負荷が低いこと。人工光・空調の電力源と消費量は重要。
「きらきらベジは機能性野菜」ブランドには特定の栄養機能食品・機能性表示食品が存在する。8月22日に使う4品目すべてが同じ機能性表示を持つこと。

食の未来は「全部屋内」ではなく、混成型になる


植物工場は畑を置き換えるのか。


この問いはあまり役に立たない。


現在の人工光技術で、日本の米、小麦、じゃがいもを国全体の規模で植物工場へ移す経済性はない。葉菜類が向くのは、生育が速く、コンパクトで、可食部率が高く、単価を上げやすいからだ。


未来は混成型に近いだろう。


露地は不可欠であり続ける。温室は太陽光を使いながら環境制御を高度化する。完全閉鎖型は、葉物、苗、高付加価値作物、特殊な栄養成分、医薬品原料、気候リスクや衛生要求が高い用途へ集中する。


工場内で得たデータを、屋外農業へ戻す可能性もある。農林水産省は、植物工場で開発された高温に強い品種や、作物ごとの最適栽培条件データを、農業現場へ展開することにも期待している。


だから「工場」という言葉は、少し誤解を生む。


植物工場の重要な生産物は、野菜だけではない。


「どう育つか」という知識かもしれない。


福井が食材を育て、大阪が「食べ方」を教える


土曜日、目に見える主役は皿だろう。


協賛資料に写る「ケールとかぼちゃのサラダ」が子どもの目を引くかもしれない。ラグビー選手が栄養の話を記憶に残すかもしれない。相愛大学の学生が、「プロ選手の食事」と「子どもの量」が違う理由を説明するかもしれない。


その皿の後ろには、長い工程がある。


2007年に野菜研究を始めたガラス会社。農業へ出資した貨物鉄道。福井の町に建てた22億円規模の工場。太陽の代わりのLED。温湿度を維持する設備。何百品種も試した研究。関西へ葉物を運ぶ物流。大学で「食べる」という行為へ戻す管理栄養士教育。


そして工程の最後に、もっとも制御しにくい機械がいる。


人間が「食べるかどうか」を決める。


植物工場は、火曜日のケールを月曜日のケールへ近づけられる。スポーツ栄養は、その制御が終わる場所から始まる。今日は違う選手、違う練習量、違う食欲だからだ。


一皿で、二つの「最適化文化」が出会う


最後に少し皮肉な共通点がある。


植物工場と競技スポーツは、どちらも「わずかな改善」を積み上げたがる。


光の波長を変える。養液を調整する。練習負荷を変える。糖質を食べる時間をずらす。測って、結果を見る。


同時に、どちらも「最適化の限界」を学んでいる。


完璧なレタスを育てても、電気代で事業が成立しなければ食料システムとして成功ではない。


栄養計算上完璧な献立でも、エネルギーが足りない、面倒すぎる、高すぎる、まずくて続かないなら、スポーツ栄養として成功ではない。


最適化は、現実を生き残らなければならない。


大学食堂の50食から学べる最も大きなことは、そこかもしれない。


野菜は、不確実性を減らす部屋で育った。


食事は、不確実な人間と付き合う方法を教えるために出される。

調査・出典

編集注:第3回スポーツ&栄養フェスタは、本稿準備時点では8月22日の開催前である。4品目、50食限定、主催・共催、レッドハリケーンズ大阪管理栄養士監修という情報は8月20日の協賛発表と相愛大学のイベント案内に基づく。2026年のランチ全献立と栄養価は公開されていないため、本稿では作り足していない。植物工場の安定生産という利点と、ライフサイクル全体の環境性は区別した。農林水産省は設備費・光熱費を主要課題とし、日本の植物工場の約6割が赤字との現状認識を示す。また、きらきらベジの一部商品が持つ機能性表示を、今回提供される4品目すべてへ一般化していない。