1975年初回開催
第50回2026年の節目
台湾2組国際交流企画への参加予定
2027年3月春KYOPOを計画

祭りを残すだけでなく、仕事と技を未来へ渡せるか。

器を売る三日間から、産地の未来をつくる場へ

京都市山科区の清水焼団地で、1975年に始まった「清水焼の郷まつり」が50回目の節目を迎え、「KYOPO(キョポ)—Kyoto Pottery Expo」へと装いを改めた。会期は2026年10月16日から18日まで。販売の場として親しまれてきた催しに、台湾との交流、子どもの体験、陶芸家の技術競技が加わった。改称そのものより重要なのは、陶磁器の生産地が、つくり手と使い手の新しい関係を築こうとしている点だ。

10月20日の本稿執筆時点で、主催者による最終来場者数や売上げの確定値は確認できていない。会期中の企画は主催者の公表内容に基づくものであり、現地取材で実施状況を独自に確認したものではない。

「清水焼」の範囲は、観光地の一角よりずっと広い

清水寺周辺の土産物店に並ぶ器だけを思い浮かべると、京焼・清水焼の世界を見誤る。京都府や伝統工芸関係団体の解説では、京都で発達した陶磁器には茶の湯の道具、食器、花器、色絵陶器、磁器など多様な系譜がある。大量生産で均一な製品を送り出すというより、窯元や職人が意匠と技法を磨く多品種少量の生産が一つの特色とされる。

名称の「京焼」は京都でつくられる陶磁器の総称として用いられ、「清水焼」は歴史的に東山周辺の窯業と深く結びついてきた。現在は「京焼・清水焼」として国の伝統的工芸品に指定されている。産地を一つの作風で語れないことが、むしろ京都の特色である。

仁清と乾山、頴川――変化し続けた京都のやきもの

京都の陶芸は固定された古典ではない。17世紀には野々村仁清(ののむら・にんせい)が色絵陶器を洗練させ、尾形乾山(おがた・けんざん)は装飾的な器に独自の世界を開いた。のちに奥田頴川(おくだ・えいせん)が磁器の技術を発展させ、その系譜に青木木米(あおき・もくべい)らが続く。京都の工芸には、海外の技術や文人文化を取り込みながら変わってきた歴史がある。

戦後の産業構造の変化と都市部での窯業環境の制約を経て、京都市山科区には清水焼団地が整備された。主催団体は1960年代につくられた産業拠点として説明する。今回の会場は単なるイベント用地ではなく、窯元、工房、卸、関連事業者が働く場所なのだ。

1975年の陶器市が問う「次の50年」

主催者によると、団地の陶器まつりは1975年に始まり、2026年に第50回を迎えた。2025年の来場者数は約4万8000人だったという。ただし、この数字は主催者発表であり、独立した検証を行ったものではない。観光客数の多さは産地の所得や後継者確保をそのまま意味しない。

今回の運営を担う一般社団法人KYOPOの代表理事は泉孝之(いずみ・たかゆき)。名称にはKYOTO、PEOPLE、POTTERY、POTENTIALの意味を込めたと説明する。年間の短い商機を、製作者への関心や継続的な需要につなげられるか。販売額だけでなく、初めて器を買う人、若手の出展、商談、再訪などを追う必要がある。

台湾の二つのギャラリーが持ち込む視点

2026年の「KYOPO INTERNATIONAL」には、台湾から「青青土氣 chin chin pottery」と「土星工作室 Tu Xing studio」の特別ブースを設けると主催者は発表した。前者は生活に寄り添う器、後者は台湾の土壌研究に基づく制作を特徴として紹介されている。台湾の参加を単なる海外ゲストの追加と捉えるべきではない。土と食生活、日用品への美意識、若い作り手の販路という共通の課題を比較できるからだ。

一方で、どの作品が販売され、どれほど商談が成立したか、長期的な共同制作につながるかは未確認である。「国際化」の成果は海外ブースの存在ではなく、展示後にどのような関係が残るかによって測られる。

ろくろの高さも、子どもの手の土も

新たな催しには、ろくろで高さを競い、器を速く成形し、一定量の粘土から大皿を作る「KYOPO CUP」がある。技巧を舞台に引き出し、工程の難しさを観客に伝える試みだ。「KYOPO PLAY」では、土に触れる遊びや絵付け、電動ろくろなどを予定し、京都橘大学の学生らが運営協力に加わる。

熟練者の実演だけでは技能の継承は実現しない。子どもが経験を持ち帰り、若者が学びや職業の選択肢として陶芸を考え、作り手が生活できる販路を得る。三つの段階がつながって初めて、イベントは産業振興になる。安全管理、参加機会の公平性、指導にかかる費用も重要な論点だ。

値段と美しさだけでは測れない産地の経済

伝統的工芸品の維持は、個々の職人の努力だけに委ねられない。原材料、窯の燃料、設備、職人の育成、販売経路、海外輸送、価格設定。少量生産で高い技術を必要とする器には、制作以外にも多くの費用がかかる。経済産業省が認定した京焼・清水焼の活性化計画にも需要開拓の取り組みが位置づけられている。

ただし、KYOPOの開催によって産地売上げが伸びた、後継者不足が解消したと結論づける統計は確認できない。主催者が示す目標と、実際に観察された結果を混同してはならない。工芸を支える政策は、文化的価値を称えるだけでなく、持続可能な所得と労働環境を考える必要がある。

来春は岡崎公園へ――祭りを年中の接点に

主催者は10月13日、2027年3月に京都・岡崎公園で「春KYOPO 器と食のマーケット」を初開催する計画を発表した。秋の山科に加えて、食と器を入口にした春の催しを設ける。これは、1年に一度の陶器市から、つくり手と使い手が季節を越えて出会う場への転換を象徴する。

開催予定は実施や集客を保証しない。岡崎の催しが山科の作り手にどれだけ還元されるか、流通関係が長く続くか、参加者の幅が広がるか。今後の取材で確かめたい。

器が手から手へ渡るとき

一つの器には、土を選ぶ人、形をつくる人、釉薬を工夫する人、焼成を管理する人、作品を売り、使い続ける人がいる。京都の陶芸文化を守るということは、過去の名品を保存するだけではない。技術と仕事を、次の世代へ手渡す仕組みをつくることでもある。

50回という節目の意味は、看板を新しくしたことだけでは測れない。台湾との出会い、子どもの体験、春への展開が、京都の窯業の新しい仕事と発見につながるか。KYOPOの真価は、祭りのあとから見えてくる。

編集上の注記:2026年10月17日までに確認できた公表資料をもとに執筆。催しの最終実績と来場者数は確認していません。ブース数について主催者資料間に155と159の食い違いがあり、確定数として扱っていません。

出典・参考資料

  1. KYOPO official event website
  2. KYOPO September 18 organizing statement
  3. KYOPO October 13 expansion announcement
  4. Kyoto City Tourism official event listing
  5. Kyoto Prefecture: Kyō-yaki and Kiyomizu-yaki
  6. Kyoto ceramics wholesalers association: History
  7. Kyoto Traditional Crafts: Kyō-yaki / Kiyomizu-yaki
  8. Kyoto Traditional Industry Future Construction project
  9. METI traditional crafts industry revitalization plan