確認できたこと: 国土地理院は8月12日、JAXAの「だいち2号」「だいち4号」のレーダーデータを用いた3次元解析の速報を更新しました。日奈久断層帯の北西側では、最大約80センチの東向き、最大約1.5メートルの北向き、最大約60センチの沈降が示されました。これは三つの成分ごとの最大値であり、すべてが同じ地点で生じたとみなすべきではありません。断層近傍の空白は、複雑な変動のため信頼できる計測ができなかった場所であり、「動かなかった場所」ではありません。

地図は通常、その下にある地面が昨日と同じ場所にあることを前提としている。7月28日午後4時27分、その前提が熊本の一部で崩れた。マグニチュード7.1、深さ16キロの地震が発生し、宇城市と氷川町では震度7を観測した。住宅はずれ、道路は裂け、水道は壊れた。そして、より目に見えにくいところで、道路や境界、公共施設を測り直す際の基準となる地理的な骨組みまで、大地とともに移動した。

地震直後から、地上と宇宙の観測装置は、互いに補い合う二つの記録をつくり始めた。全国の電子基準点網GEONETは、固定された観測点の位置変化を高精度で捉えた。国土地理院の精密化した解析では、八代市の電子基準点「千丁」は北東方向へ約87センチ動き、約33センチ沈降した。一方、レーダー衛星は点と点の間を埋め、集落、農地、丘陵、断層帯をまたぐ面的な変位を描いた。

最初に公表された干渉画像は、地表が衛星に近づいたか、遠ざかったかを色の帯で表すものだった。しかし、その一枚だけでは、北へ動いたのか、東へ動いたのか、沈んだのかを分けることはできない。国土地理院は8月12日までに、複数の軌道方向と電波照射方向から得た観測を組み合わせ、東西・南北・上下の三成分に分解した。その結果、日奈久断層帯の北西側では、最大約80センチの東向き、最大約1.5メートルの北向き、最大約60センチの下向きの変動が示された。


北へ最大約1.5m断層帯北西側で示された北向き成分の最大値
東へ最大約80cm3次元解析速報における東向き成分
最大約60cm沈降国土地理院が示した上下成分
5方向の観測幾何三成分を推定するために組み合わせた干渉解析

「3次元」が意味するもの、意味しないもの

「3次元解析」という言葉は誤解されやすい。今回公表されたのは、地下の断層を立体写真のように写したものではない。地表の各場所が、東西・南北・上下の三方向にどれだけ移動したかを推定したものである。「測れる一つ一つの地面は、どこへ行ったのか」という単純に見える問いに、異なる方向からの観測を重ねて答えている。

合成開口レーダー(SAR)は、人工衛星から地表へマイクロ波を送り、返ってきた信号を記録する。地震前後に同じ地域を観測し、その位相差を比較すると、衛星と地表の間の距離がどれだけ変わったかを高い精度で測れる。これが干渉SAR(InSAR)である。夜間でも雲を通して観測できる。ALOSシリーズのLバンドレーダーは波長が比較的長く、日本のように植生の多い場所でも、短波長のレーダーに比べて地表の対応関係を保ちやすいという利点がある。

ただし、一枚の干渉画像が見ているのは衛星と地表を結ぶ視線方向だけである。地表が衛星から遠ざかったとしても、それが横へ動いたためなのか、沈降したためなのか、その両方なのかは一枚では分からない。一方向のカメラで人の動きを見ているようなもので、距離の変化は分かっても、完全な進行方向は決められない。

ALOS衛星は北行・南行の軌道を飛び、軌道の左右へ電波を照射できる。国土地理院は、異なる視線方向から得た変動量を組み合わせ、最小二乗法により東西・南北・上下成分を推定した。8月12日の資料には、地震後の7月28日から8月1日までの観測と、2024年12月から2026年7月までの地震前観測を組み合わせた5種類の観測幾何が示されている。異なる入射角と観測方向を重ねることで、複数の1次元測定を一つの3成分変位場へ変えた。

観測方法分かること重要な限界
一組の干渉SAR衛星と地表を結ぶ視線方向の距離変化を面的に捉える。水平移動と上下移動を一枚だけで分離できない。
複数方向のSAR異なる視線を組み合わせ、東西・南北・上下成分を推定する。観測幾何、干渉性、大気条件により精度が場所ごとに変わる。
GNSS/GEONET常設点で三方向の移動を高精度に測る。連続した面ではなく、観測点ごとの情報である。
現地・航空調査亀裂、段差、土砂移動、構造物被害を人の尺度で確認する。時間がかかり、直ちに全域を調べることはできない。

最も強い答えは、これらを組み合わせた時に得られる。GNSSは正確な点の変位で全体を固定し、SARは点の間を埋める。航空写真、数値表層モデル、現地調査は、数値を実際の地表亀裂や被害に結びつける。一つの観測装置だけで地震の全体像を語ることはできない。


衛星が一度に「東・北・下」を見たのではない。同じ壊れた大地を、空の異なる側から何度も見たことで、日本は三つの方向をつくり出した。

なぜ最大値は「北向き」なのか

最大約1.5メートルという北向き変動が重要なのは、通常の干渉SARが東西・上下方向に比べ、南北方向の動きを捉えにくいという事情があるからだ。極軌道に近い衛星は主に南北へ飛ぶ。飛行方向に平行な地表変位は、横向きに電波を照射する通常の視線距離変化には表れにくい。したがって、完全な3成分解を得るには、一枚の鮮やかな干渉画像ではなく、異なる観測幾何と複数の解析手法が必要になる。

変位のパターンは横ずれ型地震と整合する。気象庁は、今回の地震を地殻内で発生した横ずれ断層型とし、北北西―南南東方向に張力軸を持つ発震機構を示した。地震調査委員会は、M7.1の震源断層が日奈久断層帯の日奈久区間北東部と高野―白旗区間の一部に及んだと評価した。これは複数の観測を総合した震源の解釈であり、衛星の変位図は重要な根拠の一つだが、地下断層面を直接撮影したものではない。

日奈久断層帯は、九州を一本のきれいな線で横切る断層ではない。益城町付近から芦北町を経て八代海南部へ延び、全体は約81キロの可能性がある。国の長期評価では、長さ約16キロの高野―白旗区間、約40キロの日奈久区間、約30キロの可能性がある八代海区間に分けられる。主として右横ずれで、上下成分を伴い、複数の断層が並走する場所もある。

だからこそ、地表は一枚の硬い板のようには動かなかった。大規模な横ずれ断層では、断層の両側が水平にすれ違う。しかし、屈曲、分岐、深さの変化、周辺に広がる分散変形が、地表の動きを複雑にする。2026年の解析で示された断層帯北西側の大きな北向き・東向き変動と沈降は、その複雑さを三つの成分で記録している。


断層沿いの空白こそ、最も複雑な場所かもしれない

国土地理院は図の下に重要な注意書きを置いた。断層近傍などの空白は、複雑な変動等の影響で変動量を計測できなかった場所である。空白を「安定していた場所」と読んではならない。

干渉SARは、二回の観測の間に同じ場所から返る電波の位相関係が保たれることを前提とする。大きな地表断層の近くでは、隣り合う画素の間で地面が大きくずれ、多数の小さなブロックに割れ、反射特性が変わり、土砂や水に覆われ、位相の急勾配が生じる。その結果、位相を絶対的な変位量へ戻す「アンラッピング」が困難になる。植生の変化や大気中の水蒸気も誤差を生む。国土地理院は気象庁の数値予報格子点データで対流圏遅延を補正しているが、地表の激変によって対応関係そのものが失われた情報は、補正だけでは戻らない。

ここに地震観測の逆説がある。衛星は広域の変動を驚くほど細かく測れる一方、最も激しく複雑に壊れた狭い帯で干渉性を失うことがある。研究者は、ピクセルオフセット法、MAI、地震前後の数値表層モデルの比較、航空写真、現地調査へ手法を切り替える。国土地理院は今回の地震についても、変位境界や表層高変位の速報を別途公表している。空白は観測の終点ではない。別の道具を使えという指示である。


最大値を読むときの四つの注意
  • 三つの値を単純に足さない。 東・北・下の最大値は、異なる画素で生じている可能性がある。
  • 空白をゼロとみなさない。 断層近くでは、複雑すぎて信頼できる干渉SAR計測ができない場合がある。
  • 変位と揺れを混同しない。 SARが測るのは地表が最終的にどこへ移ったかであり、建物が受けた最大加速度ではない。
  • 地表変位と地下の断層モデルを混同しない。 震源は、変位、地震波、余震分布、地質を総合して推定する。

2016年――「通常の干渉SARでは見えにくい動き」を捉えた「だいち2号」

熊本はすでに一度、衛星による地震観測の科学を変えている。2016年4月16日、2日前のM6.5の地震に続き、M7.3の本震が布田川断層帯を破壊した。断層運動は日奈久断層帯との接合部から阿蘇方向へ延び、地表亀裂は道路や農地を切った。しかし、変形は最も目立つ一本の傷だけには収まらなかった。

当時、「だいち2号」は打ち上げからまだ2年に満たなかった。国土地理院は、通常の干渉SARでは捉えにくい衛星進行方向の変位を測るため、MAI(Multiple Aperture Interferometry)解析を適用した。布田川断層帯の北側で最大約1メートルの北向き、南側で南向きの変動を捉え、右横ずれと整合するパターンを示した。さらに、日奈久断層帯との接合部から阿蘇カルデラ西縁の東数キロまで、変動方向の急変を線状に追い、日奈久断層帯北部にも断層運動があったことを示唆した。

その後の研究は、InSAR、MAI、分割帯域干渉法、ピクセルオフセット法を統合し、3次元変位とその不確かさを求めた。2016年のデータは、主要な地表断層だけでなく、多数の小断層を明らかにした。その中には自ら地震を起こした断層だけでなく、周囲の大きな変形に受動的に動かされたと考えられる断層もあった。「地図に記された一つの活断層だけで、すべての変形を説明できる」という単純な像は揺らいだ。

2016年と2026年を結ぶのは、地理だけではない。2016年の地震で磨かれた手法が、南北方向の動きを復元し、分散した変位場を読む基礎になった。国土地理院は2025年、2016年の3成分変位をGeoTIFFのオープンデータとして公開した。そして2026年、新たな熊本地震が発生した時、「だいち2号」はなお観測を続け、「だいち4号」も加わっていた。過去の科学的経験と新しい観測能力が、同じ断層系の上で重なった。


2006年1月 光学センサーとLバンドレーダーを搭載した初代「だいち」を打ち上げ。

2014年5月 PALSAR-2を搭載する「だいち2号」が軌道へ。

2016年4月 「だいち2号」が平成28年熊本地震の複雑な地殻変動を観測。

2024年7月 H3ロケット3号機がPALSAR-3搭載の「だいち4号」を打ち上げ。

2026年7月28日 午後4時27分、M7.1の令和8年熊本地震が発生。

7月28日~8月1日 複数方向から地震後のALOS観測を実施。

2026年8月12日 国土地理院が3次元解析速報を公表。


「だいち2号」から「だいち4号」へ――より広く、より頻繁に

2014年5月に打ち上げられた「だいち2号」は、Lバンド合成開口レーダーPALSAR-2を搭載し、年単位で想定された設計寿命を大きく超えて運用されている。その長寿は重要だ。干渉解析は比較によって成り立つ。災害後の画像は、同じ観測条件で取得された過去の画像があって初めて、「以前はどこにあったか」を語れる。今回の解析に使われた組み合わせには数カ月前の観測が含まれ、初期の「だいち2号」資料には2022年の画像と2026年7月29日の画像を組み合わせた例もある。長い観測アーカイブは、地表の過去位置を保存する記録になる。

「だいち4号」は2024年7月1日、H3ロケット3号機で打ち上げられ、「だいち2号」と同じ高度約628キロの太陽同期準回帰軌道を飛ぶ。PALSAR-3は高い空間分解能を保ちながら観測幅を大きく広げた。JAXAによると、ストリップマップモードの観測幅は「だいち2号」の50~70キロに対し、「だいち4号」は100~200キロ。ScanSARでは最大700キロに達する。日本国内を3メートル分解能で観測する機会は、年約4回から年約20回、すなわち約2週間に1回へ増える計画だ。

新しい一機が古い一機を不要にするのではない。組み合わせることで、観測機会、長期アーカイブ、観測方向の多様性が増す。「だいち2号」は2016年と2026年をつなぐ継続性を持ち、「だいち4号」は頻度と広い観測幅を加える。8月12日の結果は、世代の重なりの価値を示した。同じ緊急時に、二世代の日本のレーダー衛星が同じ断層系を見たのである。


復旧に使う座標が、もう正しくない時

地殻変動は抽象的な地球物理の数字に見えるが、直ちに行政と復旧の問題になる。測量は、緯度・経度・標高が公式に定められた基準点から始まる。その点が数十センチ、あるいは1メートル以上動けば、地震前の座標は現実の位置を正確に表さない。

国土地理院は、大きな地殻変動が確認された地域の基本基準点について測量成果の公表を停止し、熊本県内28市町村の公共基準点を「正常点」から「成果不良点」へ変更した。地震前の測量成果を知らずに使えば、正確な成果が得られない可能性があると警告している。座標の改定や補正手続きは、単なる事務作業ではない。道路、上下水道、排水、土地境界、公共施設を、新しい幾何学を持つ地上に再建するための一部である。

変位場は、地下のどこでどれだけ滑ったかを推定する震源断層モデルにも使われる。そのモデルは、余震域の解釈、現地調査を優先すべき場所の検討、観測された被害と地表断層の対応の検証に役立つ。ただし、次の地震を予知するものではなく、変位最大地点が必ず最大被害地点でもない。それでも、「地域が動いた」という曖昧な表現を、どこが、どの方向へ、どれだけ動いたかという空間的な測定へ置き換える。

本震後の動きも追う必要がある。国土地理院のGNSS観測は7月28日以後、余効変動と考えられる地殻変動を捉えている。断層の余効すべりやより深部の調整は、人々が記憶する強い揺れが終わった後も続く。多くの場合、本震時の急激な変位よりは小さいが、数カ月、数年にわたれば、高精度測量や地震像の復元に意味を持つ。


地震は道路を二度壊す。最初は舗装を裂く時。次は、その道路を直すための座標が、地面が動く前の世界を指し続ける時だ。

衛星よりはるかに長い記憶を持つ断層

衛星は新しいが、断層は古い。日奈久断層帯は布田川断層帯との北端の接合部から八代海南部へ延びる。2026年の地震前にまとめられた地震調査委員会の長期評価では、日奈久区間の最新活動時期は約8400年前以後、約2000年前以前と推定されていた。八代海区間の最新活動は、西暦744年、天平16年の肥後地震だった可能性がある。ただし、歴史地震との対応は確定ではなく、可能性として示されている。

活断層の長期評価が区間ごとに行われるのは、場所により活動履歴、長さ、再来間隔が異なり得るからだ。2016年熊本地震は主として布田川区間の活動と評価されたが、変形と地震活動は日奈久断層帯北部にも及んだ。2026年は破壊の中心が接続する断層系の南西側へ移り、地震調査委員会は主に高野―白旗区間と日奈久区間に関わると評価した。

だからといって、一つの地震が時刻表どおりに次の地震へ進んだわけではない。断層間の相互作用は複雑で、長期確率は短期の時計ではない。二つの地震の歴史が示すのは、布田川―日奈久断層系を、中央九州の広い範囲にひずみ、破壊、二次的な変動を分配し得る、接続した区分構造として理解する必要があるということだ。


「速報」であることは、科学が正しく変わるために必要だ

国土地理院は今回の3次元解析を「速報」としている。この言葉は不信ではなく、信頼の理由である。観測後には衛星軌道情報が精密化され、より長いGNSS観測時間によってばらつきが減る。大気補正を改良でき、追加のレーダー観測から新しい組み合わせが生まれ、現地情報によって滑らかな数理解の中にある複雑な断層を確かめられる。

「千丁」の沈降量も、初期解析では約32センチとされ、8月12日の精密化した再解析では約33センチとなった。これは矛盾ではない。より精度の高い衛星軌道情報と24時間分のデータを用いて、測定が絞り込まれた結果である。同じ規律でSAR解析も読むべきだ。公表された最大値と地図は、その時点で最善の公開解析であり、永遠に変わらない最終値ではない。

正確さには倫理的な意味もある。鮮烈な地図は、「災害の全てを宇宙から見た」という錯覚を生み得る。しかし、衛星は避難所で疲れた家族も、店を失った経営者も、街路ごとに水道を復旧する苦労も映さない。測っているのは、もっと狭く、しかし不可欠なものだ。そうした人間の出来事が起きる土台そのものが、どのように組み替わったかである。

「だいち2号」と「だいち4号」は、見えない変動を測れる地表へ変えた。軌道上の工学、測地学、日々の復旧作業が一つにつながった。色が明瞭な場所では、大地がどの方向へどれだけ移動したかを熊本に伝える。空白の場所では、一つの方法で解けないほど破壊が複雑だったことを認める。そして今後の反復観測は、大地の調整が終わったのか、それともなお静かに動いているのかを示していく。


取材メモ・主要資料

本稿は2026年8月13日午前9時52分(日本時間)までに公表された情報を使用しています。国土地理院は3次元解析を速報と位置づけています。成分ごとの最大値は異なる地点で生じ得るため、一つの合成変位量として扱っていません。また、計測された地表変位、推定された地下断層、揺れの強さ、物理的被害を区別して記述しています。