日銀が利上げを決めても、輸入品を仕入れる企業の支払額がすぐに減るとは限らない。日本銀行は9月18日、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す方針を決定した。適用日は9月24日。企業にとっては、円相場に加え、仕入れ代金をいつ、どの通貨で支払うかが引き続き重要になる。[1]

9月22日のロイターは、利上げ決定後も円が圧力を受けていると報じた。[3] 金利が上がれば円高になる、円高になれば仕入れが安くなる、という順番をそのまま経営計画に当てはめることはできない。相場の動きと、契約を通じて費用に表れる時期にはずれがある。

8月は前月比で下落、それでも前年より高い

日銀が9月11日に公表した8月速報では、輸入物価指数は円ベースで前月比3.0%下落した一方、前年同月比では24.8%上昇した。契約通貨ベースでは前月比1.0%下落、前年同月比16.7%上昇だった。[2]

前月より安くなったことと、前年より高いことは両立する。また、契約通貨ベースでも前年比で上昇している以上、円建て輸入価格の上昇をすべて為替だけで説明することはできない。円ベースと契約通貨ベースを並べて見ることで、海外の価格変動と円換算の影響を分けて考えやすくなる。ただし、両者の伸び率の差を個々の企業の為替損失に置き換えることはできない。

10万ドルの仕入れ、150円想定との差は71万9,000円

具体的な負担をつかむには、外貨建ての請求額を固定してみるとよい。10万ドルの代金なら、1ドル150円では1,500万円。157.19円では1,571万9,000円となり、必要な円資金は71万9,000円、約4.8%増える。以下は編集部による単純な試算で、実在企業の取引ではない。

試算:ドル建て代金10万ドルが変わらない場合
1ドル当たりの円10万ドルの円換算額150円想定との差
150.0015,000,000
157.1915,719,000+719,000
160.0016,000,000+1,000,000

金額は円。150円・160円は仮定で、相場予測ではありません。157.19円は編集部提供の9月22日21:40 JST時点の参考値。為替予約、手数料、運賃、保険料、関税・税金などは含めていません。

この差額がそのまま利益の減少になるかは、販売価格、在庫の計上時期、為替予約の有無などで変わる。一方、支払日が先に来れば、販売代金の回収を待つ間の資金が必要だ。採算の問題と資金繰りの問題は、同じ仕入れから生じても分けて見る必要がある。

利上げだけでは円相場は決まらない

為替市場では、日本の金利水準だけでなく、海外との金利差や今後の政策への予想、資金の流れなどが価格に反映される。利上げがあらかじめ予想されていれば、発表そのものより、次の政策変更についての見方が相場を動かすこともある。これは市場の仕組みの説明であり、特定の日の値動きを一つの原因に断定するものではない。

企業の借入金利も政策金利と同じ数字になるわけではない。変動金利の見直し時期、固定金利の期間、融資条件によって影響は異なる。輸入代金の増加で必要な運転資金が膨らむ企業では、借入額と金利の両方を確認したい。

大企業の増益と、仕入れ先の苦しさは両立する

海外で稼ぐ企業は、外貨建ての売上高や利益を円に換算した際に金額が増える場合がある。しかし、円換算の増加は販売数量が伸びたことを意味しない。輸出企業でも、原材料や部品を輸入していれば費用は増え得る。外貨の収入と支出を同じ通貨で持つか、どこで生産しているかによっても結果が変わる。

中小企業を見る際には、従業員数だけでなく、取引条件が重要だ。海外から直接輸入していなくても、国内の卸売業者から価格改定を求められれば影響を受ける。販売先との価格交渉に時間がかかる企業や、手元資金に余裕がない企業では、費用の増加を吸収しにくい。この点は取引構造から考えられるリスクであり、中小企業全体の損失を推計したものではない。

購買予算は「相場」と「契約」を分けて管理する

編集部の分析では、予算の点検は、未払いの外貨額、決済日、すでに為替を固定した部分を分けるところから始まる。仕入れ単価の改定と為替変動を別々に記録すれば、何が予算超過を招いたか説明しやすい。

為替予約は対象となる代金の円換算額を見通しやすくする一方、相場が有利に動いた場合の恩恵も限定する。契約後に発注量や支払日が変われば、予約とのずれも生じる。円建ての契約でも、次回の価格改定まで為替の影響が先送りされている場合がある。

円相場の反転を待つだけでは、次の支払いには間に合わないことがある。経営への影響を判断する軸は、為替の見出しよりも、いくらをいつ支払い、費用増をどこまで販売価格に反映できるかにある。

出典

  1. 日本銀行:金融市場調節方針の変更について(9月18日)
  2. 日本銀行:企業物価指数・2026年8月速報(9月11日)
  3. ロイター:9月22日の外国為替市場報道(英語)