医薬品卸を中核とする東邦ホールディングスの買収防衛策に、東京地方裁判所が待ったをかけた。同社の9月18日の開示によると、東京地裁は同日、新株予約権の無償割当てを仮に差し止める決定を出した。同社は保全異議を申し立てる予定としている。[1]
株主の支持を得た対抗措置でも、その実施をめぐって司法判断が求められる。経営への影響力を強めようとする株主に、会社はどこまで対抗できるのか。今回の紛争は、買収防衛策と株主による経営への働きかけの境界を考える事例となる。
差し止めの対象は新株予約権の無償割当て
申立人は、株主の3DWH・オポチュニティー・マスター・OFC-3DWH・オポチュニティー・ホールディングス。会社開示によれば、決定の対象は6月26日の定時株主総会決議を受けて行う新株予約権の無償割当てだ。[1] 仮処分決定を、買収防衛策全般を否定する確定判決と受け取ることはできない。
ロイターは、今回の措置について、3D側の保有比率が24%を超えた場合に持ち分を希薄化させる仕組みで、6月の総会では54.7%の賛成を得たと報じた。[2] 新株予約権を使った対抗措置では、対象となる株主の相対的な影響力を弱める効果が問題になる。
会社側は短期志向を懸念、3Dは企業価値向上を主張
東邦HDは4月28日の説明資料で、3D Investment Partners Pte. Ltd.による影響力の拡大が短期的な利益を優先する経営判断につながり、企業価値や株主共同の利益を損なうおそれがあると主張した。医薬品卸に必要な取引先との長期的な関係を重視し、自社の中期経営計画を進める立場を示している。[3]
これに対し3Dは、1月19日の日本語資料で、買い増しは企業価値の向上余地に投資するためだと説明。買付上限を既保有分を含め27%とし、ガバナンス体制や資本効率の改善を求めた。[4] これは当時の3Dの説明であり、現在の保有比率を示す数字ではない。
争いの核心は、同じ買い増しを、経営を改善するための働きかけと見るか、会社の持続的な成長を損なう圧力と見るかにある。どちらの説明も当事者の主張として扱う必要がある。
総会の賛成と、対抗措置の妥当性
ここからは編集部の分析だ。株主総会で支持を得たという事実と、特定の株主に不利益を与える措置が妥当かという問いは、分けて検討する必要がある。賛成割合だけでは、株主にどのような情報が示され、どの条件で措置が使われるのかまでは分からない。
取締役会にとっては、買い増しによってどのような不利益が予想され、それに対してなぜ持ち分の希薄化が必要なのかを具体的に説明することが重要になる。投資家側にも、経営への提案が中長期の収益力や事業の継続性にどう結び付くのかを示す課題がある。
企業価値を巡る説明を、今後も確かめる
今回の決定だけで、3Dの経営提案が優れているとも、東邦HDの経営計画が否定されたとも言えない。防衛策の可否と、事業運営の評価は別の問題だ。
今後は、同社が表明した保全異議への対応と、対抗措置をめぐる追加開示が焦点になる。企業の法務・IR担当者や機関投資家にとっては、賛否の数だけでなく、措置の目的、条件、株主への影響を具体的な資料で確認することが、この事例を読む出発点となる。

