試合開始までの時間に、会場の周りを歩く。応援するチームを追って、初めての町へ出かける。卓球のTリーグが、そんな観戦と旅の間をつなぐ仕組みを始める。スマートフォンの地図上でコインを集める企画を、地域に目を向けるきっかけにしようという試みだ。

Tリーグは9月9日、「Tリーグオフィシャルマップ 日本周遊 Tリーグコインコレクションラリー」を発表した。12日の鳴門開催から始め、期間は2027年3月7日まで。一部の宝箱は9月10日から先行公開するとしている。[1]

注目したいのは、試合を見に来た人が会場の外へ関心を広げる可能性である。ただし、地域活性化はリーグが掲げる目的であり、開始前の段階で効果が実証されたという話ではない。

地図の上で集める、旅のきっかけ

企画では、公式ウェブサービスの地図に置かれたデジタル宝箱から「Tリーグコイン」を集める。対象はチームのホームタウンの観光地や名所、試合会場に加え、台湾の観光スポットにも広がる。発表はデイリーコインと会場限定コインを紹介している。[1]

地図に示された場所は、次の行き先を考える材料になる。対戦カードだけを追っていた人が、会場のある町の名前を覚え、周辺を調べてみる。コインは、そうした行動のきっかけとして位置付けられる。

一方、コインの数字だけを旅行の価値に置き換える必要はない。短い散歩でも、試合前に落ち着いて食事をする時間でも、その町を知る体験にはなる。遠くへ移動することや、すべてを集めることを観戦の条件にしない楽しみ方もある。

特典は、達成型と順位型を分けて見る

発表された主な特典は、500枚達成ごとの公式デジタルカード獲得用シリアルコードと、年間ランキング1位へのプレーオフ・ファイナルのアリーナ席ペア招待券、ペア宿泊権である。1位の特典では男女いずれかのファイナルを選べる。参加費は無料だが、通信料は参加者負担となる。[1]

一定数を集める特典と、他の参加者との順位で決まる特典は、性格が違う。前者は自分の積み重ねを見る仕組みで、後者は競争を伴う。旅程を考える際は、この違いを理解したうえで、自分が無理なく参加できる範囲を決めたい。

無料なのはラリーへの参加であり、交通や宿泊、通常の試合観戦まで無料になるという意味ではない。観戦券と移動の手配は、それぞれの案内を確認する必要がある。

鳴門では、男女の試合を週末に

開始日の9月12日(土)には、鳴門市のアミノバリューホールで金沢ポートと岡山リベッツが対戦する。翌13日(日)は、日本生命レッドエルフと京都カグヤライズの女子戦。同じ会場で、いずれも午後2時開始の予定だ。[2][3]

ラリー開始週末の鳴門開催(日本時間)
日付対戦開始
9月12日(土)金沢ポート―岡山リベッツ14:00
9月13日(日)日本生命レッドエルフ―京都カグヤライズ14:00

この開催は、チーム名にある地域だけを見て旅先を決められないことも示している。実際に観戦へ出かけるなら、公式日程に記載された会場を確かめることが出発点になる。リーグ全体を追う地図と、個々の試合へ向かう道順は、組み合わせて使いたい。

両国から始まったリーグの時間

Tリーグの2018–2019シーズン公式記録は、2018年10月24日、両国国技館での男子戦から始まる。木下マイスター東京がT.T彩たまに3―1で勝利し、翌25日には同じ会場で日本生命レッドエルフがトップおとめピンポンズ名古屋に3―1で勝った。[4]

一つの卓球台を囲む競技を、チームを継続して応援するリーグとして見せる。その歩みを振り返ると、今回の企画は、試合と試合の間にもファンとの接点をつくろうとする取り組みとして理解できる。

発足時の試合を今の観戦体験と同一視することはできない。それでも、記録に残る最初の対戦から、別の町へチームを追う現在の楽しみへ、リーグを見る時間軸は続いている。

ホーム、アウェイ、その先の地理

2026–2027シーズンのリーグ概要では、男子6、女子6チームが参加する。各チームはホーム12試合、アウェイ12試合、セントラル1試合の計25試合を戦い、レギュラーシーズン全体は150試合となる。[5]

この構成は、同じチームを複数の会場で見る機会を生む。本誌の見方では、ラリーの地図が役立つのは、その試合の配置を周辺の町への関心につなげられる場合だ。対戦を目的に訪れた場所で、別の楽しみを見つけられるかが重要になる。

台湾も単なる遠方の追加地点ではない。今季の公式日程には、7月25日に台湾の新竹県立体育館で行われた男女の試合が記録されている。地図の対象地域を考える際にも、すでに行われたシーズンの開催地という背景がある。[6]

ただし、7月に観戦したことが9月開始のラリーで遡って認められる、と発表されているわけではない。過去の旅の記憶と、今回の獲得条件は分けて考えたい。

初めての観戦は、チーム戦として

卓球を個人戦の印象で見ている人にも、Tリーグは別の見方を提供する。基本のチームマッチはシングルス3試合とダブルス1試合で構成され、4試合を終えて2―2なら、1ゲームのビクトリーマッチで決着をつける。[5]

観客は一人の選手だけでなく、異なる組み合わせの勝負を追うことになる。ある試合の結果が、次の選手にどんな局面を残すか。旅先で初めて見るチームでも、団体としての流れに目を向けると、応援するきっかけを見つけやすい。

「つなぐ」という目的を、結果で確かめる

Tリーグは「つなぐプロジェクト」で、世代や年齢、選手とファン、日本と世界を卓球で結ぶ考え方を示している。健康や社会への貢献も掲げるが、これらはリーグ自身が説明する活動の方向性である。[7]

今回のラリーでも、集められたコインの枚数と、地域にもたらされた成果は同じではない。参加者が会場外を訪ねたか。地元で時間を過ごしたか。もう一度来たいと思ったか。そうした変化を見なければ、観光とのつながりが生まれたかは判断できない。

本誌としては、参加者数やランキングだけでなく、初めて訪れた人の動きや再訪の意向なども、今後の評価材料として知りたい。開始を伝える記事で、経済効果の数字を先取りすることはできない。

Japan.co.jpの視点:試合の日を、町の記憶に

参加するなら、まず見たい試合と会場を決め、公式マップラリーの最新案内を確認したい。コインの獲得方法や特典の条件は、現地へ出かける前に確かめておく。

この企画の面白さは、遠征の理由が一つ増えることより、すでに出かける日の過ごし方が少し変わることにある。試合の記憶に、歩いた道や立ち寄った場所の記憶が加わる。コインを集める行為が、その地域を知る時間につながるなら、卓球と旅の関係も一段深くなる。