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東山紀之氏、SMILE-UP.社長を退任 補償は「法務中心」の次段階へ

東山紀之氏の3年間は終わった。しかし補償は終わらない。SMILE-UP.は弁護士の山田将之氏を社長兼CCOに据え、残る案件の法的処理と専門判断へ重心を移す。

By Bradley L. Bartz · 2026年10月5日 · Japan.co.jp
エンターテインメント企業の経営引き継ぎを象徴する会議室で、前任者が退き、新たな責任者が書類を受け取る様子を描いたイメージ
SMILE-UP.の経営体制変更を題材にしたJapan.co.jpのイメージ。Image: Japan.co.jp

東京。旧ジャニーズ事務所が、創業者・故ジャニー喜多川氏による性加害への補償に専念する会社へ姿を変えてから3年。経営の中心に立ってきた東山紀之氏が、9月30日をもって代表取締役社長を退任した。

株式会社SMILE-UP.は9月28日、取締役の任期満了に伴う新体制を発表した。10月1日付で、これまでチーフ・コンプライアンス・オフィサー(CCO)を務めてきた弁護士の山田将之(やまだ・まさゆき)氏が代表取締役社長兼CCOに就任。専務取締役の安部朗氏も退任し、神隆幸氏が専務取締役に就いた。藤島ジュリー景子氏は代表取締役に留任する。

会社は人事の理由を、補償業務の中心が「法的な手続きや専門的な判断を必要とする局面」へ移っているためと説明した。東山氏は9月28日の会見で、社長の肩書きを離れても被害に向き合う姿勢は変わらないと述べた。

今回の経営変更東山紀之氏は任期満了により2026年9月30日付で退任。10月1日から山田将之弁護士が代表取締役社長兼CCO。藤島ジュリー景子氏は代表取締役として留任。SMILE-UP.は、この変更は性加害問題への対応を終えるものではなく、係争中の案件を含め必要な手続きを最後まで進めるとしている。

3年前、会社の目的そのものが変わった

現在のSMILE-UP.は、かつてのジャニーズ事務所と同じ事業を続けている会社ではない。

2023年8月29日、旧ジャニーズ事務所が設置した外部専門家による再発防止特別チームは調査報告書を公表し、ジャニー喜多川氏による性加害と、組織側のガバナンス上の問題を認定した。会社は同年9月、被害者補償と再発防止を中心に組織を再編する方針を打ち出した。

10月2日の会見で、旧社名から決別し、10月17日付で商号を株式会社SMILE-UP.へ変更すると発表。同時に、所属タレントのマネジメントや育成を新会社へ移し、SMILE-UP.は被害者補償を終えた後に業務を終了する方針を示した。

新会社は後に株式会社STARTO ENTERTAINMENTとなり、2024年4月10日に本格始動した。STARTOの公表によれば、SMILE-UP.とは資本関係を持たず、当初28組295人のタレントとともに業務を開始した。

これにより、かつて一つの会社に存在した「芸能ビジネス」と「過去の被害への補償」は、法人上も別の役割へ切り分けられた。

東山氏はなぜ社長になったのか

東山氏は2023年9月7日、藤島氏の後任として旧ジャニーズ事務所の社長に就任した。当時は俳優、歌手、テレビ出演者として長い芸能活動歴を持っていたが、会社再建と補償に専念するため、2023年末で芸能活動から引退した。

その役割は、通常の芸能会社社長とは異なった。会社が新規ビジネスを拡大するのではなく、被害申告の受付、救済委員会との連携、補償金支払い、被害者との対話、再発防止策、組織縮小を進め、最終的には会社そのものを閉じるという特殊な経営だった。

9月28日の会見で東山氏は、在任中に127人の被害者と面会したと説明した。テレビ朝日の報道によれば、東山氏は「直接お会いして、お気持ちを伺うことを大事にした」という趣旨を述べている。

一方、東山氏個人の面会件数は補償制度全体の進捗を示す数字ではない。補償判断は、会社から独立した被害者救済委員会が担ってきた。

被害者救済委員会は「厳格な訴訟証明」を前提にしなかった

SMILE-UP.は2023年9月、元裁判官の経歴を持つ弁護士3人で構成する被害者救済委員会を設置した。外部専門家チームは、補償に際して性被害の事実認定に通常の裁判と同じ厳格な証明を要求すべきではないと提言していた。

救済委員会は申告者から直接聞き取りを行い、被害内容、その後の生活への影響、個別事情を踏まえて補償金額を算定する。会社は委員会の判断に基づいて支払う仕組みを採った。

2024年には補償業務をめぐる運用上の問題も表面化した。NHKの報道を受け、SMILE-UP.は補償本部長を交代させ、被害者との電話対応を原則複数名で行い、本人の同意がある場合は会話を録音するなど、業務体制を見直した。

これは、補償制度を設けることと、被害を申告する人が実際に安心して利用できる制度を運営することが別の課題であることを示した。

2024年には従業員約20人の補償専門会社へ

SMILE-UP.は2024年4月に組織を縮小し、旧会社のタレントや従業員の多くがSTARTOへ移った。同年12月の会社発表では、ファミリークラブ事業の分社化後、SMILE-UP.は補償担当者と管理業務担当者を中心とする約20人の組織になったとしている。

同社はSTARTOとの間で、性加害や子どもの権利侵害防止策を引き継ぐための協定を結び、両社のCCOが定期的に会議を行う仕組みも整えた。

その構造から見れば、2026年の社長交代は「芸能会社のトップ交代」というより、被害補償の専門会社が終盤の法的処理へ合わせてガバナンスを変える人事と考える方が正確だ。

時期主な出来事
2023年8月29日外部専門家による再発防止特別チームが調査報告書を公表
2023年9月7日東山紀之氏が旧ジャニーズ事務所社長に就任
2023年9月13日被害者救済委員会を設置
2023年10月17日商号をSMILE-UP.へ変更
2024年4月10日STARTO ENTERTAINMENTが本格始動
2024年10月補償本部の業務体制を見直し
2026年10月1日山田将之氏が代表取締役社長兼CCOに就任

申告1,047人、補償済み578人――数字は「終了」を意味しない

9月28日の会見時点で、SMILE-UP.は被害補償の申告が1,047人から寄せられ、578人に補償金を支払ったと説明した。報道によれば、231人については補償対象外との判断が示され、226人は連絡が取れていないとしている。

この数字は単純に足して「処理率」を競うためのものではない。申告者ごとに事実確認、在籍確認、聞き取り、金額提示、合意の有無が異なり、一部には民事調停や訴訟など法的手続きへ進んだ案件もある。

SMILE-UP.自身も、今回の人事は補償終了を意味しないと明記した。むしろ山田氏への交代は、残る案件ほど法的な論点や専門的判断を必要とする比率が高くなるという会社側の認識を反映している。

山田将之氏は2023年からガバナンス問題の中心にいた

新社長の山田氏は、今回突然外部から招聘された弁護士ではない。2023年の再編時からCCOとして会社のコンプライアンス体制に関わってきた。

2023年10月の記者会見をめぐって「指名NGリスト」が外部流出した問題では、山田CCOが関係者への聞き取りと資料確認を行い、会社としての事実調査をまとめた。以後、補償、ガバナンス、再発防止の法的実務に関与してきた。

2026年10月以降は代表取締役社長とCCOを兼務する。会社が説明する「法律手続きと専門判断の局面が中心になる」という人事理由は、その役割と一致する。

藤島ジュリー景子氏が残る意味

今回、東山氏が退任する一方、藤島ジュリー景子氏は代表取締役として留任する。

2023年の再編以来、藤島氏の立場は大きな論点の一つだった。旧ジャニーズ事務所のオーナー経営とガバナンスの問題を特別チームが指摘した一方、会社は補償財源と責任を担う法人を維持する必要があると説明してきた。

今回の会社発表は、藤島氏が今後どの期間まで代表取締役を続けるか、SMILE-UP.の最終的な廃業時期がいつになるかについて具体的な期限を示していない。

したがって、東山氏の退任を「旧体制が完全に終わった」と解釈するのは正確ではない。会社の役割は縮小しているが、補償義務と法人の責任は続いている。

今回の人事で終わるのは「東山社長の3年間」であって、補償問題ではない。会社自身がそう明記している。

STARTOとSMILE-UP.は別会社だが、社会からは連続して見られる

STARTO ENTERTAINMENTはSMILE-UP.と資本関係を持たない会社として発足した。タレントマネジメント、育成、コンサート、コンテンツ制作などはSTARTOの事業であり、補償専門会社となったSMILE-UP.とは法人上切り分けられている。

STARTOは2024年、内部通報制度、人権・コンプライアンス研修、ジュニア向け相談窓口などの整備状況を公表した。これは旧会社の再発防止特別チームが求めた改革の一部を、新しい芸能会社側で引き継ぐための仕組みである。

ただ、ブランド、タレント、ファン文化の歴史的連続性まで法人分割で消えるわけではない。広告主、放送局、ファン、社会は、新会社が過去の教訓をどう制度へ変えたかを今後も評価することになる。

「いつ終わるか」より「どう終えるか」

SMILE-UP.は以前から、被害補償を終えた後に会社を廃業する方針を示している。しかし、2026年9月28日の発表は、具体的な廃業日を示していない。

補償制度では、支払い件数だけでなく、申告者が連絡を取れない場合、認定に争いがある場合、提示額に合意できない場合、追加資料が必要な場合など、簡単に終了時期を区切れない案件が残る。

山田氏への交代は、まさにその段階を映す。大量の申告を迅速に処理するフェーズから、個別案件を法的に整理し、必要な手続きを最後まで完了させるフェーズへ。

企業危機対応の観点では、最終局面こそ透明性が必要になる。月次の進捗開示をどこまで続けるのか。係争案件をどのように説明するのか。被害者のプライバシーを守りながら、社会への説明責任をどう果たすのか。会社が廃業する時、未解決案件を残さない仕組みをどう担保するのか。

「過去を処理する会社」が残した制度は何か

この3年間の変化は、日本の芸能産業にとっても一つの試金石だった。

かつては創業者の影響力が極めて強く、閉鎖的な意思決定や外部監視の弱さが問題とされた会社が、外部委員会、CCO、人権方針、内部通報、独立した救済委員会などを導入した。それらが十分だったか、遅すぎたか、運用が適切だったかについては、被害者、専門家、社会から異なる評価がある。

重要なのは、再発防止が一社のルールだけで終わらないことだ。未成年者を含むタレント育成、権力差の大きい芸能事務所と出演者の関係、相談窓口の独立性、テレビ局や制作会社を含む業界全体の監視など、問題は企業境界を越える。

東山氏の退任は、2023年の危機対応で始まった一つの章を閉じる。ただし、SMILE-UP.という会社が本当に役割を終える日は、社長交代の日ではない。

最後の補償案件が解決し、必要な法的手続きが完了し、その過程が十分に説明された時である。

主な資料

  1. 株式会社SMILE-UP.「経営体制の変更について」(2026年9月28日)
  2. 旧ジャニーズ事務所「外部専門家による再発防止特別チームに関する調査結果について」(2023年8月29日)
  3. SMILE-UP.「弊社の社名変更と新会社設立及び補償状況について」(2023年10月2日)
  4. SMILE-UP.「被害補償の状況等について」(2024年2月29日)
  5. SMILE-UP.「補償業務体制の変更について」(2024年10月25日)
  6. SMILE-UP.「再発防止策の実施状況及び弊社の取組について」(2024年12月13日)
  7. STARTO ENTERTAINMENT「株式会社STARTO ENTERTAINMENT 始動します」(2024年4月10日)
  8. The Japan Times「Smile-Up’s president announces he will step down」(2026年9月29日)