「撤回」ではなく「追加」だった。一般社団法人ジャパンラグビーリーグワンは8月28日、2026-27シーズンに導入するカテゴリA-1の要件へ、既存選手を守る二つの特別措置を加えると発表した。
対象になるのは、トップリーグ時代からの経過措置に該当する選手と、2025-26シーズンまでカテゴリAで登録され、2025年5月31日までに日本国籍を取得した選手だ。同日までに取得を申請し、その後に国籍を得た選手も含む。
一部選手が東京地方裁判所に申し立てていた制度施行差し止めの仮処分は、リーグと選手側の協議を経て8月27日に和解した。リーグの公式発表によると、裁判所への申立てと公正取引委員会への申告は取り下げられた。
「全面撤回」ではなく、移行措置の修正
2025年5月に示された制度は、従来のカテゴリAをA-1とA-2に分けるものだった。A-1をホームグロウンに近い区分として試合日メンバーの最低人数を定め、A-2には事実上の上限を生じさせる。
ところが当初案では、トップリーグ時代に日本国籍取得などを理由として人数上限なく出場でき、リーグワン発足後もカテゴリAとされた選手がA-2へ移る設計だった。リーグは4月30日の説明で、制度変更そのものを見直す予定はないとしていた。
8月28日の決定は、その遡及的な影響を修正する。リーグは、過去に示した要件を信頼して国籍取得などの選択をした選手を、制度変更後もA-1として扱うのが適切だと説明した。申立てをした選手だけでなく、要件を満たすすべての選手に適用される。
見直しでA-1に加わる選手
新たにA-1へ加わる第1群は、現行の「選手契約および登録に関する規程」第11条第1項第4号a〜dに該当する選手だ。具体的には、一定期日以前に日本国籍取得選手、特別永住権取得選手、日本での義務教育修了者、または「アジア枠」選手として協会登録されていた選手である。
第2群は、2025-26シーズンまでカテゴリAで登録され、2025年5月31日までに日本国籍を取得した選手。同日までに申請し、後日取得した場合も対象に含まれる。
| 論点 | 当初の扱い | 8月28日の見直し後 |
|---|---|---|
| 旧制度の経過措置対象者 | 原則A-2へ移行 | A-1に追加 |
| 基準日までに国籍取得・申請済みの既存A選手 | 原則A-2へ移行 | A-1に追加 |
| 2025年5月31日後の国籍取得申請 | 国籍だけではA-1にならない | 特例対象外。別のA-1要件を満たせばA-1 |
| A-1・A-2の枠組みと人数枠 | 2026-27シーズンから導入 | 変更なし |
A-1とA-2、試合日に生じる差
A-1は、他協会の代表歴がなく義務教育9年間のうち6年以上を日本で過ごした選手、本人または親・祖父母の少なくとも1人が日本で生まれた選手、15人制日本代表で30キャップ以上を持つ選手、そして今回の特別措置対象者から成る。
A-2は、それ以外で、他協会の代表歴がなく、日本ラグビーフットボール協会への48カ月以上の継続登録がある選手。チーム全体で登録できるA-2選手の人数に上限はない。
差が表れるのは試合日だ。23人のメンバーにはA-1を14人以上入れ、ピッチ上では同時に8人以上を出場させる。裏返せば、A-2はカテゴリB・Cと重なる枠を含め、試合登録で最大9人、同時出場で最大7人になる。帰化選手全員が制限されるわけでも、全員が解除されるわけでもない。
国籍・代表資格・リーグ区分は別物
この問題では三つの概念を分ける必要がある。日本国籍の取得、ラグビー日本代表としてプレーできる資格、リーグワンの登録区分は同じではない。
ワールドラグビーのRegulation 8は、出生地、親または祖父母の出生地、協会登録などに基づいて代表資格を定める。公式解説は、国籍や旅券だけで代表できる協会が決まるわけではないと明記する。リーグワンはこれを「所属協会主義」と表現している。
一方、A-1とA-2は国内リーグの試合登録ルールだ。A-2の48カ月継続登録と、ワールドラグビーが代表資格に用いる期間を混同してはならない。さらに今回の国籍取得に関する扱いは、原則そのものではなく、過去の制度との継続性を守る特例である。
- 日本国籍:日本の国籍法に基づく法的地位。
- 代表資格:ワールドラグビー規則に基づき、どの協会の代表として出場できるか。
- 登録区分:リーグワンが国内公式戦の選手構成を管理するA-1、A-2、B、Cの分類。
- キャップ:代表としてテストマッチに出場した回数。今回の特例基準は15人制日本代表30キャップ以上。
仮処分と公取委申告、8月27日に和解
リーグの公式発表が確認できる法的経緯は限定されている。一部選手が東京地裁へ制度施行差し止めの仮処分を申し立て、協議の結果、8月27日に和解。裁判所への申立てと公取委への申告が取り下げられた、という内容だ。
これは裁判所が制度を違法、無効または差別的と判断したことを意味しない。公表されたリーグ文書には、和解条項、申立人の氏名・人数、法的主張、公取委の判断は記載されていない。したがって、本稿は見直しを和解の結果として記述するが、法的責任の認定とは扱わない。
公取委はスポーツ分野の一般論として、競争を制限し得るルールを自主的に点検するよう競技団体に促している。ただし、その2019年資料は移籍制限ルールに関する一般的な指針であり、今回のリーグワン制度についての判断ではない。
ホームグロウン政策の目的と手段
リーグが掲げる目的は、日本の小中学校年代を含む若年層にトップリーグへの道を示し、競技参加と国内の競技人口を増やすことだ。義務教育9年間のうち6年以上を日本で過ごしたことをA-1要件にしたのも、育成期と選手構成を結びつける「ホームグロウン制度」と位置付けている。
その目的と、既存選手に新しい制限を及ぼす手段は別に評価すべきだ。リーグ自身も4月30日、影響を受ける選手への説明が不足し、不安の声が出たことを認めた。8月の修正は、制度目的を維持しつつ、その移行コストの一部をリーグ側が引き取った形になる。
ただ、特例が広がっても、将来の選手編成は変わる。リーグが示した2024-25シーズンのディビジョン1試算では、23人枠の平均はA-1が12.2人だった。新制度はこれを最低14人にする。クラブは採用、育成、契約、試合起用を同時に組み替える必要がある。
残る線引きは2025年5月31日
和解後も最も明確な境界は日付だ。2025年5月31日より後に日本国籍取得を申請した選手は、国籍取得だけでは特別措置の対象にならない。出生、義務教育、30キャップなど別のA-1要件を満たさなければA-2となる。
この線引きは、2025年5月の発表時点で国籍取得の扱いが明確でなかったことへの救済と説明される。だが、同じ日本国籍を持ち、同じクラブでプレーする選手でも、申請日や過去の登録経路によって試合日の扱いが分かれ得る。
制度は2026-27シーズンから動き始める。リーグは導入後の影響を継続して検証するとしている。次に問われるのは、特例対象人数、クラブ別の編成変化、A-2選手の実際の出場時間、若年層の機会が増えたかという測定可能な結果だ。
2025年5月13日 リーグワンがA-1・A-2の追加カテゴリ導入を発表。
2026年4月30日 詳細説明を公表し、制度変更自体を見直す予定はないと表明。
2026年8月27日 リーグと申立て選手側の和解が成立。
2026年8月28日 既存・移行期の対象者をA-1に加える特別措置を発表。
2026-27シーズン A-1・A-2区分と試合日の人数枠を施行。
- ジャパンラグビー リーグワン — 2026年8月28日の一部見直し、特別措置、和解に関する公式発表
- ジャパンラグビー リーグワン — 2026年4月30日の追加カテゴリ詳細説明
- ジャパンラグビー リーグワン — 2025年5月13日の追加カテゴリ導入発表
- ジャパンラグビー リーグワン — 規約・規程一覧と「選手契約および登録に関する規程」
- ワールドラグビー — Regulation 8(代表資格) / 公式解説
- 公正取引委員会 — スポーツ事業分野の移籍制限ルールに関する独占禁止法上の一般的な考え方
本稿は2026年8月29日までに確認できた公式資料を基に、日本語記事として独立して執筆した。団体名、制度名、施行時期、区分要件、人数枠、基準日、裁判手続きの種類と和解日は一次資料で照合し、公表資料が裏付けない法的結論は記載していない。
