美しい景色を未来に残すには、そこに暮らす人の未来を守れるかが問われる。
竹芝で「村の未来」を考える一日
10月24日、東京・竹芝の東京ポートシティ竹芝に、日本各地の22の町村・地域が集まる。NPO法人「日本で最も美しい村」連合による「第5回 日本で最も美しい村まつり」は、午前11時から午後5時30分まで。入場は無料だ。特産品のマルシェや郷土料理、伝統芸能、地域の体験に加え、今年は村の人が薦める旅と1泊2日のモデルプランを提案するという。10月20日現在では開催前であり、本稿は公表された計画を紹介する事前報道である。
「きれいな場所」の品評会ではない
名前から観光地の人気投票を想像するかもしれない。しかし連合の理念は、風景の美しさだけを競うことではない。田畑を耕すこと、山や海と暮らすこと、祭りを受け継ぐこと。日々の営みが形づくった景観と文化を、住民自身が守り、その価値を地域の自立につなげる運動だ。全国の全自治体を採点して順位を付けた公的ランキングではなく、理念への賛同と審査を通じて参加する連合である。この違いを理解すると、祭りの意味が変わる。
2005年、合併の時代に7町村が決断
連合が発足したのは2005年10月4日。平成の大合併で小規模自治体の行方が問われる中、北海道美瑛町、赤井川村、山形県大蔵村、長野県大鹿村、岐阜県白川村、徳島県上勝町、熊本県南小国町の7町村が出発点となった。構想の源流には、1982年にフランスで始まった「最も美しい村」運動がある。日本側の関係者は現地を視察し、歴史や制度の異なる日本には独自の仕組みが必要だと考えた。2010年には国際的な美しい村のネットワークにも正式加盟した。
57と22、異なる二つの数字
連合の公式概要によると、2026年1月現在の加盟は57の町村・地域で、内訳は27町、21村、9地域。10月24日の催しに集まる「22」は、この連合全体の会員数ではなく、祭りに参加予定の数である。ここを混同すると運動の広がりを見誤る。また、参加者数や販売額、翌年の再訪率はイベント開催後でなければ分からない。会場での賑わいを、直ちに地域経済が再生した証拠として扱うこともできない。
入会には人口と地域資源の条件
加盟資格には、人口がおおむね1万人以下であること、景観や文化などの地域資源を少なくとも二つ有すること、それを活用した住民主体の取り組みがあることなどが掲げられる。審査には有識者が関わり、加盟後も5年ごとの再審査を行う。景観保護が看板だけで終わらないよう、活動を継続しているかを確認する仕組みだ。一方、審査に通ることと、若年層の定着、地域財政の改善、雇用創出の因果関係は別に検証しなければならない。
風景を守る人が減ったらどうするか
日本の農山漁村が直面する最も難しい問いの一つは、観光客を呼ぶ方法ではなく、景観や文化を担う住民が減るなかで、誰が維持していくのかという点だ。里山の草刈り、水路の手入れ、伝統芸能の稽古、雪国の除雪、商店や交通の確保。こうした仕事には資金だけでなく時間と人手がいる。美しい景色が写真に残っても、暮らしの基盤が失われれば、その美しさを生んだ営みは続かない。
観光を「通過」から「滞在」へ
今年の祭りが提案する1泊2日の旅程には、地域の体験を短い立ち寄りで終わらせない意図が見える。宿泊すれば食事や交通、ガイド、商店に支出が広がる可能性がある。ただし、来訪者が集中すれば道路や生活空間に負担も生じうる。住民が望む人数や季節、地元事業者への利益配分をどう考えるか。観光消費の総額だけでは測れない、生活の質との均衡が必要になる。
フランスの発想を日本の土地で育てる
フランス発の運動をそのまま移したのではなく、日本の棚田、里山、漁村、郷土芸能という独自の文化資源を評価するよう審査基準を組み直したことに特徴がある。観光資源を磨くために伝統を固定してしまえば、住民の暮らしは展示物になる。変わるものと守るものを住民が決められるかどうかこそ、地域ブランドの倫理を左右する。
企業や都市住民ができること
地域の魅力を守る責任は、人口の少ない町村だけに押し付けられるものではない。都市の消費者には継続的に地域産品を選ぶ道があり、企業には調達、長期的な協働、働く場所の分散など複数の選択肢がある。重要なのは、単発の寄付や話題づくりで終わらない関係だ。地域を紹介する側も、地元の人を観光の背景ではなく意思決定の主体として扱う必要がある。
10月24日、その先をどう測るか
東京ポートシティ竹芝の会場では、地域の食品や工芸、伝統芸能に触れ、旅の計画を考えられる予定だ。成功を測るなら来場者数だけでなく、地域に戻った売上、実際に生まれた訪問や交流、翌年以降も続く取引などを追いたい。2005年の7町村から21年。美しい村が東京へやって来る理由は、都市に認めてもらうためだけではない。村で暮らす未来を、都市に住む人々と共に考えるためでもある。
取材・情報提供のお願い
Japan.co.jpは、参加地域の人口や事業、観光の成果について資料提供を歓迎します。会場を取材したとの主張や主催者との独占取材はしていません。訂正・情報提供はお問い合わせページからお寄せください。
出典・参考資料
- 第5回「日本で最も美しい村まつり」開催案内 / Official 2026 festival announcement
- 「日本で最も美しい村」連合・団体概要 / Association overview
- 連合の沿革 / History of the association
- 連合への加盟条件 / Membership criteria
- 連合の目的・再審査 / Mission and reassessment
- 2026年度総会の報告 / 2026 general meeting
- 美しい村の日・21年目の活動 / Beautiful Village Day
- よくある質問 / FAQ
- 2025年国勢調査 / 2025 census portal
- 第5回まつり公式サイト / Official festival site
