あと1勝で、ロサンゼルスへの最短ルートが開く。福岡県北九州市で行われているアジア男子バレーボール選手権で、日本は9月12日の準決勝で韓国を3-0(25-13、25-11、25-14)で退け、13日の決勝へ進んだ。相手はオーストラリアを3-1で下したイラン。優勝チームには2028年ロサンゼルス五輪男子大会のアジア大陸枠が与えられる。日本にとって決勝は、金メダルを争う試合であると同時に、五輪予選を一気に終わらせる機会でもある。[6] [7] [8]
日本は準決勝進出時点で韓国とともに2027年ワールドカップ出場を争っていたが、決勝進出によってその切符も確保した。残る最大の賞品が五輪出場権だ。石川祐希主将は大会前、「必ず優勝して、五輪の出場権を獲得する」と語っていた。ここまで5試合を勝ち抜き、その言葉を実現する位置まで来た。[9] [13]
日本は「1セットだけ」を残して決勝へ来た
日本の大会は、9月4日のオマーン戦から始まった。第3セットを落としたものの、3-1で勝利。石川祐希と髙橋藍がともに19得点を挙げ、西田有志も14得点。第4セットを25-9で締め、初戦特有の硬さを乗り越えた。[2] [4]
そこから日本はセットを落としていない。バーレーンに3-0(25-15、25-15、25-23)、オーストラリアに3-0(25-20、25-13、25-21)で勝ち、予選ラウンドA組を3戦全勝で1位通過した。準々決勝のインド戦も3-0(25-17、25-15、25-19)。髙橋が14得点、石川と西田が各12得点を挙げた。[2] [5] [9]
準決勝の韓国戦はさらに一方的だった。25-13、25-11、25-14。石川が15得点、髙橋14得点、西田10得点と、主な得点源が揃って二桁へ乗せた。決勝までの5試合で、日本が失ったセットはオマーン戦の一つだけ。数字の上では、ほぼ理想的な勝ち上がりだ。[6] [7]
| 日付 | 相手 | 結果 |
|---|---|---|
| 9月4日 | オマーン | 3-1 |
| 9月6日 | バーレーン | 3-0 |
| 9月8日 | オーストラリア | 3-0 |
| 9月11日 | インド | 3-0 |
| 9月12日 | 韓国 | 3-0 |
イランもまた、最後まで残るべきチームだった
イランは予選B組でニュージーランドに3-0、インドに3-0、中国に3-1で勝利。準々決勝ではチャイニーズタイペイを3-1で下した。Volleyball Worldによると、その試合では22歳のアウトサイドヒッター、Porya Khanzadehが24得点。攻撃決定率67%に加え、ブロック2点を記録した。キャプテンのAmin Esmaeilnezhad、Morteza Sharifiも12得点ずつを挙げた。[9]
準決勝ではオーストラリアに3-1(25-21、17-25、25-17、25-22)で勝った。日本ほどセットを失わずに来たわけではないが、サーブと高さを使い、セットを落としても試合全体を取り戻す力を見せている。[8]
日本にとって怖いのは、イランの「1本で流れを変える」力だ。サーブで崩し、ブロックで止める。レセプションが乱れれば、速いコンビを多用する日本の攻撃は単調になりやすい。逆に日本がサーブレシーブを安定させ、深津英臣が中央を使える状態を保てば、イランの高いブロックを横に広げられる。
3大会連続、日本とイランが決勝で向き合う
この決勝には、偶然以上の歴史がある。2021年の第21回アジア男子選手権決勝は、日本開催の千葉で日本とイランが対戦した。日本は0-3(25-27、22-25、29-31)。全セットで競ったが、最後の数点をイランに取られた。石川はベストアウトサイドヒッター、宮浦健人はベストオポジットに選ばれたが、タイトルはイランへ渡った。[10]
2年後の2023年、舞台はイラン・ウルミア。今度は日本が3-0(25-20、25-18、25-18)でイランを破った。石川がMVP、小野寺太志と髙橋藍がベスト6に入り、日本は2017年以来3大会ぶりのアジア制覇を果たした。敵地で完勝したその試合では、石川の得点力だけでなく、山本智大のディグ、関田誠大のトスワーク、髙橋と西田のサーブ、小野寺の中央攻撃がかみ合った。[11]
そして2026年、3大会連続で決勝カードが日本―イランになった。結果だけを並べれば、2021年はイラン、2023年は日本。今回が決着戦のように見える。しかし本当に重いのは、過去のタイトルではなく、勝者だけがその場でLA28を決められる制度だ。
ロラン・ティリ体制の最初の大きな「一発勝負」
2026年の日本代表を率いるのはロラン・ティリ監督。JVAの登録では、石川、髙橋、西田に加え、セッター深津英臣、ミドルブロッカー小野寺太志、山内晶大、エバデダン・ラリー、西本圭吾、リベロ山本智大、小川智大ら14人が大会メンバーに入っている。[3]
ティリ体制では、石川と髙橋の両アウトサイドに得点とレセプションを担わせながら、西田の左利きの強打、中央の高さ、リベロ陣の守備でラリーを作る。今大会では深津が先発セッターとして多くの試合を組み立て、韓国戦でも西田、小野寺、髙橋、石川、エバデダン、山本とともにスタートした。
決勝の難しさは、ここまでの完成度を「もう一度出せばいい」わけではないことだ。イランは韓国よりブロックの高さとサーブの圧力が強く、崩されたときのハイボール勝負が増える可能性が高い。石川と髙橋が高いブロックに対して何点取れるかだけでなく、深津が中央とパイプをどれだけ使い続けられるかが重要になる。
ポイント1:サーブで「イランの高さ」を止める
日本が高い相手に勝つ典型的な方法は、ネット上で高さ比べをする前に攻撃の形を崩すことだ。強いサーブでレセプションをネットから離し、相手セッターの選択肢を減らす。ミドル攻撃が減れば、日本のブロックはサイドへ寄りやすくなる。
準々決勝のインド戦では、日本は7本のサービスエースを記録し、Volleyball Worldは攻撃得点でも42-26と大きく上回ったと報じた。韓国戦でも序盤から連続得点で主導権を握った。決勝で必要なのは、リスクを上げてサーブミスを増やすことではなく、強度を保ちながら相手の最初の攻撃を読める形へ持ち込むことだ。[9]
ポイント2:石川と髙橋の「得点以外」が試合を変える
石川と髙橋は得点源だ。しかし決勝では、二人が何点取るかだけでは十分ではない。サーブレシーブで崩れず、ディグから切り返し、難しいトスを失点せず返し、相手のブロックを次の攻撃で利用する。アウトサイドヒッターが攻守の両方を引き受けられることが、日本の最大の強みの一つだ。
韓国戦では石川15得点、髙橋14得点。インド戦では髙橋14得点、石川12得点。数字は安定している。イランがこの二人へサーブを集めて攻撃参加を遅らせるのか、逆に西田を狙って後衛からの攻撃枚数を減らすのか。日本の第1歩は、相手の狙いをレセプションで外すことになる。[7] [9]
ポイント3:西田の左と中央の速さを同時に生かせるか
西田のオポジット攻撃は、崩れた局面でも点を取れる武器だ。だが、イランのブロックが西田だけを待てる状態になれば、日本の利点は小さくなる。小野寺やエバデダン、山内らのクイックを序盤から見せ、ブロッカーを中央に残す必要がある。
深津の仕事は、良いレセプション時に最速の攻撃を選ぶことだけではない。少し崩れたボールでも中央を使えるか、バックアタックを混ぜられるか、石川・髙橋・西田の負担をどう分散するか。2021年の決勝は3セットとも競り合いだった。数点の差を作るのは、スターの一撃より、相手に「次がどこか分からない」状態を何回維持できるかもしれない。
「今ここで取る」五輪切符の価値
ロサンゼルス五輪まで約2年ある。だから今回負けても五輪への道が完全に閉ざされるわけではない。しかし、アジア選手権で取れる切符を今確保する価値は大きい。以降の国際大会を「出場権を取るための大会」ではなく、五輪で勝つための強化として使えるからだ。
日本はパリ2024で男子バレーボールのメダルに届かなかった。世界の上位と戦えることを示しながら、ノックアウトの一戦を勝ち切る難しさも経験した。LA28へ向かう新しいサイクルでは、最初の大きな結果をアジアで確保できれば、選手選考、若手起用、戦術変更に使える時間が増える。
一方、五輪切符がかかることで、決勝は「アジアでは日本が格上」という感覚を許さない。イランにとっても同じ一発勝負である。世界ランキングや今大会の失セット数は、25点先取の1セットが始まれば何も保証しない。
- 最初の5本のサーブで、日本がイランのレセプションをネットから離せるか。
- 石川祐希と髙橋藍がサーブレシーブ後すぐ攻撃参加できるか。
- 深津英臣が小野寺太志、エバデダン・ラリーら中央を序盤から使えるか。
- イランのPorya Khanzadehをブロックとディグのどちらで制限するか。
- 20点以降の接戦で、サーブミスと被ブロックをどこまで抑えられるか。
福岡で終わらせるか、五輪予選を続けるか
日本はここまで、オマーン戦の1セットを除いて完璧に近い数字を残してきた。だが、その成績は決勝開始時には持ち越せない。イランも5試合を勝ち抜き、同じ目的でコートへ立つ。
2015年のアジア選手権決勝でも日本はイランを3-1で破って優勝している。2021年はイラン、2023年は日本。そして2026年。アジア男子バレーのタイトル争いで、両国の線は何度も交差してきた。[12]
13日19時30分、北九州市立総合体育館。日本が勝てば、アジア王者とLA28出場権を同じ夜に手にする。負ければ、五輪への道は続く。だからプレビューの結論は単純でいい。ここまで何をしてきたかではなく、最後の1試合を取れるか。石川が大会前に言った「負けられない戦い」は、ようやく本当の意味で一試合になった。
- 日本バレーボール協会:買取大吉 アジア男子バレーボール選手権大会 福岡2026 大会概要・競技方式
- 日本バレーボール協会:日本の大会結果(オマーン、バーレーン、オーストラリア、インド)
- 日本バレーボール協会:男子日本代表14選手・監督ロラン・ティリ
- 日本オリンピック委員会:日本3-1オマーン、優勝でロサンゼルス2028出場権
- 日本オリンピック委員会:日本3-0インド、準決勝進出
- 共同通信/熊本日日新聞:日本3-0韓国で決勝進出(2026年9月12日)
- THE ANSWER配信:韓国戦25-13、25-11、25-14、石川15得点・髙橋14得点・西田10得点
- 日テレNEWS NNN配信:イラン3-1オーストラリアで決勝進出
- Volleyball World:準々決勝、日本3-0インド、イラン3-1チャイニーズタイペイ、2027年W杯・LA28予選制度
- 日本バレーボール協会:2021年アジア男子選手権決勝 日本0-3イラン
- 日本バレーボール協会:2023年アジア男子選手権決勝 日本3-0イラン、石川MVP
- 日本バレーボール協会:男子アジア選手権歴代記録
- 日本オリンピック委員会:石川祐希『必ず優勝して、五輪の出場権を獲得する』
編集注:本稿は2026年9月13日未明(JST)までに確認できた情報で作成した決勝前プレビュー。9月13日19時30分予定の日本―イラン決勝の結果は含まない。準決勝の日本―韓国3-0、セットスコア、主要得点者は共同通信・国内スポーツ報道で確認し、日本の大会登録選手、過去大会、予選・準々決勝の情報はJVA/JOCを優先した。決勝結果は別稿で更新する。
