国際スポーツ交流というと、代表選手、国旗、メダルを思い浮かべやすい。だが9月に石川県へやって来る韓国選手団の中心は、30~70歳のスポーツ愛好者だ。仕事や家庭生活を続けながら地域で競技を続けてきた人々が、日本の同世代と同じコート、グラウンド、レーンに立つ。

公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)は9月14日、第30回日韓スポーツ交流・成人交歓交流の受入事業を9月17日から22日まで石川県で実施すると発表した。韓国選手団は157人。サッカー、テニス、バレーボール、バスケットボール、ソフトテニス、軟式野球、バドミントン、ボウリングの8競技に参加し、日本スポーツマスターズ2026石川大会への特別参加を中心に、開会式(前夜祭)や県内の文化探訪も予定している。[1]

4月の計画段階では受入人数158人とされていたが、9月14日の最新発表は157人に更新されている。JSPOは1人減った理由を公表していない。本稿では最新の157人を採用する。[1][2]

30年続いた理由は、毎年同じ政治状況だったからではない。競技を共通言語にし、一般のスポーツ愛好者が互いの街へ行く仕組みを、繰り返し残してきたからだ。

「代表」ではなく、生活の中で競技を続ける人たち

JSPOは成人交歓交流を、日本と韓国の30歳以上のスポーツ愛好者が互いの国を訪問し、スポーツ活動と文化探訪を通じて相互理解と友好を深める事業と位置づけている。これまでの参加者は両国合わせて7,000人を超える。[3]

2026年の受入は、日本最大級のシニア世代総合スポーツ大会「日本スポーツマスターズ2026石川大会」と重なる。大会は競技志向の高いシニア選手を対象とし、元トップアスリートと地域で練習を重ねてきた選手が同じ舞台で競う。13競技が県内各地で実施され、主会期は9月19~22日だ。[4]

韓国選手団はそのうち8競技へ入る。たとえばサッカーでは、16チームの出場枠の一つとして「日韓スポーツ交流」の韓国チームが明記され、日本の地域代表や開催地石川チームと同じ大会方式で競う。[5]

第30回日韓スポーツ交流・成人交歓交流(受入)
項目2026年の公表内容
期間9月17日(木)~22日(火・祝)、6日間
開催地石川県
韓国選手団157人(9月14日発表の最新値)
競技サッカー、テニス、バレーボール、バスケットボール、ソフトテニス、軟式野球、バドミントン、ボウリング
主な交流日本スポーツマスターズへの特別参加、開会式、競技交流、文化探訪
30周年1997年度の第1回から数えて30回目

始まりは1996年、W杯の日韓共催決定だった

この交流の起点は、2002年FIFAワールドカップの日本・韓国共同開催が決まった1996年にある。JSPOの事業史によると、1996年5月に共同開催が決定し、6月の済州島での日韓首脳会談では、この機会を両国の友好親善の深化につなげることが話し合われた。[6]

1997年1月には別府で日韓首脳会談が開かれ、スポーツ交流事業への国庫補助が決定。東京とソウルで両国政府・スポーツ団体の実務者会議が行われ、青少年スポーツ交流、成人交歓交流、ジュニア強化合宿などの枠組みが組み立てられた。[6]

成人交流はその1997年度に第1回を開始した。JSPOは「2002年大会を一緒に開催する」という国家規模の出来事を、競技団体やトップ代表だけでなく、一般のスポーツ愛好者が互いの地域へ行く交流へ落とし込んだ。

W杯が終わっても、交流は終わらなかった

2002年の日韓ワールドカップは大会そのものとしては1カ月で終わった。しかし成人交歓交流は、その後も開催地を変えながら続いた。

2003年からは、日韓両国が青少年・スポーツ交流の拡大を掲げた「日韓共同未来プロジェクト」が始まり、JSPOの日韓スポーツ交流も同事業として位置づけられた。[3]

この継続性は重要だ。巨大イベントのレガシーは、スタジアムや観光客数だけで測られがちだが、2002年W杯が残したものの一つは、両国のスポーツ団体が翌年も、その翌年も会える行政・運営の仕組みだった。

2012年から「日本スポーツマスターズ」が日本側の舞台に

韓国選手団は2012年度から、日本での受入時に日本スポーツマスターズへ特別参加するようになった。[1][7]

日本スポーツマスターズは、シニア世代がフェアプレーに基づき競技を続け、生きがいと心身の健康につなげることを目的とする総合大会だ。2026年石川大会は水泳、サッカー、テニス、バレーボール、バスケットボール、自転車、ソフトテニス、軟式野球、ソフトボール、バドミントン、空手道、ボウリング、ゴルフの13競技で構成される。[4]

ここに韓国チームが入ることで、親善試合だけでは得にくい緊張感が生まれる。同じ大会規則の中で勝敗を争い、試合が終われば交流へ戻る。その往復が成人交歓交流の特徴になった。

石川大会は約7,946人規模、その中に韓国選手団が入る

JSPOが8月末に公表した石川大会の参加予定者は約7,946人。選手だけでなく監督、大会役員、競技役員、運営係員などを含む8月25日時点の予定数で、当初資料では韓国選手団158人も含まれていた。[8]

その後、成人交歓交流の最新発表は157人となったため、大会全体の7,946人も最終実績とは限らない。Japan.co.jpはこれを確定参加者数ではなく「予定規模」として扱う。

石川大会は9市4町で実施され、金沢、小松、白山、能美、野々市だけでなく、七尾、珠洲、志賀、中能登など県内広域に会場が置かれる。石川県での日本スポーツマスターズ開催は2011年、2015年に続き3回目だ。[9][10]

2026年の交流は、すでに韓国側で半分終えている

成人交歓交流は一方向の招待ではない。両国の選手団が相互に訪問する方式だ。

今年4月23~28日には、石川県と静岡県から選ばれた日本選手団154人が韓国・慶尚南道を訪問した。サッカー、テニス、バレーボール、バスケットボール、ソフトテニス、軟式野球、バドミントン、ボウリングの8競技で、韓国の生涯スポーツ全国大会「全国生活体育大祝典」への特別参加を中心に交流した。[2]

9月はその返礼側になる。韓国の成人選手団が石川へ来て、日本スポーツマスターズへ参加する。互いの国の「生涯スポーツの全国大会」に入り合う形は、単純な二国間親善試合より深い。参加者は相手国のスポーツ文化、会場運営、地域の応援、食事、移動まで体験するからだ。

30年は「30年連続の対面開催」ではない

30周年という言葉には補足が必要だ。2020年の第24回、2021年の第25回、2022年の第26回成人交歓交流は、新型コロナウイルス感染症の影響で中止された。[11][12][13]

2020年は日本選手団の韓国派遣がまず延期され、その後、派遣・受入とも中止。2021年、2022年も渡航制限や感染状況を踏まえて対面交流が行われなかった。[11][12][13]

2023年に第27回が再開され、日本選手団は韓国・慶尚北道へ、韓国選手団は福井県へ移動した。[3]

したがって2026年の「第30回」は、1997年度から積み上げてきた番号と事業の30周年を意味する。30年間、一度も途切れず人が国境を越えたという意味ではない。むしろ3年の中断後に同じ相互訪問の形へ戻れたことが、制度の耐久性を示している。

2014年にはセウォル号事故で派遣延期も経験した

交流は感染症だけでなく、社会状況にも影響されてきた。2014年、第18回の日本選手団の韓国派遣は、珍島沖で発生した旅客船セウォル号沈没事故を受けて延期された。JSPOは韓国側と協議し、現地の状況に配慮して判断した。日本での韓国選手団受入は、その年の日本スポーツマスターズ埼玉大会で実施する計画を維持した。[14]

国際交流は、予定表だけで続くものではない。相手国で大きな出来事が起きたとき、実施することと延期することのどちらが友好にかなうかを判断する必要がある。

2025年は国交正常化60周年、2026年はスポーツ交流30周年

1965年の日韓国交正常化から60年となった2025年、第29回成人交歓交流は記念事業に認定された。日本選手団は全羅南道へ、韓国選手団は愛媛県へ渡った。[15]

翌2026年は、このスポーツ交流自体の30周年になる。外交上の周年とスポーツ事業の周年が続いたことで、交流の歴史が可視化されやすい2年間になった。

ただし、草の根スポーツ交流を外交問題の解決策として過大評価するのも適切ではない。歴史認識、安全保障、通商など国家間の争点を、市民アスリートの試合が解消するわけではない。

役割はもっと限定的で、だからこそ現実的だ。政治関係が良い年も悪い年も、相手国を抽象的な「国」ではなく、一緒にプレーした人、食事をした人、同じ競技を続ける人として知る接点を残す。

同世代だから共有できる話がある

成人交流の特徴は、若手エリートを育成する国際試合ではないことだ。参加者には30代から70歳までのスポーツ愛好者が含まれる。

年齢を重ねて競技を続ければ、共通する話題も変わる。仕事と練習の両立、けが、体力の変化、地域チームの運営、後輩の育成、家族の理解。勝敗以外にも互いを理解できる材料が多い。

JSPOは成人交流の目的に、文化や社会状況への相互理解を明記している。石川で予定される文化探訪も、競技以外の時間を制度の一部として扱う考え方の表れだ。[1]

スポーツの共通ルールが、会話の最初の壁を下げる

国際交流では言語の壁がある。しかしテニスの得点、バレーボールのローテーション、ストライクとボール、ボウリングのピンは翻訳を必要としない。

同じ競技経験があれば、構え、ミス、ナイスプレー、試合後の握手から会話を始められる。言葉が十分でなくても「何をしに来た人か」は互いに分かる。

それがスポーツ交流の強みである一方、競技さえすれば理解が自動的に深まるわけでもない。文化探訪、食事、チーム間の懇談、運営者同士の関係が加わることで、一回の試合が人間関係へ変わる。

大会の競技性と「親善」は矛盾しない

「交流」が目的なら勝敗は軽く扱うべきだ、という考え方もある。しかし成人交歓交流が日本スポーツマスターズへ参加する価値は、真剣勝負そのものにもある。

同じ大会で勝ちたい相手だから、技術や準備に敬意が生まれる。試合中は競争し、終了後は話す。その切り替えはフェアプレーの具体的な経験になる。

JSPOの日本スポーツマスターズ自体も、競技志向の高いシニア世代が互いに競い合いながらスポーツへ親しみ、生きがいのある社会と健全な心身に寄与することを目的としている。[4]

30周年を測るなら、人数だけでは足りない

7,000人を超える累計参加者は、事業の規模を示す。しかしJapan.co.jpの分析では、国際交流の価値を参加人数だけで測るのは不十分だ。

次の10年で見たい指標
  • 再交流:大会後もチームや個人同士の訪問・連絡が続いたか
  • 地域波及:開催地のスポーツクラブやボランティアが国際交流へ継続的に関わったか
  • 参加の広がり:性別、競技、地域、年齢層が固定化していないか
  • 競技継続:交流が中高年のスポーツ継続やクラブ活動の刺激になったか
  • 相互理解:参加前後で相手国への理解や関心がどう変化したか

JSPOは過去大会で参加者アンケートも行ってきた。30周年を機に、交流経験が数年後に何を残したかまで追跡できれば、スポーツ外交という言葉をより実証的に評価できる。

石川で6日間、30年分の制度が動く

9月17日に韓国選手団が石川へ入り、18日の開会式を経て、主会期の競技が19日から始まる。22日までの6日間は短い。

しかし、その6日間を実現する制度は1996年から積み上がってきた。共同開催の決定、政府間協議、スポーツ団体同士の調整、地域開催、韓国大会への派遣、日本大会での受入。そして中止と再開。

30年間の日韓関係を「友好」だけで説明することはできない。政治的な緊張も、社会的な摩擦もあった。それでも地域の競技者が互いの国へ行く道は、繰り返し作り直されてきた。

今週、石川のコートや球場で起きることは、歴史的な首脳会談ではない。30代、40代、50代、60代、70歳の選手がボールを追い、判定に悔しがり、握手をする。

その小ささこそ、この交流の強さかもしれない。国と国の関係が大きく揺れるときでも、隣国に「一緒に試合をした人がいる」という記憶は、別の速度で残るからだ。

出典・参考資料

  1. 日本スポーツ協会「第30回日韓スポーツ交流・成人交歓交流を実施」2026年9月14日
  2. 日本スポーツ協会「第30回日韓スポーツ交流・成人交歓交流 日本選手団を韓国へ派遣」2026年4月17日
  3. 日本スポーツ協会「日韓交流」成人交歓交流概要・過去大会
  4. 日本スポーツ協会「日本スポーツマスターズ 概要紹介」2026石川大会
  5. 日本サッカー協会「日本スポーツマスターズ2026石川大会 サッカー競技 大会情報」
  6. 日本スポーツ協会「日韓スポーツ交流」事業史リーフレット
  7. 日本スポーツ協会「第28回日韓スポーツ交流・成人交歓交流 韓国選手団受入」2024年9月25日
  8. 日本スポーツ協会「日本スポーツマスターズ2026石川大会を開催」2026年8月
  9. 日本スポーツ協会「日本スポーツマスターズ2026石川大会 日程・会場一覧」
  10. 日本スポーツ協会「日本スポーツマスターズ2026の開催地が石川県に決定」2024年4月17日
  11. 日本スポーツ協会「第24回日韓スポーツ交流・成人交歓交流 中止」2020年9月3日
  12. 日本スポーツ協会「第25回日韓スポーツ交流・成人交歓交流 中止」2021年7月12日
  13. 日本スポーツ協会「日韓交流」第26回成人交歓交流中止・第27回再開の記録
  14. 日本スポーツ協会「第18回日韓スポーツ交流・成人交歓交流 日本選手団韓国派遣を延期」2014年4月22日
  15. 日本スポーツ協会「日韓国交正常化60周年記念 第29回日韓スポーツ交流・成人交歓交流」2025年

資料確認の基準日:2026年9月14日。韓国選手団の受入人数は4月時点の計画158人から、9月14日の最新発表で157人に更新された。変更理由は公表されていないため推測していない。2026年の『第30回』は1997年度からの事業番号・30周年を意味し、2020~2022年は新型コロナウイルス感染症の影響で成人交歓交流が中止されているため『30年連続対面開催』とは記述していない。大会全体の約7,946人は8月25日時点の予定数であり最終実績ではない。分析部分はJapan.co.jpによる。