地域の取り組みを見学して、感心して帰る。その先に、自分のまちで何を始められるか。環境省が9月14日に発表した「地域循環共生圏スタディツアー2026」は、この問いを参加者に持ち帰ってもらうための研修だ。行き先は京都府亀岡市と宮城県石巻市。地域づくりに携わる人が2人1組で参加し、現地での体験を自らの活動につなげる。[1][2][3]

亀岡では保津川を起点に、画材の循環、有機農業、天然砥石などを訪ねる。石巻では森や沢に入り、堆積物を手作業で取り除く「沢活」や、間伐木を使うバイオネスト作りを体験する予定だ。二つのコースに共通するのは、自然、仕事、人のつながりを一緒に考える視点である。[2]

「地域循環共生圏」は、何を循環させるのか

地域循環共生圏という言葉は長い。環境省の説明を暮らしに引き寄せれば、地域にある自然や人材、技術、人と人の関係を生かし、環境の保全、生活上の課題の解決、経済活動を結びつける考え方だ。地域の中ですべてを完結させるという意味ではない。都市と農村など、異なる強みを持つ地域が互いに支え合うことも含む。[4]

この考え方は2018年4月の第五次環境基本計画で提唱された。2024年5月の第六次環境基本計画では、生活の質を高めるための実践の場として位置づけられている。[1] ごみ処理は環境部門、事業支援は産業部門、暮らしの困りごとは別の窓口、という分け方だけでは見えにくい関係を、地域の現場からつなぎ直そうとするものと読める。

ただし、複数の目的を掲げれば自動的に相乗効果が生まれるわけではない。費用は誰が負担するのか、仕事として続くのか、自然への効果をどう確かめるのか。今回の研修を読み解くうえでも、この具体的な問いが重要になる。

亀岡——川を守る思いを、日常の仕組みに

亀岡の環境政策には保津川が通底している。市と市議会は2018年12月13日、「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を行った。2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちを目指すという目標を掲げ、川の環境と海洋プラスチック汚染を結びつけた。[5]

続いて2020年3月にレジ袋の提供を禁止する条例案が可決され、2021年1月1日から、条例で対象とするプラスチック製レジ袋は有料・無料を問わず提供禁止となった。すべてのプラスチック製品を禁止する制度ではない。市の説明では、制定までに約50回の説明会が開かれ、事業者の準備期間や周知の必要性について議論が重ねられた。[6][7]

ここに、他の地域が学べる一つの過程がある。川を大切にするという思いを、店の対応や買い物の習慣、市の責任へと具体化する過程だ。条例の第8条は、市に効果を検証するための調査と現状把握を求めている。制度をつくることと、その効果を測ることは、続けて取り組むべき仕事なのである。[7]

今回の亀岡コースは11月9日から11日まで。公式案内には、一般社団法人Foginの代表理事、並河杏奈氏がコーディネーターとして掲載されている。Foginは2020年に立ち上がり、亀岡でコミュニティ・ツーリズムに取り組んできたという。予定される訪問先には、画材の循環プロジェクト「巡り堂」、有機農業の取り組み、天然砥石館での砥ぎ体験がある。[2]

画材、農地、砥石。一見離れた題材を通して考えたいのは、使われなくなった物や身近な資源を、誰が次の利用につなぐのかということだ。集める人、保管する場所、技術を伝える人、使いたい人がそろって初めて、循環は日常の仕事になる。この見方は本稿の分析であり、各訪問先の収支や環境効果が実証済みだという意味ではない。

石巻——海の仕事を、森と沢から考える

石巻コースは11月30日から12月2日まで。公式案内は、フィッシャーマン・ジャパン研究所の共同創設者として川鍋一樹氏を紹介している。予定されているのは、沢の堆積物を手で掻き出す作業や、間伐木を使った鹿害対策・土づくりのバイオネスト作りである。[2]

この背景を知るには、受け入れ側の活動の歩みが役立つ。一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンは2014年7月に設立され、石巻市に本部を置く。同団体は、水産業の後継者不足や流通の課題が震災前から続いてきたことを出発点に掲げている。新しい担い手を育てることと、仕事として成り立つ水産業をつくることを重ねてきた。[8]

研究所の公式説明によると、団体は担い手育成や販路開拓などに取り組む一方、2023年には海の環境保全を金融面から支えるブルーファンドを立ち上げた。さらに、漁業者の現場の知識と研究者のデータを結びつけるため、研究所を設けた。研究の視野には海だけでなく、海につながる山や里も入る。[9]

水産業の研修で森に入る意味は、ここにある。働く場所を海面だけで区切らず、その仕事を支える環境や人の関係まで考える。ただし、沢の作業をすれば直ちに漁獲が増える、と結論づけることはできない。今回の募集資料が示すのは体験の計画と学習の目的であり、作業による生態系回復や所得向上の因果関係を実証した研究結果ではない。

2人で参加し、帰ってからも取り組む

募集要項は、同じ地域で活動する2人で応募するよう求めている。2人は同じ組織でも、別の組織でもよい。全日程への参加に加え、課題への取り組み、自らの活動の紹介、他地域との交流、研修後のアンケートへの協力などが条件になる。[3]

この組み合わせは、研修の設計をよく表している。一人が持ち帰った発見を、自分の地域でもう一度話し合える相手をつくる。例えば、行政の担当者と地域団体の実践者では、同じ活動を見ても気づく点が違う。その違いを、予算、運営、人材の話へつなげられる可能性がある。参加者同士が実際にどのような連携を生むかは、研修後に確かめるべき成果だ。

プログラムは事前の合同オリエンテーション、2泊3日の現地研修、事後のオンライン・フォローアップで構成される。現地ではまず活動の背景を知り、体験を通して地域の資源や関係を捉え、最後に情報を整理する。参加者自身の地域での実践へつなぐ課題も用意される。[3]

他地域に持ち帰るのは、事業を支える条件

亀岡と石巻では、風土も産業も担い手の集まり方も異なる。同じ道具や催しを導入しても、同じ結果になるとは限らない。現地で聞く価値があるのは、始めた理由、協力を得るまでの時間、費用の出どころ、続けるうえで困っていることだ。

例えば資源を再利用する事業なら、回収量だけでなく、再び使われた量、保管や仕分けにかかった手間を見る。自然に働きかける活動なら、作業の前後をどう記録し、季節変化と区別し、長期に観察するかを問う。地域の協働なら、参加人数に加えて、誰が運営を担い、負担が偏っていないかを見る。これらは本稿が提案する検証の観点であり、主催者が公表した成果指標ではない。

小さく試して記録し、地元の関係者と見直す。その繰り返しを可能にする人と仕組みがあれば、視察で得た知識は自分の地域の実践へ変わりうる。今回のツアーの真価も、帰路の満足感だけでなく、その後に何が続くかに表れるだろう。

参加を検討する人へ——日程と費用

2026年の予定・時刻はすべて日本時間
項目亀岡コース石巻コース
合同オリエンテーション10月28日(水)18:00~20:00/オンライン
現地研修11月9日(月)~11日(水)11月30日(月)~12月2日(水)
集合・解散亀岡駅/初日11:00、最終日17:00石巻駅/初日12:00、最終日17:00
フォローアップ11月25日(水)18:00~20:0012月22日(火)18:00~20:00
定員10組20人10組20人

応募締め切りは10月4日(日)23:59。どちらか一つのコースを選び、2人1組で申し込む。定員を超えた場合は選考となり、結果は10月13日から16日の間に代表者へメールで通知される予定だ。[3]

参加費は無料。現地の宿泊と保険は事務局が手配し、参加者の費用負担はない。現地までの交通費は、経済的な経路の選択や証憑の提出など、募集要項の条件に沿った申請・事後精算となる。食費は交流会分も含め、原則として自己負担だ。申込み前に公式募集ページと募集要項を確認してほしい。現地の事情によって内容が変更される場合がある。[2][3]

出典・資料

環境省の日本語発表・募集要項を基に、日程と研修内容を確認した。地域の歴史は亀岡市および活動団体の一次資料による。予定、団体の自己説明、本稿の分析を区別し、現地取材や研修後の成果報告としては記述していない。

  1. 環境省:地域循環共生圏スタディツアー2026(京都府亀岡市・宮城県石巻市)の開催について、2026年9月14日
  2. 環境省:地域循環共生圏スタディツアー2026。研修内容・コーディネーター紹介
  3. 環境省:地域循環共生圏スタディツアー2026 参加者募集要項。日程・応募条件・費用
  4. 環境省:令和4年版環境白書「地域循環共生圏」。概念と地域間の連携
  5. 亀岡市:世界に誇れる環境先進都市・亀岡市を目指す。2018年の宣言と2030年目標
  6. 亀岡市:亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例。制定経緯・説明会
  7. 亀岡市:亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例(本文)。定義・事業者の責務・効果の検証
  8. 一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン:団体概要・活動理念・設立年月
  9. フィッシャーマン・ジャパン:研究所の背景・目的・活動。団体自身の説明