昆虫の翅(はね)のような凹凸を、軽い航空機の設計に生かせるか。東京都立大学が9月19日に紹介した数値研究は、空気抵抗を抑える形と、機体を支える揚力を大きくする形の違いを探った。対象は、厚さをゼロと仮定した翼の断面。実機の性能を示す飛行試験ではない。[1]

論文の著者は、東京都立大学の金崎雅博(かなざき・まさひろ)教授と東京大学の今村太郎教授。東京大学の研究室も業績として掲載している。[3][4][5]

凹凸の役割を、厚さから切り離す

翼の断面形状は「翼型」と呼ばれる。今回の研究は数値流体力学(CFD)を用い、抵抗を小さくすることと揚力を大きくすることを目標に、形状を探索した。厚さゼロという現実には作れない条件を置くことで、前縁の厚さなどの影響を切り離し、凹凸そのものの働きを調べている。[2]

抵抗と揚力で異なる最適形状

論文によると、抵抗を抑える形には目立った凹凸があり、平板よりも抵抗が小さくなる例が得られた。くぼみの中を循環する流れが、周囲の流線を翼型に似た形に整え、粘性による抵抗を減らしたという。一方、揚力を重視した形は滑らかな反りを持ち、後縁付近のくぼみに渦をとどめる特徴があった。[2]

したがって、凹凸を増やせばあらゆる性能が向上する、という結果ではない。何を優先するかによって、選ぶ形が変わる。

小型機への応用は、次の検証課題

大学は、無人航空機の小型化や、火星のように大気が薄い環境で使う翼への応用を展望している。[1] ただし、今回の二次元の計算結果だけで、航続時間や搭載能力がどれだけ改善するかは判断できない。

編集部が今後の検証で注目するのは、実際の厚さや強度を持つ翼でも利点が残るか、三次元の形状や変形が性能にどう響くかという点だ。企業の開発判断につなげるには、製造できる構造に落とし込み、実験と計算を照合する段階が欠かせない。今回の成果は、その設計候補を絞るための基礎資料と位置づけられる。

出典・参考資料

  1. 東京都立大学:研究発表(EurekAlert!、2026年9月19日)
  2. 原著論文:Computers & Fluids、318巻、107223
  3. 東京都立大学:金崎雅博教授の公式紹介
  4. 東京大学:今村太郎教授の公式紹介
  5. 東京大学・今村研究室:論文業績