2026年10月3日 土曜日 · JST | English | 1米ドル = 157.80円 為替更新: 2026年10月2日 01:51 JST · Japan.co.jp

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10月3日版 | ビジネス・経済
夕暮れの日本の住宅地で家族が電気料金明細を確認する様子を描いた編集用イラスト
AI生成の編集用イラスト。川端玉章に着想を得た表現で、電気料金上昇が家計に及ぼす重圧を象徴的に描いた。実在の家庭や電力会社の請求書を再現したものではない。
ビジネス・経済
電気料金 · 家計 · エネルギー政策 · 物価

電気代、補助終了で再び上昇へ――「10月使用分・11月請求分」が家計の次の壁に

夏の電気・ガス料金支援は9月使用分で終了する。10月使用分から低圧向け3.5円/kWhの値引きが消え、託送料金改定も重なる。大手10社の標準家庭では、11月請求分が前月より835~1,578円上がる見通しだ。

日本の家庭が10月に受け取る電気料金請求書には、まだ政府の夏季支援が残っている。2026年9月使用分については、低圧契約で1kWh当たり3.5円、高圧契約で1.8円の値引きが適用されるからだ。負担増が本格的に表れるのは、その次――10月使用分、原則として11月請求分である。

電力大手10社が9月29日に公表した11月分の標準的な家庭向け料金は、全社で前月を上回る。時事通信の集計では上昇幅は835~1,578円。東京電力エナジーパートナーは1,286円上昇して9,561円、沖縄電力は1,578円上昇して10,752円となる。中東情勢を背景とした燃料価格の高止まりに加え、夏季支援の終了、さらに11月1日からの託送料金見直しが重なる地域がある。[1]

3.5円/kWh9月使用分までの低圧向け値引き。10月使用分から終了
835~1,578円大手10社の標準家庭で見込まれる11月分の前月比上昇幅
5,135億円2026年度の夏季電気・ガス料金支援の予備費予算額

まず、いつ値上がりするのか

今回もっとも混同しやすいのは、「10月の電気代」という表現だ。資源エネルギー庁の2026年夏季支援は、7月、8月、9月の使用分が対象で、低圧家庭向けの値引き単価はそれぞれ3.5円、4.5円、3.5円/kWh。したがって多くの家庭では8月、9月、10月の請求に反映される。9月使用分の補助が消えるのは10月使用分からで、請求上は11月分に現れる。[2]

東北電力はこの点を明確に公表している。同社の2026年11月分(10月使用分)の低圧燃料費等調整単価は1kWh当たり▲6.29円で、前月より3.85円上昇した。会社はその主因を、10月分まで適用されていた国の電気料金特別措置の終了としている。標準モデル(30A、260kWh)では、11月分は前月より1,486円増の9,690円で、このうち485円は11月1日の託送料金変更の影響だ。[3]

日付の注意: 本稿でいう「11月分」は、多くの家庭で主として2026年10月使用分を意味する。検針日や契約方式によって使用期間は異なり、11月1日の託送料金変更分が日割りされる会社もある。

夏の支援はなぜ再開されたのか

2026年の夏季支援は、5月25日に高市早苗首相が中東情勢への対応策の一環として表明した。翌26日、当時の赤澤亮正経済産業相は、暑さが厳しく電力使用量が増える7~9月に「国民の命と暮らしを守る」観点から電気・ガス料金を支援すると説明した。低圧電気は7月3.5円、8月4.5円、9月3.5円/kWh、高圧は1.8円、2.3円、1.8円/kWh、都市ガスは14円、18円、14円/㎥だった。[4]

政府は標準的な家庭について、電気と都市ガスを合わせた3か月の負担軽減効果を約5,000円と試算した。一方、赤澤氏は5月時点で「一般に10月になればご家庭の電気の使用量は減少する」とし、当時は10月以降の支援を必要とは考えていないとの認識を示していた。[4]

制度の2026年度予備費は5,135億円。小売電気事業者やガス事業者が国指定の単価を料金から値引きし、その原資を国が補助する仕組みである。家庭が申請して現金を受け取る制度ではなく、毎月の燃料費調整単価などに直接反映される。[5]

補助が終わると「電気そのものが突然3.5円高くなる」のではない。請求書上で国が肩代わりしていた3.5円/kWhの値引きが消え、そこへ燃料費調整と託送料金の変化が重なる。

400kWhなら、補助終了だけで1,400円

低圧向け3.5円/kWhの支援がなくなる影響は、使用量に比例する。月260kWhなら単純計算で910円、300kWhなら1,050円、400kWhなら1,400円。したがって、11月分の値上がりのすべてを「燃料高」と説明するのは正確ではない。前月まで請求額を押し下げていた政策的な値引きがなくなること自体が大きい。

東京電力パワーグリッドが公表した低圧の燃料費調整単価を見ると、2026年10月分は1kWh当たり▲9.30円で、9月分より1.66円上昇している。11月分は▲5.33円となり、さらに3.97円上昇した。11月の変化には補助終了が含まれるため、家計から見れば燃料市場、政策支援、送配電コストという複数の要因が一つの請求書に折り重なって見える。[6]

2023年から続く「切っては戻す」料金支援

現在の制度は突然始まったものではない。直接の原型は、ロシアによるウクライナ侵攻後の燃料高と円安に対応するため、2022年10月28日の総合経済対策で決まった「電気・ガス価格激変緩和対策事業」にある。2023年1月使用分から、低圧電気は7円/kWh、高圧は3.5円/kWh、都市ガスは30円/㎥という大規模な値引きが始まった。低圧400kWhの標準世帯なら月2,800円の軽減に相当した。[7]

その後、支援は段階的に縮小と延長を繰り返した。2023年9月使用分から低圧は3.5円/kWhへ半減。2024年1~4月も3.5円、5月は1.8円へ縮小していったん終了した。しかし酷暑対策として2024年8~10月に復活し、さらに物価高対策で別の期間にも再開された。2026年夏の支援は、こうした「必要な時期だけ再導入する」政策の延長線上にある。資源エネルギー庁の事業評価資料は、2023年1月から2024年5月までの支援に加え、2024年8~10月の「酷暑乗り切り緊急支援」までを一つの政策系列として整理している。[8]

この歴史は重要だ。家計にとって電気料金は、燃料相場だけで動く価格ではなくなった。政府がいつ補助を入れ、いつ縮小し、いつ終了するかによって月々の請求額が大きく変わる。結果として、エネルギー市場の価格シグナルと生活支援政策が同じ請求書の中で混ざるようになった。

2023年の料金改定が残した構造

もう一つの転機は2023年6月だった。燃料価格の高騰を受け、大手電力7社の規制料金が改定された。政府審査後の値上げ幅は14~42%に圧縮されたものの、電気料金の基礎水準はそれ以前より高くなった。資源エネルギー庁は当時、同時に実施していた7円/kWhの国支援によって、7社中6社では改定後の実際の支払水準が申請前より低くなったと説明していた。[9]

つまり支援は「高い料金を一時的に見えにくくする」役割も果たしてきた。補助が終わるたび、消費者は現在の燃料費や送配電費をより直接的に負担することになる。2026年秋の値上がりも、その構造の再現である。

託送料金という、もう一つの上昇要因

今回は補助終了だけではない。11月1日から一部地域で託送料金、つまり送電線・変電所・配電線など送配電網を利用するための料金が変更される。東北電力は標準家庭で485円、5.9%の料金見直し影響を公表した。北海道電力も11月1日からの託送料金変更を電気料金へ反映し、11月分は使用日数に応じて新旧単価を日割りすると説明している。[10][11]

送配電網のコストは、再生可能エネルギーの導入拡大、老朽設備更新、災害対応、系統増強などと切り離せない。家庭から見れば「電気代」は一つの数字だが、その中身は発電燃料、小売サービス、送配電網、再エネ賦課金、税、そして政策補助の組み合わせである。

地域差が大きい理由

電気料金は全国一律ではない。各社の電源構成、燃料調達、原子力発電所の稼働状況、水力比率、離島供給、燃料費調整制度の上限、送配電コストが異なるからだ。

北陸電力の規制料金向け燃料費調整単価は、支援対象だった2026年10月分の▲9.82円/kWhから、支援終了後の11月分は▲6.19円/kWhへ上昇した。九州電力も公式資料で、2026年8~10月分料金(7~9月使用分)だけが特別措置の対象であることを明示している。[12][13]

一方、沖縄は本土と電力系統がつながっておらず、火力依存度が高い。時事通信の集計では今回の標準家庭料金は10,752円と大手10社で最も高く、前月比1,578円増と上昇幅も最大だった。[1]

企業にも効く――ただし支援幅は家庭より小さい

2026年夏の制度は主に中小企業が利用する高圧契約も対象にしたが、値引き単価は低圧のほぼ半分だった。7月・9月使用分が1.8円/kWh、8月が2.3円/kWh。特別高圧は国のこの制度の対象外で、地方自治体が重点支援地方交付金などを活用して支援する場合がある。[2]

電力集約型の製造業、飲食、小売、冷蔵・冷凍物流などでは、1kWh当たり数円の違いが月間コストを大きく動かす。価格転嫁が難しい中小企業ほど、支援終了の影響を吸収しにくい。家庭向けニュースに見える電気料金問題は、実際には地域企業の採算や物価にもつながっている。

「補助を続けるか」だけでは解けない

電気料金支援には即効性がある。エアコン利用を控えれば健康リスクが高まる猛暑時に、使用量に応じて自動的に値引く制度は行政的にも分かりやすい。

しかし、長期化すれば財政負担が積み上がり、節電や設備更新への価格シグナルを弱めるとの指摘も避けられない。補助を繰り返すほど、消費者は「本来の電力コスト」がいくらなのか把握しにくくなる。2026年夏だけでも予備費は5,135億円に上る。[5]

本質的な課題は、燃料輸入価格に左右されやすい電源構成をどう変えるか、送配電網への投資をどう負担するか、再エネ・原子力・火力をどう組み合わせるか、そして低所得世帯や中小企業をどのように的確に支援するかにある。

この秋、家計が見るべき三つの数字

まず使用量だ。支援終了の影響はkWhに比例する。次に燃料費調整単価。原油、LNG、石炭の輸入価格が数か月遅れで反映される。そして三つ目が契約メニューと地域だ。規制料金か自由料金か、どの電力会社・小売事業者かによって影響は違う。

10月の使用量が少なければ、単価が上がっても請求総額が必ず前月を上回るとは限らない。秋は冷房需要が下がるため、家庭によっては使用量減少が単価上昇を相殺する可能性もある。政府が支援終了を判断した際も、この季節要因を理由の一つに挙げていた。[4]

それでも、単価構造が一段上に戻ることは変わらない。2026年夏の値引きが終わることで、日本の家庭は再び、燃料費と送配電費をより直接的に感じる請求書を受け取る。

電気料金の問題は、補助金の終了日だけの話ではない。2022年以降、日本はエネルギー安全保障、物価対策、猛暑対策、送配電網への投資という複数の課題を、毎月の電気料金の中で同時に処理してきた。11月の請求書は、その複雑さを家庭の食卓にもう一度突き付ける。

主な出典

  1. 時事通信/nippon.com「10月電気料金、全社過去最高に=政府の補助金終了で上昇」(2026年9月29日)
  2. 経済産業省「2026年7月、8月及び9月使用分の電気・ガス料金支援」(2026年6月12日)
  3. 東北電力「2026年11月分の燃料費調整等について」(2026年9月29日)
  4. 経済産業省「赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要」(2026年5月26日)
  5. 資源エネルギー庁「電気・ガス料金負担軽減支援事業」
  6. 東京電力パワーグリッド「燃料費調整単価および燃料費等調整単価のお知らせ」
  7. 資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」
  8. 資源エネルギー庁「電気・ガス価格激変緩和対策等事業」評価資料
  9. 資源エネルギー庁「2023年6月の電気料金、なぜ値上がりするの?」
  10. 東北電力「託送料金の変更に伴う電気料金の見直し等について」(2026年9月28日)
  11. 北海道電力「電気料金見直しに関するよくあるお問い合わせ」
  12. 北陸電力「燃料費調整単価および燃料費等調整単価推移」
  13. 九州電力送配電「燃料費等調整制度について」