585,641内堀氏の得票数
90.76%有効票に占める得票率
44.05%県全体の投票率
1,693,69210月1日推計人口
注意:得票率の分母は有効投票数。4期目の任期開始日は11月12日。人口は10月1日推計値。

9割の得票と、4割台の投票率

10月25日の福島県知事選で現職の内堀雅雄(うちぼり・まさお)氏が4選を決めた。全国の都道府県選挙管理委員会に関する公開データによれば得票は58万5,641票、投票率44.05%。福島テレビの集計では有効投票に占める得票率は90.76%だった。候補者は新人6人を含む計7人で、県知事選としては過去最多の顔ぶれとなった。

圧倒的な票差は事実だ。しかし、90.76%は「投票した有権者のうち有効票を投じた人」を分母とする割合であり、全有権者の9割が支持したという意味ではない。投票率は前回の42.58%を1.47ポイント上回ったものの、なお半数を下回る。継続を求める声と、選挙に参加しなかった人の多さを、同時に見る必要がある。

「当選」と「就任」を分けて読む

今回の投開票は10月25日。内堀氏の新たな4年間の任期は11月12日から始まる。11月1日付で報じるなら「4期目が始まった」ではなく、「4選が確定し、11月12日から新任期に入る」が正しい。

県の候補者情報には通称「内堀まさお」という表記も使われる。一方、知事の公的な氏名表記は「内堀雅雄」で、読みは「うちぼりまさお」。選挙の数字と氏名の表記は公的資料で区別した。

副知事から震災後の県政へ

内堀氏は1964年3月26日生まれ、長野県出身。東京大学経済学部を卒業し、旧自治省に入省した。福島県では生活環境部や企画調整部の要職を経て、2006年12月から2014年9月まで副知事を務めた。2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の時期、県行政の中枢にいた人物である。

2014年11月、知事に就任。続く2018年、2022年の選挙にも勝ち、今回が4回目の当選となった。長期政権には政策を継続できる利点がある一方、成果の検証や意思決定の透明性がいっそう問われる。

2011年の後も「復興」は現在形

震災・津波・原発事故の複合災害から15年を経ても、福島の復興には地域差がある。県の避難地域復興課によれば、帰還困難区域が一部に残るのは南相馬市、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村の7市町村。居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示は解除されているが、区域解除と住民帰還は同じことではない。

内堀氏は10月5日の定例会見で、原発事故直後に県土の約12%が避難指示区域となり、その時点では約2.2%まで縮小したとの認識を示した。この数字は本人の会見発言として紹介すべきであり、すべての住民の生活再建が終わったことを示す指標ではない。

人口169万人、1か月で1,425人減

県統計課の10月28日更新資料によると、2026年10月1日現在の福島県推計人口は169万3,692人。直近の月次動態は出生641人、死亡1,933人で自然減1,292人、転入1,879人、転出2,012人で社会減133人、計1,425人の減少となった。

人口の縮小は単に人数の問題ではない。医療・介護の担い手、交通網を維持する財源、学校や住宅の空き、産業への人材供給につながる。これらの数字は「2026年10月1日現在の推計人口」の付随統計であり、選挙実施日の人口を直接数えたものではない。

若者と女性が残れる県にできるか

選挙前、福島テレビが候補者に実施した人口減少対策の質問で、内堀氏は自然減と社会減の両面への対策が必要と答えた。結婚・妊娠・出産・子育てへの継続的支援とともに、特に若い世代と女性の県外流出に着目し、定着・還流、移住・定住を促進する方針を示している。

ただし「施策を展開する」という公約と「若い人が実際に定着する」という成果には距離がある。雇用の質、賃金、育児負担、進学先、公共交通などを継続的に比較しなければ、人口減少対策の成否は判断できない。

産業再生をどこで測るか

浜通りでは廃炉・環境再生と並び、ロボット、エネルギー、研究開発などの新産業育成が進む。中通りには産業・商業・行政の拠点があり、会津は観光、食文化、農林業、精密産業など多様な基盤を持つ。一つの成長率で県全域を語ることはできない。

投資額や研究施設の開設だけでは、新産業が県内企業の発注、若者の雇用、地元調達へどれだけ結びついたのか分からない。政策評価には地域別の就業、事業所数、所得、定着率などの指標が必要だ。これは今後の取材課題であり、新任期で確定した成果として書くべきではない。

有効票で9割、地域では異なる声

県内市町村の開票結果を見れば、支持の強さと投票参加には地域差がある。例えば浪江町の公表値では投票率36.97%、大熊町では37.47%。選挙区単位の投票率差を直ちに住民の政治意識に還元することはできず、避難や居住地の事情も背景として検討する必要がある。

7候補が競った選挙であり、結果を「無投票で信任された」と記すのは誤りである。対立候補の存在と得票を認めたうえで、政策を巡る競争が十分だったかを検証したい。

行政にとっての4年間、市民にとっての4年間

新任期は2026年11月12日に始まり、2030年11月まで続く予定だ。4年間は、県の人口減少と震災復興の長い時間軸から見れば短い。他方、予算や市町村との連携、国への要望、避難者の生活再建支援は毎年の判断で変わる。

4選を機に求められるのは、達成目標と進捗指標の見える化だ。例えば避難区域の面積だけでなく、戻りたい人が戻れる医療・買い物・交通環境があるか。移住者数だけでなく、5年後も地域で暮らせるか。重要なのは数字の選び方である。

福島の政治を「復興」だけに閉じ込めない

福島は災害の記憶と向き合う県であると同時に、学校、仕事、文化、スポーツ、農林水産業が日々動く場所でもある。人口減少の重さを認めながら、住民の幸福や産業の未来を災害の文脈だけで描くことはできない。

58万5,641票は県政継続を託された大きな数字であり、44.05%は参加の広がりが十分でないことを示す数字でもある。4期目の評価は当選の夜ではなく、県民の生活にどんな変化が起きたかで決まる。

出典・確認資料

2026年10月29日までの公的選挙資料、県統計、知事会見と地方報道を照合。知事・候補者への独自インタビューは行っていない。

  1. 全国知事会:都道府県知事選挙データ
  2. 福島県:第23回知事選の公式案内
  3. 伊達市:2026年知事選の確定投開票
  4. 福島県:2026年10月1日推計人口
  5. 福島県:内堀雅雄知事の略歴
  6. 全国知事会:内堀雅雄氏略歴
  7. 福島県:避難地域復興課
  8. 福島県:10月5日知事記者会見
  9. 福島テレビ:選挙結果と低投票率
  10. 福島テレビ:人口減少政策の候補者アンケート
  11. 福島県:震災被害・避難の推移