6県東予のせとうちリーグ参加県
4球場東予の試合会場
20試合10月10・11日の予定数
2日間10月10日(土)・11日(日)

野球の相手を県境の向こうに求める

瀬戸内海の向こうには、別の県の学校がある。船や橋で結ばれているのに、日々の練習試合では県境が壁になることもある。10月10日と11日、愛媛県東予地方の四つの球場で開かれる「愛媛県高校野球交流戦2026『せとうちリーグ』」は、その壁を低くしようとする新たな試みだ。

県外の強豪校を招き、技術を磨くだけでなく、参加者に今治、新居浜、西条、四国中央のまちを知ってもらう。野球を競技政策と地域政策の両方で捉える企画である。[1]

6県、4球場、2日間

愛媛県高等学校野球連盟が主催し、愛媛県と今治市、西条市、新居浜市、四国中央市が共催する。参加県は愛媛、山口、広島、岡山、兵庫、香川の6県。会場は今治市営球場、東予運動公園野球場、新居浜市営野球場、川之江野球場である。[1]

発表された対戦予定には広島商業、宇部鴻城、岡山学芸館、岩国、関西、呉市立呉、明石南、三本松の県外8校と、松山商業、松山東、新田、今治北、川之江など県内16校が並ぶ。[2] 10日に各会場2試合、11日に各会場3試合、合計20試合が予定される。

新居浜の具体的な対戦カード

新居浜市の公表資料では、10月10日午前10時から三本松と松山工業、午後1時から呉市立呉と新居浜東が対戦予定。11日は午前9時から広島商業と松山聖陵、午前11時45分から広島商業と三本松、午後2時30分から新居浜南と三本松という日程だ。[3]

入場無料とされ、臨時駐車場の案内も出ている。ただし開始時刻やカードは変更され得る。10月11日付の記事において、11日の試合結果はもちろん、10日の結果も一次資料で確認できない限り書かない。

交流戦は甲子園ではない

せとうちリーグは新設の交流戦であり、全国高等学校野球選手権大会や選抜高等学校野球大会の公式予選ではない。勝者が甲子園への出場権を得る大会という説明は誤りだ。

その価値は、異なる地域の野球環境で育った選手が普段と違う投手、打者、守備体系に触れられるところにある。学校や監督にとっても、練習方法や安全管理、試合運営について直接経験を交換できる。もっとも、競技力の向上を確認するには大会後の継続的な検証が必要である。

松山商業、百年を超える高校野球の土壌

愛媛にとって高校野球は新しい観光商品ではない。松山商業は大正、昭和、平成の3時代に全国優勝を果たした歴史を持ち、同校が2026年に紹介した校内の記念碑は、1996年夏の全国制覇と「奇跡のバックホーム」を今に伝えている。[5]

伝統校が県外校との交流に参加する意義は、戦績の誇示よりも次の世代へ技術と競技文化を受け渡すことにある。県内で強豪と日常的に対戦する機会が限られる選手にも、広い競争の物差しを提供できる。

南予ではもう一つの野球交流

同じ10月10、11日には、東予のリーグとは別に「令和8年度南予中高生交流試合」が宇和島市で予定される。高校生は丸山公園野球場、中学生は吉田公園野球場を使い、愛媛県のほか高校生は大分県、中学生は大阪府からチームを迎える。[1]

県が掲げる目的は、2018年7月豪雨災害からの復興、人口減少地域の活性化、豊予海峡を挟んだ交流の促進だ。6県による東予のせとうちリーグと、南予の交流試合は主旨も参加県も異なる。混同してはならない。

宇和島東から見る南予の野球史

南予にも独自の球史がある。宇和島東高校は1988年春の選抜大会で初出場初優勝を遂げた。同校の公式紹介は、創部110年超の伝統と1990年代の連続甲子園出場を記している。[6]

だが現在の南予にとって、強さを競うことだけが課題ではない。人口減少は学校の生徒数、部員確保、遠征負担にも及ぶ。地域外との試合をつくることは、学校が互いに孤立しない仕組みづくりという面もある。

しまなみ海道と石鎚山をなぜ掲げるのか

東予での公式目的には「しまなみ海道」「石鎚山」の観光資源が明記されている。[1] 球場は単なる試合会場ではなく、訪れる生徒や保護者に地域を体験してもらう入口と位置付けられる。

遠征が宿泊、食事、交通、周辺の観光に需要をもたらす可能性はある。ただし、県は現段階で大会の実来場者数や消費額、地域経済波及額を公表していない。経済効果を確定した数字のように扱うべきではない。

四つの市が協力する理由

今治、西条、新居浜、四国中央はそれぞれ産業と人口構成が異なる。四市共催の仕組みは、一つの市のスタジアムへ人を集中させるのでなく、東予全域で学校と施設のネットワークを動かす方式だ。

一方、運営の分散は移動費用や交通手段、宿泊と練習時間の調整を複雑にする。今後の制度として続けるなら、指導者の評価、学校側の負担、競技人口への影響を公開してほしい。

野球人口の拡大は結果で測る

主催者は県内高校野球の競技力向上と野球人口拡大を目的に掲げる。[1] 交流戦で関心が高まっても、学校の部員数や中学生の競技継続率が直ちに上向くとは限らない。

本当に効果を評価するなら、来年以降も参加校が交流を継続したか、野球部の入部と継続の状況に変化があったか、指導者が何を学んだかといった指標が必要だ。参加校の生徒自身の声も欠かせない。

球場で起きる小さな地域外交

県境を越えて高校生が対戦し、終了後には握手をする。そうした経験は数字にしにくいが、瀬戸内という生活圏を再認識する機会になる。競争相手を同時に交流相手として迎えることこそ、この企画の独自性だ。

今大会が地域に残す価値は、2日間の勝敗だけでは決まらない。新しく生まれた学校間のつながりが次の年に続き、野球を続けたい若者の選択肢を広げられるか。その問いに答えが出るのは大会後である。

出典・取材上の注記

  1. 愛媛県地域スポーツ課「愛媛県高校野球交流戦等の開催について」2026年10月8日
  2. 愛媛朝日テレビ「愛媛県高校野球交流戦2026『せとうちリーグ』」
  3. 新居浜市「せとうちリーグの開催について」
  4. 愛媛県高等学校野球連盟 公式サイト
  5. 愛媛県立松山商業高等学校「第78回大会優勝記念碑」2026年5月
  6. 愛媛県立宇和島東高等学校「野球部」

2026年10月8日までの公表資料に基づく。10月10、11日の試合結果・来場者数・経済効果は未確認。独自の選手・監督取材は行っていない。東予「せとうちリーグ」と南予交流試合は別事業。