Jan 2, 2027定期便就航予定
3 / week火・木・土の週3往復予定
27 / week松山空港の国際定期便計画
¥1.2bn県が引用する年間経済効果の試算

一つの直行便が変えるもの

四国の玄関口・松山空港から、韓国中部の清州(チョンジュ)へ。韓国の格安航空会社(LCC)エアロK航空が、2027年1月2日から火・木・土曜の週3往復で定期便を就航させる予定だ。愛媛県が9月30日に発表した。運航開始までには国土交通省や空港関係者との最終調整が残り、日程や時刻は変更され得る。にもかかわらず、この発表を単なる観光ニュースにとどめるのはもったいない。地方空港の国際線が、訪日客の地理、商店の客層、さらには県民の海外への視線をどう変えるかという話だからだ。

まずは数字の意味を整理する

県の説明によると、新路線が加わることで松山空港の定期国際線はソウル、釜山、台北、清州の4都市へ計週27便となり、過去最多の水準に達する見込み。韓国との路線は北部のソウル、南部の釜山に中部の清州が加わる3路線となる。県が清州の「商圏人口約550万人」と呼ぶ数字は清州市そのものの人口ではなく、周辺地域を含む潜在需要の見立てだ。市の人口約90万人という説明と混同してはならない。

チャーター便から定期便へ――交渉の積み重ね

今回の計画には前史がある。愛媛県は4月、同年6月2、4、6、9日に韓国発の訪日客向けチャーター便4往復を設けると発表。県によれば旅行商品は完売した。7月には中村時広知事が清州のエアロK本社を訪れ、定期路線開設を働き掛けた。9月には10月14~25日の水・金・日曜に計6往復する期間運航が発表され、こちらは松山発の旅行者も利用可能な計画となった。そして9月30日、年明けからの定期就航が明らかになった。単発の旅行商品で需要を試し、期間運航を挟んで定期便へ進む段階的な開設である。

韓国の「真ん中」をつなぐ意味

韓国旅行の日本側の発想は、ともすれば首都ソウルと南部の釜山に集中する。だが韓国中部の忠清北道に位置する清州と周辺地域には、首都圏や釜山への長距離移動をせず海外へ出たい需要がある。エアロKにとって清州は拠点空港であり、地方都市同士を結ぶ航空網は事業戦略そのものだ。松山にとっても既存の韓国路線との重複を減らし、新しい出発地から旅行客を呼び込める可能性が生まれる。ただし、550万人全員が航空旅行をするわけでも、全員が愛媛を目的地にするわけでもない。

1990年代からではなく、再開と拡張の歴史を読む

松山空港の国際線は一直線に拡大したわけではない。県資料によると、ソウル線は2017年に運航を始め、2020年に運休し、2023年に再開。台北線は2019年に始まり、感染症流行期の運休を経て2024年に再開した。釜山線は2023年11月に就航した。2026年春の運航案内ではソウル週14便、釜山週7便、台北週3便の計24便を掲げていた。国境を越える交通は感染症、採算、航空会社の機材運用、相手国の需要に左右される。過去最多という言葉の裏に、途絶えた接続を戻してきた歴史がある。

観光の伸びは、県の隅々まで届くか

愛媛県は2026年上半期の県内延べ宿泊者数について、国内客が前年同期比21.5%増、外国人が28.6%増だったと9月30日の会見で説明した。伸び率は明るい材料だが、客室の稼働が増えることと地域全体の暮らしが潤うことは別だ。道後温泉や松山城のある中予だけでなく、今治や新居浜など東予、宇和島や大洲など南予へ宿泊と消費が広がるかが政策の焦点となる。県知事自身、現状では松山中心の滞在が自然であり、東予・南予への周遊をどうつなげるかが課題だと認めている。

試算12億円を、成果と取り違えない

県は民間シンクタンクによる新路線の経済効果を年約12億円と説明した。テレビ愛媛は約12億9000万円という詳細値を報じている。いずれも実測の売上や確定した付加価値ではなく、旅客数や消費などに前提を置いた予測である。宿泊事業者、飲食店、交通事業者、観光施設にとって重要なのは、発表時の数字ではなく、実際の搭乗率、県内泊数、地域別支出がどう推移するかだ。便が新しいからといって、県内の全事業者が自動的に恩恵を受けるわけではない。

韓国から来る人だけでは路線は続かない

県が強調するもう一つの視点はアウトバウンド、すなわち愛媛から韓国へ出かける需要である。知事会見では若年層のパスポート取得、大学・専門学校の研修旅行などへの支援方針も示された。訪日需要が好調な時期こそ、帰りの座席をどう埋めるかが定期路線の安定に直結する。ビジネス出張、教育交流、親族訪問、休日旅行など多様な目的の乗客が定着するか。地方路線の本当の競争力は観光キャンペーン終了後に見えてくる。

中小企業にとっての「直行便」

空路の拡充は輸出契約や企業進出を約束しない。ただ、地方企業が現地の展示会や商談を訪問し、韓国の事業者を松山に招く際の移動の選択肢が増える。今治の海事産業、東予の製造業、県内の食品・観光関連企業にとっては、小さくとも現実的な接点になり得る。そこで重要なのは観光部署だけでなく、商工会議所や大学、地元金融機関が実際の人的交流を育てることだ。

競争ではなく、持続性を測る

開設後に検証すべき指標は明確だ。運航実施率、月別搭乗率、日本発・韓国発の乗客構成、1人当たり滞在日数、松山市以外の宿泊、観光季節による波、地域交通との接続だ。航空会社の商業的判断と行政の支援は区別し、財政支出があるなら費用と成果を公表すべきだろう。清州線が「新しい路線」で終わるか、「愛媛の経済圏を少し広げた路線」になるかは、最初のテープカットの後に決まる。

出典・参考資料

  1. 愛媛県・2026年9月30日知事臨時記者会見
  2. 愛媛県・2026年9月1日知事会見
  3. 愛媛県・2026年4月27日記者会見
  4. 松山空港国際線・2026年夏ダイヤ
  5. テレビ愛媛・路線と地域経済効果
  6. 松山空港利用促進協議会・利用実績

確認基準日:2026年10月9日。就航日・運航曜日は予定であり、経済効果は予測値。独自に旅客予約・補助金額を検証したものではありません。