10月4日午後6時、ZOZOマリンスタジアムで千葉ロッテマリーンズが東北楽天ゴールデンイーグルスを迎える。シーズン最終盤の日曜ナイター。しかし、この試合に「クライマックスシリーズ進出を懸けた一戦」という意味はない。
10月1日終了時点で、パ・リーグのCS進出3枠は福岡ソフトバンク、埼玉西武、北海道日本ハムで確定済み。ロッテは61勝74敗3分、勝率.452で5位、楽天は56勝83敗1分、.403で6位。ロッテのCS進出可能性は9月17日に消滅している。
だからこそ、10月4日の価値は別のところにある。残り少ない本拠地ゲームで何を来季へ残すのか。若手をどう使い、ファンに何を見せ、30年以上にわたり幕張新都心の人流を作ってきた球場が、どんな「街の装置」としてシーズンを締めるのか。
ポストシーズン争いは、もう終わっている
2026年のパ・リーグは、10月1日終了時点でソフトバンクが90勝47敗3分、勝率.657で首位。西武77勝60敗4分、日本ハム78勝62敗3分が続く。CSはこの3球団で争うことが確定している。
西武と日本ハムは9月17日にCS進出を決めた。その時点でロッテは上位3位へ入る可能性を失った。
したがって10月4日の楽天戦は、「勝てばCSへ近づく」試合ではない。シーズンの評価、最終順位、個人成績、来季へ向けた選手起用、そして本拠地ファンへ何を残すかが主題になる。
相手は楽天、18時開始
NPBと球団公式日程はいずれも、10月4日を「千葉ロッテ対東北楽天」、ZOZOマリン、18時試合開始と掲載している。
10月1日終了時点の対戦成績はロッテの15勝9敗。楽天はリーグ6位で、両チームともCS圏外である。
しかし「消化試合」という言葉だけでは、プロ野球の最終週を説明しきれない。選手にとっては来季の契約や役割、個人成績がかかる。若手にとっては一軍での打席や登板そのものが査定材料になる。球団にとっては、シーズン最後まで観客が球場へ来る理由を作れるかが問われる。
ロッテは10月1日から6日まで、ZOZOマリンで締める
球団の10月スタジアム日程では、10月1日が日本ハム、2日・3日がソフトバンク、4日が楽天、5日・6日が西武。すべて18時開始のホームゲームである。
つまり2026年のレギュラーシーズン最終盤は、ZOZOマリンに試合が集中する。
10月2日には角中勝也の引退セレモニーも予定され、球団はファンと紙吹雪を作る企画を行う。順位争いから外れた後でも、本拠地には別の物語が生まれる。
1990年、幕張新都心に「海辺の球場」ができた
千葉マリンスタジアムは1990年2月22日竣工。同年3月、幕張メッセの海側に開業した。当時の千葉市資料は、延床約4万4,782平方メートル、3万人規模の国際級施設として紹介している。
開業した1990年は、JR京葉線が東京まで全線開業し、幕張テクノガーデンや見浜園も開いた年だった。前年1989年には幕張メッセが開業している。
球場は単独で建ったのではない。業務、展示、鉄道、公園、住宅、ホテルを組み合わせる「幕張新都心」という巨大な都市開発の一部として生まれた。
1992年、ロッテが川崎から千葉へ
1991年、ロッテオリオンズの本拠地が千葉マリンスタジアムに決まり、1992年から「千葉ロッテマリーンズ」として千葉を本拠地とした。
球団によれば、千葉マリンでのロッテ公式戦初戦は1992年4月7日のダイエー戦。5―1で勝利した。2021年8月31日には同球場での通算1,000勝を達成している。
千葉市は現在も、マリーンズを「地域に根差したふるさと球団」と位置づけ、スポーツ文化やまちづくりを含むホームタウン推進事業を行っている。
QVCからZOZOへ――球場名そのものが企業資産になった
2011年3月からQVCジャパンが命名権を取得し、「QVCマリンフィールド」となった。2016年12月からスタートトゥデイ、現在のZOZOとの契約で「ZOZOマリンスタジアム」になった。
2026年6月、千葉市、千葉ロッテマリーンズ、ZOZOは命名権契約をさらに7年間更新することで合意した。契約期間は2026年12月1日から2033年11月30日、契約額は年4億円、消費税等別。
スタジアムの名称が年間4億円の契約価値を持つこと自体、球場が単なる市有運動施設ではなく、全国へ露出する広告・都市ブランド媒体であることを示す。
「年間200万人超」が訪れる幕張の集客装置
千葉市が2025年末に示した新スタジアム基本計画関連資料は、ZOZOマリンを「年間200万人超が訪れる幕張新都心の賑わいの核」と位置づけている。
市関係法人の2024年度事業報告では、ZOZOマリンでプロ野球公式戦62試合、166万2,840人の来場を支え、交流戦9試合で25万2,406人としている。
観客はチケットだけを買うわけではない。鉄道、バス、駐車場、ホテル、飲食、球場グルメ、物販、コンビニ、周辺商業施設へ支出する。スタジアムの経済効果は試合収入の外側へ広がる。
市の基礎調査は、来場者支出だけで市内170億円/年を試算
千葉市が2023年に公表したZOZOマリンのあり方検討基礎調査では、来場者の支出による市内への経済波及効果を、生産誘発額約170億円/年、雇用誘発者数2,052人/年と試算した。
さらに千葉市外の県内への波及として、生産誘発額約102億円/年、雇用誘発者数1,093人/年を示している。
これは球団の実際の利益や市税収を意味する数字ではない。産業連関表などを使った「波及効果」の試算で、前提条件によって変わる。それでも、市がスタジアムをスポーツ施設だけでなく都市経済政策として扱う理由は分かる。
「ALL FOR CHIBA」は球場の外の経済を試合へ持ち込む
球団はホームタウン施策「ALL FOR CHIBA」で、県内のグルメ、物産、ご当地キャラクター、地域ゆかりのゲストを球場へ集めている。
2026年6月19~21日の開催でも、球団は「ホームタウン・千葉の魅力を感じられるイベント」として、千葉のグルメや物産品販売を実施した。
こうしたイベントは、野球の観客を地域産品の市場へ変える。自治体の冠試合や地域PRも含め、ZOZOマリンはプロ野球興行と地域マーケティングが交差する場所になっている。
球場はもう「老朽施設」でもある
一方、1990年竣工の球場は36年目に入った。海辺という立地は魅力であると同時に、塩害の原因でもある。
千葉市の基礎調査は、雨漏り、水たまり、防護柵や手すりの腐食、配管詰まり、駐車場冠水、狭いコンコース、車いす席不足、試合後の交通渋滞などを課題として列挙した。
「海風の球場」という野球文化の個性と、「海風で傷む公共施設」という維持管理の現実が同じ場所に存在する。
新スタジアムは幕張メッセ駐車場へ
千葉市は2025年9月、「千葉マリンスタジアム再整備基本構想」を策定し、幕張メッセ駐車場に新たなスタジアムを再構築する方針を決めた。
2026年6月には千葉市、千葉ロッテマリーンズ、イオンモールの三者が基本計画策定の協定を締結し、イオンモールを事業協力者に決定。現在、屋外型と全天候型の比較、機能、動線、交通、防災、コスト、工期、官民の役割分担などを検討している。
基本構想段階の概算事業費は約650億円。2034年頃の開業を目標としているが、2026年10月時点で最終的な事業実施判断、建設費、屋根形式などが全て確定したわけではない。
「365日楽しめるスタジアム」が目標になる理由
現球場はプロ野球のホームゲームが年間約70試合。つまり野球がない日の方が圧倒的に多い。
新構想では、公共施設としての野球・イベント・防災機能に加え、民間投資による商業・エンターテインメント機能を導入し、「365日楽しめるスタジアム」を目指す。
これはスポーツ施設の採算という話だけではない。幕張メッセ、イオンモール、ホテル、海浜公園、JR海浜幕張駅・幕張豊砂駅の間に人を歩かせ、試合のない日にも滞在と消費を生む街づくりである。
10月4日の楽天戦が持つ、もう一つの意味
目の前の順位表だけ見れば、ロッテ対楽天は5位と6位の対戦で、CSへの道は閉じている。
しかしスタジアム経済は、順位だけでは止まらない。18時に試合が始まれば、海浜幕張駅から人が歩き、飲食店が動き、球場売店が開き、交通が増え、広告が映り、地域の商品が売れる。
プロスポーツの都市経済は「優勝した年だけ価値がある」のでは成立しない。低迷した年でも観客が来ること、試合日そのものが街の活動日になることが、ホームタウン経済の強さになる。
敗れたシーズンほど、球場の価値が試される
ポストシーズンを逃したチームにとって、10月のホームゲームは未来を見せる場所になる。
若手を使う。来季へつながる投球を見せる。引退する選手を送り出す。長いシーズンを支えたファンへ最後まで試合を届ける。
そして千葉市にとっては、築36年の現球場から2030年代の新スタジアムへ何を受け継ぐかを考える時間でもある。
執筆時点で未確定のこと
本稿は10月2日JST時点で作成しているため、10月2日・3日のソフトバンク戦の結果、10月4日の予告先発、当日の登録選手、天候、最終的な4位・5位争いの状況は確定情報として扱っていない。
一方、10月4日18時に楽天戦が予定されていること、ロッテがCS進出圏外であること、上位3球団のCS進出が決まっていることは確認済みである。
