一般的な透析生活では週3回、血液がいったん体外へ出る。ポンプで圧力計を通り、何千本もの中空糸へ送られ、老廃物と余分な水分が膜を越えて透析液側へ移る。浄化された血液は体内へ戻る。機械は、健康な腎臓が24時間担っていた仕事の一部を代行できる。だが、腎不全が作り変えた心臓と血管の環境まで消すことはできない。

その複雑な地図に、大阪の研究チームは、ごくありふれた一文字を書き加えた。府内17施設の維持血液透析患者1,671人を前向きに追跡したところ、A型はO型に比べ、調整後の全死亡と心血管死亡が少ないことと関連した。注目されるのは、透析を受けていない一般集団では、長年の研究でO型のほうが心血管リスクの低い側に位置することが多かったからだ。

「逆転」こそニュースである。しかし、周囲に引かれた境界線も同じくらい重要だ。血液型は無作為に割り付けられたのではなく、生まれつきのものだ。治療を比較する無作為化試験でもない。A抗原が誰かを守ったことも、O型が死亡を引き起こしたことも証明できない。信頼区間は「差なし」の線をわずかに外れたにすぎず、既存の死亡予測モデルへABO型を加えても個人を見分ける力はほとんど向上しなかった。研究者自身が、血液型を理由に予防や治療を変える段階ではないと明言する。

1,671人大阪の解析対象となった維持血液透析患者
17施設大阪府内の参加透析施設
464人追跡期間中央値1,826日で確認された死亡
278人心血管死亡に分類された人数
0.780A型対O型の調整後・全死亡ハザード比
0.723A型対O型の調整後・心血管死亡サブ分布ハザード比

大阪の研究が実際に調べたもの

研究の母体は「大阪透析合併症研究(Osaka Dialysis Complication Study=ODCS)」だ。大阪公立大学の前身である大阪市立大学の時代、複数施設に通う維持血液透析患者を対象に始まった。2012年に、すでに透析治療を受けていた1,696人を登録し、担当腎臓医が年1回の症例報告票を大学のデータセンターへ送り、2017年まで追跡した。ABO型が不明な7人と主要な基準値が欠けた18人を除き、1,671人が今回の解析に入った。

年齢中央値は68歳。女性37%、糖尿病性腎臓病41%、心血管イベントの既往38%だった。登録時点までの透析期間、いわゆる「透析歴」の中央値は64か月。血液型は診療録から得ており、100年以上前にABO分類を可能にした原理と同じ、血球が目に見えて凝集する血清学的検査で決められていた。

ABO型患者数構成比主要比較
A型650人38.9%O型より調整後の全死亡・心血管死亡が低いことと関連
B型358人21.4%O型との統計学的有意差なし
AB型176人10.5%O型との統計学的有意差なし
O型487人29.1%4分類モデルの基準群

およそ40対20対10対30という構成は、日本の一般人口に近い。血液型が極端に偏った透析集団だったために結果が生じた、という懸念は小さくなる。4群は全体として似ていたが、年齢、アルカリホスファターゼ値、抗凝固薬とスタチンの使用には差があった。このため研究は死亡数を単純に数えただけではない。年齢、性別、透析歴、糖尿病性腎臓病、心血管疾患既往、喫煙、高血圧、脂質異常症、腎性貧血、カルシウム・リン・副甲状腺関連因子、BMI、アルブミン、CRPなどを調整した。

464人の死因を分けて見る

追跡期間中央値は1,826日、ほぼ5年だった。この間に464人が死亡し、278人(59.9%)が心血管死に分類された。内訳は突然死123人、脳卒中52人、冠動脈疾患44人、うっ血性心不全38人、末梢動脈疾患20人、大動脈解離1人だった。残る非心血管死186人は、感染症123人、悪性腫瘍36人、外傷・骨折27人だった。

この分類は統計上も重要だ。感染症で亡くなった人は、その後に心筋梗塞で死亡することはない。心血管死亡を調べる際、研究チームは非心血管死亡を「競合イベント」とするFine–Grayモデルを使った。A型対O型の心血管死亡サブ分布ハザード比は0.723、95%信頼区間0.535〜0.978、P値0.035だった。モデル上の追跡過程において、測定できた違いを調整した後も、A型群の心血管ハザードは27.7%低いと推定されたことになる。

あらゆる原因を合わせた全死亡では、CoxモデルによるA型対O型の調整ハザード比が0.780。相対ハザードは22.0%低く、95%信頼区間は0.619〜0.981、P値0.034だった。B型とAB型は、どちらの主要比較でもO型との差が有意ではなかった。ABO型と非心血管死亡の間にも有意な関連は見られなかった。

「0.780」の正しい読み方
  • 追跡中の相対ハザードであり、「死亡の22%を防いだ」という意味ではない。
  • 測定された登録時の差を調整した値だが、測っていない差は残り得る。
  • 信頼区間0.619〜0.981は不確実性の幅で、上限は差なしの1.0に近い。
  • 一人の患者の5年生存確率を示す数値ではない。
  • 血液型を観察した研究なので、因果関係は証明できない。

検証を重ねても残ったが、追試は不可欠

研究者は、分析方法を変えるとシグナルが消えるかも調べた。A型と非A型すべてを比べる探索的解析では、心血管ハザード比0.733だった。臨床的なサブグループ、傾向スコアマッチング、抗血小板薬・抗凝固薬、β遮断薬、レニン・アンジオテンシン系薬、スタチン、アルカリホスファターゼ、心不全入院歴、透析効率を追加調整しても、方向はおおむね変わらなかった。突然死とそれ以外の心血管死を分けた解析でも同様だった。

一貫性は、単なるモデル上の偶然という可能性を下げる。しかし観察を機序へ変えるものではない。A型対非A型の比較は事前指定ではなく、追加比較に対する正式な多重性補正もなかった。登録者は透析開始から一定期間をすでに生き抜いており、「生存者バイアス」が入り得る。臨床変数は2012年の一時点で、その後の変化を取り込んでいない。死因は複数施設の診療情報から判定された。A1、A2といった遺伝的亜型も調べていない。

最も示唆的なのは予測性能だ。4種類のABO型を従来モデルへ追加すると、モデル適合度は統計的に改善した。しかしC統計量の上昇は0.0025にすぎない。個人を区別する力の増加としてはごく小さい。集団レベルで生物学を照らすマーカーが、透析椅子に座る一人の判断にはほとんど情報を加えないことはあり得る。

これは生物学への道標かもしれない。ベッドサイドの信号機ではない。

なぜ一般にはO型が「低リスク側」なのか

ABOは献血カードに印刷される記号以上のものだ。9番染色体q34にあるABO遺伝子は、前駆体構造へ最後の糖を加える糖転移酵素を作る。AとBの対立遺伝子は、異なる糖を選ぶ酵素を作る。一般的なO型の対立遺伝子は不活性な酵素になり、H抗原という前駆体をほぼ修飾せずに残す。この糖鎖の目印は赤血球だけでなく、ほかの細胞、組織、分泌物にも存在する。

ABOと血管生物学の明確な接点の一つが、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)だ。血管が傷つくと、VWFは血小板の接着を助け、凝固第VIII因子を運ぶ。O型では非O型より、血中VWFと第VIII因子が平均で約25%低い。VWFがより速く血中から除かれることが一因と考えられる。透析を受けていない集団では、非O型が静脈血栓症や一部の動脈性心血管疾患と関連し、反対に特定の状況ではO型が出血と関連する。

大阪の結果は、このよく知られた流れに逆らう。血液透析患者でもO型のVWF・第VIII因子が低いという報告があり、VWF高値は予後不良と関連してきた。それでも心血管死亡が低かったのはO型でなくA型だった。今回、VWFと第VIII因子を直接測っていないため、その経路を否定はできない。だが抗凝固薬や抗血小板薬を調整しても結果は消えず、予想されるVWFの向きだけではきれいに説明できない。

もう一つの候補がアルカリホスファターゼだった。2012年当時の日本の測定法ではA型群の値が明らかに低く、透析患者では高値と死亡の関連が報告されている。これを追加調整してもABOの結果は残った。したがって、誠実な機序の答えは、隠れた「A型因子」があるということではない。理由はまだ分からない、である。

透析は心血管リスクの地図を塗り替える

健康な腎臓は、水分、電解質、酸塩基、血圧、赤血球産生、骨・ミネラル代謝を絶えず調整する。血液透析は不可欠な濾過を間欠的に行う。治療と治療の間には水分やカリウムがたまり、治療中には体液量と溶質濃度が短時間で動く。心臓は負荷と除荷を繰り返し、血管には腎不全の長い履歴が刻まれる。

年齢、糖尿病、喫煙、高血圧、脂質異常症といった従来の危険因子は消えない。そこに尿毒素、慢性炎症、酸化ストレス、貧血、低栄養とフレイル、カルシウム・リン異常と血管石灰化、左室肥大、内皮機能障害、バスキュラーアクセスによる循環変化、不整脈、除水の血行動態ストレスが重なる。血液は人工膜とも繰り返し接触する。凝固を促す力と出血を促す力が、同じ患者の中で共存する場合もある。

このため、一般集団で見つかったリスク関係が透析では弱まったり逆転したりする。「逆疫学」と呼ばれることもあるが、自然法則ではない。重い慢性疾患が交絡、選択、栄養、生理を変えるという警告だ。大阪の研究者は、炎症、石灰化、尿毒症環境、血液と膜の反復接触がABO関連リスクの現れ方を変えた可能性を挙げる。ただし、この連鎖を直接測定したわけではなく、説明ではなく研究課題である。

ダイアライザーで交わる二つの歴史

ABO研究は、肉眼で見える問題から始まった。1900年前後のウィーンで、カール・ラントシュタイナーは研究室仲間の赤血球と別の人の血清を混ぜた。滑らかなままの組み合わせもあれば、凝集するものもあった。彼はA、B、Oへつながる型を分類し、ABもほどなく発見された。なぜ昔の輸血がある患者を救い、別の患者を死なせたのかが説明できた。1930年のノーベル生理学・医学賞につながり、外科、救急、移植、産科を変えた。

透析は化学から工学へ進む別の道をたどった。19世紀、トーマス・グレアムは半透膜を介して物質が分離する現象を「dialysis」と呼んだ。1913年、ジョン・エイベル、レオナルド・ラウントリー、B・B・ターナーが動物で体外透析を実証。1924年にはゲオルク・ハースが人工腎臓で人を治療した。第二次世界大戦中のオランダでは、ウィレム・コルフが身近な材料で回転ドラム型装置を作り、1945年、急性腎障害の患者が腎機能を回復するまで命を支えた。

慢性治療には、血流へ繰り返し安全に接続する方法が必要だった。1960年のスクリブナー・シャントが長期アクセスを可能にし、救急的な実験を維持療法へ変えた。同時に、希少な装置を誰が使えるのかという倫理問題も突き付けた。その後、膜、水処理、アクセス手術、貧血治療、監視技術が進歩した。日本透析医学会の全国レジストリは1968年から、この患者集団を毎年追い続けている。

1900〜1901年:ラントシュタイナーがABO型の基礎となる凝集パターンを発見。

1913年:エイベルらが動物で体外透析を実証。

1924年:ハースが広く認められる最初の人への血液透析を実施。

1945年:コルフの人工腎臓が回復可能な腎不全患者の命を支える。

1960年:スクリブナー・シャントで維持血液透析の時代が開く。

2012〜2017年:ODCSが今回のABO解析となる大阪コホートを追跡。

日本でこの問いが持つ大きさ

日本透析医学会によると、2024年末の国内透析患者は33万7,414人、人口100万人当たり2,725人で、平均年齢70.27歳だった。原疾患では糖尿病性腎症が最多。同年の死亡は3万8,348人、年間粗死亡率は11.3%だった。

日本の死因構造も単純な標語を許さない。2024年は感染症が24.2%で最大の単一カテゴリー、心不全19.0%、悪性腫瘍7.4%だった。心不全、脳血管障害、心筋梗塞を合わせた「心血管死」は27.3%。1988年の54.8%から低下したが、なお大きな負担だ。大阪研究は突然死、冠動脈・末梢動脈疾患、大動脈解離も含む広い定義を用いたため、59.9%という比率を全国レジストリの27.3%と直接比べてはいけない。

これは統計上の細部ではない。「心血管死亡」は構築された評価項目であり、何を一つにまとめるか、突然死をどう扱うか、死亡後にどの情報が得られるかで数字は動く。ODCSでは、突然死だけで心血管死278人中123人を占めた。次の研究に詳細な心電・不整脈、電解質、心臓画像、透析セッションのデータが必要な理由の一つだ。

先行する小さな手掛かりと、より大きな確認

A型が同じ方向へ動いた研究はこれが初めてではない。2023年、国内単施設の血液透析患者365人を追跡した研究では、心脳血管イベント・死亡の複合評価項目が73件発生し、A型は非A型より調整ハザードが低かった。規模は小さく、死亡と非致死性イベントを合わせ、死因別死亡解析はなかった。

ODCSは約5倍の患者、複数施設、464人の死亡を用い、心血管死と非心血管死を分け、後者を競合リスクとして扱った。より強い観察研究ではあるが、別の国や治療システムによる独立証明ではない。二つの国内研究は、集団遺伝、診療慣行、測定されていない環境を共有しているかもしれない。次に説得力を持つのは、別地域で透析導入時から登録する「新規導入コホート」を用い、比較を事前指定し、候補となる経路を直接測定する追試だ。

患者にとって、今日何を意味するか

A型の患者が「守られている」という意味ではない。O型の患者に心血管イベントが運命づけられたという意味でもない。透析回数、除水目標、抗凝固薬、抗血小板薬、食事、バスキュラーアクセス管理、移植適格性、検査頻度を変える根拠にはならない。これらの選択には実際の利益と害があり、病歴、診察、検査値の推移、透析中のデータ、医療チームとの共同意思決定に基づかなければならない。

日本で人気の「血液型性格診断」を裏付けるものでもない。ABO抗原と凝固蛋白は生物学だが、同じ文字が性格を決めるという主張は、日本と米国の大規模調査で支持されなかった。特定の患者集団で見つかった健康アウトカムの統計的関連を、人柄の理論へ引き伸ばすことはできない。

患者安全のための読み方
  • この研究を理由に薬を変えない。アスピリンや抗凝固薬も含む。
  • 血液型を理由に透析を休んだり短縮したりしない。
  • 実証された管理を続ける。血圧、体液量、糖尿病、貧血、ミネラル、栄養、感染症、アクセスの管理は担当チームの指示に従う。
  • 文字でなく症状へ対応する。胸部圧迫感、突然の息切れ、失神、脳卒中様の脱力はABO型にかかわらず緊急評価が必要。
  • 数字の種類を確認する。相対ハザードは一人の予後ではない。

この結果が要求する次の実験

有用な追試は、血液透析を始める時点で患者を登録し、臨床像を基準時に凍結せず、時間とともに変わる曝露を追う必要がある。ABO遺伝子を解析してA1とA2を区別し、多様な人種・地域を含める。VWF、第VIII因子、ADAMTS13、内皮・炎症マーカー、残存腎機能、石灰化、栄養、透析膜と治療方式、アクセス種類、除水ストレス、カリウム推移、不整脈イベントを測るべきだ。

A対O、A対非Aの比較を事前指定し、死因判定を統一し、ハザード比だけでなく絶対リスクも示す。外部検証では、ABOを加えることで実際の判断を変えられるほど予測が改善するかを見る。その後の機序研究で、抗原そのものが関係するのか、別の遺伝的特徴の目印なのか、透析特有の相互作用がシグナルを作ったのかを問える。

追試で否定されても価値がある。一つのコホートの狭い信頼区間が、別の場所へ移らなかったことが分かる。再現されれば、腎不全における見落とされてきた心血管経路へ研究者を導く。どちらの結論も、現在の関連を早まって医療助言に変えるより有用だ。

一文字、一本の機械、まだ答えのない問い

ラントシュタイナーの文字が力を持ったのは、直接的で再現可能な現象を予測したからだ。適合しない血液は凝集した。透析が力を持ったのは、膜と循環が命を支えられるかを、技術者、臨床家、患者が繰り返し確かめたからだ。今回の大阪の結果は、科学のもっと不確かな段階にある。パターンを観察し、何がそれを描いたのかを問う段階だ。

注目に値する整合性はある。A型は全死亡と心血管死亡の低さに関連したが、非心血管死亡とは関連しなかった。複数解析でも残り、より小さな国内研究も同方向だった。しかし、行動へ移すには制約が大きい。観察研究、既存患者コホート、基準時一回の測定、ほぼ日本人だけの集団で、個人を見分ける予測力の上乗せはわずかだった。

この緊張は隠すべき弱点ではない。発見の中身そのものだ。一般集団ではO型がしばしば低血栓リスク側を示す。大阪の透析という流れでは、A型の下流で心血管死が少なかった。今すべきことは、ある血液型へお守りを与えることではない。何が川の流れを変えたのかを知ることである。

出典と取材方法

本稿では、関連と因果、相対ハザードと絶対リスクを区別した。患者数、モデル、信頼区間、調整因子、感度分析、限界は、オープンアクセスの論文全文で確認。国内統計は、本号時点で利用できる最新の日本透析医学会年次報告を用いた。歴史的背景は医学・科学機関と査読済み論文に基づく。

研究資金:大阪研究は、日本腎臓財団、アステラス製薬、中外製薬、第一三共から一部助成を受けたと開示している。論文はCC BYで公開。本稿は医療報道であり、個別の診断・治療助言ではない。