脳を調べるための頭部MRI画像から、口の健康につながる情報を取り出せないか。弘前大学、東北大学、九州大学の研究グループは、ものを噛む際に使う咬筋(こうきん)の体積をAIで自動計測する手法を開発した。弘前大学が9月24日、研究成果を紹介した。[1]
弘前の高齢者2,077人を解析
研究では、東北大学病院の画像を使い、専門家が確認と修正を重ねながらAIを学習させた。その後、認知症や加齢を調べる共同研究「JPSC-AD」の弘前地域の画像に適用。画質などを確認したうえで、平均年齢69.9歳の2,077人を解析した。[2]
咬筋の体積が大きい人ほど、総合的な口腔の問題が少ないという関連がみられた。関連が最も強かったのは歯の本数やかみ合わせなどの構造的な問題で、歯周の炎症、口腔機能の低下が続いた。[2]
測るのは筋肉の体積
AIが画像上で抽出するのは、左右の咬筋の領域だ。公開されたソフトウェアは、咬筋まで十分に写った頭部の3次元T1強調画像を入力として想定している。頭部MRIならどの画像でも同じように使える、ということではない。[3]
体積は筋肉の大きさを表す値であり、噛む力そのものの測定値ではない。この研究は、画像から得た体積と、別に評価した口腔状態との関係を調べたものだ。
関連は示したが、原因までは分からない
一時点のデータを使う研究のため、筋肉が大きいから口腔状態が良いのか、その逆なのかは判断できない。咬筋を鍛えれば歯や歯周組織の問題を防げると示した研究でもない。大学は、追跡研究や外部データでの検証を今後の課題としている。[1]
身体的なフレイルと軽度認知障害が重なる「認知的フレイル」との関連も調べたが、背景因子を十分に調整すると統計学的に有意ではなかった。認知症の診断や予防を実現した成果として読むことはできない。[1][2]
蓄積された画像を研究に生かす
ソフトウェアはGitHubで公開され、複数の画像から左右の筋肉の体積などをまとめて出力する機能を備える。既存の画像データを再解析する研究に向けた道具だ。[3]
今回の意義は、頭部画像に含まれる情報を、口腔の健康を考える手がかりとして取り出した点にある。個人の病気を判定する検査として使えるかどうかは、今回示された集団での関連とは別に検証する必要がある。

