午後10時、水族館はまだ街の日常の中にある

moyuk SAPPOROの5階では、コーヒーとゼリーを手に、暗い空間に浮かぶ水草の景色へ入ることができる。6階ではフェアリーペンギンが可動式の六角形の陸場を歩き、4階では飼育スタッフの仕事が「関係者以外立入禁止」の扉の向こうではなく、来館者の目の前にある。2023年7月20日の開業以来、AOAO SAPPOROが目指してきたのは、休日に遠出する場所だけではない。街の日常の一室としての水族館だ。

3周年で、その考え方が最も分かりやすい形になる。公式名称は「大進化!AOAO SAPPORO 夏の夜更かしまつり8DAYS」。7月18日から25日まで、クラシック、チョコレート、コーヒー、ワイン、スタッフの語り、恐竜、そしてAOAOが名付けた「ヒレオロジー」を、水の生き物の観察と組み合わせる。

ただし「8日間の夜更かし」には大切な注釈がある。8日だけ閉館を延長する企画ではない。AOAOの通常営業時間は、もともと毎日午前10時から午後10時まで(最終入館午後9時)。3周年企画は、この日常の夜間営業を8日連続で文化プログラムにする。夜は追加サービスではなく、施設の基本設計なのである。

2023年7月20日AOAO SAPPORO開業
7月18日〜25日8日連続の3周年企画
10:00〜22:00通常の開館時間
7月24日大型の新2ゾーン開業

8日間を正確に読む

8DAYSは、AOAOが掲げる「都市の水族館」を8通りに見せる構成だ。通常入館後に参加できる観察企画が中心だが、飲食物など別料金のものもある。定員、提供時間、参加条件はそれぞれ異なるため、当日の公式案内を確認したい。

日付・企画内容
17月18日 水族館×クラシック
17:00、19:00
PMFアカデミーの音楽家による「PMFブルーナイトクラシック—PMF2026」。
27月19日 水族館×食
14:25、18:55
SOIL CHOCOLATEのパティシエ・広島望氏によるチョコレートの時間と、HOURS BEERの後藤ひかる氏による夜の集い。
37月20日 水族館×MORIHICO.
10:00〜22:00
「3Qの日」。NATURE AQUARIUMが1日限定の茶室になり、コラボスイーツは20:00まで販売。
47月21日 水族館×ワイン
18:55
インターリンク・ジャパン阿部沙織氏とめぐる「夏のワインクルーズ」。
57月22日 水族館×ひみつ
18:55
館長とスタッフが、普段は見えにくいAOAOの仕組みを語る。
67月23日 水族館×恐竜
18:55
7月24日の正式公開を前に、「鳥とトカゲと恐竜」新展示をスタッフが案内。
77月24日 館長ナイトツアー
19:00
新2ゾーンの開業日に、夜の館内を館長の視点で歩く。
87月25日 水族館×ヒレオロジー
13:30、15:30、17:30、19:00
AOAOの「ヒレオロジスト」が、5種の魚と、それぞれのひれの働きを紹介。

8日間は浴衣企画もある。午後5時以降、浴衣で来館した人は「シロクマベーカリー&」で、サッポロクラシック、AOAOクリームソーダ、マンゴーミルクのいずれかを100円で購入できる(1人1日1回)。7月24、25日は通常午後4時までの「工作水族館」を午後10時まで延長し、浴衣姿の中学生以下は通常300円の「ひれうちわ」を無料で作れる。

7月20日、水族館とコーヒーの街が出会う

誕生日当日の主役は、3歳の水族館と30歳の札幌のコーヒー文化だ。MORIHICO.は1996年、札幌市中央区で始まった。AOAOは自らを「札幌のビギナー」、MORIHICO.を「札幌のマスター」と呼ぶ。「3Q」は3周年を示すと同時に、「サンキュー=ありがとう」の音を重ねる。

1階のmoyukスクエアには午前10時から午後8時まで、MORIHICO.のコーヒートラック「Estafette」が出る予定だ。コーヒーゼリーオレ、AOAOブルーゼリーソーダ、それぞれのかき氷など限定メニューを販売する。5階の「NATURE AQUARIUM 茶室 3Qの日」は開館時間中に開かれ、スイーツ販売は午後8時まで。2,500円のセットは水族館入館料とコラボスイーツ1品を含み、スイーツを水草の景色の中へ持ち込める。4階「WONDER BOOKS」では午前10時からMORIHICO.30周年記念コーヒーやグッズを扱う。

連携は1日で終わらない。NATURE AQUARIUMとLIBRARY AQUARIUMの一角では8月31日まで、森彦本店の家具・建具・内装、代表兼アートディレクター市川草介氏が選んだ本、札幌のコーヒー文化を伝えるパネルを展示する。最新の公式案内では展示開始は7月7日。以前の発表にあった7月20日開始から更新されている。

3周年は、水槽の前のバースデーケーキではなく、札幌の二つの「室内文化」――夜の水族館と街の喫茶室――の対話として演出される。

三つの展示、三つの「進化」

3周年キャンペーンの「進化」は、生物学の進化と施設自身の変化を重ねた言葉だ。新展示は三つあるが、公開日は同じではない。キタサンショウウオの成長観察水槽は7月2日に始まった。「共創とあそびの部屋」と「鳥とトカゲと恐竜」の新空間は7月24日公開。7月20日に三つすべてを見られるわけではない。

展示開始・場所問い
キタサンショウウオ成長観察水槽7月2日、4階LABORATORY卵嚢から幼生、成体へどう育つのか。都市の水族館は道東の保全にどう関われるのか。
共創とあそびの部屋7月24日、5階CO-WORKINGひれは、泳ぎ、停止、姿勢、合図、環境への適応をどう語るのか。
鳥とトカゲと恐竜7月24日、6階GREEN ROOM生きている鳥と爬虫類から、遠い進化の時間をどう読み直すか。

4階の水槽は、2025年4月に標茶町と始めたキタサンショウウオの保全活動から生まれた。2026年5月に卵嚢を展示し、今回は卵から幼生、成体までを継続して観察できる構成にする。環境省レッドリスト絶滅危惧IB類で、標茶町の天然記念物でもある種だ。個体の「成長」と種の「進化」を混同せず、成長の観察を地域保全への入口にする点が重要である。

軽やかな造語「ヒレオロジー」が、観察を深くする

5階では、来館者が台に上がり、5基の水槽を上からのぞく。キンギョハナダイ、シマキンチャクフグ、トビハゼ、ネッタイミノカサゴ、バタフライフィッシュという、特徴的なひれを持つ魚を選んだ。AOAOは、この見方を「ヒレオロジー」と名付けた。ひれから生息環境、行動、人と自然の関係を読み解こうとする館独自の言葉である。

名前は親しみやすいが、観察の核は本格的だ。ひれは一様な櫂ではない。推進、制動、方向転換、姿勢の維持、ホバリング、合図などを、種類ごとに異なる組み合わせで担う。トビハゼの体とひれは水と陸の境界での移動を助け、ネッタイミノカサゴの大きく広がる鰭条は、姿と獲物への接近の双方に関わる。すべての部位名を暗記させるより、動きの違いに気づく時間を作る展示になる。

見下ろすための台も教材だ。正面のガラス越しとは違う角度から、体のつくりを読む。水槽、観察の手がかり、解説、本を一つの単位として構成してきたLIBRARY AQUARIUMの方法を、身体的な「のぞき込み」へ広げる試みといえる。

鳥は恐竜である。しかし壁のすべてが恐竜ではない

6階GREEN ROOMには、高さ約3メートルの鳥かごとホオミドリアカオウロコインコ、更新した進化系統樹、むかわ町穂別博物館が監修する「恐竜ウォール」が加わる。模型は、モササウルス、プレシオサウルス、プテラノドン、アンキロサウルス、ステゴサウルス、カムイサウルス、トリケラトプス、ブラキオサウルス、テリジノサウルス、ティラノサウルスの10点。

一般的な「恐竜の時代」の括りの中には、科学的には区別がある。モササウルスとプレシオサウルスは海生爬虫類、プテラノドンは翼竜で、恐竜ではない。他の7種は恐竜である。そして現生の鳥は、単に恐竜に似た動物ではなく、獣脚類恐竜の子孫である「生きている恐竜」だ。米国自然史博物館は、叉骨などの骨格上の共通点を含む証拠を解説している。

この整理は展示を狭くしない。むしろ、複数の爬虫類の系統を同じ視界に置き、生きたインコによって「恐竜は過去だけ」という感覚を崩す。むかわ町で知られるカムイサウルスが、北海道の足元に深い時間を結びつける。

なぜ狸小路の上に水族館を造ったのか

AOAO SAPPOROは2023年7月20日、moyuk SAPPOROの4〜6階に開業した。「AOAO」は、生命が青々と生い茂るイメージに由来する。開業時のテーマ「生命のワンダー〜みえないものがみえてくる〜」は、海辺でも郊外でもない場所に水族館を置くための設計思想になった。

moyuk SAPPOROは狸小路や地下歩行空間とつながる中心市街地再開発の一部だ。札幌市は、都市型水族館を導入した市街地再開発事業として全国初と説明する。施設面積はバックヤードを含め約5,100平方メートル。1周年時の公式資料は約250種・4,000点としていたが、これは2024年時点の歴史的な数値で、現在の正確な飼育数を示すものではない。

海から離れたビルの水族館だからこそ、インフラを見せる必要がある。4階LABORATORYには、魚類用とペンギン用の人工海水製造設備があり、それぞれ一度に約3,000リットルをつくる。スタッフの作業も公開する。窓の外に海がないという制約が、水質、生命維持設備、日々の飼育労働を学ぶ装置に変わる。

縦に積まれた三つの動詞

開業時の館内体験は「CONNECT」「SCOPE」「COMMONS」という三つの考えで組み立てられた。4階はスタッフや設備とつながる。5階は観察の視野を定める。6階はペンギン、プランクトン、植物、音、飲食が共存する場になる。

開業時からの体験3周年の変化
4階公開型LABORATORY、人工海水設備、小さな生命、WONDER BOOKS。キタサンショウウオの成長を、標茶町との保全へつなぐ。
5階LIBRARY AQUARIUM、NATURE AQUARIUM、仕事もできる観察空間。5基のひれ水槽と台によって、上から見る参加型の観察を加える。
6階フェアリーペンギン、プランクトン、BLUE ROOM、GREEN ROOM、飲食。生きた鳥、系統樹、模型の壁で現在の生命と深い時間を結ぶ。

5階のNATURE AQUARIUMは、開業時の説明では東京、リスボンに次ぐ世界3例目の常設展示。四つの水草景観が、わび・さびや禅の感覚を通して生態系の時間を見せる。LIBRARY AQUARIUMは43基の水槽を本棚のように整理し、生き物、観察ポイント、本を組み合わせた。AOAOの発表によれば、この展示手法は2025年度グッドデザイン賞を受賞した。巨大水槽ではなく「見る方法」が評価対象になった点が象徴的だ。

6階では、六角形の陸場を組み替えてフェアリーペンギンの環境を変化させられる。16基の水槽で小さく透明なプランクトンを見せる。BLUE ROOMは幅約20メートルのスクリーンと約120平方メートルの床面映像で海の空間をつくる。GREEN ROOMには20種を超える植物。館内の全フロアへ飲食物を持ち歩けることも、展示とカフェを切り離さない都市型の設計である。

夜は「営業時間」から「文化プログラム」へ

午後10時までの開館は当初からあったが、AOAOは3年の間に、その時間へ文化的な名前と内容を与えてきた。2025年には、閉館したOMO3札幌すすきのの「幸せな夜更かし」という考えを受け継ぎ、金曜夜を軸に「AQUARIUM JAM」を展開。音楽、表現、学び、ビール、札幌の「シメパフェ」文化と、生き物の観察を同じ夜に置いた。

8日間の3周年企画は、その考えの現在地だ。PMFの音楽家は単なるBGMではなく、ワイン、チョコレート、コーヒーの専門家も札幌という街の案内役になる。スタッフのツアーは館内知を舞台に変える。水槽に交換可能な余興を貼りつけるのではなく、外の街を水族館の中から読み直す。

夜の営業は来館者像も広げる。昼の家族に加え、仕事帰りの人、ワインの話を聞きたい大人、1日がかりの遠足ではなく夕食後に立ち寄る二人を受け入れる。冬の長い札幌では、遅くまで開く室内の公共的な場所であること自体が都市機能になる。

祝祭を支える保全と繁殖

表側の華やかな3周年は、見えにくい仕事の上にある。AOAOと標茶町は2025年4月にキタサンショウウオ保全活動を始め、同年9月に包括連携協定を結んだ。調査研究、環境教育、観光や地域活性化をつなぐ。新しい成長水槽は、現時点で最も来館者に分かりやすい成果だ。

別の成果として、オウゴンニジギンポ(Congrogadus subducens)の繁殖が、日本動物園水族館協会から国内初の繁殖として認定された。繁殖は2024年5月、幼魚と成魚の展示は2026年3月から。AOAOにとって初の「初繁殖認定」である。施設の進歩は、新しい内装だけではなく、飼育知識を蓄積し、繁殖させ、学びを共有できるかでも測られる。

連携は開業時から構造の一部だった。飼育はおたる水族館との協力で始まり、今回の古生物展示はむかわ町穂別博物館が監修する。標茶町は種の保全、PMFとMORIHICO.は音楽とコーヒーを持ち込む。AOAOは閉じた観光施設というより、北海道の複数の機関が都心の来館者と出会うプラットフォームとして進化している。

3周年の実用ガイド

AOAO SAPPOROはmoyuk SAPPORO 4〜6階。大通駅から徒歩約3分、市電「狸小路」停留場から徒歩約1分。専用駐車場はない。通常営業時間は午前10時〜午後10時、最終入館は午後9時。年中無休だが、イベント、生き物の展示、飲食提供は当日変更される場合がある。

項目公表内容3周年期の注意
通常料金大人2,200円、小・中学生1,100円、3歳以上200円、3歳未満無料。混雑日は当日券販売を制限する場合があるため、オンライン購入を推奨。
7月20日茶室セット入館料とコラボスイーツ1品を含み2,500円。スイーツ販売は20:00まで。数量限定の可能性がある。
新展示キタサンショウウオは7月2日、ひれと鳥・恐竜の2ゾーンは7月24日。7月20日に三つすべては見られない。
キッズWONDER SHEET7月18日開始、300円。水、生き物、館内、スタッフの問いに挑戦。入館料とは別料金。
ひれうちわ工作7月24日開始、通常11:00〜16:00、現金300円。会員無料。7月24、25日は22:00まで。最終受付21:30。
記念フードペンギンクッキークロワッサン480円、AOAOクリームソーダ・マンゴーミルク各790円。8月31日まで。飲食のラストオーダーは21:30。

「みえないもの」を見せてきた3年間

時期出来事2026年から見た意味
2023年7月20日moyuk SAPPOROにAOAO SAPPORO開業。水族館が海辺ではなく、都心再開発の日常動線の核になる。
2024年4〜5月フェアリーペンギンのひなと、オウゴンニジギンポの稚魚が誕生。デザインの新しさに、飼育・繁殖の成果が加わる。
2025年「幸せな夜更かし」とAQUARIUM JAM、LIBRARY AQUARIUMのグッドデザイン賞、標茶町との協定。夜文化、観察デザイン、保全を並行する施設へ。
2026年3〜7月国内初繁殖認定、成長観察水槽、進化をめぐる新2ゾーン。施設内に蓄積した知識を、来館者が読める展示へ変換。
2026年7月18〜25日3周年の8DAYS。科学、街の文化、夜の生活を一つの屋根の下に置く、AOAOの成熟した自己像。

3年後のAOAOの成果は、都心の複合ビルで海辺の水族館を模倣したことではない。ビルの制約を使って、別の公共的なリズムをつくったことだ。4階で海水をつくり、5階で観察を本のように編集し、6階でペンギン、映像、植物、食、会話を共存させる。午後10時、狸小路へ戻る来館者が持ち帰るのは、街の中の問いである。見方を学べば、どの生命のつながりが見えるようになるのか。

主な資料・さらに読む

編集部注:企画情報は2026年7月18日(日本時間)に確認した。本稿は開催前のガイドであり、予定された催しがすでに実施されたとは報じていない。最新発表では、キタサンショウウオ展示は7月2日、他の新2ゾーンは7月24日。時間、定員、生き物の展示、飲食提供は変更される場合があるため、当日の公式案内を確認されたい。ヒーロー画像は報道写真ではなく編集イラストである。