見出しになった「91%」

91%という数字は、あまりに良く見える。在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)とKPMGドイツによる第11回「日本におけるドイツビジネス」調査で、収益性の設問に答えた企業の91%が、2025年の日本事業で税引前利益を上げた。2024年についての同じ数値は82%。税引前利益率10%超は20%、赤字は9%だった。

分母が重要である。2026年1月30日~2月12日、ドイツ企業の日本法人475社を対象にオンライン調査を行い、175社が回答した。回答率は36%。収益性グラフの有効回答は124社である。自己申告であり、在日ドイツ企業すべての監査済み決算ではない。日本に定着し、会議所との関係を持つ企業ほど回答しやすい可能性もある。継続性と詳細さに価値があるが、企業景況の標本調査であって全数調査ではない。

その前提を守っても、結果は注目に値する。貿易摩擦、円安と変動、コスト高、戦争に伴う物流混乱のなかで収益性が改善した。報告書がいう「安定した安全な拠り所」とは、問題が起こらないという意味ではない。規則、顧客、インフラ、人材、政治制度が、激しく動く外部環境と比べて予測しやすいという意味だ。

91%収益性の回答124社のうち、2025年に税引前利益を計上。
65%日本が技術・イノベーション・持続可能性で将来、世界を主導すると予想。
175 / 475社本調査の回答数と対象企業数。回答率36%。
約470社AHK Japanの現行プロフィールにおける会員企業。
日本の魅力は「安い、速い、簡単」ではない。約束が約束として機能しやすいことだ。地政学が不安定になると、その信頼性は資産のように値づけされる。

企業がいう「安定した錨」とは何か

立地上の最大の強みは補助金でも税率でもない。「取引関係の安定性と信頼性」が93%、「経済的安定」が91%、「高度な人材」が90%。安全・社会安定87%、インフラ83%、民主主義に基づく政治的安定83%、技術・イノベーションへの開放性76%と続く。

この順番が、ドイツ企業の日本経験を説明する。供給業者は、仕様を合わせ、信頼を得て認定されるまで、柔軟な市場より時間がかかることがある。いったん採用されれば、保守、更新、そして同じ日本企業の海外拠点との取引へつながる。該当回答者の41%は、日本国外の日本企業に対するグループ売上が、日本法人の国内売上の3倍を超えると答えた。日本は国内市場であるだけでなく、世界で活動する日本顧客との「関係の本部」になり得る。

進出理由の首位は販売可能性で85%。同時に市場は観測所でもある。65%がトレンド探索、63%が日本の競合企業の観察、61%がビジネスネットワーク参加、47%がベンチマーク、45%が業界標準形成への関与を重視した。要求の厳しい顧客はコストを生むが、弱点を早く見つけ、海外でも通用する実績をつくる。

「技術リーダー」65%――何を意味するのか

65%は「現在、日本があらゆる技術で世界一」という意味ではない。150社が答えた複数回答の設問は、将来の世界における日本の役割を尋ねた。65%が技術・イノベーション・持続可能性での指導力、59%がアジアで積極的に同盟を築く役割、57%がルールに基づく国際秩序の推進、39%が供給網・経済安全保障での指導力を選んだ。

事業上の根拠は具体的である。投資にプラスとなる要因の首位は産業・サービスのデジタル化で37%。報告書はAI、半導体、自動化、ロボットを挙げる。調査対象の日本拠点では20%が研究開発、26%が生産、29%が調達機能を持つ。シリコンバレー型の技術だけではなく、工場、部品、品質、医療、モビリティー、エネルギーへ埋め込まれた産業技術だ。

「将来」という時制も重要である。日本には精密製造、センサー、素材、ロボット、自動車で卓越した能力がある一方、ソフトウェア導入、スタートアップの拡大、組織の速度に課題がある。調査は経営者の期待であり、客観的な世界順位ではない。ドイツの機械、産業ソフトウェア、工学と、日本の生産規律、素材、部品、厳しい利用者を組み合わせる補完関係に最大の機会がある。

会議室の下にある「工場の物語」

2025年9月公表のAHK Japan初の製造業特別調査は、日本国内132カ所で製造・組立を行うドイツ企業84社を確認した。同会議所が把握する日本で活動するドイツ企業約730社の1割超に当たる。対象69企業グループのうち34社が回答したため、これも全体を代表すると断言できない標本である。

それでも「錨」が比喩だけでないことが分かる。回答企業の76%は日本で20年以上生産。国内生産の理由は顧客への近さ79%、日本顧客の特別な要件59%、供給網の安定38%、高度人材38%。71%は日本と海外の双方へ供給し、主な輸出先はASEAN、中国、北米。57%が日本の生産能力拡大を計画した。

意外なのはコストである。95%が単位労働コストはドイツより低いと答え、47%は30%以上低いとみた。円安が比較を助けたが、為替は動くため、それだけで工場を正当化できない。供給業者、品質、自動化、顧客への近さ、信頼される拠点からの輸出がより深い理由だ。一方、同じ調査で82%が技能人材の採用・維持を最大の課題とした。

日本の強み2026年調査の根拠注意点
収益性収益性回答124社の91%が税引前黒字、20%が利益率10%超。自己申告の標本で、全在日ドイツ企業の監査結果ではない。
信頼関係93%が取引関係の安定性・信頼性を評価。信頼獲得には長い認定、現地サービスが必要な場合がある。
技術基盤65%が技術・イノベーション・持続可能性で将来の指導力を予想。将来への意見であり、現在のランキングではない。
地域統括21%が日本にAPAC本部、42%はAPAC中間本部なしでドイツへ直接報告。日本のAPAC本部比率は前年25%から低下。
製造拠点2025年のAHK調査で84社・132の製造/組立拠点。人材不足と言語が強い制約。

楽観と同じくらい重要な障害

最大の課題は「為替、財政・金融リスク」で83%、前年より6ポイント上昇した。円安はユーロ換算で日本生産を魅力的にする一方、本社へ送る利益を目減りさせ、輸入原料を高くし、グループ比較を難しくする。高い政府債務と金融市場の変動も同じ分類へ含まれる。

「必要な資格を持つ人材の採用」が81%。単なる人数ではない。技術、日本顧客と話す日本語、ドイツ本社との意思疎通、地域職で増す英語の需要を同時に満たす必要がある。人材維持は46%、労働法の硬直性43%、原材料・エネルギー高61%、インフレ55%、人件費上昇51%だった。

楽観の裏には比較と後退もある。日本をグループ売上・利益の上位5市場に置く企業は44%で、前年47%、2024年54%から低下。日本をAPAC本部とする企業も25%から21%へ下がった。日本企業と第三国で事業を行う比率は55%で、前年比8ポイント減。錨は価値を持つが、シンガポール、中国、他のアジア拠点と常に比較される。

本調査後に起きた衝撃

本調査は2月末のイラン戦争勃発前に終了したため、AHKとKPMGは3月25~27日、在日ドイツ企業478社に追加調査を行い、153社(32%)が回答した。世界的なインフレリスク増大を94%、エネルギー危機を92%、地政学リスク増大を91%、供給網の混乱を88%が予想した。

影響はすでに事業へ出ていた。石油・ガス・電力価格の上昇70%、輸送・物流混乱60%、計画確実性の低下55%。コストを価格転嫁できず利益が減ったとの回答は38%、売上減見込み27%、受注減23%だった。国内の政治・社会が安定していても、輸入エネルギーと海上要衝にさらされるという中心的な逆説が見える。

したがって安定は「遮断」ではなく「備え」を意味する。ドイツが日本から学べる点として、59%が供給網の多様化、42%がリスク管理・防災、40%がレアアースなど重要原料のリサイクル、38%が強い地域供給網、35%が半導体生産の自立を挙げた。地震、エネルギー危機、レアアース圧力を繰り返し経験した日本は、強靱性を経済能力に変えてきた。

1861年の条約から1962年の会議所へ

公式関係の出発点は、1861年に日本とプロイセンが結んだ修好通商航海条約である。明治期、ドイツの医学、法学、科学、工学は日本の近代化へ影響し、商人と産業企業が実務の関係を築いた。戦争は政治関係を破壊したが、戦後復興は、規則、顧客、商慣行を双方向に翻訳する常設機関を必要とした。

AHK Japanは1962年からの活動を公式の沿革とする。2026年6月の第64回定時会員総会という番号もその線上にある。日本の高度成長と、ドイツの化学、機械、電機、自動車企業の拡大、オイルショック、バブルと長い調整期を通って成長した。その後は、欧州単一市場、世界供給網、中国の台頭のなかで、より開かれながら要求の厳しい日本市場を解説した。

関係を支える制度も積み上がった。日独科学技術協力協定は1974年発効、ベルリン日独センターは1985年設立。AHKのドイツ語ビジネス誌JAPANMARKTは1992年から発行され、2016年にはKPMGと年次景況調査を開始。2026年に第11回を迎えた。

EU・日本経済連携協定は2019年2月に発効し、当時の世界GDPの約30%をカバーする圏域をつくった。越境データ流通議定書は2024年7月発効。日独は2024年に経済安全保障協議の創設を確認し、2025年10月の第2回会合で供給網の強靱化、非市場的政策、重要・新興技術の保護・育成を扱った。2026年6月の外務次官級会合も、供給網の強靱性を二国間課題に置いた。

AHK Japanが日独関係をつくったのではない。価値は「制度の記憶」にある。首脳会談、展示会、危機が終わった後も、企業、行政、専門家を同じ対話へ戻す。

一つの組織に三つの役割

AHK Japanは三つの役割を掲げる。第一に、ドイツ連邦経済・エネルギー省の助成を受ける対外経済促進機関。第二に、DEinternationalブランドで市場調査、提携先探索、出張支援、イベント運営、事業拠点、法務・税務の案内、本人認証、公共調達情報を提供するサービス事業者。第三に、任意加入の会員組織である。

現行プロフィールは約470社の会員、30人超の3言語対応スタッフを掲げる。世界93カ国・約150の在外ドイツ商工会議所ネットワークに属する。会員資格はドイツ企業に限らず、正会員の年会費は売上または従業員数に応じて20万~43万円。ワーキンググループ、イベント、会員名簿、JAPANMARKT、サービス割引がある。

役割は混同すべきでない。AHKはドイツ大使館でも、日本の規制当局、裁判所、投資銀行、監査法人でもない。査証、認可、補助金を出さず、調査結果も新規参入企業の黒字を保証しない。強みは実務知識と接点の蓄積である。同時に、会員利益を代表しつつ企業へ有料サービスを売るため、利益相反の管理が重要になる。

2026年の指導部

2026年6月16日の第64回定時会員総会で新理事会を選出した。会頭はARCHION CorporationのKarl Deppen。副会頭はTÜV SÜD JapanのAndrea CosciaとAd-comm GroupのAndreas Dannenberg。財務担当はInfineon Technologies JapanのIna Helm。Marcus Schürmannは専務理事、CEO、駐日ドイツ商工特別代表を務める。

理事はSAP Japan、Kaeser Kompressoren、Bosch、DHL Global Forwarding、Vollmer、Evonik、Guhring、C. Illies/IRISUなどから構成される。JETRO理事長の石黒憲彦、日本経団連会長の筒井義信が日本側顧問。先端製造と産業サービスを中心に、物流、ソフトウェア、制度が周囲を支える構成である。

実在する住所、電話、直接サイト

以下は2026年7月18日、各組織の公式ページで確認した。AHKの通常営業時間は平日9:00~17:30。日本の祝日と会議所指定休日は閉室する。訪問前に予約してほしい。

組織現住所電話、メール、直接サイト
在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)〒102-0075
東京都千代田区三番町2-4
三番町KSビル5階
+81 (0)3 5276 9811
info@dihkj.or.jp
japan.ahk.de/ja
公式アクセス
駐日ドイツ連邦共和国大使館〒106-0047
東京都港区南麻布4-5-10
+81 (0)3 5791 7700
大使館公式ページ
国家、領事、外交案件の窓口。会員・商業コンサルティングはAHKへ。
JETRO対日投資・ビジネスサポートセンター東京〒107-6006
東京都港区赤坂1-12-32
アーク森ビル7階
+81 (0)3 3582 4684
IBSC公式ページ
日本へ投資する外国企業向けの公的支援。
日欧産業協力センター〒108-0072
東京都港区白金1-27-6
白金高輪ステーションビル4階
+81 (0)3 6408 0281
公式アクセス
EU・日本の産業、通商、投資協力。

確認できた今後のAHK Japanイベント

公式カレンダーを2026年7月18日に確認した。定員、会員条件、言語、締切、会場は変更される場合がある。支払い・移動前に直接ページを確認してほしい。Summer Cocktailは確認時点で受付終了。防衛フォーラムの日付は9月29~30日で一致するが、日本語のイベント一覧と英語の詳細ページが異なる所在地を掲載している。黙って補正せず、下表で注意喚起した。

日時(JST)イベント・直接ページ公表された参加条件
7月23日(木)
16:00~18:00
Young Leaders Forum 2026 Vol. 3DHL Global Forwarding K.K.。AHK会員限定、無料。Karsten Michaelisが日本事業、物流、リーダーシップを語る。
7月29日(水)
19:00~21:30
Summer Cocktail 2026Hilton Tokyo Beer Garden Terrace 7階。AHK会員1万500円。19商工会議所、約300人。受付終了。
8月19日(水)、25日(火)
14:00~16:00
BMW・三菱ふそう メカトロニクス体験ツアー江東BMW、南関東ふそう市川支店。無料。主に高校生、保護者、教員。各回先着8~10人。
8月25日(火)
16:00~19:00
Driving Operational Excellence Through Digital & AIAHK Japan。英語、会員限定・無料。締切8月21日。4flowとSchaefflerが供給網AIを扱う。
9月3日(木)
16:15~18:00
Finance Working Group 2026 Vol. 2AHK Japan。英語、会員限定・無料。締切9月1日。日本のスタートアップ評価とベンチャー投資。
9月29~30日第14回 日独防衛・安全保障技術フォーラムベルサール九段、千代田区。無料だが日独の関係業界・組織に限定。日本語一覧は九段北1-8-10、英語詳細は別の所在地を表示するため、正確な住所を要確認。

次の試験――信頼性を更新力へ変えられるか

見通しは強い。日本売上の増加を2026年に68%、2027年に72%が予想。利益増は今年55%、来年63%。投資拡大は2026年35%、2027年39%。2027~29年に500万~5,000万ユーロを日本へ投資する計画は該当回答の26%で、前年調査から12ポイント増えた。5,000万ユーロ超も7%ある。

しかし安定は慢心になり得る。信頼関係が閉じた調達へ硬化し、人材が見つからず、デジタル基盤が分断され、円安が低投資の恒久的な言い訳になれば価値は下がる。ドイツ企業も、シンガポールから日本をショールームとして管理するだけでは足りない。成功例は、技術、サービス、調達、経営を現地化し、日本顧客へ答えながら世界本社へ接続する。

AHK Japanの有用な仕事は「完璧な物語」を売ることではない。緊張を見えるままにすることだ。定着企業の高い割合が利益を上げる一方、時間、言語、保守を過小評価する新規参入者には厳しい。ロボット、素材、産業の持続可能性で先行しながら、ソフトウェア普及で遅れる。政治・社会は安定しながら、エネルギーと海運の衝撃にさらされる。消すべき矛盾ではない。64年を経た会議所に、なお仕事がある理由である。

出典・参考資料

編集注:2026年7月18日までに公開された会議所、調査、政府、関係機関の一次資料で確認した。91%は、対象475社のうち本調査へ回答した175社、そのなかで収益性設問へ回答した124社に適用され、在日ドイツ企業すべてを意味しない。イベントは変更され得る。防衛フォーラムの公式ページ間に会場住所の不一致があり、本文で開示した。指定された為替表示「1 US Dollar = 162.39 Japanese Yen」をそのまま掲載し、UTCの更新時刻は日本時間へ換算して2026年7月19日4:07 JSTとした。ヒーロー画像は現代のデジタル編集イラストで、歴史資料や報道写真ではない。