| 試合 | 日付 | ソフトバンク | DeNA | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 10/24 | 3 | 1 | 延長11回 |
| 2 | 10/25 | 4 | 3 | 延長10回 |
| 3 | 10/27 | 2 | 1 | 延長10回 |
| 4 | 10/28 | 4 | 2 | 9回終了 |
4勝0敗が隠した接戦
数字だけなら圧勝だ。福岡ソフトバンクホークスは横浜DeNAベイスターズを4戦全勝で退け、10月28日に2年連続13度目の日本一を決めた。だが、最初の3試合はすべて延長戦。4試合の合計得点もソフトバンク13、DeNA7で、いずれも試合終盤まで勝敗が定まらなかった。勝敗の「4―0」と内容の激しさの間にこそ、今シリーズを読み解く鍵がある。日本野球機構(NPB)の公式スコアと表彰記録を基に、その分岐点を追う。
横浜で始まった、11回の粘り勝ち
10月24日の第1戦は横浜スタジアム。ソフトバンクは7回に1点を先取したものの、8回に牧秀悟のソロ本塁打で同点に追いつかれた。そのまま延長11回に入り、ソフトバンクが2点を奪って3―1で勝利。勝ち投手はロベルト・オスナ、杉山一樹がセーブを記録した。第1戦を取ることの重要性は一般論として語られるが、この試合で注目したいのは、同点にされても崩れず延長の得点機をものにしたことだ。DeNAには投手陣が作った接戦を勝ち切れなかった悔しさが残った。
第2戦、筒香の3ランを山川と川村が返す
翌25日も横浜。正木智也の本塁打などでソフトバンクは2点を先行した。しかし8回裏、筒香嘉智の3点本塁打でDeNAが逆転する。通常なら勝負の流れを変える大きな一打だ。それでも9回表、山川穂高がソロ本塁打で同点とし、10回表には川村友斗のソロ本塁打で再逆転。4―3で連勝した。打者ごとの仕事は異なる。正木の先制弾、山川の土壇場の同点弾、川村の決勝弾が別々の局面で発揮されたことが、単純な「強力打線」という説明以上に重要である。
史上初の「開幕3試合連続延長」
舞台が福岡へ移った27日の第3戦も延長10回に入った。NPBによれば日本シリーズの開幕から3試合連続で延長にもつれたのは史上初。DeNAが5回に1点を取り、ソフトバンクは9回裏まで無得点だった。しかし9回に追いつき、10回裏、正木のソロ本塁打で2―1のサヨナラ勝ち。正木は第2戦に続いて本塁打を放ち、接戦の結果を直接変えた。杉山はこの試合の勝利投手となる。DeNAから見ると、3試合とも僅差の試合を作りながら3連敗したことになる。
第4戦、初回2失点からの逆転
28日、みずほPayPayドーム福岡。DeNAは初回、佐野恵太の2ランで先行した。ソフトバンクは4回裏に山本祐大の走者一掃の三塁打で3点を奪い、逆転。6回には柳田悠岐の中前適時打で1点を追加し、4―2とした。公式記録ではソフトバンクは5安打、DeNAは4安打。大量安打による一方的な展開ではない。山本はこの試合で3打点、柳田が1打点。少ない走者を長打と適時打で得点へ結びつけた点が決定的だった。
「9回の杉山」が持った意味
第4戦で杉山一樹は9回を無失点で締め、今シリーズ3セーブ目を記録した。第1戦、第2戦でも最終局面を任され、第3戦は勝ち投手になっている。先発投手だけでは最後まで守り切れない短期決戦で、終盤を託せる投手の存在は大きい。ただし「必ず勝てる守護神」という表現は結果を見てからの物語にすぎない。NPBの記録が示すのは、実際に僅差の場面で起用され、失点を抑え、勝利を確定させたということだ。
勝利投手の名前にも表れる層の厚さ
シリーズの勝利投手は第1戦がオスナ、第2戦がダーウィンゾン・ヘルナンデス、第3戦が杉山、第4戦が再びヘルナンデス。つまり4勝のうち3勝は救援投手に記録されている。短期決戦の勝利投手は、必ずしも最も貢献した投手と同じではない。しかし延長が続いたシリーズにおいて、救援陣が勝敗を分ける局面で働いたことは疑いない。第4戦は前田悠伍が4回3分の2を投げ、鈴木豪太、ヘルナンデス、オスナ、松本裕樹、杉山がつないだ。
MVP正木――一打の価値をどう測るか
最高殊勲選手賞(MVP)は正木智也。第2戦3回の先制ソロ、第3戦10回のサヨナラソロは、試合の文脈を抜きにした単なる本塁打数以上の意味を持つ。第4戦でも2安打を記録した。一方、杉山、山本祐大、庄子雄大が優秀選手賞、DeNAの東克樹が敢闘選手賞を受賞。球団を支えた役割は一人に集約できない。MVPは象徴であって、シリーズを一人で勝たせたという証明ではない。
DeNAが4敗から持ち帰れるもの
敗者にも決定的な場面はあった。牧の第1戦同点弾、筒香の第2戦逆転3ラン、第3戦の終盤までのリード、佐野の第4戦先制2ラン。DeNAは得点機を作り、勝ち筋も見せた。だが、追いつかれた後の延長や、先制後の中盤に主導権を失った。公式記録から言えるのは、毎試合敗れた一方で、少なくとも3試合は延長まで勝負を持ち込んだことだ。「力の差が歴然だった」とだけ断定すれば、試合内容を見誤る。
南海からダイエー、ソフトバンクへ
福岡ソフトバンクホークスの球団史は、1938年創設の南海軍にさかのぼる。大阪時代の南海ホークス、1989年から福岡を拠点とした福岡ダイエーホークスを経て、2005年に現在の球団名となった。今回の「13度目」には前身球団の日本一も含まれる。九州の本拠地と企業経営の変遷は、プロ野球が地域と結びついてきた歴史でもある。2026年の2連覇を一回の優勝パレードに閉じず、球団の長い系譜の中に置いてみる。
2年前の対戦から考える短期決戦
2024年の日本シリーズでも両球団は対戦し、そのときは横浜DeNAが4勝2敗で日本一を獲得した。同じ組み合わせでも短期決戦の結末は変わる。今回はソフトバンクが4連勝したが、2024年の結果が2026年の逆転劇を自動的に説明するわけではない。重要なのは、その年の選手構成、投手起用と局面ごとの実行だ。長期のリーグ戦では平均値がものを言う一方、短期決戦では1本の長打、1回の救援、1つの走塁判断が極端に大きくなる。
4試合の数字が示す、次の課題
日本一の歓喜の中でも分析は続く。ソフトバンクは接戦をすべて勝ち切った一方、延長3試合を必要とした。DeNAは4戦全敗でも、序盤と終盤に相手を追い詰めた。シリーズの合計得点は13対7で、最初の3試合の得点差は2、1、1。決勝点に至る投手交代、配球、打席の選択を詳細に検証することが次の研究課題となる。終わってみれば4連勝。しかし、その中身は4つの違う試合だった。
出典・取材上の注記
日本野球機構の試合記録と表彰記録を用いた文書取材。選手・監督への独自取材は行っていない。戦術の評価は試合結果からの分析であり、非公表の意図の断定ではない。
