地域で新しい催しを一度開くことと、その後も人が動き続ける仕組みをつくることは違う。新潟市が募集する二人の「共創コミュニティマネージャー」に求めるのは、完成済みの企画を運営することではない。地域を歩き、話を聞き、工場や農家、住民、団体の間に接点をつくり、試行を重ねながら事業を組み立てる仕事である。
正式名称は「新潟市地域おこし協力隊(共創コミュニティマネージャー)」。募集は東区と西区で各1人、計2人だ。東区は「ものづくり」、西区は「自然・文化」を活動分野とし、一人が両区を横断して全テーマを担う募集ではない。
市は8月28日に募集を始め、事前エントリーと応募書類の提出を11月7日午後11時59分まで受け付ける。着任は2027年1月ごろを想定するが、開始時期は相談できる。書類審査とオンライン面接を経て、市長が地域おこし協力隊員として委嘱する。
東区は、工場を地域に開く動きを次へ
東区は、新潟市8区の中で製造業の事業所数と従業者数が最も多いと市が説明する地域だ。2023年には、下山地域の協同組合新潟木工センターを中心に「新潟市東区オープンファクトリー」が始まった。工場や仕事場を一般に開き、見学、体験、販売などを通じて地域の産業を住民や来訪者に見せる取り組みである。
運営受託者のボーダレス・ジャパンによると、2026年のオープンファクトリーには約20社が参加する。地域では、印刷会社が工場を公開したり、鉄工所が隣接地に食堂を設けたり、仏壇店が木工ブランドを立ち上げたりする動きも出ている。
東区の隊員には、企業と住民への聞き取り、工場見学やワークショップの企画、企業と住民の定期的な対話、子どもと地域の仕事を結ぶ体験、空き倉庫を交流拠点にする可能性の検討などが例示されている。ただし、いずれも着任後の対話で形を変え得る案であり、特定イベントの専任事務局を募集しているわけではない。
西区は、海、農業、発酵を点から線へ
西区の分野は「自然・文化」。海岸部、農業、食、醸造・発酵文化を、個別の資源として紹介するだけでなく、地域内の人と活動を結び直すことを狙う。農家、飲食店、地域団体、企業などを訪ね、既に動いている人の課題と得意分野を把握するところから始まる。
市が示す活動例には、農家と飲食店を結ぶ商品開発、海と農に触れる体験プログラム、発酵・醸造文化を伝える催し、地域の人が集まる共用空間づくりがある。規格外の農産物を生かす活動、海岸清掃、子ども食堂、フードシェアなど、既存の動き同士を接続する可能性も挙げられている。
ここでも、隊員本人が農業経営や食品製造を一から担うという意味ではない。役割の中心は、地域の実践者を見つけ、関係をつくり、小規模な企画を試し、続ける主体と収支の形を整えることにある。
| 活動地域 | 主題 | 想定される接点 | 活動例 |
|---|---|---|---|
| 東区・1人 | ものづくり | 製造業者、オープンファクトリー、住民、子ども、地域団体 | 工場見学・体験、企業と住民の対話、産業を軸にした交流拠点 |
| 西区・1人 | 自然・文化 | 農家、飲食店、醸造関係者、海岸部の団体、福祉・食支援活動 | 農と食の商品、自然体験、発酵文化の発信、共用空間 |
「月100時間」の外側も含め、契約条件を読む
最初の契約期間は、2027年1月ごろの委嘱日から同年3月31日まで。年度ごとに更新されれば、最長で2029年12月31日まで活動できる。2026年度の委託料は月額20万9,000円(税込み)で、活動時間の目安は月100時間。2027年度以降は、活動計画と市との協議により、月約125時間、月額26万4,000円(税込み)を上限に決める。
活動経費は年度当たり144万円が上限で、住居費は月5万円まで。車両、旅費、道具、研修、資格取得、催しなども活動との関係を確認して対象になり得る。一方、光熱水費、食費、国民健康保険、国民年金は本人負担で、土地、建物、自動車の購入や個人資産の取得には使えない。
本業に支障がなく、市へ届け出ることを条件に副業もできる。自由度がある半面、会社員のような労働時間管理、社会保険、休暇、退職金を前提に比較してはいけない。応募者は、委託契約としての収入、税務、保険、移住費、活動外の生活時間を一体で見積もる必要がある。
応募には転居と住民票の移動が必要
地域おこし協力隊の制度要件があるため、誰でも現住所のまま応募できるわけではない。原則として、三大都市圏の都市地域、または政令指定都市のうち条件不利地域ではない区域に住み、委嘱後に新潟市へ生活拠点と住民票を移せる人が対象となる。一定の任期を終えた元隊員、JETプログラム経験者、海外在住者などには別の要件がある。
年齢と性別の制限はない。普通自動車運転免許があり、日常的に運転できること、Word、Excel、PowerPoint、電子メール、SNSなどの基本操作ができることも条件だ。詳細な地域要件や例外は個別に判断が必要なため、応募前に市へ確認するのが安全である。
応募希望者は募集サイトで事前エントリーを行う。その後に届く応募書類を作成して電子メールで提出し、初めて応募が完了する。選考は書類審査、オンライン面接、候補者決定の順。市は9月10日と10月1日の午後7時からオンライン説明会を開き、録画視聴も受け付ける。
10月16〜18日には2泊3日の現地体験ツアーを予定し、定員は先着10人。新潟までの交通費、個人の食費、宿泊費の一部などは参加者負担となる。ツアー参加は地域を知る助けになるが、募集要項は選考上の優遇を約束していない。
- 希望するのは東区か西区か。二つは別の募集枠で、活動分野も異なる。
- 現在地が地域おこし協力隊の転出地要件を満たすか。
- 2027年1月ごろに新潟市へ転居し、住民票を移せるか。
- 委託料、自己負担の保険・年金・生活費で家計が成立するか。
- 事前エントリー後、11月7日午後11時59分までに応募書類を提出したか。
三年で「自分がいなくても続く」形をつくれるか
新潟市は前年度、中央区、江南区、秋葉区で計3人の共創コミュニティマネージャーを委嘱した。今回も募集と活動支援を株式会社ボーダレス・ジャパンに委託し、地域理解、企画の試行・実装、任期後に残る運営体制づくりを段階的に支えるとしている。
外部人材が地域に入る制度には、地元の課題を短期間で理解できるか、既存活動と競合しないか、誰が意思決定するかという難しさがある。事業化を急げば、関係づくりが浅くなる。対話だけを続ければ、成果が見えない。小さく試し、費用と担い手を確かめ、うまくいかない案をやめる裁量も必要になる。
募集時点では、個別プロジェクトの予算、数値目標、実施主体、成果物は決まっていない。2027年度以降の委託料と活動時間も協議事項で、正確な着任日は候補者との調整後に定まる。応募者が選ぶのは既成の仕事ではなく、地域と一緒に仕事そのものを設計する立場だ。
