警告は一枚の紙だ。執着は移動する。
この不均衡が、日本の新しいストーカー総合対策の核心にある。この四半世紀、日本は技術や悲劇が法の隙間を露呈するたび、規制を広げてきた。連続メール、SNSメッセージ、ひそかに取り付けられたGPS、安価な紛失防止タグ、そして避難先の住所を漏らしかねない第三者。改正のたびに対象行為は増え、警察権限も拡大した。それでも、禁止命令を受けた人物が刃物を持って街を横切ることはできた。
7月28日、ストーカー総合対策関係省庁会議は「ストーカー総合対策」を4度目の版へ改訂した。同日、犯罪対策閣僚会議は「詐欺及びストーカー被害拡大防止のための緊急対策」を決定した。直接の背景には3月、池袋の商業施設で起きた殺人事件がある。政府文書によると、男はストーカー規制法違反などで既に刑事罰を受け、禁止命令等も受けていたにもかかわらず、被害女性を殺害した。
今回の改訂が目指すのは、対応を一回限りで終わらせないことだ。警察は全国共通システムで事案管理と情報共有を行う。禁止命令等を受けた加害者全員へ連絡し、近況と被害者への執着の程度を把握する。一定の危険な加害者が被害者へ近づいた際に通知する電子監視、さらに治療・カウンセリングを義務付ける制度を、政府横断で検討する。
最後の二つが大きく報じられた。しかし、最も誤解されやすい点でもある。警察が今すぐストーカー加害者にGPS端末を装着できるようになったわけではない。カウンセリング受診も義務化されていない。政府は、外国制度、技術面と運用面、人権保障、医療機関など受け皿の能力を含めて検討するよう指示した。7月28日に変わったのは政策の方向であり、GPS命令の法的地位ではない。
GPSだけではない六つの柱
9ページの総合対策は、対応を六つに整理する。第一は相談と連携の強化だ。警察本部と警察署を明確な司令塔の下で一体運用し、担当者と専門研修を充実させる。全国警察共通システムを運用し、被害者や加害者が都道府県境を越えたときに情報が分断されないようにする。女性相談支援センター、DV相談支援センター、学校、検察、法テラス、自治体窓口、精神保健福祉センターは、被害者を窓口から窓口へ送り回すのではなく、つながって支えることが求められる。
第二は情報保護だ。逃れた人の居場所は、公的記録から漏れることがある。住民票、選挙人名簿、車両登録、年金や保険、登記、学校への照会、郵便転居届――普通の行政情報が住所への道になる。対策は各省庁と自治体に厳格な運用を求める。警察は、ストーカー行為等をするおそれのある者へ被害者情報を提供するおそれがある個人や組織に、その危険を通知し、提供しないよう求められる。
第三は避難と生活再建だ。夜間・休日を含む一時保護、警察による宿泊費補助、女性相談支援施設、中長期の住宅・就業支援、公営住宅への配慮、法律相談を含む。安全は一晩別の場所に泊まれば完成するものではない。被害者は住居、仕事、学校、電話番号、日々の行動を変え、加害者が生んだ費用まで負担することがある。
残る柱は、調査研究と教育、加害者対策、財政・人材基盤だ。学校では良好な人間関係、個人情報、インターネットの危険を教える。警察と医療・心理職は執着への対応を改善する。刑務所や少年院ではストーカー行為に対応するプログラムを整備する。国と自治体は人材育成、支援体制、民間団体への支援に必要な措置を講じる。
| 柱 | 2026年改訂が進めるもの |
|---|---|
| 1 · 早期接続 | 警察の一体的指揮、全国共通システム、専門人材、相談機関の連携 |
| 2 · 情報保護 | 住所・記録の厳格管理、無断追跡と危険な第三者提供への対処 |
| 3 · 避難と回復 | 緊急宿泊、シェルター、中長期住宅、就業、法的支援 |
| 4 · 研究と予防 | GPS監視の検討、若年層教育、広報、実態把握 |
| 5 · 加害者管理 | 禁止命令対象者全員への連絡、受診勧奨、治療義務化の検討 |
| 6 · 実施基盤 | 人材、支援組織、民間連携、財政措置 |
緊急性を示す数字
2025年に警察が受理したストーカー事案の相談等は2万2,881件。前年から3,314件、16.9%増え、2010年代後半の最高水準に近づいた。直前数年の1万9,000~2万件前後を大きく上回る。相談は犯罪成立が確認された件数と同じではなく、集計方法や相談しやすさも数字を動かす。それでもこの件数は、警察が恐怖、執着、急展開の可能性を評価しなければならない規模を示す。
被害者が女性の事案は1万9,880件、86.9%。密接関係者を除く被害者では20代が35.6%、30代が20.6%だった。元を含む交際相手が8,910件、39%で最大だが、面識のない者も2,021件。職場関係、知人、配偶者、客と従業員、ファンなども含まれる。ストーカー被害には強い性差があるが、一つの関係や世代に限られない。
行為別では、つきまとい・待ち伏せ等が1万2,181件、面会・交際要求が7,548件、無言電話や連続電話・メール等が4,911件、乱暴な言動が4,018件。複数の行為を含む事案は重複計上される。位置情報追跡は件数こそ小さいが、技術的な意味が大きい。GPS機器等による無承諾の位置情報取得は118件、機器等の取り付け・置き去りは393件だった。
行政措置と検挙も増えた。警告1,577件、禁止命令等3,037件で、うち緊急禁止命令等は1,840件。ストーカー規制法違反の検挙は1,546件、関連する刑法犯・他の特別法犯は2,171件で、いずれも法施行後最多だった。後者には殺人既遂2件、殺人未遂14件、傷害153件、住居侵入437件が含まれる。
しかし、数字だけではどの事案が命に関わるかを特定できない。多くは助言、警告、検挙で止まる。一部は急速に悪化する。安心し過ぎれば危険だが、すべてを同じ緊急度として扱えば、最も危険な事案へ向ける専門的注意力が枯渇する。全国共通システムの価値は、入力件数ではなく、構造化された危険評価、再検討、行動を改善できるかで決まる。
桶川――法律を生んだ殺人事件
現代日本のストーカー法制は、一つの失敗から始まる。1999年、埼玉県の桶川駅近くで21歳の女子大学生が、元交際相手とその関係者による長期の嫌がらせの末に殺害された。本人と家族は警察へ相談していた。その後の調査は、告訴の不適切な処理と、その失敗を覆い隠そうとする警察内部の行為を明らかにした。
事件は、ストーカーを「男女間の私的なもつれ」として矮小化する見方から、治安と組織責任の問題へ変えた。2000年5月、議員立法で「ストーカー行為等の規制等に関する法律」が成立し、11月24日に施行された。警告と禁止命令の制度をつくり、恋愛感情その他の好意、またはそれが満たされなかったことへの怨恨を充足する目的で反復される行為を犯罪化した。
この目的要件は今も重要だ。日常語で「ストーカー」と呼ばれる反復的嫌がらせのすべてが同法に入るわけではない。商取引、近隣紛争、その他の恨みが動機なら、暴行、脅迫、住居侵入、業務妨害、迷惑防止条例など別の法令で対応する場合がある。法的な分類は、使える予防権限を左右する。
最初の法律は画期的だったが、固定電話、手紙、家の外での待ち伏せを中心とする時代の文言だった。その後の四半世紀は、法律の動詞と侵入手段の変化との競争になった。
事件と技術が書き換えた法律
1999年:桶川事件がストーカーの危険と警察の重大な失敗を露呈。
2000年:日本初の全国的ストーカー規制法が成立・施行。
2013年:重大事件で隙間が露呈し、連続メールを規制、管轄を拡大。
2015年:関係省庁による最初の「ストーカー総合対策」を策定。
2016~17年:SNSメッセージとうろつきを対象化、非親告罪化、命令と罰則を強化。
2021~22年:GPSによる位置情報無承諾取得等を規制し、総合対策を再改訂。
2025~26年:紛失防止タグ、職権警告、第三者の情報提供防止を追加。3月10日に全面施行。
2026年7月28日:政府が緊急対策を決定し、総合対策を改訂。
2013年改正は、拒まれたにもかかわらず連続して電子メールを送る行為を追加し、被害者の住所地以外の警察や公安委員会も対応しやすくした。電話や物理的な接近を前提とした条文の外側で、電子的な追跡と脅しが続いた事件が議論を動かした。しかし通信手段はまた変わり、プラットフォーム内のメッセージがメールと同じ恐怖を与えるようになった。
2016年改正はSNSなどの連続送信と、住居・勤務先・学校付近のうろつきを追加した。被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪にし、罰則を引き上げ、情報提供と被害者援助を拡充し、事前警告を待たずに禁止命令等を出せる仕組みを整えた。若い芸能活動者がオンラインのメッセージについて警察へ相談した後、小金井で重傷を負った事件が改革の背景にあった。
位置情報技術は別の隙間をつくった。加害者が車にGPSを隠し、遠隔地から移動を取得する。従来法の「見張り」は住居などの付近で行う行為を前提とし、別の場所から得る位置情報に必ずしも届かなかった。2021年改正はGPS等による位置情報無承諾取得と機器取り付け等を明文で規制し、2022年に総合対策も改訂された。
そのころには製品側が先へ進んでいた。小型の紛失防止タグは安価で長く動き、GPS受信機ではなく周囲のスマートフォン網を利用するものもある。2025年改正はその悪用を明確に規制した。職権警告を新設し、職場と学校を被害者援助の主体に加え、命令を出せる公安委員会の範囲を広げた。2026年3月からは、警察が情報提供者となり得る第三者へ危険性を通知し、被害者情報を渡さないよう求められる。
GPSが持つ二つの意味
2026年対策では、GPSが両側に現れる。国は、位置情報技術を隠れて使う加害者への取締りを強める。同時に、一定の加害者へ位置情報技術を公開・強制的に使い、被害者を守ることを検討する。目的も法的根拠も異なるが、中心にある問いは同じだ。誰が誰の位置を、どの命令で、どれほどの期間知ることができ、どんな歯止めが必要なのか。
構想される制度は、電子監視された加害者が被害者へ接近したことを検知し、被害者などへ通知するものだ。総合対策は、対象となる危険度、命令主体、端末、接近禁止範囲、監視期間、取り外しへの対応、位置履歴の保存、異議申立て手続をまだ定めていない。これらは周辺的な実装問題ではない。制度が合法で、正確で、役に立つかを決める核心だ。
接近通知は逃げる時間をつくり得る。一方で、「危険が近い」という恐ろしい実務負担を被害者のスマートフォンへ移す危険もある。駅、集合住宅、職場では境界設定が複雑になる。電池は切れ、信号はずれ、機器は外され得る。したがって監視は、訓練された担当者、迅速な警察対応、被害者主体の安全計画を含む手順の中に置かなければならない。端末を保護の代用品にしてはならない。
政府は加害者側の権利にも触れている。常時の位置監視は重大な権利制約であり、明確な法律上の根拠、必要性と比例性、利用・保存の制限、漏えい防止、監督、見直し手続が必要になる。危険性が具体的に認定された事案へ裁判所の監督の下で期限付き措置を行う制度と、行政による無期限の追跡は法的に同じではない。
「やめろ」から「変える」へ
禁止命令は、してはならない行為を伝える。治療やカウンセリングは、なぜ執着、被害意識、支配意識、衝動性などが繰り返されるのかを問い、再発危険を下げようとする。改訂対策は、禁止命令等を受けた全加害者へ連絡し、全員等に受診を働き掛け、地域精神科医や公認心理師と連携し、受診率を上げる方法を研究するよう求める。
統計はその隔たりを映す。2025年の禁止命令等は3,037件。警察が加害者へ連絡した実施件数は1,698件で、カウンセリング・治療につながった人数は233人だった。これらは同じ対象集団を一対一で追った数字ではなく、単純な受診率として割ることはできない。それでも、政府が自主的な紹介だけでは足りないと考える背景は分かる。
義務化には難問がある。ストーカー行為は一つの診断名ではなく、治療可能な精神疾患がなくても危険な人物はいる。プログラムは、精神医療だけで支配的行動や計画的暴力を解決できると仮定せず、危険と必要性に合わせなければならない。専門家の育成と受け入れ能力、安全なリスク情報共有も要る。出席は参加と同じではなく、修了は危険低下と同じではない。
だからこそ、総合対策の慎重な表現は妥当だ。外国制度を参考に義務付けを研究し、医療機関など「受け皿」の確保も同時に検討する。刑事施設ではストーカー対応の特別改善指導や専門的処遇プログラムを早期整備する。中身のない受講命令では、安全ではなく紙の上の遵守しか生まない。
被害者の周囲にある見えない境界線
総合対策で最も深い意味を持つのは、派手ではない情報保護かもしれない。転居した被害者も、別々の機関が住所を普通の行政情報として扱えば危険にさらされる。計画は住民基本台帳、戸籍、選挙人名簿、車両登録、登記、成年後見、年金、保険、税、児童手当、郵便転居届など、利用方法によって居所が伝わり得る制度を具体的に挙げる。
民間にも及ぶ。紛失防止タグ等のメーカーには悪用防止策を働き掛ける。探偵業者には依頼目的の厳格確認を求める。職場と学校は法定の援助努力義務の主体となり、勤務場所、日程、教室、子どもの所在を加害者へ知らせない配慮が求められる。
これは責任モデルの重要な変化だ。加害者は、手続が最も弱い組織を探せる。保護の強さは、受付担当、市役所窓口、学校事務、勤怠システム、アプリ通知、データベース照会という末端で決まる。総合対策は、秘密保持を礼儀ではなく安全装置として扱う。
成功を何で測るのか
広い政策は、会議を開き、システムを開始し、パンフレットを配れば成功したように見える。実質的な試験はもっと厳しい。犯罪か明らかでない早期段階でも、最初の相談で理解ある対応を受けられるか。危険事案を都道府県を越えて遅滞なく再評価できるか。禁止命令対象者へ何人、どの頻度で連絡し、危険上昇時に何をするか。治療プログラムは反復行為を減らしたか。住所漏えいとタグ悪用を防げたか。電子監視の通知から保護まで何分かかったか。
指標は誤った誘因をつくらないよう、文脈とともに公表すべきだ。相談増加は被害増加にも、警察への信頼向上にもなり得る。禁止命令増加は危険の増加か、介入改善かもしれない。情報漏えいが少ないのは成功か、発見不足かもしれない。反復被害、重大化、保護までの時間、プログラム修了、被害者の経験、独立検証まで見なければならない。
| 措置 | 2026年8月5日時点 | 残る核心的な問い |
|---|---|---|
| 全国警察共通システム | 全国運用を推進 | 共有情報が迅速な危険判断につながるか |
| 禁止命令対象者全員への連絡 | 総合対策上の方針 | 頻度、担当、危険上昇時の手順は何か |
| タグ悪用規制・職権警告 | 法施行済み | 新しい端末とサービスへ実務が追いつけるか |
| 一定加害者へのGPS監視 | 調査・制度設計段階 | 対象、命令主体、通知後の対応をどう定めるか |
| 治療・カウンセリング義務 | 検討段階 | 法的根拠、内容、受け皿、危険低下の証拠は何か |
悲劇と悲劇の間で書かれる戦略
日本のストーカー対策は、平穏な時期に進化したことが少ない。桶川事件が最初の法律を生んだ。その後の殺人・傷害事件が、メール、SNS、警察対応、禁止命令の隙間を露呈した。裁判と消費者技術は、位置情報規定の限界を示した。2026年3月の殺人は、最も痛ましい限界を示した。制度が人物を把握し、刑罰を科し、禁止しても、危険が消えるとは限らない。
7月改訂は、すべての行為を予測できるとは約束しない。より現実的なことを認めた。保護には連鎖が必要だ。早期に話を聞く人、正確な危険記録、守られた住所、安全な避難先、実効的な命令、継続的な確認、執着への介入、そして一つでも鎖が切れたときの説明責任である。
その意欲は閣僚会議ではなく、日常の瞬間に試される。生徒が教師へメッセージ履歴を見せたとき、市役所職員が住所照会を受けたとき、職場の外で待つ人物を同僚が見たとき、警察官が他県から事件記録を引き継いだとき、禁止命令を受けた人物がカウンセリングを欠席したとき、監視対象者が境界を越えたと端末が知らせたときだ。
25年間、日本はストーカーの手段に名前を付ける力を高めてきた。2026年の総合対策が問うのは、さらに難しいことだ。暴力へ向かう動きを、その到着前に捉えられるか。
取材ノート・主要資料
本記事は、既に施行された措置と今後の検討事項を区別している。警察相談等件数は犯罪成立件数と同じではなく、一つの事案に複数の行為形態が計上される場合がある。歴史的事件は法改正の経緯を説明するために必要な範囲で記述した。暴力の責任は加害者にある。
