11メートルの大きな一歩

7月11日、JAXA能代ロケット実験場でRV-Xはエンジンを点火し、垂直に約11メートル上昇した。機体は直立姿勢を保ちながら空中で約16メートル横へ移動し、4本の衝撃吸収脚で着地した。飛行時間は1分に満たなかった。

高度だけを見れば小さな試験である。RV-Xは宇宙へ到達しておらず、軌道級ブースターが経験する極超音速再突入も再現していない。ペイロードも運んでいない。今回切り出したのは、地面に近い低速域でロケットを正確に制御するという、再使用飛行の最後で最も容赦のない部分だ。

JAXAの伊藤隆プロジェクトマネージャーは、機体が計画通り飛行したと説明した。表現は正確であるべきだ。日本が完成した再使用ロケットを手にしたのではない。「小型実験機による初の低高度離着陸飛行に成功した」のである。

約11m今回の最高高度。
約16m着陸前の水平移動距離。
約7.3mAPが報じた機体高。
165回飛行までに報じられたエンジン燃焼試験。

ホップ試験は何を測ったのか

垂直離着陸ロケットは常に四つの問いへ答える必要がある。現在位置はどこか。速度はいくつか。どちらを向いているか。今この瞬間、どれだけの推力が必要か。センサーが運動を測り、誘導系が飛行経路を決め、航法系が状態を推定し、制御系がエンジンと機体へ指令を出す。これがGNC、すなわち誘導・航法・制御である。

着陸は炎の柱の上で行う倒立振子のようなものだ。推力が大きすぎれば上昇し、小さすぎれば落下する。角度や制御の遅れは急速に拡大する。燃料を使い終えた機体は軽いため、エンジンが十分に推力を絞れなければ穏やかに降下できない。

さらに液体酸素と液体水素は、上昇、空中停止、傾斜によってタンク内部で揺れる。ポンプには気体でなく液体を供給し続けなければならず、点火と停止を繰り返し、極低温の配管やシールを健全に保つ必要がある。再使用とは「ロケットに脚を付けること」ではない。推進、構造、ソフトウェア、地上運用を一体化する仕事だ。

一度着陸できるだけでは、再使用ロケットに経済価値は生まれない。安全に点検し、短時間で再準備し、新造より安く何度も飛ばせて初めて意味がある。

日本の研究はFalcon 9より前に始まった

RV-Xには系譜がある。宇宙科学研究所は1998年から2003年まで、能代でRVT(Reusable Vehicle Testing)計画を実施した。複数世代の実験機が垂直飛行、繰り返し運用、軽量構造、短いターンアラウンドを研究した。軌道ロケットには発展しなかったが、再使用液体ロケットの知識を日本の研究現場へ残した。

世界では1990年代、NASAとマクドネル・ダグラスのDC-Xが垂直着陸を実証した。スペースシャトルはオービターと固体ブースターを再使用したが、複雑な整備によって「再使用すれば自動的に安い」という考えが誤りであることも教えた。SpaceXの革新は着陸そのものだけでなく、Falcon 9第1段を高頻度の実運用と事業モデルへ結びつけた点にある。

したがって日本が学ぶべきなのは着陸映像の模倣ではない。帰還用燃料と装置が減らす搭載能力、回収場所、点検時間、部品寿命、飛行頻度、顧客需要を一つの経済システムとして設計することだ。

液体水素を使う日本の難しさと強み

RV-Xの再使用エンジンは液体酸素と液体水素を燃焼する。水素は比推力が高く、推進剤を効率よく使える一方、極端な低温、低密度、漏れやすさという難題を持つ。大型で断熱されたタンクが必要になり、配管、シール、ターボポンプは反復する熱サイクルに耐えなければならない。

JAXAは2019年、4トン級のエキスパンダーブリードサイクル実験エンジンを100%から約40%まで段階的に絞ったと報告した。短い間隔で再燃焼させ、少人数運用も模擬した。2026年の飛行時点で、APは165回の燃焼試験を重ねたと報じた。この地味な数字こそ重要だ。再使用輸送の核心は、エンジンの劣化を理解し、多数回の運転を予測可能にすることだからである。

RV-XからCALLISTO、そしてH3の先へ

計画目的学ぶこと
RVT(1998〜2003)日本初期の再使用飛行研究反復垂直飛行、軽量化、運用。
RV-X低高度の着陸・推進・GNC実証2026年に初ホップ。将来はより高い飛行を目指す。
CALLISTO上昇、反転帰還、再着火、回収の実証JAXA・CNES・DLRの約13m級機。仏領ギアナで反復飛行。
将来の実用機H3後の競争力ある宇宙輸送軌道級性能、迅速な再使用、顧客、採算性が必要。

RV-Xは入口であり、目的地ではない。次の国際的段階が、フランス国立宇宙研究センターCNES、ドイツ航空宇宙センターDLR、JAXAによるCALLISTOである。約13メートルの機体は、日本製の液体水素・液体酸素エンジン、空力舵面、展開式着陸脚を備える。

CNESはCALLISTOを、帰還技術だけでなく、飛行後の回収、整備、再飛行、実際の費用を測る実験機と説明する。約20キロメートル級の飛行を想定し、仏領ギアナ宇宙センターで同一機を繰り返し飛ばす。RV-Xにはないエンジン停止、無推力飛行、空力制御、再着火、減速を加える。

なぜH3と競争力の話になるのか

H3はJAXAと三菱重工がH-IIAの後継として開発した日本の現在の基幹ロケットであり、使い捨て方式で信頼性、柔軟性、低コスト化を狙う。再使用研究が進んでもH3が直ちに不要になるわけではない。実験機が成熟する間にも、日本は政府衛星と商業衛星を確実に打ち上げなければならない。

しかし市場の基準は変わった。Falcon 9の高頻度運用は価格だけでなく、打ち上げ機会と日程への期待を変えた。衛星コンステレーションは多数の打ち上げを求め、各国政府は自国の宇宙アクセスを経済安全保障インフラと考える。JAXA宇宙戦略基金は2030年代前半に、基幹ロケットと民間ロケットを合わせ年間約30件の打ち上げ能力を目標に掲げる。

再使用の経済学

第1段の製造費を100とし、10回使えば1回10になる——実際はそう単純ではない。回収装置は重量と開発費を増やす。帰還燃料の分だけ衛星搭載量は減る。回収、輸送、点検、修理、再試験には人員と設備が必要だ。任務によっては性能を最大限使うため、回収を断念する方が合理的な場合もある。

本当に見るべきなのは、開発、製造、回収、整備の総費用を、成功した有償飛行回数で割った値である。高い飛行頻度なら固定費を分散できる。年数回しか飛ばなければ、高価なチームと施設が待機する。信頼性は保険料と顧客の信頼を左右する。

だからCALLISTOは飛行後運用と費用測定を目的に含める。日本のロケットが着陸できるかという問いには、RV-Xが最初の答えを出した。次は「着陸した機体が事業として価値を生むか」である。

次に何を見るべきか

JAXAは従来、RV-Xを高度約100メートルまで飛ばす構想を示してきた。高度を上げれば飛行時間が増え、風の変化が大きくなり、誘導、推進、着陸判断への要求が厳しくなる。まず今回のテレメトリー、エンジン挙動、航法精度、構造荷重、脚の応答を解析し、安全に飛行領域を広げる必要がある。

その先には、同一機体の反復飛行、短い整備時間、多数回使用を前提とした部品認証、軌道級システムへの統合がある。日本は回収場所、自動化の範囲、推進剤、民間ロケット企業との役割分担も決めなければならない。

11メートルの飛行は、これらの問題を解決してはいない。だが、机上の議論を飛行データへ変えた。それが優れた実験機の仕事である。

出典・参考資料