肌に貼る電子機器を考えるとき、目を引くのは薄いセンサーや柔らかな画面だ。だが、一つの装置として働かせるには、それぞれを電気的につながなければならない。袖を通し、手首を曲げ、汗をかく。そのたびに接続部が動きを妨げたり信号を途切れさせたりするなら、素子だけを薄くしても日常生活にはなじまない。

理化学研究所が9月19日に発表した研究は、この接続部に取り組むものだ。創発物性科学研究センターの李成薫(イ・ソンフン)研究員、染谷隆夫(そめや・たかお)チームディレクターらは、常温で熱や圧力を加えずに接合する異方性導電フィルム(ACF)を開発したと発表した。厚さは約300ナノメートル。銀ナノワイヤと伸縮性の高分子を組み合わせ、エタノールなどの揮発性液体を接合に利用する。研究成果は米科学誌『Science Advances』に掲載された。[1]

接続部から考える、身に着ける電子機器

理研の説明では、フィルムは厚み方向に電気を通し、面内方向では絶縁性を保つ。500%を超える引張ひずみでの導通、水蒸気透過率1,200g/m²/day、1,000回の繰り返し伸縮後の安定性を報告している。伸縮配線上の発光素子と、手首の皮膚上での配線接続も実証した。[1]

ここから読み取れる意義は、装置の部品と部品の間まで、柔らかさを設計の対象にしたことにある。たとえば、将来の貼付型センサーに硬い読み取り回路を組み合わせる場合を考えよう。両者の間には、信号を渡す場所が必要になる。装置全体の使いやすさを評価するなら、その場所を含めて曲げ、引っ張り、装着し直す必要がある。これは今回の研究を用途に結び付けて考える際の視点であり、完成品の性能を示すものではない。

接続材の評価には二つの問いがある。必要な端子間に電流を流せるか。そして、隣の端子へ漏らさずに済むか。回路の途中を単に金属で覆えばよいわけではない。電気を通すことと、通さないことを、同じ小さな領域で両立させてこそ配線になる。

2013年、薄くして動かすという挑戦

この研究の背景には、体に沿う電子回路をめざした長い蓄積がある。科学技術振興機構(JST)と東京大学は2013年7月、厚さ2マイクロメートルの柔らかな有機トランジスター集積回路を発表し、タッチセンサーへの応用を示した。JSTの資料は、厚さの数値に電源・表示ユニットを含めないことも明記している。[2]

その注記は現在にも通じる。回路の薄さと、電源や通信機能を備えた製品全体の薄さは別の指標だ。膜の性能を完成した機器の性能として紹介すれば、研究が実際に解いた問題も見えにくくなる。薄膜化の歴史を読むには、何を測った数値なのかを確かめる必要がある。

同じ2013年7月には、折り曲げても動く厚さ2マイクロメートルの有機LEDの開発も発表された。柔らかな電子技術は、情報を検出する側だけでなく、光として示す側にも広がっていた。[3] センサー、表示、接続を一つの流れとして考えると、今回の接合研究が担う位置が分かりやすい。個々の優れた素子を、使える装置へ組み上げるための研究である。

2017年、薄さに加わった「蒸れにくさ」

次の課題は、肌を覆うことそのものだった。東京大学が2017年に紹介したナノメッシュの研究では、導電性の網目構造を皮膚に直接重ね、1週間の貼付試験や筋電図の計測を行った。薄さだけでなく、長く身に着けるときの皮膚への影響を調べた点に意味がある。[4]

理研の当時の解説も、薄い高分子の膜であっても湿気を閉じ込める問題が残ると説明している。[5] 「軽いから快適」「柔らかいから長時間使える」と、機械的な特性だけで結論を出すことはできない。体の表面は、平らで乾いた実験台とは違う。使用者が外したくなる理由を含めて設計を考える必要がある。

ただし、2017年の貼付試験は当時の材料と構造に関する結果だ。その結果を2026年の接続フィルムへ移し替え、長期間かぶれないと判断することはできない。歴史を参照する目的は、別の材料に安全性を引き継がせることではなく、研究がどの課題に向き合ってきたかを知ることにある。

数字は、試験の問いと一緒に読む

水蒸気透過率は、一定の面積と時間にどれだけの水蒸気が通るかを表す。これを、そのまま汗の処理能力や装着可能な日数へ換算することはできない。完成した装置では、センサー本体、粘着部分、保護材なども肌を覆う。接続材の値を評価する際には、装置全体でどれだけの範囲が覆われるかという別の問いも残る。

同様に、大きく伸ばす試験と、繰り返し動かす試験は異なる。最大の変形に耐えることは、毎日の小さな動きを長期間続けられることと同義ではない。伸びの大きさ、繰り返す速度、温湿度、電流などの条件をそろえなければ、単純な優劣比較は難しい。「1,000回」という回数だけから、何日使えるかを割り出すこともできない。

性能を見る三つの視点

何を測ったか。 膜、接続部、装置全体を区別する。
どの条件で測ったか。 変形量、温湿度、試験時間を確かめる。
何に使うか。 短時間の動作確認と長期の健康計測では、求める証拠が違う。

接合時に加熱・加圧しないという表現も、工程の範囲を意識して読むべきだ。材料を作る工程から電源を動かす段階まで、すべてが無エネルギーになるという意味ではない。組み立てるときの負担を減らせるかという問いと、装着後の安全性や安定性という問いは、分けて検証する必要がある。

汗と水、そして日常の動き

2026年2月には、『npj Flexible Electronics』に、ポリビニルアルコールと水系ポリウレタンを組み合わせたナノメッシュ電極の研究が掲載された。研究者らは、汗と動きの影響を受けやすい手のひらで、少なくとも4時間の電気的・機械的安定性を報告している。これは今回とは別の電極の研究であり、通気性と耐水性、伸縮性を一緒に考える必要性を示す事例である。[6]

仮に運動中の計測を用途とするなら、使用者が止まっている間だけ良い信号を得られても十分ではない。計測したい動作の最中に信号を失うと、必要な時間帯だけ記録が欠ける可能性がある。将来の評価では、測れた時間の精度とともに、どれほど途切れず測れたかも問うべきだろう。これは本稿の用途分析であり、新フィルムで確認済みの医療効果を意味しない。

ソフトロボットへの応用をどう考えるか

柔らかなロボットを想像すると、接続の課題は別の形で現れる。物をつかむ部分に触覚センサーを置くとして、信号を処理する回路まで配線を導かなければならない。その途中に硬い箇所があれば、動き方を含めた設計が必要になる。伸縮する接続材は、こうした設計の選択肢になり得る。

しかし、皮膚に貼る機器とロボットでは、必要な試験は同じではない。想定する力、摩耗、洗浄方法、故障時の影響が変わる。ある接続材の有望さを判断するには、「柔らかい機械にも使えそうだ」という見通しから一歩進み、どの場所に、どの電流で、どの頻度の動作に使うかを定める必要がある。

実用化を左右する、目立たない仕事

製品化を考える段階では、試作品が一度動くことに加え、同じ性能の接続を繰り返し作れるかが重要になる。端子の位置合わせをどう確認するか。不良をどの時点で見つけるか。保管後も接続できるか。修理や取り外しは可能か。これらは今回の発表に対する実用面からの検討項目であり、欠陥が見つかったという意味ではない。

健康計測へ進むなら、読み取った信号が何を意味するかという課題も残る。接続が良好でも、診断精度は別途確かめなければならない。測定結果を見る人が判断に使える形で情報を受け取り、装着する人が無理なく使い続けられるか。材料から暮らしまでの間には、いくつもの検証がある。

今回の成果を読むうえで注目したいのは、目立ちにくい接続部を研究の中心に据えた点だ。薄いセンサーを作り、肌を覆う負担を考え、その部品同士をつなぐ。電子機器を体に近づける取り組みは、見える機能だけでなく、それを支える小さな境目を変えることによって進んでいく。