出社が週5日から週1、2日に減れば、住宅を選ぶ条件も変わる。駅までの距離より部屋の広さを優先し、同じ通勤圏でも都心から離れた地域を選べる人が増える。一方、地方に住み続けながら都市部の企業で働く道も開かれる。こうした変化がどこまで実際の転居につながったかを判断するには、調査で使われた区分を分けて見る必要がある。

鳥取市と東京都港区に本社を置くLASSIC(ラシック)が運営する「テレワーク・リモートワーク総合研究所(テレリモ総研)」は、2026年7月2~6日、20~65歳のテレワーク経験者1,004人を対象にインターネット調査を実施した。現在のフルリモート・ハイブリッド勤務者616人のうち、21.8%が地方・郊外で働く三つの回答区分に該当した。過去にテレワークを経験し、現在は完全出社で働く388人では4.9%だった。

21.8%現在フルリモートまたはハイブリッドで働く人のうち、地方・郊外でテレワークをしていると分類された割合。
4.9%テレワーク経験はあるが現在は完全出社の人における同じ割合。
6.2%リモート・ハイブリッド組で「テレワークを機に地方・郊外へ移住した」と明確に答えた割合。
32.6%20代で地方・郊外に住みテレワークをしていると分類された割合。全年代で最高。
最重要の注意:21.8%は「テレワークで地方へ移住した人」の割合ではない。内訳は、テレワークを機に移住した6.2%、もともと地方・郊外に住みテレワークが定着した10.2%、都心から同じ通勤圏の近郊へ移った5.4%。調査対象もテレワーク経験者に限られ、全国就業者の代表標本ではない。

21.8%を構成する三つの回答

内訳で最も多い10.2%は、もともと地方・郊外に住み、そこでテレワークが定着した人だった。この区分は転居を伴わない。テレワークを機に地方・郊外へ移住した人は6.2%、都心から同じ通勤圏の近郊へ移った人は5.4%だった。したがって、人口移動として扱える回答と、既存の居住地で働き方が変わった回答を合算した21.8%を、そのまま「移住者の割合」と表現するのは正確ではない。

回答リモート・ハイブリッド完全出社意味
テレワークを機に地方・郊外へ移住6.2%1.5%働き方を契機とした明示的な移住
地方・郊外在住でテレワーク定着10.2%2.6%転居ではなく、地域に残れる可能性
都心から近郊へ転居5.4%0.8%通勤圏内で住宅選択を広げた移動
三項目の合計21.8%4.9%四捨五入前の数値から算出

住まいを変えない選択もある。全回答者の11.5%は「住まいは変えず、自宅をテレワーク向けに見直した」と答えた。仕事用の場所を設ける、通信環境を整える、机や照明を替えるといった対応が考えられる。これは人口移動統計には表れないが、住宅関連の支出や家庭内の空間配分に影響する可能性がある。

テレワークが地域に及ぼす影響は、都市部から地方への転居だけではない。地方に住む人が、転居せずに都市部の仕事を続けられることも重要である。

調査だけでは因果関係を判断できない

21.8%と4.9%の差は大きい。しかし、この横断調査だけでは因果関係の方向を判断できない。テレワークが可能になったため郊外へ移った人がいる一方、地方での暮らしを希望して、テレワークが可能な職を選んだ人もいると考えられる。職種、所得、年齢、家族構成、住宅所有、会社規模などが、働き方と居住地の両方に影響した可能性もある。

比較対象の「完全出社」も、テレワーク未経験者ではない。過去にテレワークを経験し、現在は完全出社で働く人である。会社の勤務方針が変わった人、転職した人、職務上出社が必要になった人などが含まれる可能性がある。したがって、現在の働き方と居住地の回答に関連が見られるとはいえるが、テレワークの導入によって地方移住が約4倍になると結論づけることはできない。

この調査で分かること/分からないこと
  • 分かる:テレワーク経験者の中で、現在の出社形態と地方・郊外居住の回答に大きな差がある。
  • 分かる:若い層ほど地方・郊外テレワークの回答割合が高い。
  • 分からない:テレワークだけが転居を引き起こしたか。
  • 分からない:全国の全就業者に同じ割合が当てはまるか。
  • 分からない:移住が何年続くか、地域経済へどれだけ支出が残るか。

20代で高かった地方・郊外テレワーク

年代別では20代が32.6%で突出し、30代19.5%、40代11.2%、50代6.0%、60代8.2%だった。20代の内訳は、地方・郊外在住でテレワークが定着15.8%、近郊への転居8.9%、テレワークを機に地方・郊外へ移住7.9%。明示的な移住だけでは30代の8.0%がわずかに上回った。

年代差の理由は今回の調査だけでは分からない。住宅取得、子どもの就学、家族構成、職種など、転居のしやすさに関わる条件を調整した分析は公表されていないためだ。一方、同じLASSICの関連調査では、地方・郊外でテレワークをする際の困りごととして、20代の24.7%がスキルやキャリアを伸ばしにくい不安を挙げた。地方で働く自由が広がっても、人材育成や評価の仕組みが自動的に整うわけではない。

若い人が地方に住みながら都市部の仕事に参加できる環境をつくるには、企業が評価、育成、情報共有を勤務地に左右されにくい制度へ改める必要がある。地域側にも、安定した通信環境だけでなく、教育、医療、交通、同世代と交流できる場が求められる。

コロナ禍の緊急対応から定着期へ

厚生労働省はテレワークを、ICTを活用して時間や場所を有効に使う柔軟な働き方と定義し、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務に分けている。育児や介護との両立、通勤負担の軽減、災害時の事業継続などを目的に、政府は新型コロナウイルス感染症の流行以前から導入を支援してきた。2020年には感染対策として急速に広がり、その後は出社回帰と継続利用が併存している。

コロナ禍以前 — 政府は育児・介護との両立、通勤負担の軽減、事業継続などの観点から導入を支援。

2020年 — 感染対策により在宅勤務が急拡大し、オンライン会議やクラウド利用が広がる。

2022年以降 — 出社を増やす企業と柔軟な勤務を残す企業が併存し、ハイブリッド勤務が定着。

2025年度 — 国土交通省調査で直近1年間の雇用型テレワーク実施率は16.8%。前年度から1.2ポイント上昇。

国土交通省が4万人を対象に行った2025年度調査では、雇用型就業者の25.2%が現在の主な仕事でテレワークを経験しており、直近1年間の実施率は16.8%だった。コロナ禍後に低下が続いた実施率は、この年度に前年度比1.2ポイント上昇した。ただし地域差は大きい。雇用型就業者のテレワーク経験率は首都圏で37.7%、地方都市圏で17.2%だった。テレワークを利用できる雇用は、依然として大都市圏に偏っている。

「転職なき移住」という政策実験

政府はデジタル田園都市国家構想で、都市企業の仕事を維持したまま地方へ暮らしを移す「転職なき移住」を掲げた。自治体は移住支援金、サテライトオフィス、コワーキングスペース、お試し滞在、空き家改修を組み合わせた。国土交通省も、使われなくなった公共施設をテレワーク拠点へ変える事業を支援している。

従来の地方創生策では、地域に雇用をつくることが移住促進の前提になりやすかった。「転職なき移住」は、都市部の企業に勤め続けながら地方へ移る選択肢を政策として支えるものだ。実現すれば、所得や消費の一部が地域に残る可能性がある。一方、企業が出社頻度や勤務地の扱いを変更すれば、移住者に長距離の移動負担が生じる。勤務場所、通勤費、情報管理、労働時間、緊急時の出社などを事前に明文化する必要がある。

今回の関連調査では、地方・郊外テレワークの利点として44.8%が通勤ラッシュからの解放、37.1%が住居費の低下または同じ予算で広い家、29.0%が自然環境を挙げた。最大の困りごとは、都市部へ出向く際の移動負担41.2%。仕事の場所が自由になっても、顧客、経営中枢、文化施設、専門医療、大学まで一緒に分散するわけではない。

東京圏はなお12万3,534人の転入超過

企業調査の結果を、日本全体の人口移動の反転と混同してはならない。総務省統計局によると、2025年の東京圏は、外国人を含む全移動者で12万3,534人の転入超過だった。前年より1万2,309人少なかったものの、日本人移動者だけでも11万2,738人の転入超過となり、転入超過は30年連続となった。大学、就職先、本社機能、専門職、交通などが東京圏に集まる状況は続いている。

むしろ起きているのは、中心と周辺の境界がにじむことかもしれない。週一回なら新幹線通勤圏が広がり、月一回なら二地域居住が可能になる。完全移住、郊外化、実家へのUターン、地方に住みながら東京企業へ就職することは、統計上も生活上も別の現象だ。政策は「何人が東京から出たか」だけでなく、地方の若者が移らずに選べる仕事が増えたかを見る必要がある。

テレワークによって、東京の仕事には東京の住所が必要だという従来の前提は弱まりつつある。

企業に求められる制度整備

採用対象を全国へ広げられることは、人手不足に直面する企業にとって大きな意味を持つ。地方に住む技術者、育児や介護で移動しにくい人、配偶者の転勤に同行する人を雇用し続けられる可能性が高まる。オフィス面積や通勤費を抑える余地もある。地域企業にとっても、都市部の専門人材と副業や遠隔勤務を通じて協働する機会になる。

一方、勤務地を自由に選べるようにしても、業務の進め方を変えなければ不公平が生じるおそれがある。会議室にいる人だけが会議後の会話を聞き、出社者に重要な案件が偏る可能性もある。管理職は在席時間ではなく成果と協働を評価し、意思決定を文書に残し、対面で集まる目的を明確にする必要がある。サイバーセキュリティ、労働時間、孤立、光熱費、作業環境についても、企業が対応すべき課題として残る。

移住を一時の流行で終わらせない条件
  1. 会社:出社頻度と勤務地に関する規則を明文化し、遠隔勤務者の評価と昇進を公平にする。
  2. 地域:通信だけでなく、医療、教育、交通、保育、交流の基盤を整える。
  3. 住宅:仕事部屋、断熱、防音、安定した通信環境を備える住宅の選択肢を増やす。
  4. 交通:出社頻度の低い利用者に合った運賃や交通サービスを整える。
  5. 測定:転入人数だけでなく、定着年数、所得、地域での消費、家族の満足度を追跡する。

居住地選択を広げるための条件

大都市圏では、通勤時間や駅からの距離が住宅選びの重要な条件になってきた。テレワークによって出社日が週5日から週2日、週1日へ減れば、より遠い地域や広い住宅を選べる人もいる。ただし、すべての職種でテレワークが可能なわけではなく、利用できる人とできない人の差にも注意が必要である。

今回の1,004人調査は、全国の人口移動を説明する最終回答ではない。自己申告のインターネット調査であり、対象もテレワーク経験者に限られる。それでも、21.8%と4.9%の差、20代の32.6%、移住に関心を示した12.3%という結果は、働く場所と住む場所の関係が変化している可能性を示している。

影響は大規模な地方移住だけに表れるとは限らない。若者が故郷を離れずに都市部の企業へ就職する、介護や育児のため親族の近くで働く、出社頻度に合わせて同じ通勤圏のより広い住宅を選ぶといった選択も含まれる。こうした選択を持続可能にするには、企業の制度、地域の生活基盤、住宅と交通を一体で整える必要がある。

調査・出典

編集注:本稿は2026年8月22日までに公表された資料に基づく。LASSIC調査は同社が公表した、20~65歳のテレワーク経験者を対象とするインターネット調査であり、査読研究でも全国就業者の代表標本でもない。全国のテレワーク率や移住率として扱うことはできない。本文では企業の調査結果を同社による公表値として示し、相関と因果を区別した。60代は回答数97のため参考値。構成比は丸めにより合計が一致しない場合がある。指定為替の最終更新時刻2026年8月22日午後9時00分UTCは、日本時間の2026年8月23日午前6時00分へ換算した。