切り株から若い枝が伸び、葉が茂り始める。里山の手入れでは、そうした姿が森の再生を感じさせる。しかし、地上に緑が戻ることと、地中の根が土を支える力を取り戻すことは、同じ速さで進むとは限らない。

京都大学が9月16日に公表した共同研究は、高齢化したコナラを伐採した後の、見えにくい変化を調べた。対象は萌芽(ほうが)によって再生した個体。それでも、根による土壌の補強は伐採8年後まで低い水準にとどまったという。京都大学に加え、兵庫県立農林水産技術総合センター、兵庫県立大学、名古屋大学、福知山公立大学が参加した研究だ。[1]

「芽が出たから、地下も元通り」とは判断できない。この点は、古い雑木林を更新しながら斜面の保全も考える地域にとって、見過ごせない問いを投げかける。

根を掘り出し、土を支える働きを測る

共同発表資料によると、伐採時に49〜71年生だったコナラ林で、伐採5年後と8年後の根株を各3個体調べた。周囲を掘削し、断面に現れた直径1ミリメートル以上の根の分布と引き抜き抵抗力から、土壌補強強度を算出した。5年後は3.51キロパスカル、8年後は1.99キロパスカルで、伐採前の約10%、約6%に相当する。8年後の値は、萌芽枝の太さと関係していた。[2]

この数値が示すのは、調査した根の働きに基づく補強の推定値である。斜面全体の強度が6%になった、あるいは崩壊確率が一定の倍率で増えた、という意味ではない。根の調査結果を土地の安全性へ読み替えるには、その場所の条件を加えて検討する必要がある。

著者の一人は、京都大学大学院農学研究科の檀浦正子(だんのうら・まさこ)准教授。氏名の読みと職名は大学の研究者情報で確認できる。[3] 論文は『Forest Ecology and Management』に掲載された。大学単独の成果ではなく、地域の森林研究機関と複数大学による共同研究として受け止めたい。

里山のコナラは、暮らしとともに育った

コナラを含む里山の広葉樹林は、もともと人の利用と切り離せない森林だった。林野庁によれば、薪炭や農業資材などの供給源となり、おおむね20〜30年ごとの伐採と萌芽による更新が繰り返されていた。昭和30年代の燃料革命で薪炭需要が急減し、伐採の機会が減ったことで、太く高い木の多い林へ変わってきた。[4]

萌芽更新は、切った後の根株から出る芽を育て、次の林につなげる方法だ。種子から芽生えた実生(みしょう)を育てる場合とは、出発点が異なる。古い根株を引き継ぐからといって、その地下の働きまで変わらず引き継がれるかどうかは、別に確かめなければならない。

歴史的な利用周期は、現在のすべての斜面に適用できる作業日程ではない。長く伐られなかった林で管理を再開するとき、かつての方法をそのまま戻せると考えるのは早計だ。樹木の年齢や大きさが違えば、更新を計画する際に確かめるべきことも変わる。

明るい林を取り戻す意義と、地下の時間

林野庁の令和6年度森林・林業白書は、継続的な伐採や落葉の採取で明るさが保たれた里山林に、カタクリやスミレなどが生育してきたと説明する。利用の縮小に伴う林内の暗化は、そうした環境に依存する生物に影響する。一方、原生的な天然林では自然の推移に委ねることを基本とするなど、森林の性格によって管理の考え方は異なる。[5]

つまり、今回の研究を「木を伐るべきではない」という一律の結論にすることも、「里山だから伐ればよい」という根拠にすることもできない。目指す植生を回復させる仕事と、斜面の状態を確かめる仕事を、同じ計画の中に置く必要がある。

たとえば、地域が林床の植物を守るために林を明るくしようとするなら、作業後に何をもって成功と判断するのか。花が戻ること、萌芽枝が伸びること、土が流れにくい状態を維持することは、それぞれ異なる評価項目になる。地上の変化だけを記録して終える計画では、地下で起こる変化を捉えにくい。

根の補強と、斜面の安定を分けて考える

林野庁の解説書は、根が関わる表層崩壊と、それより深い地盤に及ぶ崩壊を区別している。根の働きは、土層がずれることへの抵抗の一部であり、森林があればあらゆる崩壊を防げるわけではない。同書は、根の力学的な働きを調べる研究が1950〜60年代に進んだ経緯も整理している。[6]

この区別を踏まえると、今回の数字の位置付けが明確になる。根による補強は斜面を考える材料の一つだが、地形、土層、地質、水の集まり方までを一つの値で表してはいない。根の抵抗力が大きい場所でも、その値だけから豪雨時の安全を宣言することはできない。

また、土の表面が雨で削られる現象と、まとまった土層が滑り落ちる現象も同一ではない。森を評価する言葉として「土を守る」とまとめてしまうと、何を測り、何への対策を考えているのかが曖昧になる。研究の対象を絞って読むことは、成果を小さく扱うことではなく、実際の管理に役立てるための前提である。

再生を見る三つの視点

地上: 芽が出たか、その後も成長しているか。
地下: 根の分布と補強の働きがどう変わるか。
斜面全体: 地形や水の条件、周辺の利用状況と合わせてどう評価するか。

「8年」は安全になる期限ではない

この研究から考えるべきことは、伐採後の管理期間をどう捉えるかだ。観察の最終時点が8年後であることと、9年目から回復が保証されることは違う。年数だけで管理を終える基準を作るのではなく、その後の成長と現場の状態を確かめる仕組みが必要になる。

さらに、伐採5年後と8年後の調査は、各3個体を対象としたものだ。個体の数と、一本の木で測る根の本数は区別しなければならない。多くの根を測っていても、それが多数の地域や斜面で同じ結果を確かめたことにはならない。今回の成果は現地調査に基づく重要な知見だが、全国のコナラ林の回復年数を一律に定めるものではない。

手入れを再開するなら、その後を計画に入れる

実務への示唆としては、伐採する日の作業と、その後の確認を一続きに考えることが挙げられる。事業の記録に、場所、伐採時期、残した木、更新の状況を残し、担当者が替わっても経過をたどれるようにする。これは本稿の管理面からの考察であり、この研究が特定の記録様式を実証したという意味ではない。

伐採の規模や時期を分ける方法、残す木の配置、萌芽を育てる方法などは、地域の専門家と検討する論点となる。ただし、今回の数値だけから、残すべき本数や安全な伐採面積を計算することはできない。管理をしない場合の課題も含め、何を改善しようとしているのかを明らかにしたうえで選択する必要がある。

自治体や森林所有者にとって、費用の考え方も変わる。伐採費だけを確保しても、その後に誰が林を見続けるかが決まっていなければ、再生の過程を評価しにくい。調査結果を次の作業へ反映するには、数年にわたる観察を事業の一部として扱うことが重要だろう。

森の緑の下で起きていること

枝葉は、林の変化を私たちに見せてくれる。根の変化はそうではない。だからこそ、掘削と測定によって得た結果は、目に見える再生をどう評価するかを問い直す。

里山を次の世代につなぐには、利用の歴史を知るとともに、現在の林がかつてとは違う状態にあることを認める必要がある。萌芽を確認した時点を終点とせず、地上と地下の両方を見ながら管理を続ける。その時間を計画に組み込むことが、今回の研究から地域社会が引き出せる大切な視点である。