数字を読む前に:これは出入国者数ではない。住民基本台帳に基づき、国内で市区町村を越えて住所を移し、転入届が出された移動の集計である。外国人旅行者は含まれず、動機や在留資格は月次概況から分からない。増加を特定の政策や職種だけに結びつけることはできない。

引っ越しの最後には、段ボールでもトラックでもなく、役所の窓口がある。転出証明、転入届、新しい住民票。国境を越えて日本に来た人にとって、県境を越える引っ越しは「二度目の移住」だ。勤務先が変わったのかもしれない。学校を卒業したのかもしれない。配偶者と暮らすため、家賃の安い部屋を探すため、あるいは知人のいる町へ移ったのかもしれない。

総務省統計局が7月28日に公表した2026年6月の住民基本台帳人口移動報告は、その無数の事情を一つの大きな変化として捉えた。外国人住民の都道府県間移動は3万2327人。前年同月より3199人、11.0%増えた。同じ月の日本人の都道府県間移動は14万4528人で、増加率は1.7%だった。

Japan.co.jpの計算では、外国人住民は6月に県境を越えた全移動17万6855人の18.3%を占める。さらに、前年同月から増えた5646件のうち56.7%が外国人住民の増加分だった。人口全体に占める比率よりはるかに大きな存在感で、日本の国内移動の伸びを押し上げたのである。

3万2327人6月に県境を越えて移動した外国人住民
+11.0%前年同月比。日本人移動者は+1.7%
18.3%全都道府県間移動に占める外国人住民の割合
56.7%都道府県間移動の前年比増加分に占める割合

「11%増」が測っているもの

6月に市区町村を越えた外国人住民は5万7329人で、前年同月比8.4%増。このうち県境を越えたのが3万2327人、同じ都道府県内で別の市区町村へ移ったのが2万5002人だった。外国人住民の県内移動も5.2%増えたが、県境を越える移動の伸びはそれを大きく上回った。

2026年6月外国人住民前年同月比日本人前年同月比
市区町村間移動57,329+8.4%326,314+2.4%
都道府県間移動32,327+11.0%144,528+1.7%
都道府県内移動25,002+5.2%181,786+2.9%

ここで「外国人」は、住民基本台帳上の国籍区分である。帰化した人は日本人に分類され、短期滞在者は住民として数えられない。統計は住所変更の届出を数えるため、県境を越えた理由、転職の有無、世帯構成、本人の満足度を直接説明しない。災害で避難しても避難先で転入届を出さなければ、移動者として計上されない。

それでも11%という差は重要だ。外国人住民の母数そのものが急速に増えていることに加え、日本での生活が「最初に割り当てられた学校や職場の町」に固定されず、国内の次の場所へ動く段階に入った可能性を示すからである。これは入国数では見えない、定住社会の成熟度を測る数字だ。

東京の磁力は強い。だが流れは一方向ではない

人口移動の記事は、しばしば「東京一極集中」に着地する。6月も東京圏――東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県――は外国人住民595人の転入超過だった。外から5270人が入り、外へ4675人が出た。東京圏がなお純増であることは確かだ。

だが前年6月の転入超過は1160人だった。1年間で純増幅は565人、ほぼ半分に縮んだ。転入者は137人増えた一方、転出者は702人増えたからだ。つまり東京圏の「入口」は広がったが、「出口」はそれ以上に忙しくなった。

外国人住民の3大都市圏移動転入転出転入超過前年6月
東京圏5,2704,675+595+1,160
名古屋圏2,3262,585-259-337
大阪圏2,4482,540-92+94

名古屋圏は259人の転出超過だったが、前年の337人から流出幅が縮んだ。大阪圏は前年の94人の転入超過から92人の転出超過へ転じた。なお、統計局の都市圏表は各圏域の外との移動を扱い、圏内の都県・府県間移動は除く。東京から埼玉、京都から大阪といった圏内移動は、この転入超過には表れない。

増えたのは東京への吸い込みだけではない。東京から外へ、工業地帯から別の雇用圏へ、学校の町から働く町へ――外国人住民の日本地図に「次の目的地」が増えている。

一カ月の波ではなく、年間記録の続き

6月だけの偶然と片づけることもできない。2025年の外国人住民による市区町村間移動は66万2294人、都道府県間移動は36万7402人。いずれも外国人を含む現在の集計が始まった2014年以降で最多だった。県境を越える移動は前年比9.8%増えていた。

年齢は移動の性格を物語る。2025年の外国人住民の都道府県間移動は25~29歳が10万2912人で最も多く、20~24歳が10万1074人、30~34歳が6万1150人と続いた。20代だけで全体の55.5%を占める。進学、卒業、就職、転職、結婚といった生活の転換点にいる世代が中心である。ただし、この年齢分布だけで個々の動機を決めつけることはできない。

行き先も、単純な都心集中ではない。2025年は外国人住民について25都道府県が転入超過。最大は埼玉県の9898人、次いで神奈川県の9528人、兵庫県の1515人だった。最大の転出超過は千葉県の8252人で、愛知県3987人、福岡県3740人が続いた。東京都は転入超過から転出超過へ転じた。

この並びは、外国人住民が「大都市か地方か」という二択ではなく、住宅費、交通、工場・物流拠点、大学、同郷ネットワーク、家族の事情を組み合わせて都市圏の内外を動いていることをうかがわせる。埼玉と神奈川の純増、東京と千葉の純減は、首都圏そのものが一枚岩ではないことを示す。

仕事の地図が、人の地図になる

2025年10月末、日本で働く外国人は257万1037人、外国人を雇用する事業所は37万1215カ所に達し、いずれも過去最多だった。労働者数は1年で11.7%増えた。専門的・技術的分野の在留資格は86万5588人で20.4%増え、技能実習は49万9394人、資格外活動は44万9324人だった。

この規模になると、外国人住民の国内移動は一部の国際都市だけの現象ではない。製造業の集積する東海や北関東、食品加工や農業の町、観光地、介護施設、建設現場、大学都市、物流拠点が一本の雇用ネットワークで結ばれる。会社の配属変更、契約の終了、よりよい賃金、卒業後の就職、家族との同居などが、住民票の移動へつながり得る。

ただし、移動の自由は在留資格によって同じではない。1993年に創設された技能実習制度では、実習先の変更は「やむを得ない事情」がある場合などに限られてきた。2019年4月に始まった特定技能制度では転職が可能だが、受入れ機関や分野を変える場合に在留資格変更の手続が必要になる。統計表の「1人の移動」の背後には、自由なキャリア選択もあれば、制度上の制約をくぐる移動もある。

移動増加を生み得る五つの力
  • 人口の母数:2025年末の在留外国人数は412万5395人となり、初めて400万人を超えた。
  • 若い年齢構成:県境を越える移動は、就学・就業移行期の20代に集中する。
  • 雇用の分散:外国人雇用は37万カ所を超え、大都市の外にも広がる。
  • 在留資格の多様化:専門職、留学生、技能実習、特定技能、永住者などで移動可能性が異なる。
  • 生活の定着:滞在が長くなれば、仕事だけでなく家族、教育、住宅、地域関係が引っ越しを左右する。

1954年から続く「成長の移動」

外国人住民の移動は新しいが、日本が人の移動で経済を組み替えてきた歴史は古い。住民基本台帳人口移動報告の前身は1954年に始まった。高度経済成長期、地方の若者は卒業とともに京浜、中京、阪神の工業地帯へ向かった。集団就職列車で運ばれた新卒者は「金の卵」と呼ばれ、工場、建設、商業、都市サービスの担い手になった。

統計では、1971年の市区町村間移動が835万9711人、都道府県間移動が410万3106人に達している。移動は、所得の高い場所へ人を運ぶだけでなく、過疎、住宅不足、通勤圏拡大、家族の分断をも生んだ。今日の外国人住民の移動を戦後の集団就職と同一視することはできない。しかし、労働力不足の地域と機会を求める若者を結ぶ「人の再配置」が、成長モデルの一部である点は共通する。

違いは、現在の移動者が国籍、言語、在留資格という追加の境界を背負うことだ。県を越えれば、日本人と同じく住民票、税、健康保険、学校、保育、運転免許、電気・ガスなどの手続が生じる。そこに在留カード、雇用契約、支援機関、多言語情報、場合によっては資格変更が重なる。

長いあいだ、統計の地図にいなかった

この数字には、もう一つの歴史がある。日本の公式な国内人口移動統計は1954年から存在したが、外国人住民が住民基本台帳ネットワークの対象になったのは2013年7月。統計局が基本集計で外国人を含む全国結果を提供し始めたのは2014年結果からである。

つまり、南米出身の日系人が増えた1990年代も、技能実習制度が広がった2000年代も、外国人住民の国内移動は長期時系列の中心には写っていなかった。人が動いていなかったのではない。行政の主要な地図が、その動きを同じ方法で数えていなかったのである。

1954年 「住民登録人口移動報告」の作成開始。

1967年 住民基本台帳法への改正に伴い、現在の名称へ。

1990年 在留資格「定住者」が整備され、南米出身の日系人の来日が増加。

1993年 技能実習制度が創設。

2006年 総務省が最初の「地域における多文化共生推進プラン」を策定。

2013年 外国人住民が住民基本台帳ネットワークの対象に。

2014年 人口移動報告の基本集計で外国人を含む結果の提供開始。

2019年 深刻な人手不足に対応する特定技能制度が始動。

2025年 在留外国人が400万人を超え、外国人住民の国内移動も過去最多。

2026年6月 外国人住民の都道府県間移動が前年同月比11%増。

統計に入ったことで、外国人住民は初めて「入国した人」だけではなく、「日本国内で生活の場所を変える住民」として政策上見えるようになった。これは小さな分類変更ではない。受け入れ政策の焦点を空港や入管の入口から、自治体、学校、住宅、職場へ移す転換である。

「呼ぶ地域」から「選ばれ続ける地域」へ

人口減少に悩む自治体や企業は、外国人材の採用を地域の存続策として位置づける。しかし採用は入口にすぎない。県境を越える選択肢がある住民を引き留めるのは、求人票ではなく、その後の暮らしだ。

賃貸住宅は最初の関門になる。国土交通省は、外国人であることだけを理由に入居を拒むと不当な差別に当たるおそれがあると注意し、契約書や入居案内を14言語で提供している。新しい県へ移るたびに保証人、初期費用、契約慣行を一から越えなければならないなら、労働市場の移動性は住宅市場で止まる。

子どものいる世帯には、学校間の情報引き継ぎ、日本語指導、母語支援、進路相談がある。医療には通訳、防災には多言語情報、行政にはやさしい日本語が要る。総務省が2020年に改訂した多文化共生推進プランは、コミュニケーション、生活、意識啓発・社会参画に加え、地域活性化とグローバル化を柱に置いた。問題は、それらが転居先でも切れずにつながるかである。

地域政策は、何人を「受け入れたか」だけで成功を測るべきではない。何年住んだか、家族が安心して転入できたか、よりよい仕事へ移れるか、子どもが転校で学習支援を失わないか、困ったときに他県へ逃げなくても相談できたか。転出は失敗と決めつけられないが、選ばれなかった理由を知らなければ改善もできない。

数字を、動ける社会の設計図にする

6月の統計は、国籍別、在留資格別、産業別の移動理由までは示さない。個人を特定しない範囲で、こうした情報を年次・地域別に組み合わせれば、政策ははるかに精密になる。留学生が卒業後にどこへ移るのか。技能実習から特定技能へ移った人が地域に残るのか。子どものいる世帯はどこで定着するのか。現状の単純集計では答えられない。

政策に必要な五つの転換
  • 採用数から定着過程へ:初回の転入だけでなく、再移動とその理由を追う。
  • 自治体ごとの孤立から携帯可能な支援へ:学校、日本語学習、医療、相談履歴を本人の同意とプライバシー保護の下で引き継げるようにする。
  • 住民数から流動性へ:人口の静止画だけでなく、転入・転出の多い自治体へ行政財源と通訳を配分する。
  • 雇用主依存から地域基盤へ:労働相談、住宅、災害情報を会社を辞めても失わない公共サービスにする。
  • 「外国人向け」から住民標準へ:やさしい日本語と多言語対応を例外的な善意ではなく、通常の行政品質にする。

移動が増えること自体は、良くも悪くもない。仕事を選べる自由の表れかもしれないし、不安定な契約や高い家賃に押し出された結果かもしれない。家族形成の喜びかもしれないし、職場トラブルからの避難かもしれない。行政統計が示すのは行動の輪郭であり、意味は追加調査によって確かめなければならない。

ただ一つ明らかなのは、外国人住民を「海外から来て、企業や学校が置いた場所にとどまる人」と見る時代が終わりつつあることだ。2025年には400万人を超える外国人が日本で暮らし、257万人が働いた。彼らは日本の住宅市場、通勤圏、学校区、地域経済を使い、比較し、選び直している。

県境は、暮らしへの投票になる

役所で転入届が受理されると、地図上では一本の線が増える。出発地には一つの転出、到着地には一つの転入。統計表ではそれだけだ。しかし一つ一つの線は、賃金、家賃、交通、教育、差別、友情、家族、将来への判断を運んでいる。

戦後の日本は、地方から都市へ向かう若者の移動で工業国になった。21世紀の人口減少下では、外国人住民の移動が、どの工場が動き、どの介護施設が人員を保ち、どの学校に多言語支援が必要になり、どの地域が次の世代を迎えられるかを左右する。

6月に県境を越えた3万2327人は、単なる補助労働力の移送ではない。日本で一度暮らし始めた人々が、次の暮らしを探した記録である。地域にとって、その県境の一票を得る条件は明快だ。働けること、住めること、学べること、家族で将来を描けること。そして、移動してきた後も「外国人」ではなく住民として数えられることだ。

取材ノートと主な資料

本稿は2026年7月29日午前10時46分(日本時間)までに確認できた公的資料に基づく。18.3%、56.7%、20代の55.5%は公表値からのJapan.co.jp計算。月次統計から個人の移動理由や因果関係は推定していない。3大都市圏の転入・転出は圏域外との移動で、圏内移動を含まない。