55.1%生活水準が変わらないなら循環型社会を推進
19.8%生活水準が下がっても推進
39.2%割高な再生材使用製品は買わない
49.1%調査票回収率(速報)

ごみを分けることには慣れた。では、環境のために便利さやお金を差し出せるだろうか。新しい世論調査は、日本の資源循環政策が直面する壁を映す。

「賛成」と「買う」の間にある距離

朝の集積所で、家庭から持ち寄られた瓶、缶、古紙が順番に並ぶ。日本のごみ分別は暮らしに深く組み込まれている。しかし、物を使い捨てず、修理し、再利用し、原料として循環させる経済をつくろうとすれば、集積所で終わらない変化が必要になる。製品の値段、修理の手間、販売店の仕組み、企業の設計思想まで変えなければならない。

内閣府が10月16日に公表した「循環経済(サーキュラーエコノミー)に関する世論調査」の速報は、その転換をめぐる生活者の態度を浮かび上がらせた。循環型社会の形成について「現在の生活水準が変わらないなら」積極的に進めるべきだという回答は55.1%。「生活水準を落としても」進めるべきだという回答は19.8%だった。「生活水準が上昇するなら」という回答も20.8%を占めた。いずれも調査の設問に対する回答であり、日本人全体が実際にどれだけ行動したかを測った数字ではない。

さらに、再生原料を使った製品が通常の商品より高い場合、39.2%が買わないと答えたとの結果が報じられた。環境保全に賛成する気持ちと、店頭で支払う価格の間には明らかな緊張がある。これは消費者の「意識が低い」と断じて済む話ではない。家計に余裕のない世帯にとって、環境配慮は価格差を上回るほどの実利を伴うのか、という問いでもある。

数字の前に調査の条件を読む

環境省の公表資料によると、調査対象は全国の18歳以上の日本国籍を有する人から抽出した3000人。郵送方式で実施され、1474人から回答を回収した。回収率は49.1%。調査期間は8月20日から9月27日までだが、速報集計には9月16日までに届いた調査票を用いている。このため、1474人の回収結果をそのまま全速報設問の集計母数とみなしてはならない。

確報では回答者の属性別集計、質問同士のクロス集計が公表される予定で、回収数や比率そのものも変わり得る。郵送調査に応じた人と、回答しなかった人の間に意識の差がある可能性も残る。また対象は日本国籍を持つ成人であり、日本で暮らす外国籍住民の意識を直接代表するものではない。世代・所得・居住地域によって価格への感度がどれほど異なるかを論じるには、確報が必要だ。

分別大国が次に目指すのは何か

ごみを種類ごとに分ける「リサイクル」と、そもそもごみになる物を減らす「リデュース」、使える物を繰り返し使う「リユース」は同じではない。循環経済では、設計段階から長寿命化、修理のしやすさ、部材の再利用、再生原料の利用を考える。使い終えた物の処理だけでなく、新しい物を製造するために投入する資源そのものを減らす考え方だ。

例えば携帯電話。分別回収が進んでも、電池が交換しづらく、部品が手に入らず、修理費用が新品の価格に近ければ、買い替えを止めることは難しい。衣服や家具も同様で、回収先が近くにあるか、再利用品の品質が分かるか、利用する手間を減らせるかが行動を左右する。市民に分別を求めるだけでは、製品の循環は完成しない。

1990年代の廃棄物危機から始まった制度改革

大量生産・大量消費が広がった戦後の日本では、都市部を中心にごみの増加と最終処分場の逼迫が深刻になった。1995年に制定された「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」、通称「容器包装リサイクル法」は、消費者が分別し、市町村が収集し、事業者が再商品化を担う役割分担を築いた。1997年に一部施行、2000年に対象を拡大して完全施行となった。

続いて「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)が1998年に制定され、2001年に本格施行された。2000年には「循環型社会形成推進基本法」が成立した。日本の資源循環政策は、廃棄物処理を安全に行う段階から、メーカーや販売店も含めて資源を使い続ける制度を作る段階へ、長い時間をかけて進んできた。

2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行された。3Rに再生可能資源への切り替えを加えた「3R+Renewable」を掲げ、プラスチック使用製品の設計から回収・再資源化までを視野に入れる。分別が当たり前になった社会で、次は製品そのものの作り方を変える政策が問われている。

2024年、循環経済は「国家戦略」になった

政府は2024年8月2日、「第五次循環型社会形成推進基本計画」を閣議決定した。環境省は、循環経済への移行を環境対策だけでなく、産業競争力、経済安全保障、地方創生、質の高い暮らしを同時に追求する国家戦略に位置付けている。2026年には政府の行動計画や金属再資源化の施策も進められている。

この論理には産業上の理由がある。電池、モーター、電子機器、建築資材は、世界の供給網に依存する金属や素材を必要とする。国内で資源を回収し高品質で再利用できれば、輸入資源への依存を下げる余地が生まれる。ただし、回収した量と、経済的に使える品質の原料になった量は別だ。回収・選別・再製造の費用とエネルギーまで評価しなければ、循環経済が実際に資源を節約するかは分からない。

環境への関心を購買に変えるために

新たな世論調査が企業に突きつけるのは、価格と性能、使いやすさを無視した「環境に良いから買ってほしい」という売り方の限界だ。再生材の品質を検証し、耐久性や修理対応を明示し、便利な回収経路を整え、価格差を縮める。購買の場で選ばれる条件を作らなければ、再生材への需要は持続しない。

自治体にも課題がある。回収品目が細かくなるほど、住民への説明と収集の費用が増える。一方、高齢者、単身者、車を持たない人にとって、遠くの回収拠点に持ち込む方式は利用しにくい。地域に合った仕組みの設計は、リサイクル率だけでなく、手間を減らせているかという視点からも評価されるべきだ。

次に見るべきは、意識ではなく実行の条件

2014年にも内閣府は循環型社会形成に関する世論調査を行っている。ただし質問文、選択肢、対象年齢、調査方法が同一でない場合、割合の単純比較を「意識が向上した」「後退した」と断定することはできない。今回の確報が出た段階で、共通する設問に限って慎重に比較する必要がある。

重要なのは、消費者が環境を望むかという抽象論から一歩進み、修理は新品購入より安いか、再生材製品の品質は保証されるか、返却や分別は簡単か、循環の利益が地域で働く人々に還元されるかを問うことだ。政府が2026年9月にまとめた第五次基本計画の初回点検も、目標に向かってどこまで進んだかを定期的に検証する仕組みの一つである。

「環境に良いことを我慢して続ける社会」か、それとも「資源を無駄にしない方が便利で得になる社会」か。政策と企業の設計力が試されている。

分別という日本の長年の蓄積は出発点に過ぎない。製品の寿命、価格、素材の価値、修理の仕事、地域の回収網。それらがつながったときに初めて、循環経済は標語から暮らしの仕組みに変わる。

出典・参考資料

  1. 内閣府「循環経済(サーキュラーエコノミー)に関する世論調査」(2026年10月16日)
  2. 環境省・調査結果公表と調査方法(2026年10月16日)
  3. 環境省「第五次循環型社会形成推進基本計画」(2024年8月2日)
  4. 環境省「第五次循環基本計画」進捗点検(2026年9月17日)
  5. 環境省「令和8年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」
  6. 環境省「容器包装リサイクル法とは」
  7. 環境省「プラスチック資源循環法」
  8. 内閣府「循環型社会形成に関する世論調査」(2014年)